2011年04月18日 12:00 [Edit]

電気も沸かす時代へ - 書評に代えて - 「燃料電池」のキホン

ソフトバンククリエイティブより以前献本いただいたもの。

今改めて読み返したのは、今一番確実なのが天然ガスだから。

脱原発の大まかなロードマップは、ガスで当座をしのぎつつ太陽光発電の普及をすすめ、洋上風力も模索といったあたりに落ち着くと今のところ考えている。マグネシウム http://ht.ly/4wJuZ はもう少し先か。あと蓄電技術の進歩がどこまで進むかless than a minute ago via HootSuite Favorite Retweet Reply


本書「「燃料電池」のキホン」は、サイエンス・アイ新書の姉貴分にあたるイチバンやさしい理工系シリーズの一冊。版形がA5の分読みやすく、価格も1,575円と抑え気味なのが良心的。

目次
第1章 燃料電池とはなにか
第2章 燃料電池と二次電池ではどこが違う?
第3章 生活に深くかかわる家庭用燃料電池
第4章 生活や経済活動に欠かせない電気自動車への利用
第5章 ユビキタス社会を支える携帯機器用電源
第6章 業務用燃料電池について調べてみよう
第7章 スマートエネルギーネットワークと水素エネルギー社会

燃料電池」(Fuel Cell)と言うが、電気を貯めるという意味ではこれは電池ではなく、むしろ「燃焼直接発電」というべきもの。燃焼熱でガスタービンをまわしたり蒸気を作って蒸気タービンを回す「火力発電」では、化学エネルギー → 熱エネルギ → 電気エネルギーと発電に熱を挟んでいる分どうしても効率が落ちるし、効率を上げるためには燃焼温度を上げねばならず、発電装置はどうしても大型化してしまう。

実際、ガスエンジンで発電し、その排気でお湯をわかす家庭用ガスコジェネレーションシステムエコウィルは、発電出力1.0kWに対し廃熱出力2.8kW。発電効率だけ見ると22.5% (低位発熱量基準)と低く、得られる電力の三倍も給湯してしまう。むしろメインは給湯で、「ついでに電気も作ります」というのが正直なところだ。

発電量8,990 KWh * 28.3% = 2544 kWh
総熱量30,644 MJ * (4524/6682) / 3.6 MJ/kWh = 5805 kWh
熱効率43.8%

資料:

それでは天然ガス火力発電所はどうかというと、全てひっくるめて44%近くある。エコウィルのほぼ倍だ。ただしエンドユーザーが得るのは電力のみで、熱は得られない。

これが、燃料電池になるとどうなるか。現行のエネファームでは発電40%に熱回収50%。だいぶ火力発電所に近づいて来た上、発電所と違って熱も利用できる。でもお値段2,761,500円!太陽光発電システムと変らない上、しかも割引があるとはいえこちらはガス代がかかるのに。補助金が105万円出ても171万。エコウィルは84万円しかしないのに。

固体高分子型(PEFC)だとどうしてもこうなってしまう。本来の燃料は水素。それを都市ガスから取り出している。これを改質というが、改質では水素だけではなく一酸化炭素も出る。しかし一酸化炭素はヒトのみならずPEFCにも毒。なのでその一酸化炭素をさらに二酸化炭素にした上で燃料電池に供給するのだが、動作温度が低温ということもあって白金触媒が必要…

「でも「燃料」電池でしょ?なら一酸化炭素だって燃料にならないの?」という人は鋭い。次に控えているの固体酸化物型(SOFC)は、そういう燃料電池だ。

一昔前に燃料電池に関して調べたことがある人は、そこまでは知っていたかも知れない。

知らなかったのは、「次」がもう今年だということ。いや、本書にすら「早ければ2012年に」とあったので、本書の指摘よりも早くそれが来るようなのである。

えっ、もうできちゃったのかSOFC、となると燃料電池車の運命やいかに - 日経Automotive Technology - Tech-On!
「10月だとお。本当に今年ですか」。耳を疑う発表だった。JX日鉱日石エネルギーが家庭用の燃料電池「エネファーム」にSOFC(固体酸化物型燃料電池)を使ったタイプを追加する。発表では触れていなかったが、セルは京セラ製だ。それが2011年10月の予定だという。SOFCの開発がここまで進んでいるとは…。恐るべし京セラ。

むしろ「かつて知っていた」人ほど、これには驚くのではないか。SOFCの動作温度は700度から1000度。これは大型でないと無理だぞ、と。なのに家庭用とは!しかもPEFCより小さくて集合住宅にも設置可能になる上、発電効率は44%と火力発電所なみで、廃熱回収は34%とお湯を作り過ぎることもない。というか、こうなるといよいよ「電気も出る湯沸器」から「お湯も出る発電機」になってくる。

このSOFC、もちろん大型もいける。大型だと、残った熱でお湯をわかすどころかタービンを回すコンバインドサイクルまで出来る。

九州電力 固体酸化物形燃料電池(SOFC)に関する研究
国のSOFC開発はPAFCやMCFCの経験を踏まえ小規模コージェネレーションシステムから大規模火力発電代替電源へと着実にステップを踏む計画となっており,現在はNEDOプロジェクトにおいて10〜20kW級コージェネレーションシステムおよび200kW級コンバインドサイクルシステムの開発が進められています。

ところでエコウィルから家庭用SOFC(エネファームII?)まで、定格出力は0.75kW-1kWしかない。本書をひもとくまで私も「なんでこんなしょぼいの?」と思っていたのだが、以下のグラフを見れば納得がいく。

要するに、電気もお湯も作りすぎたくないわけだ。定格出力を4kWとかにしたら、エコウィルではお湯を作り過ぎるはめになってしまうし、動作温度が高い、つまり始動に予熱が必要なSOFCでは「最低出力」が高くなりすぎてしまう。だからあくまでも家庭用燃料電池はベースライン電力にして、足りない分は電力網に頼るという設計思想になったわけだ。

このことは、太陽光発電との相性もよくする。家庭用燃料電池コジェネが苦手とするのは、夏場。熱需要が減るので出力を抑えないと効率が落ちてしまう。その代わり燃料電池は曇りの日でも夜でも発電できる。

ガス会社も、そう思っているようだ。

東京ガス:エネファームスペシャルサイト/太陽光とのダブル発電-ダブル発電応援キャンペーン
ダブル発電応援キャンペーンとは、低炭素社会実現に向けて、当社が環境トップランナーと位置づけているダブル発電住宅※にお住まいのお客さまに、その環境効果を実感していただくことを目的として実施するもので、ダブル発電住宅の太陽光発電設備から発生する余剰電力量※(kWh)に対し、当社が、単価9円/ kWh(税込)を乗じたエコキャッシュを年に1度、お客さまにお支払いするキャンペーンです。

で、話を燃料電池にもどして、仮に日本で使われている天然ガスが、すべてSOFCに入れ替わったとする。総合熱効率はこれで倍になる。倍になるということはどういうことか?

ガス消費量を増やさずにして、原発を、全て停止できることになる。現時点でもすでに天然ガスの発電量は原子力のそれを上回っているので。

もちろん今日明日というわけにはいかない。10年以上かかるだろう。その頃には太陽光発電や風力発電といった自然エネルギーもだいぶ成長しているはずだ。

その頃までに福島第一原発1-4号機の解体はどこまで進んでいるだろうか…

Dan the Power(ed) Blogger


この記事へのトラックバックURL

この記事へのトラックバック
小飼弾が珍しく現実的なモノを取り上げている。燃料電池だ。現在、最も効率のよいLNG火力発電の熱効率は61%だが、都市ガスを用いる燃料電池も43.8%まで改善しており、需要に応じた発電が可能だ。た...
LNG火力発電と燃料電池は似た性質を持つ【はてな匿名ダイアリー】at 2011年04月19日 02:41
この記事へのコメント
「総合効率」は意味の無い概念です。
発電効率と熱利用率を足すのは間違いです。エネルギー関係者でもこの程度の基礎が分かっていないことが多いですが、電気と熱ではエネルギーの質が違うので単純に足し算してはいけません。
正確にはエクセルギーで考える必要があります。特に比較的低温熱は電気に比べると「質」が低く、湯を沸かすことにしか使えません。電気は動力や照明、熱源と何にでも使えます。SOFCの高温排熱を発電にした後(タービンを回すなどして)、低温になった蒸気戻り水で湯を沸かすのであれば良いでしょう。そうなるともはや家庭用ではなく、天然ガスコンバインドとの勝負になります。
Posted by cd63002 at 2011年04月20日 11:07
>> それでは天然ガス火力発電所はどうかというと、全てひっくるめて44%近くある。エコウィルのほぼ倍だ。ただしエンドユーザーが得るのは電力のみで、熱は得られない。

最近はコンバインドサイクル化されつつあって、60%近くなりますよね。ぶっちゃけエンドユーザーが得られない熱まで発電に使っちゃうだけですけど。
Posted by nekono_mansaku at 2011年04月18日 13:57