2011年06月21日 16:00 [Edit]

蜘蛛から雲へ - 書評 - インターネットのカタチ

著者より献本御礼。

村井純の「インターネット」から16年。ついに同書を継ぐ一冊が登場した。

同書のオビにある「これが本当だ。」は、もう「本当ではない」のだから。


本書「インターネットのカタチ」は、村井純の弟子達による、インターネットの今のカタチ。「インターネット」とはどこが違うのだろうか?

それが、「蜘蛛から雲」へということ。

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インターネット」の主張のキモは、たった二つ。
  1. インターネットにおいてスマートなのは、両端だけでいい
  2. 使いたい放題でなければ「本物のインターネット」ではない

インターネットの見かけ上の姿は、今もなおこの通りである。しかしその通りに見えるからといって、本当にそうだと言えるだろうか?

ここでもう一度、インターネットで両端がつながる様子をおさらいしてみよう。http://www.example.com/にアクセスしてみる。

  1. あなたの端末は、DNSを使ってwww.example.comのIPアドレスを調べる。
  2. あなたの端末は、その結果であるIPアドレス192.0.43.10Port 80HTTPプロトコルで接続する。
  3. IPアドレス192.0.43.10Port 80で動くWebサーバーは、その結果をあなたの端末に返す。

これだけのことが一瞬で起こるのだが、ふだんあなたは「その間で」何が起こっているかを気にすることはない。それが気にならなければならないほど、インターネットの利便性は高いと言える。「スマートなのは両端だけでいい」の神髄がそれだ。

しかし、よく考えてみよう。

  • www.example.comのIPアドレスは、本当に192.0.43.10なのか?
  • 192.0.43.10は、本当に世界でたった一つなのか?

「インターネット」と「インターネットのカタチ」の違いは、そこにある。

現代のインターネットでは、必ずしもそうなっているとは限らないのだ。

そうなっていない理由は、二通りある。まず一つは改ざん。twitterのDNSが乗っ取られた事は記憶に新しい。本書にももちろん登場するこの事件だが、それが意外に簡単であることに「ふつうの」読者は驚き呆れるのではないか。

しかしそこは本書の副題でもある「もろさが織りなす粘り強い世界」だけあって、対策もある。詳しくは「実践DNS」を参照のこと。DNSの第一人者たちが著した同書は「インターネットのカタチ」の世界では必読である。この場を借りて献本御礼。

そしてもう一つ。本来は「終端」にいるサービス提供者が、「わざと」やっている場合。こちらは事件にならないだけに、前者の例よりずっとわかりにくくかつ巧妙だ。

たとえばaからmまで13個あるルートDNSサーバー。これらはかつて13「個」だったが、今はどうか?確かにIPアドレスは全世界共通だけど、日本と米国では同じサーバーに到達しているのか?

あるいは、AppleやMicrosoftが実施しているソフトウェアアップデート。最近は数百MBあるのもあたりまえで、GBを超えているものもある。これらは本当に米国のサーバーから取り寄せているのか?

本書であなたは真相を知る事となるだろう。

そこにあるインターネットのカタチは、「両端だけが賢い」、ただパケットをやりとりするだけの「web=蜘蛛の巣」ではもはやない。終端どおしで受け答えするのではなく、「中で」直接応答したり、時にはパケットを「すりかえて」しまうということがもはや当たり前の「cloud=雲」である。

なぜ「クラウドコンピューティング」の図にはサーバーが網の外ではなく、網と一緒に雲として描かれるのか?

それこそが、本当のことだからだ。

そういったことを知らなくても、ネットを使うにあたっては何の問題もない。問題があれば「雲の中」の人々が迅速に片付けてくれる。しかしそれを知らないということは、雲の中の人にネットの全てを委ねるということでもある。すなわち、もう主ではなくなるということだ。

もしあなたがまだ主でありつづけたいのであれば、本書をひもとかずにはいられない。

ネットなしの社会が、もうあり得ない以上。

Dan the Man in the Cloud


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