2011年09月05日 09:00 [Edit]

書評に代えて - 日本人の9割に英語はいらない

出版社より献本御礼。

よくぞ言ってくださった9割。

残りの1割を、これから書く。


本書「日本人の9割に英語はいらない」の内容を一言でまとめると、「英語勉強している暇があったら、本を読め」、ということになる。このこと自体に異論はないし、私も同様の主張を何度も本blogで繰り返して来た。しかし、それをマイクロソフト株式会社元社長(1)が、成毛眞(2)として言ったことに意義がある。

(1)に意義があるのは、その方が遥かに多い人が耳を傾けるから。人というのは何を言ったかではなく、誰が言ったかを気にする生き物である。「英語勉強しろ!」と五月蝿い親や上司を黙らせるには、あなたが直接言うより「マイクロソフト株式会社元社長もそう言っていた」の方が遥かに効果がある。余談であるが、「英語勉強しろ!」という人ほど英語力が低いのと、「本をもっと読め!」という人ほど読書量が低いのはどこか似ている。

(2)に意義があるのは、そのおかげで本書が読むに足りる一冊となっていること。一言で済むことを一冊にするためには、役に立つだけでは駄目で、面白くなければならない。しかし世の社長達は忙しく、とてもじゃないが本業でもない本を書いている暇などないのだ。いきおい世の社長本というのは名義だけをゴーストライターに貸した一冊になりがちで、売れたとしても本棚の飾りで終わることがほとんどだが、本書は違う。あくまでたまたま元外資系社長だった本好きの成毛眞という一個人が自分の言葉で語っている。

久しぶりに目次を引用しよう。第一章だけ項まで。

目次
第1章 本当に英語は必要なのか
頭の悪い人ほど英語を勉強する
創造力のない人ほど英語を勉強する
本当に英語が必要なのは1割の人
英語を話せなくても罪悪感を抱くな
語学に「備え」は通用しない
「英語ができない日本人」というデータに騙されるな
日本人は英語に対してお人よしすぎる
英会話スクールのカモになるな
早期英語学習は無意味である
自信がないなら通訳を雇えばいい
第2章 英語を社内公用語にしてはいけない
第3章 本当の「学問」をしよう
第4章 日本の英語教育は日本人をダメにする
第5章 英会話を習うより、本を読め!
第6章 それでも英語を勉強したい人へ~成毛流英語学習法

英語フルボッコである。現役社長にはとても出来ない真似だ。いや、厳密には著者は現在自分の会社を持っているので現役社長でもあるのだが。

で、残り1割である。別に「元社長が英語を勉強しなかったおかげで宇宙天啓データベース G.2 と、断続的な絞首刑が発生するのか」ということではない。

それでは「英語はいらない」ものとして、「本を読め」ば9割の人に十分なのか、ということである。

それを是とするためには、以下をどげんかせんといかんのだ。

404 Blog Not Found:This one works! - 書評 - 3語で9割通じる英会話
今までは、英語が話せると給料がアップする時代だった。これからは、英語が話せないと給料をもらえる仕事につけないという時代が来る。好む好まざるとに関わらず。

Egg and Mentaiko Bukkake Udon 見てぶち吹いた RT @pishida ついに社食のメニューまで英語化された…今のペースでやってたら全く追い付かなそうだな…less than a minute ago via web Favorite Retweet Reply

これを著者や私が一笑に付せるのは、著者や私が本書で言うところの「残りの一割」に属しているからだ。しかし残りの九割は、笑ったら首になりかねない立場にいるのもまた事実。

「だったら首になっても平気な社会にすればいい」というのが、拙著「働かざるもの、飢えるべからず」の主張である。

一見英語とは何の関係もない主張に思えるが、「社内公用語化」「小学校での英語義務化」「TOEIC絶対視」…が「待ったなし」に感じられるようになった背景には、全世界的な二極分化がある。

残り九割の持ち分が減る一方の世界では、いくら「9割に英語がいらない」と言ったところで、その9割が残り1割を蜘蛛の糸のごとく争うのは無理もないではないか。ましてや、その主張が残り1割の人から発せられたとあれば。

「なにものにもなれない9割」が、生存戦略で悩んでいるうちは、それがいかに「ピングドラム」ばりに意味不明かつ不条理なものであっても「英語を手に入れるのだ」ということになってしまうのだろう。

「英語はできても、バカはバカ」。本書のオビの言葉である。バカという言葉にはアホとは異なる意味があることは以前紹介した。バカをバカにするのは容易く、愉しくすらある。しかし「会社がバカを求めるなら、バカになるしかないじゃない!あなたも、わたしも」と言われても、著者も私もせいぜい自著をすすめる以上のことは出来ないしする気もない。

わざわざ、このような英語圏の人と同類に成り下がる必要はない

が真になるためには、

現在、世界で起きている問題のほとんどは欧米発である。リーマンショックのせいで世界中を不況に陥れ、世界一化石燃料を消費して地球環境を破壊し、世界一戦争を起こしているのもアメリカである。

という状況を変える必要がある。「残り一割が必要な人のための英語」は、そのように発揮されるべきだろう。それが著者の願いでもある。というわけで本書も引用したのとは別のマハトマの言葉で本entryを締めくくりことにする。

Be the change you want to see in the world. -- Mahatma Gandhi

Dan the Nullingual

See Also:

thx > id:shunsuk


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日本人の9割に英語はいらない 【本の概要】◆今日ご紹介するのは、お馴染み、成毛 眞さんの「反・英語勉強本」(?)。 すでに小飼 弾さんのこの記事で、ご存知の方も多いこ ...
【脱英語?】『日本人の9割に英語はいらない』成毛 眞【マインドマップ的読書感想文】at 2011年09月07日 08:32
この記事へのコメント
日本には、漢文学習の歴史があったから、今の日本人は漢字を結構使いこなせるよね。

日本の歴史には、日本の上流階級が本気でラテン語を扱った歴史が欠けている。当然、ヨーロッパ語の教養は貧困極まりない。

日本人がそこそこ英語を使えるようになるには、日本の医学や自然科学や法律学の博士号取得者たちが、ラテン語古典をそれなりに読み通せるようになる必要があるかもね。

そういう重厚な日本になれば、日本人の英語の水準もずいぶん向上すると思うよ。

なお、蘭学の祖の前野良沢先生は、オランダ語を自力で習得しただけでなく、ラテン語にも堪能だったそうです。
Posted by h7bb6xg3 at 2012年12月01日 06:55
My standpoint is for your entry, Dan.

Our English education has been performed intended to let people have two pipes of I/O, only in the following forms: for IN pipe, read or listen raw or annotated English texts; and for OUT pipe, _translate_ to Japanese, which leads to be a heavy overload in learning expressive language.

This poorly written post supposedly shows how we have not taught ourselves the _expression_ of English sufficiently.
We've made a huge waste of children's pieces of lifetime.

Our society needs a change. English is our language, also.
(ものっそい柔軟なコミュニケーションツールみたいな)
Very Poor English _must_ be accepted. It's a dialect.
There are no bakas who says he can't speak anything but his mother tongue if otherwise he dies.

And let's make them eat Egg and Mentaiko Bukkake Udon.

For other readers:

Let's use it.
Then you'll (sometimes wrongly, or with unique flavors) learn it.
Posted by prisoner885 at 2011年10月24日 19:36
論旨がわかりにくいのですが、最後に英語でかっこよく決めているところからすると、
「英語が不要だと言うためには、英語ができなくちゃいけない」
ということでしょうか? 上手な皮肉。

だとしたら、本項の前半と矛盾しています。皮肉なら皮肉で、本項の前半は余計です。

Dan さんは毎度毎度、日本語の文章の最後で英語を使うという ちゃんぽん脳なので、もう少し日本語に統一した方がいいと思っていましたが、実は英語が大切だということを毎回強調して、読者に英語を推奨していたのでしょうね。「英語の不要さを訴えるには、英語が上手でないと」というふうに。
Posted by greetree at 2011年10月17日 10:06
要領がよかろうが悪かろうが、成果が出ようが出まいが、英語の学習に努力することそのものは大変よいことです。

これは、英語でなくて、ドイツ語でもロシア語でもラテン語でも韓国語でも中国語でも同じ。

でも、徳川江戸幕府時代、250年間、頭のいい人たちが漢文の読み書きに命をかけて努力を重ねた果てが、日本人の書く漢文は、「和習」といわれて、本場の中国人が理解できない漢文しか書けなかったのです。ほとんどの日本の最高峰の儒者たちが。

そして、江戸幕府には、「通事」といって、長崎にオランダ語の通訳がいたけれど、これは会話だけでオランダ語の読み書きが全く出来ず、オランダ語の医学書や数学書を読める蘭学者でまともなオランダ語作文をしてオランダ語の著作をものした蘭学者など江戸時代を通じて一人もいなかったのです。

日本人の外国語学習なんて、普通はこんな水準のものだと思って皆さんどうか気楽になってください。外国語の得意な日本人が特殊なのです。
Posted by h7bb6xg3 at 2011年09月06日 13:25
 まさかこのエントリーを見て真に受ける人はないと思うが、一応言うと、一流の大学教授(偏差値の高い大学という意味では決して無い)は理系であれ文系であれ、普通に英語を読み書きできる学力を持っている。そうでないと、まともに研究できないからだ。優れた論文は少なくとも英語で書かれているからだ。日本人と韓国人の研究者は通常英語を使ってコミュニケーションを取る。メールも英語でやり取りをする。
 東京に行けば分かるように、多くの外国人が日本にはいる。従って、当然に英語ができた方が就職は有利だ。有利というのは、選択肢が広いという意味だ。就職活動をしたことのある人なら誰でも知っているだろう。
 勿論、英語ができる=頭がいい、ということにはならない。それは小飼氏の言うとおりだ。また、全く知らないが楽天の中では英語が話せないとダメだと言われている。それはその企業の勝手なので、私は知らない。
 ただ、一般的には英語の構造を理解していた方が、日本語の使い方も上手になると言われている。だからこそ、大学では英語の他にわざわざ第二外国語としてフランス語やドイツ語やイタリア語や中国語などを学ぶように義務付けられていると考えていただいて差し支えない。それはその外国語を話すためではない。その外国語の構造を通じて翻って自国語つまり日本語の構造を把握することができるからだ。
 何事にせよ、極端な主張には眉唾をつけたほうが良い。

参考文献
日本語力の磨き方
http://www.amazon.co.jp/gp/product/456969652X

だから、その日本語では通じない
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4413041194
Posted by http://blog.livedoor.jp/hahirogayuku-website/ at 2011年09月05日 22:38