2011年12月10日 22:45 [Edit]

In the Plex - 書評 - グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ

出版社より献本御礼。

本書"In the Plex"の主題は、本書の副題である"How Google Thinks, Works, and Shapes Our Lives"のさらに裏にある。つまり、"How We Think, Work, Shape Google"ということである。

Googleをそうした--してしまったのは、我々ユーザーなのだ。


本書「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ」は、あの Steven Levy が the Plex = Google社内に入って見て書いた一冊。もしITジャーナリストにページランク相当のものがあったとしたら、10であってもおかしくない著者による本書は、必読度において「グーグル秘録」を上回る。

"Do no evil"という看板を高らかに掲げていたGoogleは、「ウェブ進化論」や「ザ・サーチ」の頃から何が変わったのだろうか?

それを最も端的に著しているのが、邦題の副題、「追われる立場から追う立場へ」、だ。

ChromeでMicrosoftを追い、App EngineでAmazonを追い、AndroidでAppleを追い、Google+でFacebookとTwitterを追う…今挙げた例だけでも、Googleが追う者としていかに優れているかがわかるが、それ以上にわかってしまうのは、Googleがもはや「無邪気」ではいられなくなったこと。

なぜ、無邪気ではいられなくなったか。

我々の邪気を預かりはじめたから。

きっかけは、gmailとYouTube買収だろうか。「それはどこにある」というメタデータのみを拠りどころとしてきたGoogleは、これでデータそのもの、「そこそのもの」も預かることになった。メタデータもデータも。Googleはインターネットそのものになろうとしているのではないか、そしてそれは実現するのではないか

それに待ったをかけたのは、結局のところ我々だった。「世界な一番適切なデータ」を教えてくれることにすら、我々は満足できなかったのだ。我々がさらに知りたかったのは、「わたしにとって一番適切なデータ」だったのだ。Googleは「一番近くのピザ屋」がどこにあるのか教えてくれても、「今晩の夕食は何にすべきか」は教えてくれなかったのだから。

それに答えてくれたのが、SNSだった。いや正確にはそこにいる「わたしの友人」だった。世界一賢いわけでもなく、ましてや世界一清廉潔白ではない、しかし認証なしで世界中に公開されるWebページに載せられないあなたのことも、思わず腹を割って話してしまう、あなたの友人。

だからこそGoogleは遅れをとったのだ。Twitterの創設者たちをBloggerごと買い取りながら。Facebookのずっと前にorkutを作っておきながら。

その意味で、"Do no evil"という呪文は、まさに呪いだった。

我々が邪気を生むなら、みんな機械にまかせるしかないじゃない。

あなたも、わたしも。

P. 325
「どこに何を置くか、人間の意志が決定を左右しているように見える」とメイヤーは言った。「主観が入りすぎているように見える。グーグルの製品はマシン主導であり、マシンによってつくられている。それが私たちを強力にし、私たちの製品を偉大にしているのです」

SNS以上に、どこに何を置くか人間が決定している場は存在しないではないか。

Googleは誰を追って来たのか?

Microsoft? Amazon? Apple? Facebook?

結局のところ、それは我々自身なのだ。

Steve Jobs逝去の際に、トップページに手でリンクを貼ったのは、その意味で象徴的な出来事だった。メイヤーの台詞に照らし合わせれば、それは自らの偉大さを自ら否定することでもあるのだ。たとえページやブリンやシュミットが亡くなったとしても、Google Newsがそれを自動で報じることこそ、Googleの偉大さのはずなのではないか。

人ごみに流されて変わっていく己を、遠くで叱って欲しかったのだろうか。

しかしそうなることで、より我々にとってありがたい存在にGoogleがなっていることを否定できる人がいるだろうか?「あなたたちの中で検索もせず、gmailも使わず、YouTubeを見たことのない者が、まず石を投げなさい」と言われて何人が石を投げられるのか?

P. 623
最後になったが、本書はグーグルの検索エンジンがなければ、はるかに執筆に手間取ったはずである。21世紀に書かれたノンフィクション・ジャーナリズムの作品で、その恩恵を受けていない本は皆無に等しいだろう。ラリー・サーゲイ、そしてテクノロジーと文化の驚異的産物を開発し、今も改善し続けているエンジニアたちにこの場を借りてお礼を申し上げたい。

この引用をもって、私自身のお礼にかえたい。

自らの記事を引用するときですら、ぐぐらざるを得ない私の。

Dan the Evil


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