2013年02月22日 00:00 [Edit]

日常は無常 - 映画評 - おおかみこどもの雨と雪

というわけで初日、というか23:45分上映開始だったので日付をまたがって見て来た。

初出: 2012.07.22; 2013.02.22 BD/DVD化につき再掲

傑作。ただし淡いので映画というものに非日常を思いっきり期待している人は退屈かも知れない。そういう人は「サマーウォーズ」をどうぞ。

しかしそこを注意深く味わってみれば、日常こそが無常で、大事(だいじでおおごと)なのだということが改めて実感できる。ただ今日を乗り切り、明日を迎えることが、どれほど有り難いことなのか。


本作「おおかみこどもの雨と雪」は、こんな映画。

映画「おおかみこどもの雨と雪」- ストーリー
大学生の花(宮あおい)は、彼(大沢たかお)と出会ってすぐに恋に落ちた。やがて彼が人間の姿で暮らす"おおかみおとこ"だと知ることになったが、花の気持ちが変わることはなかった。そして一緒に暮らし始めた2人の間に、新たな命が生まれる。雪の日に生まれた姉は≪雪≫、雨の日に生まれた弟は≪雨≫と名づけられた。

雪は活発で好奇心旺盛。雨はひ弱で臆病。一見ごく普通の家族だが、生まれてきた子供たちは、「人間とおおかみ」のふたつの顔を持つ、≪おおかみこども≫だった。そのことを隠しながら、家族4人は都会の片隅でひっそりと暮らし始める。つつましくも幸せな毎日。しかし永遠に続くと思われた日々は、父である"おおかみおとこ"の死によって突然奪われてしまった―――

取り残された花は、打ちひしがれながらも「2人をちゃんと育てる」と心に誓う。そして子供たちが将来「人間か、おおかみか」どちらでも選べるように、都会の人の目を離れて、厳しくも豊かな自然に囲まれた田舎町に移り住むことを決意した。

もっと短くまとめてしまえば、「ちょっとばかし人に言えない特徴をもった子どもを抱えたシングルマザーの子育ての記録」でしかない。強いて「ふつうでない」点は、子供たちが「おおかみこども」である点だけ。その設定すら、花と雪と雨を都会から田舎へ「自然に」移住させるための布石にしか思えないぐらい、本作は自然である。

そう、自然。人を含めない自然を天然というのであれば、本作の自然は人をも含めた自然である。花とおおかみおとこは自然に結ばれ、自然に子をなし…絵空事ではあるけれども、誰にでもありえそうな、自然。そんな自然下における日常は、しかし退屈とはほどとおい。そこに今日と同じ明日はない。悪い意味でもいい意味でも。

本作のこだわりは、この自然にある。絵も物語も、どれだけ不自然にならないかに徹底的にこだわっている。不自然なのはおおかみこどもという設定だけで、しかしその設定を公理として受け入れたら、あとはものごとが自然に進んでいく。女手一つで二人のおおかみこどもを育てようとしたら、本作のありようこそ自然ではないか。

その意味で本作で気になった不自然は二つ。

  • ゴミトラック。さすがにそれはないだろう。軽トラの方が自然。
  • 花の野良着。そんな装備で大丈夫か?首筋が無防備すぎだろ。

もちろんさらに気にしようとすれば、女手一つで廃屋の屋根を修繕できるのかだとか、最初の収穫を軽トラなしで里まで運べるのかだとかといったこともあるのだが、残りの自然が自然すぎて気にならなくなってしまう。私自身築150年の家で育ったので、花たちの家は「そうそう、そんな感じ」だったし、なんといっても花が選んだ車がスズキジムニーってのにしびれた。「鍋釜買うより、スズキジムニー」ですよ奥さん!私も乗ってたぞ20年前。

でも、一番自然だったのが、親離れ。それは突然やってくる。そして親はしばらくそれに気づかない。ここが本作の一番の見せ所なので、これ以上は言わない。ただちょっとだけうらやましくもある。雪と雨の親離れの時期というのは、都会文明的子育てでは第二部のはじまりでもあるので。

子どもはじっとしてくれない。子どもである事そのものからも。

作品の印象というのは、作品そのもの以上に鑑賞者の立ち位置によって変わる。これはどんな作品にも通じる一般論でもあるが、本作は特に見え方が変わるのではないか。まだ子どもだった頃に見ておきたかった。その頃と今とどう見え方が変わるのかを見たかった。我が娘達が親離れを果たしたら、もう一度見てみる事にしよう。別の作品になっているはずだ。作品ではなく、私が変わることによって…

Dan the Father of Two


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 普段、映画なんか滅多に見に行かないし、行ったとしても感想なんか書かないのですが、実は先日たまたま機会があって表題の細田守監督のアニメーション映画『おおかみこどもの雨と雪』を見る機会がありまして、その直後にカマヤン先生のブログを見たら奇しくも「『おおかみ
『おおかみこどもの雨と雪』雑感 雨と雪はやがて水となって川を流れタービンを回す【筆不精者の雑彙】at 2012年10月08日 00:14