2013年04月21日 21:00 [Edit]

唯一読むに値するアベノミクス本 - 書評 - 日本の景気は賃金が決める

アベノミクス本も賛否両論ずいぶんと出回っているし、そのうちかなりの部分が献本されてきたのだが、どれも一番大事なことを言っていないことにorzとなっていたが、我が意を得た一冊をやっと見つけた。やはり献本ばかりには頼れない。


本書「日本の景気は賃金が決める」と他が決定的に違うのは、「日本経済」ではなく「日本人の経済」を語っている点。

目次
序章 賃金格差を縮めれば、日本の景気は回復する
第1章 日本経済の現状 -- 過去60年で最悪でも、世界では優等生?
第2章 日本銀行の罪 -- 過去の金融緩和が賃金デフレを深刻にした
第3章 金融政策のキホン -- どのようにおこなうのか?
第4章 金融緩和と公共事業拡大 -- 効果を高めるには?
第5章 賃金デフレと賃金格差 -- 賃金格差解消なくして、景気回復なし
第6章 人を集めてサービス消費を増やせ -- 地価上昇を利用しよう
終章 生活ダメージを抑えてインフレ目標を達成する方法

そう。いくら日本国にお金が増えても、それが日本人の財布に届かなければ意味がない。目次にあるとおり、著者はそれをはっきりと指摘している。それを踏まえた著者のアベノミクスに対する感想は、こう。

だから筆者は、アベノミクスが発動してしまったことに失望しながらも、強く期待しています。

これは私のそれと120%一致する。

新政権発足後の経済の推移は、まさにそうなっている。アベノミクスが潤しているのは、現時点ではすでに資産を持っている層。あまり大声で言いたくなくはないが、私もそこに入っている。もし経済というものがそういう層のみで営まれているものであるならば、これは寿ぐべきことであるはずだ。

しかし私もこの程度は知っている。それでは経済は回らずよどむことを。

「弾言」 - よどむカネ
貧富の差がいけないという道徳的な理由以上に問題なのは、一番多くのフローを生み出してくれる20〜50代の人に十分なカネを回っていないこと。経済を活性化するには、所得の再分配が必要になります。意外に思われるかもしれませんが、金持ちはあまりカネを使わないんですよ。金持ちであることの最大の問題は、カネを使わないことです

経済を回す一番の方法は、カネを一番使ってくれる人々に金をまわすということだ。

それは誰か。著者も言う通り、"女・小・非・短"、女性、中小企業従業員、非正規従業員、短期雇用者なのである。ところがこの国は「失われた20年」で、まさにその逆"男・大・正、長"、男性、大企業従業員、正規従業員、長期雇用者の既得権をいかに損なわないかという政策をずっと進めてきた。

その結果が、こうである。

右はP.271の図であるが、「子どもの貧困」も指摘しているとおり、再分配の結果、貧困が悪化しているのである。「こんな愚かな社会保障政策をやっている国は、三〇の先進国の中で日本だけです」(P.272)。アベノミクスの中にそれを助長しようという政策は目白押しでも、それを是正しようという政策は今のところ見当たらない。

著者が秀逸なのは、しかしアベノミクスを全否定するのではなく、それとなるべく整合的な形で代案を提示していることにある。その点においても、他のアベノミクス批判本と一線を画している。

別に私は道徳心や同情から、持たぬものを贔屓せよと言っているのではない。それが経済にとってよいことで、まわりまわって私もまた得をするからそういっているのだ。金で買えるのは、売っているものでしかない。経済が回らないというのは、買うに値するものが増えないということだということにそろそろ金持ちも気づいた方がいい。

「資産なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのです」と匙を投げられる前に。

Dan the Economic Animal


この記事へのトラックバックURL