2013年05月17日 18:00 [Edit]

棒読ミノスゝメ

これは為政者ではなく有権者にこそ必要で、にも関わらずあまりに知られていない大事なことなのでblogにも書くことにしておこう。台本と同じで、何度も稽古しとかないといざ本番で役立たない。


なぜ東日本大震災の死者行方不明者が20万人ではなく2万人を切ったのか?

台本が、あったから。

それぞれの立場にいた「演者」たちが、それを賢明かつ懸命に演じたから。

404 Blog Not Found:寄稿 - 宋メール連載第二回「助けられる力」
しかしこれですら「史上最悪の震災」より一桁少ない。地震のマグニチュードでほぼ同等の2004年スマトラ沖地震の死者・行方不明者は合計で227,898人(USGS)。M7.8の1976年の唐山地震では公式発表で242,419人(wikipedia)。日本震災至上最悪の関東大震災は、M7.9で14万2800人。地域比較においても、時代比較においても、現代日本の防災力の強さが見てとれます。

なぜ、福島第一原子力発電所はメルトダウンしたのか。

台本がなかったか、あってもそれをきちんと演じられなかったか、もしくはその双方。

それだけに、今回の東京電力の不手際が、なおのこと目につきます。福島第一原子力発電所の状況は言うにおよばず、計画停電の実施のありかた一つとっても、世界最高の防災技術を持つ、世界最大の電力会社のやっていることにはとても見えない。

アドリブというのは、その場で台本を書いて、書きながらそれを読み上げるということ。

それが出来れば申し分ないし、それを我々観客は演者たちについつい求めてしまうけれども、全ての設問に対してそんなことが出来る超人なんてどこにもいやしない。いずれそんな預言者ピッピが現れて、我々に常に最適解を提示してくれるようになるのかも知れないけれども、今のところ我々は我々の中から代表を選んで、彼/女に決断を委ねている。彼/女もまた人である以上、人に出来ないことを我々は求めてはいけないのだ。それを求めるのは戦争の責任を一兵卒にすべて押しつけ、その一兵卒たちの性欲を慰安婦たちにすべて押し付けるほど人道に悖る行為ではないか。

我々が責任を委ねる相手もまた人である以上、人に出来ないことを彼らに求めるのは、未契約の少女に因果律そのものに対して反逆せよと命じるに等しい。

現時点で我々がその代わりに出来ることは、なるべく多くの台本を用意して、その中からその場にもっともふさわしい台本を選び、それをもっとも上手に演じることが出来る人を我々の中から選ぶこと。

かの国の現職大統領は、それを歴代でも最もよく知る大統領かも知れない。

(624) Barack Obama: How does Obama know about bubble sort? - Quora
Because John McCain was asked the same question by then Google CEO Eric Schmidt earlier in the year (May 2007), when he was invited to Google.
President Obama's aides noticed that and prepped him for it.

「32ビット整数100万個を効果的にソートするにはどうすればよいか」という Schmidt の「空気を読まない」質問に対して「バブルソートはやめといた方がいい」という当意即妙な答えを Obama が返したのは、アドリブではない。ちゃんと台本があったのだ。記録映像を見るとよくわかるのだが、Schmidtの「無理に答えなくても結構です」をはねのけてまで Obama が言い張ったのは、折角の台本を差し替えたくなかったからだ。

これなんて、最初に当選した時にはもうこうするって決めてたに違いない。

Obama がプロンプターを溺愛することは、政敵も揶揄している。しかし彼はそんな声は意に介さない。意に介さないどころか、それが私の芸風ですとばかりしれっと開き直っている(どころか持ちネタにすらなっている)。彼は自分が何が出来て、何が出来ないかをとても良く知っている。

台本を棒読みする人を、我々は大根役者と呼ぶ。英語でも"You're acting"というのは、「演じている」ではなく「演技みえみえ」という意味になる。しかし大根役者は、その場で冴えたやり方を見つけるにはあまりに大きな問題と取り組むにあたっては、即興芸人にはるかに勝る。

だから、大事を為したい人々は、たとえ稽古不足で演技が見透かされるのがやむなき場合でも、アドリブするぐらいなら棒読みすることを選ぶ。

この人でさえ、例外ではない。

私自身は、台本を読み上げるよりもその場で台本を書いてしまうたちである。筋書き通りの人生を歩むには、あまりによそ見が好きすぎる。

だからこそ、5秒で台本を書く人よりも、5年かけて書いた台本を0.5秒で読み上げる人に大事を任せたいのだ。

Dan the Improviser


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