中村ゆきつぐのブログ

現場の声を国政へ

高齢者の抗がん剤治療 古いデータでは?

いや衝撃のタイトルです。(末期高齢者に延命効果なし 抗がん剤治療、ガイドライン作成へ

末期高齢者?いろいろ問題のある表題ですが、元はこちらになります。(高齢者へのがん医療の効果にかかる研究報告 -進行がんにおける抗がん剤治療と緩和治療との有効性及びその適正使用- 今後、全国がん登録などを活用した大規模調査が望まれる

その他様々な記事が出ています。(高齢者がん治療に指針 厚労省、抗がん剤に頼らぬ選択肢)(抗がん剤治療の効果調査へ 延命効果検証

以下引用です。

>厚生労働省は結果を踏まえ、年齢や症状別のがんの標準治療の提供に向けたガイドラインを作成する方針。患者の年齢や容体に見合った費用対効果の高い治療法を推進し、患者のQOL(生活の質)向上や、拡大する社会保障費の抑制につなげる。

今までも記事を書いてきましたが高齢者のがん治療はそう簡単ではありません。だからこそちゃんとデータを取るのは賛成です。ただ社会保障費の抑制をこの時点で上げるのは国民の感情からは筋が悪い。

>日本では、がん治療実績の情報開示などが進まず、高額な抗がん剤治療が、費用に見合った延命効果があるかを検証するデータはなかった。政府は、この調査結果を基に、年齢や症状ごとに適切な治療を行うための診療プログラムの作成などを進める。

約10年前の有効な抗がん剤が少ない2007年から2008年のデータで論ずるのは、今まで治療の進歩を書いてきた人間として正直間違った結果になる可能性が高いということは強く言っておきます。そして高齢者がここまで増えた現在、今は抗がん剤で治療するかどうかは正しい答えがないということを理解しておく必要があります。そう正直さじ加減の世界です。

日経記事からですが
>抗がん剤の治療を続けるのか、生活の質(QOL)を優先した治療をするのかは難しい判断となる。これとは別に、厚労省は認知症を発症したがん患者の意思決定を支える仕組みも検討する。

どうなったら治療をやめるか。一つの例としてPS悪化がありますが認知もその候補です。

毎日からは
>どのような治療を選ぶかは、あくまで本人の意思が大切だ。高齢者のがん治療は「抗がん剤のやめ時を考えるべきだ」という意見も、「医療費の高騰と治療をつなげて議論すべきではない」という意見もある。患者の状態や価値観は多様で、年齢で区切れるものではない。

その通り。だからちゃんとしたデータを集めながらもある程度の線を引くガイドラインを作ることは賛成ですが、でも簡単ではないということをここで宣言しておきます。個別対応はガイドラインでは難しい。

それでもこういう議論は尊厳死含めてガンガンやるべきです。ただ古いデータでいうのはやめましょう。マスコミもそういう点に気づきなさい。

免疫関係の記事を書いたら、やっぱいい加減な免疫療法のCMが出てきます。少なくともまだ民間でやっている自由診療の免疫治療はドブに捨てるよりコストパフォーマンスが最悪です。そのことを付け加えておきます。

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がんのざっくりした免疫からの解説 騙されないで

がんは遺伝子の異常で生じた体を蝕む細胞です。臓器の機能を低下させ、生体を死に導きます。

治療として外科、化学療法、放射線が3台療法と言われ、その後生体の状況、がんの状況で病状が変わっていきます。

最近はやりの免疫療法。まずがんの生体の免疫状態における変化を知っておく必要があります。

1 排除相(Elimination)
本来遺伝子異常が起きたがん細胞は、遺伝子で制御されたり(P53等)、免疫で制御されています。本来遺伝子異常細胞は基本毎日できていますが、健康な生体であれば免疫含めた機能でこれらの悪い細胞は排除されると考えられています。がんのない健康体の状況です。

おそらく自然免疫を高めると言われているような健康食品等はこの相では効果を示す可能性が一番高いでしょう。予防医療と呼ばれる分野です。ただ何のエビデンスもありません。それは数十年単位の変化なので、有り無しで差を出すことはほとんど不可能なのです。

2 平衡相(Equilibrium)
がん細胞は排除されず生き残っている。しかし増殖はできない状態です。それこそ化学療法、放射線療法後の寛解とか、手術後の状態に当たるでしょうか。ここで免疫がしっかり働けば完治になります。

この部分でも自然免疫を高める物質はある程度有効だと思います。ただ1より有効性は低い可能性があります。何種類かの免疫調整薬が試験されましたが、はっきりとしたエビデンスあるものはまだありません。それこそビタミンCや水素水やノニジュースやヨーグルトもです。

3  逃避相(Escape)
免疫細胞ががんを抑えきれなくなっった状況です。この時点で何らかの治療が必要になります。

実はこの相には幅があって、免疫原性が高いがんは自然に2に戻ったりすることもあります。2つ前のブログで書いた咽頭癌の人はこの部分なんでしょう。治療効果における部分寛解、病状安定(PR、SD)なども同じと個人的には考えています

そして自然免疫を抜け出してきたがんですので、大部分は免疫を高める健康食品などは効きません。そして民間医療機関の細胞療法も効率は標準医療に比べて今ひとつです。

中には例外があり、メソトレキセート誘発悪性リンパ腫は薬をやめるだけで治る人がいたり、重篤な感染後自然に治癒される悪性新生物の方も間違いなく存在します。ただ繰り返しになりますが、改善する確率が抗がん剤や放射線を使う標準療法に対し明らかに低いことが問題なのです。偶然に改善したかもしれない事象を自然食品で治したとかいって宣伝することに対してとんでも医療と私が叩いている理由です。

では標準医療が亡くなった時、緩和療法に入った時、本人がまだ戦いたいと小林麻央さんのように思ったらどうするのか。新薬の臨床試験が本来この逃げ道にあたります。全員が受けられるわけではないので、がん難民が存在する今の状況があるのですが。

緩和療法は何もしないというわけではありません。それでも医師の言葉によってがっかりした患者たちはとんでも医療に騙されてしまいます。低容量抗がん剤なんか正しい部分は正直ありますが(私も何人か治療しています)エビデンスがない医者のさじ加減に過ぎません。そうまず標準療法を1回はやりましょう。それから先はオーダーメイドです。自分の希望を貫いて構いません。ただ医療者に強制はできません。忙しい医療者にとんでもの金儲けの手伝いをさせないでください。


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積極的治療と緩和治療;現場のジレンマ 小林麻央さんの事例から

小林麻央さんが入院され、少し状態が安定したようです。(ひとつクリア!)輸血されたのですね。ひとまず安心と思っていたら、女性自身にこんな記事が出ていました。(小林麻央 驚きの変化も…再入院前日にあった病院はしご6時間

まあ仕方ないです。昨日の記事でもあったように代替医療を選ぶことを止められません。少なくとも今回どこの病院が入院させてくれたのかそして輸血までしてくれたのかわかりませんが、その病院はこの麻央さんの行動をしっかり把握されているのでしょう。つまり彼女は標準医療と代替医療両方の治療を受けているということです。酵素風呂なんてのもブログに出されてましたね。

それにしてもこの代替医療を行っている医院がこの標準医療を行っている病院に連絡して入院させてくれたのならまだ許せる行為です。そうでなければいつものとんでも医院です。放り出すので有名ですから。

ここで一つ書いておきます

標準医療である緩和治療専門の緩和病棟で入院してしまうと基本輸血は行わないところが多いです。それは保険点数の関係で輸血をすると包括医療(DPC)の点数では赤字になってしまいます。つまり病院は身銭を切って麻央さんに輸血をしなくてはいけないのです。それゆえ今回の入院は短期の一般病棟で取り扱われているでしょう。そうすれば病院は損をしなくて済みます。

標準医療における積極的治療と緩和治療の現場のジレンマが実はここにあります。血液疾患なんて輸血してれば元気な末期の方なんてザラにいます。そう末期でも2年近く仕事しながら生きた方もいます。なのに緩和ですねと輸血をしなくなったらあっという間にダメになります。昔の記事です

実際万人に当てはまるいい治療はそうはありません。だから本来病気、個人毎個別に対応してあげなければいけない。でも根拠のないものをやることは学問ではない。だから…

まだ完全な答えはありません。保険で賄うかどうかは別問題ですが、それでもあきらめていない人間とは最後まで医師は歩んでいくべきだと思っています。 そしてそうすることで何らかのエビデンスができてくるはずだと信じています。

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