2010年12月

急がなくてもいい病気・・・でもしっかり治療すべき病気(心療内科領域を中心に)

 以前のブログで述べましたが、すぐに行動しなければ明日の命がない病気とそうでない病気があります。そのため医療者は治療すべき優先順位を決めていきます。
 とはいえそうでない病気でも患者さんにとっては命を落とすよりつらいと苦痛をともない続けるものが多数存在します。外来にもよくいらっしゃいます。現在の医療でガイドラインが示されていて、治せる病気は簡単です。しかしはっきりとした治療法がなく、またその症状への対処法をおこなっても、改善と悪化を繰り返し、いい状態になるのに長時間かかってしまいます。そのときの医師の説明が不十分だと、そのことで医師を信用できなくなり、また別の診療所や民間療法に入っていく人が多いです。
 特に精神的にまいったため体の症状が出ている人、いわゆる心療内科領域の人は大変です。どの病院にいっても検査で異常なく、悪いところはありませんと言われた場合、患者さんはどうしようもない状況に陥ります。体に異常はないといわれても、患者さんにそのつらい症状はあるのです。精神を安定させる薬を出されていくらか安定をとりもどしても、原因が不明という不安感を持ち続けるためなんども悪化を繰り返します。薬が増え副作用の頻度も高くなってしまいます。そういう患者さんが増えている一番の理由は社会状況の過酷さ(生活、仕事、人間関係等)に人間の対応力が耐えきれないからですが、もうひとつのおおきな理由として医師がこの症状を病気とみなさない人が多いことも挙げられます。
 私はなるだけ時間をかけて患者さんと話し合い、この病状のすすみ具合、治癒していく過程、波の存在、あせらないこと、仕方がないこと、でも治ること、よくここまで我慢してがんばったねと同じ人間として対応するよう心懸けています。もちろん冷静な立場をとりながらおこなわないと患者さんの自立に悪影響がでてしまいますが、共感してあげないと先に進みません。しかし一人にかける診療時間が長すぎるため、予約時間を大幅に超えてしまい、後ろの患者さんに迷惑をかけてしまいます。5分話しても30分話してもかかる医療費は同じです。病院にとっては儲からないのです。先ほどのべた医師の対応が冷たい理由もここにあります。現状の医療のビジネスとしての矛盾点、患者さんに良い医療が見返りがないない点、この部分も現代の医療の問題なのです。
 私は患者さんに甘えさせていただいて少しおくれることを許して頂いています。申しわけありません。その待たせた分がんばっているつもりです。

鳥インフルエンザ

 冬本番を迎えインフルエンザ患者がちらほら出てきています。今年はワクチン接種の関係か昨年に比べ少ない感じをしています。しかし今後増加する可能性はあるため、成り行きを診ていきます。最近では、インフルエンザ治療薬も新しい2種類を加えて4種類出ています。進歩のすばらしさに感心しています。薬剤費は3000円から4000円ですが、3割負担なら900円から1200円ですみます。(薬の値段が異なります)やはり日本の医療は世界から比べると恵まれていますね。(70才以上の方は一割…300円から400円)
 鹿児島県出水市で、鶴の鳥インフルエンザ(強毒性)が話題になっています。一羽から検出したが、その後の対応が困難であるとマスコミが報じています。その前に起きた養鶏場での鳥インフルエンザでは、口蹄疫で懲りたのか、いや学習したためすばやい対応がとられました。検査を自前でおこない、診断の確定が出る前から動き出し、鳥を処分したことで拡散を見事に防ぎました。初動をうまくできた証拠です。今後もすばやい対応を期待します。  
 では今回の鶴は同じようにできないのでしょうか。まず飛んでいる鳥を捕まえることの難しさ、天然記念物の取り扱い、今後も他国から飛んでくること。以上を考えると養鶏場でおこなえたすばやい処置は不可能です。では現在とっている処置はどうでしょう。鶴の飛来地を観測し、ふんを採取して調べ、養鶏場を監視し、警戒する。これを鶴が帰るまでおこなう。これが今できる最善の方法でしょう。ウエストナイルウイルス感染でアメリカでも完全には防げなかった事象と同じです。国は人、金を今度こそつけて対応して下さい。お金がないからと手を抜けばまた口蹄疫の時と同じで、被害が拡がります。
 
新しい事態には、机上で検討した最善の方法を試しながらできうる最良の結果を求めていくことが必要です。ムダなお金と言うのは終わってから考えましょう。医療と同じですが、限界を知りながらも最善の処置をお願いします。

大阪 たこ焼き店

 大阪のたこ焼き店の立ち退きがニュースになりました。マスコミは店側、行政どちらが悪いと言った立場ではなく、市側のコメント、店側のコメントを淡々と流す形でした。
 一部のコメンテーターは20年間もやって大阪の名物にもなっているのだから店を擁護するかたもいましたし、20年間占拠していたのだから民事上もう問題ないと言う方もいます。法律上最高裁で決定したのですから論外ですが、店側がどうしてもあの場所でおこないたいなら地代を市に払えばいいのではと単純に考えてしまいます。また屋台の権利をもっているのですからその度に移動すればとも思ってしまいます。既得権を重視するのはわかりますが。
 また今日新聞に、校庭の芝生をクラブ活動のため家族がかってにはがしてしまったニュースが載っていました。これも大阪です。
 権利と自由および義務の考え方が地域、人によって異なるのは仕方ありません。でもゴネたら勝ちといった習慣は排除すべきなのではにのでしょうか。権力に屈したとさけぶ店主をみて違うんじゃないのと思いながら、酔って個人でたこ焼きやを攻撃する市の職員や、問題ないといって店を応援する野次馬をみると、地域によってかなり異なることを再確認しました。

病院をやめて半年・・・

選挙にでるため病院をやめて半年がたちます。交代の挨拶もまとまにできなかった患者さんのうち数人、また今の病院で診ている患者さんで数人がお亡くなりになりました。血液疾患の仕方なさなのですが、残念です。
 現在の医学はEBMといわれる全体への反応を根拠に治療、診断が行われています。そのためそれからはずれる症例は、あきらめるか、人生を保つために治療を手探りで進めていきます。マニュアルからはずれたときの裏技といったものでしょうか。今回旅立たれていった方々はその裏技を駆使してがんばっていた人達も含まれています。
 「この治療を行えば80%のひとが5年生きられます。」と話せば大部分の人は安心します。しかし残り20%に入る可能性は当然存在し、個人にとって、答えは0%か100%しかなく、80%生きるということはありえません。この数字が30%なら患者さんの心配はピークになります。そのため私は患者さんにいつも「心配して確率が上がるのならば、死ぬまで心配し続けて生きていましょう。しかし心配しても変わらないかむしろ確率を下げる可能性があることを考えるのならば、自分は必ず治ると信じて治療を受け、治ったと思って生きていきましょう。それのほうが楽しいですよ。うまくいかなくても次の手はあります。」
 いつか人間は死を迎えます。その時いい人生だったと言える満足を持ちながら迎えられる様、手助けできればと思っています。

ディバイスラグ

 ご無沙汰しています。すこし手が止まっていました。
 昨日NHKでディバイスラグ(医療機器承認遅延)の特集をおこなっていました。医学と工学の融合の必要性、米国との違い、日本における問題点が報告されていました。日本が世界に比べ劣った医療を行うのはけしからん、早く承認作業を進めろ(米国では30日以内にコメント)、PMDAの職員が素人だ、相談料が高いという日本における医療行政の怠慢さがどちらかというと中心に挙げられていました。
 この内容についておおむね同意です。しかし今の医療の専門性を考えるとPMDAの職員が素人のような質問をすることは仕方がないと思います。やはり私も一生懸命勉強していますがまだまだ専門分野以外(特に外科系)は自分でも弱いと思っています。20年間臨床をやってきた医師がこう言っているのですから、臨床経験の少ない人は自分の専門だけで手一杯でしょう。そして実際PMDAの判定する人間(医師も含めて)および予算は米国FDAの10分の1です。だから2倍ぐらいの遅れは仕方ないという現場の考えも出てきても仕方ないでしょう。審査料が高いと報道されましたが米国と比較されていません。医療費は米国に比べて低いですが、それでも日本医療は頑張っていると思います。良い点を述べずに悪い点だけ言ってもしかたありません。
 本当に最高の医療を受けたいのであれば、今現在お金を使えば受けれます(メディカルツーリングでタイなども一つの手です)。その差別をなくしたければやはり政治が動く必要があるでしょう。それにはお金がかかり、財源がないと言っている今の状況でどうすることが望ましいのか。今の医療のあるべき姿を見つめなおし、そこにしっかりと予算と人を投入することが必要なのです。(医療現場ですら足りないのですが......)そうしなければ竹やりや特攻隊で戦争に勝てと言っていることと同じです。
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