2013年02月

治療を受ける権利、受けない権利 そのあとは...

私が専門にしている血液疾患。

白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫といった血液腫瘍は症状がなくても治療しなければいつか悪くなり、命を落とします。それが年単位なのか、月単位なのか、週単位なのかは病気によって異なります。

血液内科医は、その病気の種類、患者さんの年齢や状態、ご本人と家族の希望を総合的に判断して治療するタイミングを決めていきます。そして、生命を守るためにその方に抗がん剤を使用します。

抗がん剤を使うという事は体に毒をいれるということなので、体がきつい、熱がある等のつらい症状があれば、毒という薬を入れることを患者さんは納得していただけます。

しかしあまり症状がなく、抗がん剤治療のイメージが悪いとか、医者の言う事を信じることができないとかで、抗がん剤治療を行いたくないという選択をする方が年に数人いらっしゃいます。

そういう方に一般的血液疾患のあり方や、治療に伴っておきる合併症、治癒に向かって行っていくための道すじや、それに伴う患者さんが必要な努力等を説明する等して、大部分の方には納得していただいてきました。(ちなみに説明時間は5分でも2時間でも患者さんが払う料金は同じ700円(3割210円、1割70円)です)

この20年以上の間、それでも今まで数人の方は抗がん剤治療を拒まれた方がいらっしゃいます。医者が常識と思っている正しい治療を受けることが、その人の価値観によればあたりまえのことではなかったのです。

様々な情報があふれており、抗がん剤治療は悪だとか思い込まれている方や、免疫治療や健康食品なんかを駆使すれば癌は治ると思われている方が増えてきています。民間療法といわれる類いのものもそうです。

間違った知識や洗脳で治療を受けないという誤った選択をされることは避けさせたいのですが、個人の自由意志である以上仕方がありません。私たちは患者さんをベッドにしばりつけて、治療はできませんから。

自分の意思で血液疾患の正しい治療を受ける機会を選ばなかった人達が、そのまま一貫して治療せずにお亡くなりになることはよくあります。

しかし後に状態が悪くなってまた病院に来院し、「治療して欲しい、治療を受けるのは権利だ」と言われるとふざけるなという感情が以前爆発したことがあります。

患者から診療を要求されれば、医師は診療を拒む事は医師法上できません。

私達の言う事を信じていただいて、入院の順番を待っていただいている患者さん達がたくさんいるのに。現在栃木の血液疾患の患者さんの入院待ち時間は3−4週間で、血液の治療をおこなう入院ベッドが足りずに困っているのに。

なのにそんな行動をとった方を優先しなければいけない(状態が悪くなっている事が多いので入院優先度があがります)ことは、何かおかしいのではと憤りが止まりませんでした。

最初から私たちを信じて一生懸命治療を受けていただいている患者さん達がいらっしゃるのに。それでも助けられない患者さん達ががいらっしゃるのに。そのとき患者さんの家族と同じように医師もつらさを感じているのに。

それでも医師はめげずに患者さんのために診療します。



抗インフル薬の備蓄更新に1億円超 大流行なく大量処分:無駄な方がいい

中日新聞記事です。抗インフル薬の備蓄更新に1億円超 大流行なく大量処分

新型インフルエンザが流行した際、パンデミック感染時に国民の生命をまもるため抗インフルエンザ薬が国の指導のもと地方自治体で備蓄されました。

この時に、国は地方自治体に感染時の対応を計画をしろ、専門家をつくれと、具体的指示はほとんど何もなく丸投げしてきました。というより彼らも知らなかったと思います。

当時危機管理としての地方都市感染制御の専門家なんて全国には存在せず、感染症医、疫学医はいわゆる学問として感染症管理を研究するだけでした。

実際に動かすための人の配置、法律の作成、行動計画の作成等、実地に則したアドバイスができる専門家は日本に少数しかいませんでした。(今は増えていますかね?)

私の自衛隊時代に米国で炭疽菌事案が起きた時、この危険性を認識し自衛隊は一つの組織をつくりあげました。現在も感染症事案においてシンクタンクとして、またもしものときの実動部隊として使われることが想定されています。

備蓄の際、ロシュのタミフルだけでいいのか、使用期限が来た時にそのまま廃棄でいいのか、事前に話し合われています。

地方自治体の病院に期限切れ前に払い出せば(無償、有償問わず)、有効活用できるのではというのも案として出ていましたが、管理の問題という官僚の理由でできなかったことを思い出します。 

当時は官僚が言ったらそうなんだろうと思っていました。もしかするとただ面倒な仕事はしたくない、ロシュに儲けさせてあげる必要があったとかの理由だったのかもしれませんが、あくまでも想像でしかすぎません。

ただこのお金は無駄ではないことを強調しておきます。それは原発の津波、地震対策や、火災対策の消火器と同じ事です。

それこそ自衛隊もそんなものです。ずっと無駄だと思われている事が国民にとって幸せです

ただ彼らは平和な時に一生懸命訓練を続けて、必要な時(有事)に活躍できるように備えています。

マスコミも上っ面だけでなく、リスクマネージメント、危機管理についてまた考えて欲しいです。

尊厳死問題;民主党にもいい人がいます

民主党 梅村 聡参議院議員が国会質問で尊厳死について質問しました。民主党梅村議員が麻生大臣へ尊厳死について質問

大阪大出身の医師で、非常に同意できる内容でした。私は
以前から注目していましたが、ネットでも民主党にはこんなにまとまな議員がいたんだと評価が高いです。ほんとうにいい議論でした。

麻生さんは前回の発言についての釈明を自分の経験談を交えながら答えてくれました。考えさせられる言葉でした。

自分の親族が病院を経営されているという医療関係者であることから、終末期医療がどんなものであるかをご存知ということで、自らの終末期に何をして欲しいか、何をして欲しくないのか遺言書も残されているそうです。

尊厳死問題は、日本において議論がタブーとされてきました。特に医療現場において、厚労省のガイドラインはありますし、最近救急医学会から新しいガイドラインも提示されましたが、官僚が答弁したように法的な根拠はないのが現状です。つまり、延命中止希望をかなえてあげると殺人罪になるかもしれないという恐怖が医師には存在します。

日本尊厳死協会が出しているリビングウイルの一文章例です。

尊厳死の宣言書(リビング・ウィル)

 私は、私の病気が不治であり、かつ死期が迫っている場合に備えて、私の家族、縁者ならびに私の治療に携わっている方々に次の要望を宣言致します。
 なお、この宣言書は、私の精神が健全な状態にあるときに書いたものです。
 したがって、私の精神が健全な状態にあるときに私自身が破棄するか、又は撤回する旨の文書を作成しない限り有効です。
1 私の病気が、現在の医学では不治の状態であり、既に死期が迫っていると診断された場合には、いたずらに死期を引き  延ばすための延命措置は一切お断り致します。
2 ただし、この場合、私の苦痛を和らげる措置は最大限にして下さい。そのため、たとえば、麻薬などの副作用で死期が  早まったとしても、一向に構いません。
3 私が、数ヶ月以上にわたって、いわゆる植物状態に陥ったときは、一切の生命維持措置を取り止めて下さい。
  以上、私の宣言による要望を忠実に果たして下さった方々に深く感謝申し上げるとともに、その方々が私の要望に従っ て下さった行為の一切の責任は私自身にあることを付記致します。
      平成○○年○○月○○日
                      平成○○年○○月○○日生
                   氏名    甲野 太郎    印
                   住所 名古屋市○区△△1丁目2番3号
 

(実は現在の医学では不治の状態」という部分が一部不明という問題があります。1年前にはだめだったが、今は大丈夫なんて事もあります。ただこれは今回の論とは少しはずれますのでここまでで)

ご本人の希望をかなえた終末期医療の環境を整備をすることは大事な事です。生命観、倫理観が多様化している現在、高齢化が進む日本において、一つの答えを出す事は難しいです。

患者さんや家族と本当にいい治療はどれなのか。いつも現場では悩んでいます。

延命して欲しい権利は法的に整備されているのに、延命を止める権利は法制化されていない。今の医療において改善すべき問題の一つです。

法整備をすることで、さらに医師は患者に深く正しい治療ができると信じています。今後とも国会で議論すべき内容です。

最後の総理の発言に期待します。

 

宿直は労働。志だけでは難しい。成長戦略として

少し前ですが最高裁で医師当直が対価を支払う必要がある労働と認定する判決がでました。「宿直扱い」違法、最高裁不受理で確定

厚労省の通達によれば、宿直とは巡視や非常時の連絡等、常態としてほとんど労働する必要がない業務と定められています。その上、夜間の十分な睡眠の確保が必要とされています。

しかし実体は夜間救急
外来患者の対応を行うため、ほとんど寝れない事も日常茶飯事で、そのまま翌日の手術や外来勤務に突入します。

結果36時間連続勤務となり、医療崩壊、勤務医の立ち去り型サボタージュの大きな原因となっていました。

この問題は、夜間救急、コンビニ受診、時間外勤務、医療リスク管理、労働人口など解決しなければいけない問題が山積みですが、ずっと放置されてきました。

以前地裁判決が出た際、当時の舛添大臣は梅村議員の質問に国会以下のような答弁をされています。

「(この当直労働問題を解決するにあたり)一人の人間(大臣)が、旧厚生省と旧労働省の仕事をやっている意義がまさにそこにある。ただ、“パンドラの箱”を開けようとした時に、“閉めろ”という、ものすごい圧力がある。しかし、この問題は国民のためを考えて、きちんとやりたいと思う。この議論を厚生労働委員会で続けていきたい

でも、最高裁判決が出る現在まで根本は解決されていません。(一部改善している事は否定しませんが)

抵抗はハンパなかったのでしょう。なにせ人件費が跳ね上がりますので。 


今回奈良県の2人の産婦人科医が、雇用主としての県を訴えた裁判は労働基準違反として確定しました。
 

2人のコメントです。

「我々の裁判の出発点は、金銭的な面よりも、過酷な医師の労働実態の改善を求めることに

あった。多くの病院は、医師に過重な負担を課すことで、大きな労働問題に発展することを

防いできたが、最高裁が不受理決定をし、大阪高裁判決を支持したことで、もはやごまかし

が効かなくなる」


今回の判決は日本の医療制度を根本的に変える可能性があります。宿直としてではなく、労働として医師の人数を増やして、看護師さんと同じように交代制をとらなければいけません。

その増やした人間に賃金を払わなければいけません。現状の制度のまま時間外の医師の賃金を病院単体に任す事は無理です。

医療費の値段を変えなければその費用を捻出する事は不可能でしょう。また根本的に勤務医師の人数も足りていません。

労働基準法を無視して、医療者の志に頼っていた現状を、成長戦略としてもっていくことが可能でしょうか。現在の自民党安倍政権に期待します。
  

中国レーダー問題:銃を向けられても黙って笑ってろ;自衛官に要求される理不尽さ

「中国軍にレーダーを照準されても、前回と同じように今回もオープンにしなければ良かったのではないか。これで日中首脳会談が延期される」

ウェークアップ!ぷらすのコメンテーターが小野寺大臣に言った質問です。

民主党時代にも同じようにレーダー照射があったかどうかは、微妙です。

日経の記事、朝日の記事の対応や、小野寺大臣の質問に対する答弁を聞いていると、「総理に報告する事象はなかった」と微妙ですが、軍事上の情報公開の問題もあり多分ずっとすっきりしないと思います。残念ですがそれが国を守る事にもなります。

今回の内閣の対応は、本当に今までにない外交として高く評価していたのですが、TVのコメンテーター(すいません。仕事のためどなたか認識できませんでした)とはいえ、「自衛隊がまんしろ」といわれたことが少しショックでした。

こういう方がまだいらっしゃるのだなと 。

レーダを当てられると言う事は、銃口を向けられたことと同じです。ボタンが押されれば、船やヘリは数秒で破壊されます。それでも相手はきっと打たないから我慢しろ。だまってろと要求する事がどれだけのことを意味するのか。

自衛隊はイラク派遣の際も、相手から攻撃されそうな状況になってもすぐに打ち返すことはできませんでした。(みのさんが最近TVで言ってくれています)

大砲の砲弾が落ちても、その打った大砲を攻撃することはすぐにはできなかったのです。 

私も、じっと我慢していた事を思いだします。

私は防衛省をやめていますので、このような事を書いていますが、
自衛官のみなさんは、口外しないように命令され、それが国防を担っていると従っています。 

総理、指揮官の命なら従いますが、コメンテーターに言われると同じ状況を経験してから言ってと言いたくなります。
Twitter プロフィール
記事検索
プロフィール

dannapapa

カテゴリ別アーカイブ
タグクラウド
QRコード
QRコード