2013年03月

救急医療への提言(3) 受け入れ不能個別分析

司法のなすべき事を書かせてもらった後、BLOGOSに一部の方から厳しいコメントをいただきました。

今の医療が悪いのは、医師が昔のように患者はついてこいというやりかたをしているからだ。

現代における社会を認識していない。にもかかわらず司法に許してもらおうなんてお花畑だ。

教育をまともにしていない医師達が問題で、規制緩和で解決できる。


コメントにどのような返事を書くのがいいのかと思慮していたところ、3月27日NHK NW9で訴訟を恐れて救急患者を断るという特集がなされました。

残念ながらTVで見れていないのですが、その番組の中で

「訴訟のリスクを感じて受け入れを断る場合がある」 と医師が言ったところ、

「患者の命と自
分の生活とどちらが大事ですか」とキャスターが聞いたそうです。

「どちらも大事です。自分を大事にしないと今みている患者さんや今後未来みなければいけない患者さんに迷惑がかかりますから。自分が断ってもどこかが引き取ってくれる事が前提ですが」と答えたかなと思います。

このNW9の内容に 

今の日本では、助けようと頑張っても、失敗すれば、感謝されるどころか、非難される風

潮がある」と言えばよかったのに
と他の医師の言葉をツイートしたところ、

伊藤隼也さん達から医師の横柄さと怒られました。(フジテレビとくダネでも3月28日伊藤隼也さんがまとめた埼玉救急の話が放映されていたとの事です。その番組でも医師達の不作為がメインで番組が作られていたそうです。)

その後このツイート連には、有名なNATROM先生も登場していたます。病院の受け入れ拒否に関わる会話

この中である医師が、医療者に甘えるなとツイートしています。誠意を尽くせば訴訟になんかあわないとも。

私がブログに書かせていただいた、受け入れ不能と言う言葉。これが必ずしも本当にそうなのか、そして今後どうすればいいのかということを、今回医療者の立場から書いていきます。

ただ本当に様々な要素が絡み合っていますので、複雑になってしまう事をお許しください。

まず医師の不作為が原因であると主張する方々の意見とそれに対する反論をまとめていきます。


a 専門でない事を理由に患者を受け入れない

 専門でない領域患者を受け入れて助けられないと、2次救急として医療レベル的には十分であっても罪に問われる。であるのならどこかにいるに違いない専門の誰かにみてもらえればと思ってしまう。(裁判判例あり)この考え方が前回述べさせていただきました萎縮医療です。

 医師も人間ですので、犯罪に問われたくないという感情は仕方がないとと思うのですが甘えでしょうか。また犯罪になるかもしれないことは強制されるべき事でしょうか。

 医師達は目の前に来た患者を全力で助けようとします。しかしベストな治療をおこなっても、必ずしも100%の成功は約束されていません。結果が思わしくなければと考えてしまうのでしょう。

 この最悪の状況を考えてしまうのは医師の常です。でなければそれは臨床に対して傲慢という言葉で表されると思っています。もちろんまわりに自分たち以上の医療レベルがない事がわかっていて引き取らないのは倫理的にはおかしいですけど。

 先程のちゃんとやれば訴訟なんて受けないといった医師は、きっと技術も高く、コミュニケーション能力も高い方なのだと思います。しかしコミュニケーション能力が高い医師はそんなに多くないんです。

 まして、正しい医療をおこなっていて訴えられたら戦えばいいともおっしゃっています。私もそう思っています。しかし、その先生が裁判に行っている間残された医師達の負荷は増えます。損をするのは誰になるのでしょう。
 だから前回正しい医療を行いさえすれば罪に問わない、無駄な裁判をおこさせないようにしていただきたいと述べたのです。

 善きサマリア人の法律ができればベストです。

 これができる間、一時的にですが、病院は保険を含めて医師達をサポートする必要もあるでしょう。安易に和解しない事も重要です。正しい事をしていれば医師に替わり、戦いをする事も必要です。

 では医師は今なにをすべきか。個別対応では救急隊としっかり情報を整理しながら、患者を評価することが大切です。また現状を把握し、周りの病院と連携を常に取り合い、地域救急体制ルールを作る事も重要です。

 その情報をもってそこで何を改善するかがみえてくると思います。

b ベッドがない
 ベッドがないのなら、ストレッチャーにでも受け入れて初期治療だけでもおこなうべきだったという意見があります。

 救急で患者を助けるためには初期治療が必要で、それは救急の場所だけでも何とかなります。しかしその後患者さんを収容して回復させなければいけません。そうしなければ退院させれません。

 収容先がない状態(ベッドがない)で引き受け、一瞬落ち着いてから別の病院におくるというのはかえって生命にとって危険である可能性が高くなります。

 またその場所に回復期のための人材、資材はおいていません。回復治療を救急処置室で行う事は効率上も、医師の運用上も馬鹿げています。結果次の患者さんをとることは絶対できなくなり、患者をひきとったという自己満足だけになります。

 救急のもともとのベッド数が少ないというのは問題です。でもそれは救急治療が終わって安定期に入っても患者を引き取ってくれる体制ができていないことが大きな原因となっています。

 退院できる状況になっても、家族が引き取らない、後送先の病院がないとなり、結果救急のベットが満床となるのです。いわゆるボトルネックです。

 家族のサポートが得やすい、救急が一番崩壊していない沖縄の中部病院の医師も、このうまくいかないベッド運用について話しています。核家族だらけの関東ではいわんやです。

 この問題の改善には、医療組織の改編が必須になります。そして一番大事な事は、救急患者をひきとっても赤字にならない、そしてその後安定期の患者さんを引き取ってくれる後送病床を地域に十分確保することが必要です。

 家族を含めたサポートも重要です。自分の家族だろと追い込んだら共倒れです。

 行政、病院組織、地域が一体とならなければできない話です。それこそ診療報酬点数の改訂、補助金等厚労省の力も必要になります。

 地域連携として救急を行わないまわりの病院を巻き込む事も必要です。

 地域でまとまらないと今以上のことはできません。


c 余裕があるにもかかわらず患者を受け入れていないに違いない。
 (救急の年間受入数をみるとそれがわかる。)

 埼玉に限ってみると、一部の病院は川越救急病院の上原先生が言うように明らかな無理をしていません。いや救急指定されていながらほとんど患者はとっていないところがあるようです。

 それどころか埼玉の県立病院は救急を全くやっていないともお話しされていました。

 全国でもひどいところだと、交通外傷救急や、医療パスに載る病気(心筋梗塞等)のように間違いなく病院が利益を得る事ができる救急のみ収容する病院が存在しています。

 ただ引き受けるたびに赤字になる事が多い一般の救急を、公的病院でない病院に採算を無視してでも受け入れろと強制することはできるのかという問題があります。

 公的病院でも、赤字を解消しろと議員達から指導が来るようになり、結果軋轢が生じています。NHKで放送された極北ラプソディをみた方は、あの院長と医師に対してどう感じたでしょう。お金のために患者の命は犠牲にされるべきななのかと。

 公共の福祉のため、赤字になる事を厭わず商売しろといったら、みなさんどういう対応をされますか。

 医師は最善の治療を行いたいと思っています。でも患者を助けるためにおこなった手技について、医療を知らない人間から「こんな事をやるから赤字になるのだ。反省しろ」と言われたら。だから私は医療をビジネスとして考えるのがキライなんです。(医師が経済を知らなくていいと言っているわけではありません)

 また医師の当直体制は労働上の問題が存在しています。残業と認められず、翌日も普通に働けなければいけない状況が一般の病院では当たり前の事となっています。

 結果医師に36時間連続勤務を強制させなければいけない現状が改善できていない事が医療安全の面でも問題なのです。(巷で言われるブラック企業の走りです)

 そう言う状況をみて若い先生は厳しい領域を専門にしようとは希望しません。教育はとても大事ですが、命を助けると言う崇高な仕事ながら、訴えられるかもしれない、給料も変わらない、患者からも感謝されないことがあるでは、きつい仕事を専門にしたいという人はそうはいません。

 結果そういう領域の医師の数は増えず、地域の救急が閉鎖し、残された救急はさらにきつくなり、患者の受け入れができなくなってきているのです。残された医師が倒れては本当に崩壊です。

 それでも一般の方がいうように医師の職業選択の自由を制限し、労働時間を強制させることをすべきですか。私はそれをみなさん自分たちに当てはめていただきたいのです。

 普通の人間である医師達は逃げていきます。それはみなさんの得になりますか。逃げる事を許さないと責めますか。責める事で、医師達はもどろうという気になりますか。

 ひとつだけを責めても何も解決しないという私の論は、人間は感情の生き物であるというこの思考過程でしゃべっています。

その他詳しくは書きませんが、細かい問題はたくさんあります。

d 病院内での医師達の連携
e    救急隊との連携
どちらも、コミュニケーションの問題があります。dは各病院での問題が実はあります。eは、IT化が行われてきています。佐賀県のように改善すればいいのですが。

f  終末期医療の考え方(麻生さんが提言した事です)
 本当に救急処置が必要な患者はどんな患者なのか。以前肺癌でホスピス病院に入院していた患者が外泊したとき、心肺停止になって私のもといた病院に救急搬送されたことがあります。          
 救急医10人掛かりで、人工呼吸器下で蘇生されて入院されました。その時も、家族があわてて救急車を呼んで大学病院に連れて行ってしまったそうで、救急の先生は蘇生させた後この人の病状に気付いたということでした。eともからみますがとても問題です。この人のためにまたベッドがなくなり、家族が払う医療費も跳ね上がります。

 また認知症の寝たきりで、胃ろうを増設されていたが、誤嚥性肺炎を併発させた患者さんもよく救急要請がきています。

 どのような患者に延命医療をおこなうのか、現在医師達はやっとガイドラインを作成してきています。宗教も含めて本当に難しい問題です。

総括
もう少しわかりやすくまとめたかったのですが、申し訳ありません。

このような問題を分析するにあたり、救急問題を含む医療崩壊を、規制緩和とか、教育の徹底いう単純にお題目だけを唱えればうまくいくような問題ではないと思っています。

医師達においても、現場で働いている医師達と、院長クラスでは危機の意識が異なります。昔の治療で患者さんから尊敬だけされていた時代の人達ですから、仕方ありません。

地方によっても全然異なります。東京ルールは、人口も設備もちがう地方では行えません。

また各専門領域でも問題はかなり異なります。生命に関与しない病気を扱う医師達は、生命に直結する医師達の気持ちをそう簡単に理解できません。だからといって君子危うきに近寄らずとすることも責められません。

開業医、勤務医でも全然違います。特に開業医の先生は、雇用している自分たちの仲間の生活も守ってあげなければいけません。自分が倒れたら、患者も困りますが、従業員の生活も困ってしまいます。

ただ医療は医療者しかできません。できればそれに専念させていただければありがたい。でも医療を知った人間でないと、いいシステムは構築できません。そして医療だけを知っていてもいいシステムは構築できません。

今の救急を含めた医療崩壊は、すべての分野に責任が存在します。医師、行政、患者、マスコミ、司法。そしてこの5つが何様でなく歩み寄ってお互い様を形成して欲しいのです。

お花畑かもしれませんが、この人間同士が協力し合わないと絶対に良くはなりません。そしてこれは医療に限った事ではないと思うのです。

★ 成熟した国家として、国民の医療に何を要求し何を供給するかというビジョン★
を形成し、それに基づいてシステムを作りましょう。そうすれば受け入れ不能は限りなく0に近づくはずです。

世界に比べお金もやすく、成績も最高の日本の医療。生命を守るためにもっと良くしていきましょう。

そのために、議論をしましょう。ただ相手を攻撃するのではなく、相手の価値観を尊重しながら。お互い様です。

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骨髄異形成症候群の治療;完全には治せないがいい状態を

今日は血液内科の病気の話をします。

骨髄異形成症候群という病名で、團十郎さんが白血病の治療後に発症した病気で、昔は前白血病と言われていましたが、今は細かく病気が分けられています。

特に治療せずそのまま様子をみていくだけでいい病型から、すぐに幹細胞移植をおこなう計画をたてるものと幅があります。骨髄異形成症候群(こつずいいけいせいしょうこうぐん)(2006年はすこし古いですけど) 

以前は幹細胞移植治療以外有効な治療法はなく、高齢者に多いため移植はなかなかできず、抗がん剤の効果は少なく輸血を含めた支持療法という補充を主体とした治療しかできませんでした。

 2011年3月に
アザシチジン(商品名ビダーザ)という薬がMDSの高リスク群(IPSS でInt-2、High:つまり白血病になりやすいタイプ)の治療薬として認可されました。(日本では特にMDSの病型に制限ありません)

以前TBSのテレビでも紹介されていましたが(「最新遺伝子ミステリー 人間とは何だ!?」でがん抑制遺伝子のサビを落とす新薬として放送)、MDS症例の生存期間を延ばす唯一の薬として世界で使われています。

テレビでも紹介された生存曲線を提示します。(図が表示されなくなっていましたので入れ替えました。日本新薬HPより。もし見れなかったら下のリンクを開いてください)
国内初の骨髄異形成症候群(MDS)治療剤「ビダーザ®」


縦は生存率、つまり何%の人が治療開始後生存しているかを表しています。 

通常治療、つまり一部の抗がん剤や輸血等の支持療法だけでは15ヶ月で半分の人が命を落としますが、
アザシチジンを投与して支持療法を行うと24.5ヶ月と約9.5ヶ月生存する期間が伸びるというデータになります。

通常生存曲線が横軸と平行になると病気の治癒を表しますが、
アザシチジンを使用しても平行(フラット)にはなりません。つまり病状を安定させますが治す治療ではないのです。

にもかかわらず、治療費は月70万円(3割21万、1割7万)と様々な通院費を合わせると、月100万近くかかります。患者さんに説明する際、なかなか納得していただくのが難しい薬です。(高額療養費制度で月4万円ぐらいで払いはすみますが) 

治療をはじめると、一生月に1回5−7日間点滴を続けます。でもいつか悪くなります。

この治療はMDS患者にとって現在必須の治療です。そして病態を安定させるため使用する患者さんはどんどん増えていきます。結果使う医療費はあがります。

最初治せない治療にこの値段はと感じていましたが、今安定している患者さんをみると、他の癌の高い薬に比べればと自分を納得させています。

10年前の血液臨床とは変わってきています。治るのかそうでないのかという白、黒だけの治療ではなくなってきています。

今MDSは新たな治療薬開発がどんどん行われている領域です。いつか治せる薬が出てくればと思いますが(2016年3月現在まだありません)、もう少し安くなりませんかね。

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PS
みなさんからたくさん質問をいただいています。ただコメントでは話しにくいことや、情報不足で正しい対応は難しいことをご理解ください。

一番大事なことは主治医の先生にしっかりと話を聞いて、病気を勉強しましょう。私は個別に対応させていただいていますが、本当に頼りになるのは主治医です。そして主治医に疑問を持ったら しっかりした情報をもたせてもらっての
セカンドオピニオンもいい手段です。それでもダメならネットの医師に質問してください。

ネット上でセカンドオピニオンを行っています。

ただしその際のルールを決めています。下のリンクのブログ記事を読んで、内容を確認してください。宜しくお願いします。
セカンドオピニオン ルールを決めて 被災地へのふるさと納税お願いします 

救急医療への提言(2):司法のなすべき事 萎縮医療をなくすために

★ 成熟した国家として、国民の医療に何を要求し何を供給するかというビジョン★
を導き出すために必要な分析を行っていきます。

本当は、前回あげた(救急医療への提言(1):マグネットホスピタルから4年半
1 医療関係者がなすべき事

2 地域(会社、住民、患者、家族)がなすべき事

3 行政(地方自治体および政府)がなすべき事

4 メディアがなすべき事

5 司法がなすべき事

と順番にやっていくべきですが、説明のしやすさから5の司法を先に説明します。

5 司法がなすべき事

司法の影響、訴訟の危険を恐れるあまり、医療側がおこなう萎縮医療(防衛医療)というものが存在します。

このきっかけになったのは福島大野病院事件(大野病院事件)で、医療崩壊を引き起こした有名な事件です。

前置胎盤のこの患者さんは、本来母体と子供の安全のためには子宮摘出をおこなうことが望ましかったにもかかわらず、患者さんの希望(もう一人子供を生みたい)を優先して、助けるためにギリギリの治療をおこないました。そうしたところ予期せぬ疾患(癒着胎盤で大量出血)が存在し患者さんが不幸にも亡くなった事件です。

当時の医療では防ぎようのないことであったにもかかわらず、医師のミスとしてとらえられ、家族からは土下座の強要を含めて責められました。医師は家族の感情を考え、この土下座に応じています。

そうすると正しい医療であったにもかかわらず業務上過失致死という刑事事件として起訴されてしまいました。

診療中の病院に逃亡の危険性がないにもかかわらず警察が来て逮捕したという、本当に何かがくずれてしまった事件でした。

2年の裁判の後地裁で無罪判決がなされ、現在訴えられた先生は産婦人科臨床にもどっています。しかし手錠をかけられて逮捕された光景は、日本の医療者達を萎縮の道へ進ませ、それは現在も続いています。(マスコミの影響はとても強いものでした)

患者を助けるためには危険な治療しか存在しない時に、結果助けられなかったら訴えられる、いや逮捕されるかもしれない。

そこから無理をしない、つまり助けるためのチャレンジを行わないという萎縮医療が広がりました。

専門でないためという救急車断りもこの萎縮医療の一つです。

医療以外では銀行の貸しはがしなどもこの一つでしょう。過剰なまでの自己防衛という言葉でくくられるかもしれません。
 
現在臨床の場で患者さんが書かされている同意書はこの時期からはじまっています。ある意味味気ない契約書です。

医療安全という学問が流行りはじめたのもこの時からです。結果患者を診る事以外の医師の仕事は増えました。学校の教師の仕事量も共通の流れかもしれません。

現在も医療訴訟についてマスコミがよく報道しています。メディア側の要素に関係しますが、医療者側が何か悪い事を行った、医療のミスがあったに違いないという立ち位置での報道を行います。

結果司法も引っ張られ、現実的に不可能な医療を行わなければ責任(賠償)を問うと言う判決を確定させます。

救急を含めて医師が危険な分野から立ち去ります。それが現在です。

医療は100%の成功を保証できません。

外科系には合併症というもの、つまり手術を行う事で必ずうまくいかない事が出現することが教科書に書かれています。それが一般の人には理解できにくいと思うのですが、全ての手術で合併症を0にすることは残念ですができないのです。

また内科系の薬の副作用というものもある割合必ず存在します。特に抗がん剤等は70%以上出現する副作用なんてものもあります。それがあっても生命を守ると言う主作用を優先し薬を使うのです。

この治療行為に伴う結果(合併症、副作用)を医療ミスと言われてしまうと、教科書に載っている事でも犯罪に問われるという疑心暗鬼に医療者側がなってしまう事はある意味仕方がありません。

司法のなすべき事は、とても簡単な事です。この地裁の判決で行われた正しい思考過程を実施し続けて欲しいのです。刑事だけではなく民事においてもです。(マスコミの正しい報道も必要です)

医療において当たり前のことを行った時、教科書にのっとった医療行為をおこなった時、結果の善し悪しにかかわらず罪には問わないこと、このことを判例に反映し続けていただきたいのです。 

最近、医療だけでなくこれは?という判決もニュースに出ています。

床にこぼしたアイスクリームで滑った女性が、すぐにかたずけなかった店が悪いと訴えた裁判において、店への賠償を認めた例。

公園で転倒したのは、ベンチに背もたれをつけなかった市が悪いとか、自己責任を無視した判決が出ています。

法律を運用する際、 一般常識とかけ離れたことが多くなっては仕方ありません。

訴えたもの勝ち、ごねた方が得という風潮が現状を作り上げています。医療崩壊は日本社会の崩壊の縮図なのです。
 

大塚さん 白血病再発 残念です

本日大塚さんの白血病が再発したという情報が流れています。
(すいません記事が削除されました)

定期検診で、白血病の再発が確認されたそうです。 残念ながら血液の一般臨床ではよくあることです。

白血病治療後のフォローは定期的に外来を受診していただき、予約された外来で診察前に血液検査を行い、外来で結果を確認するという流れです。

その血液検査で再発を疑い、骨髄検査などで確定診断をおこなったということでしょう。

ここからは、大塚さんの病気に合わせての個別の治療となります。教科書だけではなくひとつ上乗せされた知識で計画していきますが、おそらく移植治療が必要になるでしょう。

白血病の患者さんにとって希望の星となるよう、御自身も仕事復帰の予定でしたので非常に残念です。

また再度治療を受けてもどってきていただけることを期待し、応援します。

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追加記事書きました。
大塚さん 寛解維持してテレビ復帰 おめでとうございます!急性リンパ性白血病の流れ
 

救急医療への提言(1):マグネットホスピタルから4年半

ブログの更新がおそくなっている事をお許しください。

大学の血液内科医が救急医療への提言なんておこがましいですが、今まで勉強してきた事を含めてすこし書いてみたいと思います。長くなると思いますので分割します。

マグネットホスピタルという地域医療への提言について書かれた書物(東北大 伊藤恒敏先生編著)があります。

2008年8月に出版された名著です。

本文にも書かれていますが、様々な問題(既得権益、不作為、医師不足、財政、民意等)が存在し、残念ながらこの提言の後4年半、行政は特に大きな行動を全国的にはおこしていません。
(宮城はそれでも少し動いているようですが)

マスコミが取り上げたところで行政は動かないという一つの証拠です。

その本の中に、4年後今でも通用する提言(つまりなされていないということ)があります。

一部改変して列挙します。

これからの医療を支えるためには

1 医療関係者がなすべき事

2 地域(会社、住民、患者、家族)がなすべき事

3 行政(地方自治体および政府)がなすべき事

4 メディアがなすべき事

5 司法がなすべき事

と5つ分野がなすべき事をしっかりおこなう必要があるということです。

そしてこの5つは全て互いに影響しあいます。

だから個別に考えるのではなく、この5つを同時に解決していかなければいけないのです。

そうしなければ今回のような救急医療問題、地域医療問題はいつまでたっても解決されません。

ひとつだけを責めても何も解決しないという私の意見はこの論でしゃべっています。

そして一番大事な事は、この5つの行動を決定するのために

★ 成熟した国家として、国民の医療に何を要求し何を供給するかというビジョン★

を国が提示することが絶対に必要と思っています。(これは東北復興問題でも共通します)

お金、人、時間を総合的に考えてビジョンをつくるのか、あるべき理想の姿からそのビジョンを改変していくのかどちらでも結構です。

もちろん時代に応じて変化していくものですが、人口構成、地域差を含めてどんどん修正し、そしてそれを実行するために手段を講じなければいけません。

そうでなければ、みんなが好き勝手な事を言ってしまい、基準がないため現在のように現場が混乱しつづけます。

だってみんなそれぞれ自分達の基準があり、その基準を守っていると信じているため、自分は悪くなく相手が悪いと思っているのですから。

行政が何もしないのは、医師会が言う事を聞かないから。

病院が無理して患者をとらないのは、安全域をはずして患者を受け入れ、その患者がおかしくなったら家族から訴えられるかもしれないから。

病気が重くない患者が救急をコンビニ受診するのは、食べていくために会社が休めず、そして待ちたくないから。

マスコミが医者達は拒否とかたらい回しをしていると言っている。だから今の救急医療がおかしいのは医者だけが悪いに違いない。

まとめる事が難しい例として、ついこの間、この著者東北大伊藤恒敏先生の地元宮城の震災後の医療圏の改変に関するニュースを提示します。復興へ、”巨大化”する宮城の医療圏ー賛否両論、医師不足の懸念も

この宮城の小さな地域においても救急体制が必ずしもうまくはいっていないことが、この記事からもわかります。

そして地域単独医療機関が一生懸命独自の方法をとろうとしても、他グループとの調整がうまくいかなければ現実の行動がとりにくいことも表しています。

その中の一つの施策、石巻赤十字病院の敷地の中に、市の仮設救急センターの設置なんかある意味斬新です。

赤十字病院でトリアージをおこなって、その患者さんを組織として異なる施設でみてもらうというのですから今までではあり得ない発想です。
(個人的には、お金を市が出して、医師や看護師を赤十字病院に出し、場所を借りるほうが仮設よりコストも安くいいような気がしますが)

一つの連携の例を示します。
赤十字病院のように、一生懸命やっている最後の砦に対して、最初から患者数が集まってしまうと、その病院の能力を越えてしまうことが生じてしまいます。

結果医療従事者の体力が奪われていき、地域の医療が崩れます。

これを防ぐために、地方自治体が住民に不要な受診を控えていただくよう広報をします。

また交通の便を良くするために道路を作り、アクセスを改善させます。

ここに地域、メディア、司法も本来参加することでもっと良くなっていくのですが。

一つだけではだめなんです。病院だけががんばったって、つぶれていきます。

今日はここまでで中断します。次回以降各論が書ければと思いますが、不定期になる事をお許しください。

 
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