2015年09月

患者さんには優しく。しかしただの酔っぱらいは...医療と社会的対応

面白い記事です。青森のむつ総合病院で起きた事件。地方紙に載っていました。(一晩で3度目の救急外来患者を医師が殴る

東京都の8割の広さ、人口約10万人の2次救急病院として430床を持ち、救急車は毎日6台!救急外来30人/日!この医療過疎地域の医療を一手に引き受けている病院のようです。

医師が患者を殴る!本当マスコミが飛びつきそうな内容です。でもその中身はとても考えさせられるいい記事の書き方になっています。本当医療の現場こんな感じです。

結論は事務局長が言っている
「いかなる場合でも暴力はあってはならず、大変申し訳ない」
は正しいです。

でもねその後のこの部分
>再発防止に向け、職員らの指導を徹底する考えを示した。

もしこれが医療者だけに対する策なら、この病院の医師、看護師達泣きますよ。それこそ立ち去るかも。

この患者が救急車で病院に運ばれたのが今年に入って18回目で、過去には大声を出すなどしていたことなどの経緯から、腹を立てたと見ている。

今回の3回も含めて、お酒に酔って何度も病院へ来る患者。アルコール中毒の可能性もありそうです。また何度も症状がたいしたことがないのに救急車を使って病院に来ることに、医療費も免除されている可能性が高いでしょう。

正直言いますがこういう患者さんがくると腹が立ちます。それを杓子定規に患者さんだからやさしく対応だけではだめです。まして医師だけにその対応を投げっぱなしでは。

それこそ社会的に問題であれば、医療ではなく事務方の仕事になります。2回目に来た時に医療的には問題ないのになぜ何回も病院にくるのか。いったいどうしたいのか。そしてアルコールが醒めて病院に来た際、殴ったことを医師に謝らせたのであれば、患者に救急車の不適当使用、救急病院の不適正使用をもう2度としないように指導されたのでしょうか。

私は不定期に受診し以前痛み止めの薬をくれと騒ぎ立てる患者に対し、(数回診察後)「今後あなたの要求はいっさい受けません。 ご不満がありましたら事務に相談してください」と伝えたことがあります。社会的に事務がいい対応をしてくれたおかげで、薬物依存症も改善し今その患者は私のことを名医と呼んでくれていますw(外来の前でこの医者はとんでもないヤブ医者だと吠えていたんですが)

病院は患者だけでなく医療者も守らなければいけない時代です。そうしないと本当に医療は崩壊してしまいます。

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がん治療の選択 全ての情報を知った上での個人の価値観

北斗さんの乳がん検診のことを書いた後、川島なお美さんの訃報が入ってきました。あの激やせ報道がされたとき、ほとんどの医師は今井さんと同じ悪液質というがん末期の症状であることは気付いていたでしょう。(がんと正しく戦う 今井さんと小西さんの事例より)ご冥福をお祈りします。

最近も書きましたが(がんになったら とりあえずやることは最善といわれている治療をおこなうことです)、がんになったときどうすればいいのか、彼女を例に現状と未来について書いてみたいと思います。

川島さんは2014年8月検診で肝臓の腫瘍を指摘され、最初の医師の説明に納得されずセカンドオピニオンを含めて検討され、腹腔鏡手術を2015年1月になされました。(真実)山田邦子さんの話によると、このとき既に余命1年と宣言された(多分最初の医師?)とお話しされています。

この医師を知りませんし彼女のブログからの情報しかありませんが、この医師の思考過程を想像してみます。

「画像上明らかにがん。すぐに手術が望ましい。でも仕事やおなかに傷を付けたくないと。ではすこしでも命を長らえさせるために抗がん剤で進展を遅らせたい。命を守るためにはそれが最善」

こんなところでしょうか。残念ながら北斗さんの主治医や川島さんの手術を担当した医師と違い彼女を納得させられなかったのでしょう。自分を説得できなかった。説明が下手だった。それ故とんでもない医師と評価を受けたのだと思います。

肝内胆管がん5年生存率は50%。手術後この芸能界の荒波で生きてきた私は、必ずこの勝負に勝つということも話されていたそうです。彼女のブログにはビタミンC大量療法など民間療法の記載もあります。体質改善を行い、必ずがんに勝つと。この彼女のポジティブな考え方によって彼女の免疫は他のがん患者に比べてきっと活性化されていたでしょう。

前回テレビに出ていた川島さんの発言を思い出します。(NHKスペシャル!シリーズ日本新生 日本の医療は守れるか? ~"2025年問題"の衝撃~ いい番組でした。NHKさんこれからも頑張ってください!)ただ結果は残念なものでした。たらればはよくありませんが、考えさせられます。

医療の現場では、命より大事なものはないと信じています。そして命を守るための医療は簡単なものではありません。だから患者さんと医療者は共通の目標を持たなければなりません。きつくても一緒に頑張れる共通の目標を持ち、そして病気に立ち向かっていくと。

それが手術、抗がん剤、放射線、免疫治療(最近のPD-1などです)をおこなう上で大事なことです。そしてその治療成績はまだまだ満足いくものではありませんが、10年前、20年前に比べて明らかに改善し続けています。 だから現在の治療が先延ばしにすぎなくても、未来にさらにいい治療ができる可能性があるため、今の最善の治療を受け少しでも命をのばそうと言っています。

では彼女はこのような治療を受けるべきだったのでしょうか。血液腫瘍と違い、肝内胆管癌の抗がん剤治療は治すのではなく安定させるというものです。でも最新の手術+抗がん剤治療を受けることで、2年生存率が50%程度期待できているようです。その治療の間仕事を休み、髪の毛は抜け、副作用にすこし悩まされるのであれば、余命が半分の1年になってもぎりぎりまで仕事を続けるという今回の治療選択は妥当なのかもしれません。

医療の不確実性、つまり100%は望めないということから考えると、全ての情報を開示して、最終的には患者さんの価値観で治療を選択する。それが今の医療における正解になります。そして結果が良くても悪くても医療者、患者共に受け入れることが現在のがん治療における妥協点だと思っています。

そして一番大事なのは、治療が進歩し続けている今だからこそ未来へ向かう道は決して閉ざされていないと信じて診療しています。 

命と言う大事な決心をするための情報だからこそ、前回の記事(検診とは 北斗さんの事例から テレビちゃんとしよう)でテレビを含むマスコミにちゃんと広報しようと書かせていただきました。

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検診とは 北斗さんの事例から テレビちゃんとしよう

あの北斗晶さんの乳がんの宣言がニュースになっています。(【またね】と言わせて下さい。

とても興味深かったのは乳がん検診後半年で判明したという内容。
考えてみたいと思います。

乳がん検診は40歳以上の女性で毎年おこなわれています。とても詳しくわかりやすい内容がこちらの記事に出ています。乳がん検診、若い女性が受けた場合に不利益も 乳がんの最適治療(1)

普通は検診で早期にみつかりますが、今回の様に増殖スピードが早い乳がんだと検診で検出できません。それこそ増殖スピードの速い悪性リンパ腫や白血病を検診で検出できるかというと、1月で1cmが10cmになることもざらなので無理です。

医療者は先程の記事を含めて検診の限界がわかっていますが、一般の人は理解できにくいと思います。

このニュース、各テレビで報道されています。

おおたわさんをはじめとする日テレスッキリコメンテーターの発言は医学的にとても良かったです。
「検査で無事でも、100%ゼロではないと思ってないといけない」
「では年に2回なら」「それはきりがない。乳がんは唯一、自分で見つける事が可能ながんなんです」(北斗晶「乳がん手術」で力説 「女性のみなさん」に訴えたコト

それに比べてテレ朝モーニングバード(北斗晶が乳がんで右乳房の全摘出手術 恐怖とショックに「心がついて行けない」
「「驚くのは毎年、検診を受けていたのに全摘出まで進んでいた。こういうことってあるんですか?」と強い疑問を口にした」

全くすぐ医療ミスに持って行きたがる。先生がしっかり答えてくれたからいいけど、見逃されることは多々あると医学的に当然なことを知らないでよくコメントできるね。

またツイッターなんかをみると、乳がんは遺伝がほとんどとか、白米、砂糖を食べたせいとか医師でもとんでもないことをテレビで言ってたとのこと。そんなとんでもなことを言う医師を出すなよ。

北斗さんの主治医の言葉が救いです。
『医師の「胸の事より今は5年先、10年先、生きることを考えてみましょう」』

乳がんちゃんと治療すれば5年、10年が期待できる疾患に変りました。検診を受け、自分で診断し早期発見が大事ですが、その後もしっかり戦えば結果はついてきます。

北斗さんがまた元気にガハハと登場するのを楽しみに待ちたいと思います。

がんサバイバーとしてまた芸能界復帰し、みんなを元気づけてください。

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がんになったら とりあえずやることは最善といわれている治療をおこなうことです

前回の記事(若年者がん対策 満足できる施策とは)、BLOGOSで興味深いコメントいただきました。そこに引用されていた記事です。(今井雅之氏のケースから「がんのリスクマネジメント」を考える 金森徹也さん

がんが食事で80%予防できるというコメント。彼の記事を読ませてもらう限り、信憑性も高く、資料もしっかりしており、ひとつの仮説として十分立案できるものです。その記事に基づく保険の選び方も興味深いものです。ただ80%という数字はやや盛っていますでしょうか。

全てが予防できないと作者も言っているように、例外は必ず存在します。実際食事でがんが80%防げるというのなら、食事をともにする1家族において1人だけ個別に発生するがんの説明ができません。それこそ同じ食事をしている全寮制の学校、会社の若年者にがんが連鎖的に発生することはありません。そして工場の溶媒での胆管癌は食事で発生したのではありません(職業性胆管癌

また高齢化社会における様々な解析により、高齢になると言うことで遺伝子異常が生じることが証明されていますが、それは必ずしもがんと同一ではありません。がんにはなりやすくなっていますががんの発生は生じていないのです。別の言葉でいうと、遺伝子の異常はがんの必要条件ですが、遺伝子に異常がおきた途端にがんになるわけではない、つまり十分条件ではありません。そして以前は血管病変(脳梗塞、心筋梗塞)で命を落としていた方々が、治療の進歩により命を延ばすことが可能になり、その結果死をもたらすのはがんしかなくなったというのも避けれない事実なのです。(がんと遺伝子 加齢はある程度許容しなければ

若年者のがん対策、完全に予防できるのであれば、たぶんすばらしいことですが、まだまだ抜けてくるリーキーな症例は出続けるでしょう。それでも半分近くは予防できそうだと提唱されています。(日本人のためのがん予防法 現状において推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法)、(科学的根拠に基づくがん予防

ただ予防をしててもできた人に我々はどうするか。そのがんに一番効果があると予想されている治療をおこない(ガイドライン等)、効果がなかった方にまた一番効果が予想される治療を続けていき(サルベージ治療)、一番確率のいい治療を提案し続けることが医師の役割になります。

ただ正しいといわれる治療をして寛解状態になり、以前治癒と考えられていた5年寛解が経った後に、10年後、20年後に再発してくる患者さんも最近経験してきています。この再発には高齢だけでなく、社会のストレス変化による免疫の低下等も影響しているのでしょうか。医学だけをサポートしても社会をいい状態にしなければという難しい時代になってきています。

そのなかで1%しか効果が予想されていない治療でも、それにある人がうまく当たると本人にとっては100%になり、結果として1%の治療を推奨するとんでも治療が横行します。ただ次ぎに当たるのは残念ですが1%です。

抗がん剤治療。放射線治療、免疫治療、健康食品、民間療法。いまだどれも100%の効果は保証できません。それ故医師がおこなうのは最終的には個別の対応、最善と言われている治療法の提示しかできないのです。
 
今回書いた医学的な対応と、それをサポートする社会的対応。謙虚にならなければ進歩はありません。 そこにはお金も人も効率よくいれていかないといけないのです。

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若年者がん対策 満足できる施策とは

がんで若い方がおなくなりになったことが記事になっていました。(黒木奈々さん死去 32歳の若さで、フリーアナウンサー 胃がん闘病中)彼女の闘病記です。(31歳で胃がん告知 NHK女性キャスター黒木奈々初告白)ご冥福をお祈りします。

すこし考えてみたいと思います。(久々の医療w)

以前乳がん経験者である元日本テレビ報道記者鈴木美穂さんが、パラリンピック佐藤選手を番組(がんになって得られたもの)で取り上げられているのみて、がんサバイバーでもありとてもいい取材内容でしたとツイートしたことがあります。若年性がん患者者に対してしっかり取り組まれている方です。(「がんって、不幸ですか?」日テレ報道記者・鈴木美穂氏が語った乳がん闘病から7年間の記録

この方の記事をみてもわかることですが、がんにかかると、病気の治療だけではなく、心のケア、社会復帰など本当に1人では到底完結できそうにないハードルが次から次に控えています。

壮年者、高齢者もそうですが、それ以上に若年者の悪性新生物ほど対応の難しいものはありません。人生の経験、 本人の感情、社会制度の不備、家族の負担。共通のものもあれば特異的なものもあり、教科書のようなものが一応ありそうなのですが、社会的なことも含めて結局個別の対応が必用です。

医療の不確実性から医療対応に100%の答えはありません。そして社会対応はさらに多様性が存在します。そのなかで、同じ経験を共有する患者会のようなものは、本人達の情報不足に伴う不安をやわらげてくれますし、社会復帰の道すじもいくらか提示してくれます。家族がどんなに頑張っていてもできない部分、経験者の言葉はとても重要です。

最近になって、医療者側もメンタルケアの部分は進歩してきました。しかし、実数の多い高齢者、壮年者対策がメインで、介護保険でのサポートなんて末期(余命六ヶ月)になるまで若年者はできません。そして忙しすぎるといつも書いているように、医師のサポートは多分少ないと感じられる方が多いと思います。

医療者、友人、家族の協力が必用です。そのなかで政治ができることは何か。そのジレンマに悩まされたことが私が5年前選挙に出た一番の理由です。そして現場に復帰した今もあがき続けています。

医療費の問題、仕事の問題。病気を治す前に家族を養わなきゃ。命よりも仕事。外来で毎日繰りかえされる場面です。

役所にいって相談してみよう。病院のケースワーカーと話してみよう。高額療養費のシミュレーションをしてみよう。そして患者さんの病気に向き合う時間はいくらあっても足りません。

まとめて総合的におこなうことが一番なのです。医学的な総合診療医を養成することも大事ですが、このような行政的なことをまとめてできるホテルのコンシェルジェのような人間をつくることが、今私が考えている施策です。 自治体、病院の協力体制等、生活保護問題も含めて共通するものでしょう。

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