2015年10月

認知症患者の免許問題 何か対策しないと悪くなるだけ

宮崎での認知症患者の事故について、問題点を列挙しながら分析してみます。

1 高齢化社会
様々な医療対策は行われていますが、認知症予防という結果は約束されていません。人間は必ず老いていくのですから、今後画期的な治療、予防法が見つからない限り、日本の高齢化が進む以上認知症の患者は間違いなく増加していきます。そして認知症患者が運転する限り、高速道路逆走、ブレーキアクセル踏み間違いを含め、自動車事故は増え続けていきます。

2 認知症診断の難しさ
ではてんかんと同じように免許を禁止すればと思われるでしょうが、認知症、実は症状に幅があり、診断が結構難しいとされています。

進行した認知症であれば、運転もできない程度まで病状が進んでいますので迷いようがありません。しかしまだらの時期があります。それこそ家族の前ではおかしいが、医師の前では正常に見えてしまうことが多々あります。

理詰めで強制しようにも、認知症は何しろ理屈を理解できません。そのため、認知症だから免許停止しますなんて医師が診断し強制することが実務上かなり難しいことになります。(怒り出す!)

ちなみに免許に制限がかけられるてんかんでは、脳波などの客観的診断ができますし、本人もちゃんと理解できますからなんとか強制できるのです。

3 地方での交通手段としての車の意義
そして問題なのが、東京と違い今回の宮崎を含めて、車は移動手段として地方で生活していく上でなくてはならないものです。数分おきにくる電車、バスなどは地方では存在しません。タクシーなどを利用すればと言われても、高齢者たちにはお金がありません。いや老後のことが心配で使いたがりません。それゆえ理解力が少し残っている初期の認知症患者はどうしても免許を手放したがりません。そしてそういう初期の患者が事故を起こします。

4 免許返納の自主性 法律としての強制
各警察では、認知症を含む各疾患(精神疾患、不整脈、低血糖、睡眠障害、脳卒中等)に対し免許再交付を禁止しています。しかしてんかんの時も問題になりましたが、あくまで患者の自己申請が前提になります。

現在の取り決めでは、75歳以上の高齢者で事故を起こした時、医師が診断して認知症と診断されたら免許を返納するよう指導されますが、個人情報、人権も含めてとてもむづかしい問題です。法律での強い強制力がない限り現実的には無理でしょう。

具体的対策
事故をなくすためには、初期の認知症の時、いやそれが不公平というのなら、ある年齢を超えたら(80以上?)自動車免許は返納することを義務付ける法律を作るべきでしょう。

更新ごとの実務試験という手もありますが、今の免許更新より手間、人手がかかることを考えると現実的にはどうでしょうか(そうそう医師免許更新制度もありですね)

でもそんなことを公約にしたら選挙で票が取れないと政治家は考えてしまうでしょうか。だからこそタクシー、バス、電車の補助などをつけることをもっと積極的に広報することが必要でしょう。

それこそ年間の自動車税とガソリン代と同等の代金を払い込むことによって地域での公共交通の無料化という施策なんかどうでしょうかね。補助の額はかなり減らせると思うのですが。

どちらにしても何か動かないと、悪化するのみです。

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キラキラネームの子を持つ親はDQN? 小児科臨床論文より 医学論文の有意差は…

ツイッターで話題になっている論文です。

IMG_145730歳前後の救命救急(ER)スタッフ27人にアンケートを取り、漢字が読めない(一致しない)+この名前はキラキラネームと思うという人間の割合が50%以上の時キラキラネームと定義。(104人の名前の読み方を想像するという結構大変なアンケート!)

ある期間(12月の1週間)日本赤十字和歌山医療センター救命救急センター(ER)を受診した15歳以下の患者104人中、16人のキラキラネーム患者とそれ以外を定義に基づき決定。そこで、キラキラネームでない患者の受診時間、救急車利用度、重症度を比較することで、親の公共空間(救急外来)に対する配慮を比較したという論文になります。

結果は救急車利用、重症度に差はないものの、キラキラネームの患者は深夜に来る割合が非キラキラネーム患者の3倍高く、有意差を持ったというものです。

親たちの公共空間に対する配慮の欠如の可能性とまとめています。

正直感想を言うと、和歌山という1地域、104人という少ないサンプル、キラキラネームの定義(ひらがなまじりは除く)、を含めて結論はなんとも言えないと思われます。そしてこれは著者らも論文で言及しています。それこそ救急車利用、重症度にも差が出たら確度が上がったでしょうが、これで親の配慮の欠如と決定はできないでしょう。

しかし小児科領域の臨床雑誌にこのような論文を載せるということは、ある意味若手にとって素晴らしいことだと思います。(著者は研修医)臨床において疑問を論文化して発表することはとても大事なことです。(私は苦手ですw)そして有意差が出ればそれは一つの意見となります。

生活保護患者の医療態度なんていうのも以前記事に書いたことがありましたが(みわよしこさんと生活保護について論戦)、どうしても臨床研究というのは思い込み、バイアスが排除されにくいものです。特にこのキラキラネームの定義がスタッフが思うという部分がある以上、バイアスが入りまくります。

キラキラネームをつける親たちは公共空間に対する配慮の欠如がありそうだけど実はないという仮説で動いたら有意差がついてしまったと著者は言っていましたが、医学論文の有意差なんてちょっとしたことで変化するいうことを皆さん理解していただければと思います。他の論文が積み重ねて出ることで学問は形成されていくのです。

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子宮頸がんワクチン問題のとてもいい解説 副作用でなくても患者は辛い 医学と医療

BLOGOSでも盛り上がっている村中璃子先生の記事3部作。

あの激しいけいれんは本当に 子宮頸がんワクチンの副反応なのか(前編)
子宮頸がんワクチン薬害説に サイエンスはあるか(中編)
子宮頸がんワクチンのせいだと 苦しむ少女たちをどう救うのか(後編)

子宮頸がんワクチン問題を学問的、社会的、歴史的そして倫理的に疑問をわかりやすく説明してくれているとても素晴らしい記事です。

以前私はブログにこの被害者たちはワクチンの副作用とは思えないという記事を書かせていただきました。(HPVワクチンについて 副作用と言われるものがこれなら、私は自信を持って娘に打たせます )
その考えは今も変わっていません。

ただこの間伊藤さんとツイッターで議論しました。

そしてとても大事なことが一つ思い知らされました。それは、副作用であろうとなかろうと、苦しんでいる患者はいるということ、そしてその人たちはあまり良い治療を受けていないのではないかということです。

後編の中のこの文章。
>「科学的に正しいことを『これが正しい診断です』と患者さんや家族に伝えたとしても治療の助けにならない場合があることについてはしっかりと胸に刻んでおかなければなりません」 

概して医師は学問としての医学を大事にします。それこそ患者さんの辛さを感じ、それに寄り添う医療よりも白、黒はっきりさせたがります。医学の発展にとってはとても大事なことですが、目の前の患者さんにとってあまりメリットはありません。

転換性障害の話も記載されています。アルプスの少女ハイジのあのクララをイメージしてください。ここで必要なことは、クララのバカと言って走ってくれるハイジが必要なのであって、あなたの体には何も悪いところはないのよという医師の言葉は役に立たないのです。そしてそれこそワクチンの副作用が原因と認定されるかどうかも、患者さんの病態改善にはあまり意味がないのです。

もちろん、副作用の可能性は100%否定できません。それこそ以前あまり病気と認められていなかった線維筋痛症も、今リンパ球の状態とかを比べて他の疾患と区別できそうだという論文も出てきています。(線維筋痛症候群の鑑別にはじめて成功)HANSもそれこそ鑑別できる病態になるかもしれません。ただそのためには患者に寄り添うだけでなくやはり医師による学問の追求が必要なのです。

みなさんに再度言っておくべきことがあります。心の病から身体症状が出ることはある意味当然だということです。体に異常がなくても、痛みを含めた症状が出ることがあまりに多い為、心療内科ができたことは事実として覚えておく必要があります。夜眠れなければだるくなり、食欲は落ち、疲れてしまうことは当たり前なのです。だから気持ちの問題で症状が出ていると言っても何も恥ずかしいことではないのです。そのことをわかることが治るための一歩になります。

ただ医者が忙しすぎると寄り添えません。反省する毎日です。

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NHK クローズアップ現代:なぜ医療事故は繰り返されるのか ~再発防止への模索~ 少し違う

昨日のクローズアップ現代です。なぜ医療事故は繰り返されるのか ~再発防止への模索~

順天天野先生をコメンテーターに、千葉がんセンターの腹腔鏡事件を解説し、そして名古屋大学の医療安全の取り組みを説明していました。

医療事故での死亡者が1300から2000という数字の根拠も不明ですが、少し番組作りが混乱しているのでは感じました。また医療安全を高めたら事故が減ったという名古屋の部分も年2個が1個?それって有意?

私は以前ブログを書きましたが、(医療事故調 医師法21条との関連)、NHKのHPに書かれているこの部分が少し違うと思っています。

>医療事故調制度は、速やかに事故の院内調査を行い第三者機関に報告することを義務づけているが、報告する死亡事故の判断基準があいまいな上、その判断が医療機関に委ねられていることから実効性に疑問の声もあがっている。 

天野先生は「医療安全は先進医療のチケット」「医療安全と医療は車の両輪」と述べ、「統計的に裏付けられた医療」「相互チェック」「情報公開」の3つが重要と述べていました。

まさにその通りですが、医療安全の定義を医療安全学会の下記の記事を見て知っていただきたいと思います。
 
>医療安全に関する医療業務には、医科医療安全、歯科医療安全、医薬品安全、医療機器安全、看護安全など多岐にわたり、医療現場はそれらの協同作業で展開される。 また、関連分野としてリスクマネージメント、品質管理、ヒューマンファクターと安全工学、リスクコミュニケーション、臨床コーチング、法行政学、医療経済学、医療経営学、情報科学、行動科学、認知科学、疫学・統計など多種多様の専門分野も存在する。

 本学会の目的は、これらの膨大な複合領域の観点から、医療安全文化の向上を図り、患者中心の医療を充実させることにある。

 2013年4月
   日本医療安全学会

これらを踏まえてあくまで医療者が倫理、技術を含めてチーム、組織の能力を高めながら、しっかりと患者さんに向かい、医療のリスクを減らしていく。これが一番大事なことです。

それでも事故のようなもの、予期しない死亡は必ずおきます。それが医療です。それを調べることで同じ失敗を減らそうというのが今回の医療事故調の目的です。あくまでも医療者のミスを探そうというものではありません。

今回のような医療安全委員会の能力を高めるというのなら、医療安全担当者は各専門分野に精通していなければいけません。しかしそれはそれこそ総合診療医の能力が必要になりますが、残念ながらそこまで臨床と行政ともに優秀な人はそんなにいません。

実際の運用において、今回番組で紹介された麻酔科医からのお話し(外科医の腕は麻酔科医や手術室看護師が一番わかっているそうです)を聞いて、すぐに対応できる実行力を持つ医療安全チームを内部に作りながらも、自分の専門ではない技術を評価するのはとてもむづかしいこととなります。特に最先端の医療を専門外が評価するのは無理でしょう。またこの麻酔科医が本当に能力が高いのかどうか、上に相談できているかなども調べなければ大変です。聞き取りをされる時間も臨床医にどれだけあるでしょうか。

一番大事なことは、自分たちの専門の医療を天野先生のように常に精進し続け、そして患者さんのために治療をする責任感の強い医療者を育てることが一番の医療安全になります。 そして今回みたいな反省しない医師たちを教育、指導できることが医療ミス防止の施策として医療安全はそのサポートになるでしょう。

もう一度書きますが、技術不足、倫理不足に伴う医療ミスは存在します 。そしてそれは上司が管理すべきもです。そしてサポートとしてどんなに医療安全を高めても予期しない死亡は完全に0にはできませんそしてそれはマスコミが考えているような「医療ミス」ではないことがほとんどです。それでも医療者達は次は助けられなかった患者を助けたいと模索しているのです。

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原発事故作業で初の白血病労災認定 新聞によるこの違いは何?

今回表題を見て大騒ぎされている方がいらっしゃると思いますが、産経新聞記事です。(原発事故作業で白血病 初の労災認定)とても大事な事を書きます。

まず初の労災認定のは、福島原発事故が起きてから福島原発事故後初ということであって、今まで原発作業者に白血病で労災認定は行われています。

日経新聞記事です。(福島原発「事故後作業で白血病」、初の労災認定 厚労省「因果関係の否定できず」
同原発の事故後の作業を巡って、白血病を含むがんで労災認定が認められたのは初めて。 

また日経新聞から引用です
>放射線被曝による白血病の労災認定基準は1976年に定められ、「被曝量が年5ミリシーベルト以上」かつ「被曝開始から1年を超えてから発症し、ウイルス感染など他の要因がない」とされている。

>福島第1の事故後の作業以外で、原発で働いて白血病や悪性リンパ腫などのがんを発症し、労災認定された人はこれまでに13人いる。

日経は今回の内容についてしっかりと書いています。それに比べて産経。嘘は書いていませんが書いていない内容がミスリードを誘発するような記事です。

朝日はその中間。(原発事故後の被曝、初の労災認定 白血病の元作業員男性)本文への記載は少ないが、少なくとも表題は初をちゃんと説明しています。

と思ったらこんなツイート発見!


まあやっぱりねという感じですか。

それに比べて毎日。表題のミスリードはありますが、内容は日経以上かも。(東日本大震災:福島第1原発事故 廃炉作業被ばくで労災 厚労省初認定、白血病男性に

新聞は、いらないことをか書かないことで、自分の意見を論じようとします。でもね、各新聞間でこれだけ違うと、福島原発事故が原因で白血病になったとミスリードされる人が必ず出てくるでしょうし、そしてSEALDsじゃないけど伝聞ネタで間違いを起こします。 

ジャーナリストの皆さん。国民をミスリードさせるのは楽しいですか?

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