2016年02月

大阪の事故 医療で防げないから他の手段で

大阪の自動車事故。法医解剖で大動脈解離に伴う突然死が原因であったこと、つまり心神喪失で起きた事故ということがほぼ証明されたようです。

テレビでは健康診断の徹底なども言われていますし、胸痛で受診した時医師は見抜けなかったのかなどもコメントとして出てきています。 ただ医療者としては病気を考えたら仕方がないとしか言えません。脳卒中、心筋梗塞も含めて大動脈解離は突然出てしまうものなのです。

最近ドライバーの突然の病気での事故がよく起きています。(医者らしくバス事故の医学的分析 安全のためには老害を制限!)ドライバーの労働環境の問題もあるでしょうが、以前書いたようにどうしても医学的には防げないものがあります。それこそ未来には予防できるかもしれませんが、今は無理です。

ではどうすれば。最近事故防止のために車に自動ブレーキが搭載されてきています。いっそ全ての車に搭載義務をつけることを義務付ける法律を作るのはどうでしょう。田舎で車が離せない高齢者のニーズと、認知症ドライバー問題も解決の方向に進むのではと思っています。 

医療だけで解決できなければ、何か今ある他の手段で解決できないか。様々な知恵を集めて対策すべきといつもアンテナ張ってます。他職種の専門家と話すと本当楽しいです。 

追記
こんな記事がありました。
やはりやるべきです
大阪の暴走事故、今の自動ブレーキでは防げない

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被爆訴訟 放射線被爆の長期的影響に関する補償はどうすれば

毎日新聞記事です。長崎被爆体験者訴訟 「10人しか認められず喜べません」長崎被爆体験者訴訟 「全員被爆者と認められるまでは…」

以前この問題について自分のブログで取り上げたことがあります。広島市長発言

甲状腺癌の問題も含めて、放射線被爆の医学的なコンセンサスと社会認識との乖離は原爆の時期から何年経っても解消されません。 「福島の甲状腺がん50倍」論文に専門家が騒がないわけ(上)(下)「福島の子供の甲状腺がん発症率は20~50倍」 津田敏秀氏ら論文で指摘スクリーニング効果の定義福島の甲状腺がんの異常発生をどう見るか福島の甲状腺がん推計を近々更新-国立がん研究センター

有意差がない、つまり医学的には明らかに関与が証明できない、つまりそこまでひどい影響は少ないことを(完全否定かというと難しいですが)、今にも死んでしまうぐらい危険だと言い続けるグループ(5年経ちました)、そして恐れはあるが証明できていないから医学的に完全に間違いだと相手を小馬鹿にするグループがいつまでたっても歩み寄らないこと原因です。

もちろん、福島と同じくらいの甲状腺がんスクリーニングを行った地域との比較(小規模の研究)では地域差がなかったことが一部言われていましたが、マスコミはあまり大々的に報道してくれません。この問題に決着をつけるには全国規模で福島と同じスクリーニングを行えば答えが出ます。

しかしお金はかかりますし、万が一福島の発症率が有意差を持って高かった時、国はとんでもない賠償をしなければなりません。それゆえ曖昧にしておきたいという考えが働いてはいるのでしょう。福島における1万人に3人の甲状腺がん発症との比較に、他県合わせて4000人の検査を行っても、そこまでの癌発症が0でも、何の医学的証拠にはなりません。6000人に3人出ても疫学的に何もおかしくありません(甲状腺結節性疾患有所見率等調査 成果報告書 

もちろん、5年経ったことで汚染されたものの汚染度も雨などに流されて汚染度が減っています。それこそ処理する量も少なくなり、処理施設の問題も時間が解決しそうです。(おそらくそれを狙っています。)

MDSなどの発症率は被爆量の多い方がわずかに高いことが論文で言われています。移植のために放射線を浴びる人も同じように癌の発症率が高いことは教科書で言われています。ただどちらも今の環境被爆の量と比べ1万倍以上と比べものになりません。放射線が危険なことは間違いないですが、しかし広島、長崎の街が、特に今行っている除染ということをしなかったのに今の発展が存在していることをもう少し冷静に考えて欲しいです。昔のブログです。「手抜き除染」:環境除染は無意味 雨水も集めろ! 

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被災40病院 138人「防げた死」? では現実にできる?

本日の朝日新聞の朝刊記事。((東日本大震災5年)被災40病院、138人「防げた死」 厚労省研究班)厚労省の研究班の報告紹介記事です。

震災による停電で人工呼吸器、痰の吸引ができなかった

重症患者が集中し、医療スタッフの手が回らなかった

輸液や薬など医療物質が不足した

受診しないで家、避難所にとどまって容態が悪化

転院ができなくて容態が悪化


それに対する対策として

1 災害による外傷への対応だけでなく慢性疾患を悪化させないような備えも求められる

2 地域外の病院へ転院させる手続きや手順を定めておく

3 薬や医療機材の優先的な供給関する協定を薬の卸会社などと結んでおく 


と記事はまとめられています。 

この代表の先生はPDFで阪神と東日本大震災の違いを解説されています。外傷がメインだった阪神、溺死がメインだった東日本を比較し改善策を提言されています。(東日本大震災の教訓から課題を抽出し対応策を検討 災害医療体制とDMATの今後とは

このPDFを読むとまあ納得できるのですが、朝日の記事を読んでも「防げた死」の記載に悪意を感じてしまいました。 

まして 対策に上がっている1、2の施策は田舎の医療において平時でも少しハードルが高いものです。転院の場所の確保は言うのは簡単ですが、いざという時のためにベッドを空けておくとその施設は利益が出ません。つまりいつ起きるかわからない有事のために平時の利益を捨てろと言われても現実的には難しいものです。

3の薬も在庫があっても送れなかった輸送の問題があります。正直医療の部分を改善するよりも、食料品などを含めた生活品の輸送手段確保が優先されます。 

以前書いた記事です。(NHKスペシャル「原発事故 100時間の記録」現場の意見、平時と有事)どうしても医療者は自分の分野だけでまとめようとしてしまいます。当時と比較しながら変わってないなと少し思ってしましまいました。

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癌免疫治療 PD−1 究極の自己免疫誘導療法

今までも書いてきましたが(本当のがん免疫療法の進歩)、今日はPD−1抗体、癌免疫治療のお話です。みなさんが考えている副作用のない治療という妄想はかなりメッキが剥がれてきています。

このPD−1抗体の作用機序をわかりやすく説明します。

体の中にある(ほぼ)癌に対してだけ攻撃する特異的なリンパ球はどの癌にも少なからず存在していることが言われています。しかし癌自身や様々な免疫抑制にてそのリンパ球は癌に対して働かなくなっています。だから癌は免疫の攻撃を外れて大きくなります。

そのリンパ球はなかなか活性化できず、また一旦外で増やして体に戻しても体内で増えてくれることができませんでした。それゆえ今までの免疫治療はメラノーマ以外本当少ししか効果がありませんでした。(ローゼンバーグのTILが有名です)現在民間で行われている他の癌種への免疫治療は、値段は高いですが、基本このTIL治療以下の効果しかありません。

ところがPD−1抗体は、その働かなくなっているリンパ球を鼓舞し(末梢性トレランス解除、アナジー解除、免疫チェックポイント解除と言います)、そしてそこにリンパ球を増やすシグナルが入ると(この部分はまだ詳細は不明です。私は炎症と思っています)癌を攻撃できる体制が出来上がります。増やすシグナルの程度で、癌が消失したり、悪化せず安定させるということが起きているのです。この元の癌の種類に関係ないところに機序があるものですから、すべての癌に効果があると言われ、夢の治療と言われるようになった次第です。私も興奮しています。

ちなみに別の抗体の併用によって奏功率は上がるようですが、炎症を含む重篤な副作用は増加するとのことです。ここでも炎症が存在します。

もちろん、今まで出てきた治療と比べ優れているというだけで、現状維持を含めた効果のほどは、概ね2−3割にしか過ぎません。そして費用という副作用が存在します。肺がん患者は効果があれば1年で3200万ほどかかります。(もちろん払う額は高額療養で月額最高4万から12万ですが)1ヶ月延命させるための300万!というあまり効果がない抗がん剤と比べマシと思っていますがやはり高い。

どの人に使えば有効なのか?まだわかりません。また抗がん剤との棲み分けではないですが、抗がん剤が効きにくい遺伝子変異の激しい癌により効果がありそうです。まだ仮説ですがメラノーマでは、すでにメラノーマ特異的リンパ球(CTL)ができていることが効果予測になるのではと言われているようです。もちろん特異的リンパ球(CTL)が一から誘導されることも否定できていません。

またニュースにもなっていた副作用としての劇症型糖尿病!これは機序から考えて当たり前のことです。小野薬品の人と話したことがあるのですが、副作用として出てくる甲状腺炎、大腸炎、間質性肺炎などの自己免疫疾患は、癌ではなくその臓器に反応する特異的リンパ球が存在しているからで、それがPD−1の投与によって末梢性トレランスの解除、アナジーの解除が行われたためと思われます。つまりがんの免疫療法は究極の自己免疫疾患誘導療法ということになるわけです。

血液疾患において免疫治療といえば移植治療です。でも自分の免疫でがんを治すということはとても魅力的です。強い抗がん剤よりは副作用が少ないのは事実ですし、炎症後や自然に治るリンパ腫(濾胞性、免疫抑制誘発リンパ腫、EB関連老人性リンパ腫等)、つまり免疫治療が効果ありそうな疾患もあります。このPD−1を含む免疫チェックポイント抗体をはじめとして、まだまだ新たな免疫治療期待できると思います。

分子標的医療薬もまだまだどんどん出てきています。本当医者には楽しい時代ですが、財政にとっては大変な時代です。(C型肝炎薬のため輸入赤字の拡大が報道されていました)適正に使用していきたいですが、高齢者の癌治療問題を含めてとても難しい問題です。肺がんに保険適応された今、推移をみていきたいと思います。

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介護虐待と法医不足問題 一番大事なのは周りを含めた人手不足

本日のウェークアップ!ぷらす。介護虐待と法医不足問題をリンクさせて放送していました。(“死因不明社会”の実情…

介護士が犯した老人殺害。救急救命士の資格を持った人間が、住居者のお金を盗難したにもかかわらずするような人間を雇用し続けた施設。そして周りの職員も虐待を続けていた施設。まさに医療、介護の人を助けるという志がビジネスに負けるとこうなってしまういい例です。川崎・老人ホーム連続転落死 暴行、虐待、窃盗も続々と発覚 施設で何が起こっていたのか?  

介護関係者の働き方に対して専門家のコメント「ストレスを解消する方法を身につけないとこの仕事は続きません」。本当愛情がなければこのしんどい仕事絶対に続きません。ただ現代のすべての仕事にこの言葉は共通するものです。心療内科が増えたのも仕事でのストレスマネージが下手な人間が増えたからでしょう。

昨年から認識されていたこの事件。3人が連続して亡くなったことを防ぐことはできなかったのかと問題提起されます。それを法医の部分(不足)に一部原因をひも付けていました。法医の問題について以前書いたブログです。(NHKクローズアップ現代 増える“原因不明死”  ~死因解明が追いつかない~ 行政の縦割り 仕事が忙しい!給料が安い!人が少ない!を変えなきゃ変らない!

警察はそれこそ最初不審死とは認めていませんでした。それは認知症を含めた人間の行動(勝手に飛び降りた?)、その人の死をどう捉えていたのか(高齢だし仕方ない?)、家族との関係希薄(ほとんど見舞いにも来ない?)からくる情報収集の問題、等と云う闇の部分が正直あります。

医師不足(新設医大開設:有効?)、地域/専門の偏在(有効な手段なし:専門医制度改革担当、医師会も先送り)、メンタルヘルス(コーチングなどは保険点数がない?医師の腕の差が激しい;薬害など)、そして高齢化介護問題(保育と同じで場所がない)。もう手を打たないとどうしようもないと思うのだけど。

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一部記載ミスがありました。修正します。

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