6月30日のNHKスペシャル。日本のがん医療を問うという、がん対策基本法成立5年前からの進歩を検証するというコンセプトで番組が作られていました。
コメンテーターはがんセンターの堀田先生(血液内科医です)、小宮山厚労大臣、と2人の患者会の代表です。
ほんとうにたくさんの問題を提示しながら番組はすすみました。
1 医療費の問題
抗癌剤はお金がかかります。特に血液の新薬もそうですが、3割負担で1回30万もざらです。でも高額医療制度で医療費はある程度戻ってきます。(収入によって異なりますが、月4−8万位です)
今回番組はそれ以上払って困っていると言う患者さんを例に解説していました。副作用のために普通の額より多く払っているとのことですが、なぜこの人を選んだのでしょう。その副作用治療を拠点病院でできない理由はなんなんでしょう。すこし作為を感じます。
もちろんがん患者の医療費が高い事の問題点は今までもずっと述べてきましたが、小手先ではなく抜本的に変えなければいけない問題です。
今回労働を含めて検討されているとの事ですが、どこまでうまくいきますかね。
2 どの病院を選ぶのか
新潟の他の拠点病院からセカンドオピニオンのためにみえた悪性リンパ腫の患者さんを、新潟がんセンター(内科 血液 化学療法)の石黒先生が前医を非難するという構成です。これがんセンターのドクター納得していますかね。他の病院を無能と言ってるようなもんですよね。
新潟がんセンターのHPには、「新潟県内で唯一、血液悪性疾患および固形腫瘍を対象として高いレベルのエビデンスに基づく化学療法・造血幹細胞移植療法を実施しています。」と書かれています。では新潟の他の拠点病院はそうでないとのことでしょうか。けんかしないか不安ですね。
全国でどの病院が一番良いのか、自分に適しているのか、患者さんが選ぶことは良いと思います。ただ自己責任で自分で選ぶことはいいのですが、知識が少ないことで誤った決定をすることは避けなければいけません。自分の思い込みを病院側に押し付けられても困ります。明らかに間違った治療はできません。
近くの腕の悪い病院と遠くの信頼できる病院があったら、近くの病院を選ぶ患者が多いのは田舎で目立ちます。すこし行けば複数選べる東京とは全然違うんです。
九州から関東の有名な教授の外来を受診させようとした開業医の先生がいました。外来曜日の確認もしていない、連絡もしていない、でも飛行機の切符をとったから曜日は関係なく診ろという電話が直接外来にかかってきたそうです。それでも病院側は説明をしなければいけません。時間をとられます。
どこに紹介するのか少し情報を整理しなければいけません。特にプロである医師が。
私は積極的に家族会の事も紹介しています。
3 専門医不足の問題
がん薬物療法専門医不足を訴えていました。血液医も化学療法の専門家ですが、他の固形腫瘍を取り扱う2002年に設立された日本腫瘍学会が認定する専門医です。できてから10年しか経っていないんですから、少ないのあたりまえじゃないのでしょうか。
肩書きも大事ですが、そんなことよりこの分野、すこししんどい分野を志望する医師が少ないんですよ。
そしてもっとしんどい血液内科で臨床に携わる人間は本当に絶滅危惧種に近くなってきているんですよね。
まあ悲しい事に小宮山大臣のコメントは本当に上っ面だけ。小児脳外科の先生が言ったように育てるのは本当に大変なんですよ。ただ単に形だけできればいいわけじゃないんです。
あと治療ができる患者が増えた(ちょっと前までは手段がなかった)ことも重要です。
4 ドラッグラグ
日本の創薬が縦割りでうまくいかないという分析で、中村祐輔先生を例にしています。先生は政府の中枢にいて、一生懸命医療イノベーションを先頭でやっていたのに、今の政府に幻滅してアメリカに出ていった事はあまりにも有名ですが、NHKもそれをわかって出したんですね。だから大臣にいままでもやるといっていましたがいつやるんですかという質問ができたんだと思います。ここだけは拍手でした。
「日本再生戦略のもと、国家戦略室のもとに施策を進め、国内での創薬を応援し、5年以内に抗癌剤を10個以上出す」大臣の言葉です。期待しましょう。でも官僚が国会と同じように修正するかもしれないですね。
また米国との比較をしていましたが、米国の患者はモルモットになってもいいという考えですが、日本の患者さんは必ずしもそうではないということは、残念ながらまぎれもない事実です。だから日本では治験がすすまず、海外で治験が行われます。
この間のイレッサの問題等も含めて患者さんも自己責任を強く持たなければいけません。患者さんにわかるように辛抱強く教えてくださいと患者会の方が言っていましたが、少ない医師数で、カウンセラーもいない日本の病院状況では今以上の説明を要求されるとかなりきびしいですね。
5 癌登録
これは皆さんびっくりしたんじゃないでしょうか。がんセンターは統計のために人をあれだけつけていますが、それでも追いかけられません。先程の日本人の特徴も影響します。中途半端な個人情報保護法との関連などクリアしなければいけない問題があります。人を増やさなければ無理です。
どこで、どの癌が多く、どの病院の治療成績がよいかなんてそう簡単にはわからないでしょう。何を基準にするので全然かわりますから。
5年生存率の解析で、ある病院は早期胃がんばかり手術して90%、ある病院は進行胃がんも含めて扱って60%、どちらの病院が腕がいいですか評価は難しいですよ。
条件のいい患者(元気で若い)は治療するけど、条件の悪い患者は診ないという病院もありましたね。(以前のブログより)
6 小児がん拠点病院
日本10カ所に小児がん専門拠点病院集約し、専門性を極める。これはいいですね。でも10個ですので、距離はかなり遠くなる人が増えますが、これは我慢しなければいけません。
腫瘍の位置で100種類、そのなかで病理の違いで2000種類。医学は本当に難しいんです。進歩しているんです。だから専門家は大事にしなければいけません。
エビデンスのしっかりした標準治療をおこなうことは当たり前です。現場の我々にとっては、エビデンスのない部分の治療決定が一番大変な部分です。
一番大事な事は、正しい治療を行えば必ず治癒するというわけではない事を知る必要があります。病院が間違えなければ悪くなる事なく治癒するというイメージを持たせる番組作りは間違いです。
医学は進歩し続けるが、不可能もあるという現状は認める必要があります。
医療の質を客観的に評価というが、どのように行うのかは具体性がみえません。ましてや医療の質という定義も曖昧です。
でも短い時間の中にいっぱい問題をみせた事はまあまあいい番組でした。
でも患者会よりまともに答えられない大臣、なんのためにいるんでしょう。
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コメンテーターはがんセンターの堀田先生(血液内科医です)、小宮山厚労大臣、と2人の患者会の代表です。
ほんとうにたくさんの問題を提示しながら番組はすすみました。
1 医療費の問題
抗癌剤はお金がかかります。特に血液の新薬もそうですが、3割負担で1回30万もざらです。でも高額医療制度で医療費はある程度戻ってきます。(収入によって異なりますが、月4−8万位です)
今回番組はそれ以上払って困っていると言う患者さんを例に解説していました。副作用のために普通の額より多く払っているとのことですが、なぜこの人を選んだのでしょう。その副作用治療を拠点病院でできない理由はなんなんでしょう。すこし作為を感じます。
もちろんがん患者の医療費が高い事の問題点は今までもずっと述べてきましたが、小手先ではなく抜本的に変えなければいけない問題です。
今回労働を含めて検討されているとの事ですが、どこまでうまくいきますかね。
2 どの病院を選ぶのか
新潟の他の拠点病院からセカンドオピニオンのためにみえた悪性リンパ腫の患者さんを、新潟がんセンター(内科 血液 化学療法)の石黒先生が前医を非難するという構成です。これがんセンターのドクター納得していますかね。他の病院を無能と言ってるようなもんですよね。
新潟がんセンターのHPには、「新潟県内で唯一、血液悪性疾患および固形腫瘍を対象として高いレベルのエビデンスに基づく化学療法・造血幹細胞移植療法を実施しています。」と書かれています。では新潟の他の拠点病院はそうでないとのことでしょうか。けんかしないか不安ですね。
全国でどの病院が一番良いのか、自分に適しているのか、患者さんが選ぶことは良いと思います。ただ自己責任で自分で選ぶことはいいのですが、知識が少ないことで誤った決定をすることは避けなければいけません。自分の思い込みを病院側に押し付けられても困ります。明らかに間違った治療はできません。
近くの腕の悪い病院と遠くの信頼できる病院があったら、近くの病院を選ぶ患者が多いのは田舎で目立ちます。すこし行けば複数選べる東京とは全然違うんです。
九州から関東の有名な教授の外来を受診させようとした開業医の先生がいました。外来曜日の確認もしていない、連絡もしていない、でも飛行機の切符をとったから曜日は関係なく診ろという電話が直接外来にかかってきたそうです。それでも病院側は説明をしなければいけません。時間をとられます。
どこに紹介するのか少し情報を整理しなければいけません。特にプロである医師が。
私は積極的に家族会の事も紹介しています。
3 専門医不足の問題
がん薬物療法専門医不足を訴えていました。血液医も化学療法の専門家ですが、他の固形腫瘍を取り扱う2002年に設立された日本腫瘍学会が認定する専門医です。できてから10年しか経っていないんですから、少ないのあたりまえじゃないのでしょうか。
肩書きも大事ですが、そんなことよりこの分野、すこししんどい分野を志望する医師が少ないんですよ。
そしてもっとしんどい血液内科で臨床に携わる人間は本当に絶滅危惧種に近くなってきているんですよね。
まあ悲しい事に小宮山大臣のコメントは本当に上っ面だけ。小児脳外科の先生が言ったように育てるのは本当に大変なんですよ。ただ単に形だけできればいいわけじゃないんです。
あと治療ができる患者が増えた(ちょっと前までは手段がなかった)ことも重要です。
4 ドラッグラグ
日本の創薬が縦割りでうまくいかないという分析で、中村祐輔先生を例にしています。先生は政府の中枢にいて、一生懸命医療イノベーションを先頭でやっていたのに、今の政府に幻滅してアメリカに出ていった事はあまりにも有名ですが、NHKもそれをわかって出したんですね。だから大臣にいままでもやるといっていましたがいつやるんですかという質問ができたんだと思います。ここだけは拍手でした。
「日本再生戦略のもと、国家戦略室のもとに施策を進め、国内での創薬を応援し、5年以内に抗癌剤を10個以上出す」大臣の言葉です。期待しましょう。でも官僚が国会と同じように修正するかもしれないですね。
また米国との比較をしていましたが、米国の患者はモルモットになってもいいという考えですが、日本の患者さんは必ずしもそうではないということは、残念ながらまぎれもない事実です。だから日本では治験がすすまず、海外で治験が行われます。
この間のイレッサの問題等も含めて患者さんも自己責任を強く持たなければいけません。患者さんにわかるように辛抱強く教えてくださいと患者会の方が言っていましたが、少ない医師数で、カウンセラーもいない日本の病院状況では今以上の説明を要求されるとかなりきびしいですね。
5 癌登録
これは皆さんびっくりしたんじゃないでしょうか。がんセンターは統計のために人をあれだけつけていますが、それでも追いかけられません。先程の日本人の特徴も影響します。中途半端な個人情報保護法との関連などクリアしなければいけない問題があります。人を増やさなければ無理です。
どこで、どの癌が多く、どの病院の治療成績がよいかなんてそう簡単にはわからないでしょう。何を基準にするので全然かわりますから。
5年生存率の解析で、ある病院は早期胃がんばかり手術して90%、ある病院は進行胃がんも含めて扱って60%、どちらの病院が腕がいいですか評価は難しいですよ。
条件のいい患者(元気で若い)は治療するけど、条件の悪い患者は診ないという病院もありましたね。(以前のブログより)
6 小児がん拠点病院
日本10カ所に小児がん専門拠点病院集約し、専門性を極める。これはいいですね。でも10個ですので、距離はかなり遠くなる人が増えますが、これは我慢しなければいけません。
腫瘍の位置で100種類、そのなかで病理の違いで2000種類。医学は本当に難しいんです。進歩しているんです。だから専門家は大事にしなければいけません。
エビデンスのしっかりした標準治療をおこなうことは当たり前です。現場の我々にとっては、エビデンスのない部分の治療決定が一番大変な部分です。
一番大事な事は、正しい治療を行えば必ず治癒するというわけではない事を知る必要があります。病院が間違えなければ悪くなる事なく治癒するというイメージを持たせる番組作りは間違いです。
医学は進歩し続けるが、不可能もあるという現状は認める必要があります。
医療の質を客観的に評価というが、どのように行うのかは具体性がみえません。ましてや医療の質という定義も曖昧です。
でも短い時間の中にいっぱい問題をみせた事はまあまあいい番組でした。
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実はこの時に検索した医療関連記事で、我が国の医薬品が1兆1千5百億円もの輸入超過になっているという現実も知りました
我が国には優秀な薬品メーカーが星の数ほどあるというイメージなのですが、如何いう事なのかと疑問に思います。
医師数の削減は自民党政権下での臨調で開業医中心の医師会も同調して決まった事でした。病院経営を考えて医師不足気味での推移を望む層も現実に居る様で、傍から見ても「医師不足問題」の難しさ、複雑さを感じます。医療崩壊が問題視され始めても特に改善が見られない(と感じます)のはこういった面での影響もあるのでしょうか?
政権交代時に、医療分野は環境分野と並んで我が国で成長が期待されていた分野ですが、優れた技術とシステムを持ちながら、国の無作為で世界標準と成り切れない他分野の二の舞に成らないで欲しいと思います。