前回書いた記事、CAR-T、キムリアの値段の問題。成功報酬との関係で3349万は微妙と書きましたが、ある程度高くなるのは仕方がない部分があります。

このキムリアのテーマから、NHKでは保険でカバーする医療の領域の問題にまで拡げていました。
健保連が国に意見書 保険適用見直しを

また産経がとてもいい記事を出されています。
【高額薬再び 大きなリスクか小さなリスクか】(上)人生突然の不運 公的医療保険が拠り所
(ぜひ上中下全て読んでもらえればありがたいです。やっぱこれぐらいの正しい取材に基づいた記事が普段のメディアに欲しいです。大学の薬については少しずれている感じはありますが)

そんな中なぜこんなにこの薬キムリアは高いのか説明します。

1 寛解率が85%!
 その他の治療法ではほとんど寛解(見た目白血病細胞が消える)に持っていけない再発難治の白血病患者(10%寛解すればマシ)を、85%寛解に持っていくという凄さ。血液内科医にしてみればある意味魔法の薬です。必ずしも治癒ではないのですが、この後の移植治療含めて治癒する可能性が今までよりかなり上がることは本当に希望が持てます。(寛解で移植した方が成績が良い)

ただ白血病における25歳未満という年齢設定は今後もめるだろうと思っています。と同時に50%しか寛解しない悪性リンパ腫は適応が難しいとも思っています。(むやみやたらに使ってしまう恐れ)

2 全てオーダーメイド
 あの高かったオプジーボでも大量生産が可能ですが、このキムリア(CD19CAR-T)は全て個人ごとのオーダーメイド。いわゆるオートクチュールの洋服と同じです。であればある程度値段を高くても仕方がないことは企業としては当たり前と思っているでしょう。一部公開されている原価データは2000万以上だそうですから。

3 どんなに売れても年間70億
 企業としてはここまで手がかかっているオーダーメイド治療薬なのに、日本での売り上げ総額は湿布より少ない!命を助ける画期的な薬なんだから少しは大目にみてよと企業は言いたいと思います。またベンチャーの投資回収もある意味コストですから会社としては当然のビジネスです。

4 本来は成功報酬、でも厳しくしすぎると日本で売られなくなる
 成功報酬、そう効果があれば5000万だったアメリカに比べ、失敗しても3349万!この点が私は気になっているのですが、あまり厳しくすると欧米で使える薬を日本で売り出さなくなるリスクが外資系企業にはあります。手間かけても利益が低ければそこでは無理して売る必要はありません。そのリスクからの値段なのでしょう。

その上で産経の記事(下)から一部引用します。

>横浜市大の五十嵐中(あたる)准教授(医療経済)は「日本のように、算出した数値を機械的に価格調整に使う国はない。数値だけで測れない要素を患者も交えて議論し、最終判断することが重要。この過程が不十分だ」と言う。

これは日本が今まで放置してきたものです。この五十嵐先生が語っていることを今の日本においてぜひ考えるべき内容、そうしないといつまでも医療に対する値段への不満は拭えないのです。

このオーダーメイドという個別の薬ができた今こそ、患者の価値観、人生観、年齢、資金、社会などを考慮して本来の医療の値段を決めるべき時期になったのだと思います。

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