2007年07月23日
火の七日間 全台詞
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火の七日間
レイバー。それは産業用に開発されたロボットの総称である。建設土木の分野に広く普及したが、レイバーによる犯罪も急増、警視庁は特化車両二課パトロールレイバー中隊を新設しそれに対抗した。通称パトレイバーの誕生である。
警視303より特車二課小隊へこうかくレイバーは羽田線よりほうわ島らんぽ方面(?)へ逃走中。繰り返す、こうかくレイバーは引き続き羽田線よりほうわ島らんぽ方面(?)へ逃走中。
「泉、太田 …… 来た。」
「うおわあぁ であああ 」
「太田さん、なにやってるの」
「いっちゃった」
「甘い」
「食らえ悪党」
「太田さん逆さま、銃が逆さま」
「これでどうだ」
「うわわわぁ」
「メーカー修理にまわしますか」
「パーツまだあっただろ」
「腕はともかく、ふっとんじまった頭部はセンサの塊ですからね。うちじゃちょっと … それとも三号を稼動状態にもちこんで二号の代替機に。」
「あんなたけえ機体おいそれと現場にまわせるか、どうせ馬鹿が乗るんだ。頭はいらねぇ、腕だけ治して頭の方は発注しとけ」
「はぁぁ、い いやぁそれはいいんですけどね。今からだと総出でかかっても明日の昼まではいくんじゃないかなと」
「徹夜は嫌えか」
「おりゃーいいんですけど …… ここんとこフル稼動が続いていたもんで、今晩はなんとか半分だけでも帰してやりたいなぁと」
「いつ起こるかわからない事件を相手にしているんだ、しかたあるめぇ」
「班長にこんなことまで言いたかねぇんですが、相当まいっているんですよ連中。特に今月に入ってからというものの交代で仮眠をとるだけでも精一杯、そのうち事故でも起こしゃしねえかと思うと」
「シゲ、(へぇ)二号機をキャリアにのっけろ。今日中にメーカーにまわして」
「ん …… たきゃ」
「日本の美、長良川の四季」
総員起床
(エロ本、ビデオの一斉検挙)
「燃やせ」
(泣き声)
そうこれが特車二課を震撼させ、高貴ある整備班の歴史に唯一の汚点を残したあの火の七日間の発端だったのだ。
「はじめろ」
「はっ」
現行の館内における風紀の乱れにはまさに目をおおわしめることにある。
よってここに整備班特注発行ボリューム2を定め、もって法規の粛清をはかり整備作業の能率向上のさらなる刷新にあてるものとする。
それはまさに凄まじい内容であった。
雑誌ビデオファミコンソフト等含むの私物の職場への持込禁止、定時以外の飲食睡眠排泄私語等の禁止。じんけん?乗り馬プロレス等、危険な肉体的遊戯の禁止 東京湾への高速艇による出漁および干物製作等を含む作業外生産活動の禁止、二課塔内の全コンピュータにおけるゲームソフトのロード禁止、そしてそれに付随するおそるべき厳罰の数々、腕立て伏せ500回の刑、永久便所掃除の刑、回転式逆さ磔の刑等々
「以上」
「じょうだんじゃねえぜ」
「俺たちの人権はどうなるんだ」
「干物づくりまで否定されて、俺たちはいったいどうやって自分を表現したらいいんだ」
「誰がてめえらの意見聞いたあぁ。 いいか、俺たち整備にたずさわる人間にとってこのハンガーはてめえの技量を鍛えあげる修練の場だ。この神聖な場所にあんなくだらないものしこたまためやがって、この大馬鹿野郎ども」
「班長、しかしそれはあまりにも、やつらはやつらなりに必死に」
「うるせぇ、だいたいてめえが甘い顔するからこいつらいつまでたっても半人前なんだ」
「俺たちの若いころはなぁ鉄板の上に寝て頑張ったもんだ。鉄板の上に」
いつはてるとも知れぬ悪夢のような説教、それは翌朝の5時まで続いた。
だがしかし、私生活やプライバシーと呼ばれるものがほとんど存在しない特車二課にあって、エロ本のまわし読み、補助食物の生産等、ささやかな快楽を含むいっさいの私的活動を否定し排除せんとする榊整備班長のフロムエー的思索は明らかに時代に逆行するものであり、整備員としてこうばいな理想に燃えつつも娯楽と食欲の追求を回避して混迷する現代をトレンドに生き抜かんとする若き整備班員たちの複雑怪奇な欲望がそのはけ口を求めて潜在化ゲリラ化しつつ発言することは避けることのできぬ歴史的必然であった。
データ圧縮技術および二課とうないのローカルエリアネットワークを駆使した、データ転送による作業環境の改善、カップ麺缶コーヒー等の闇取引、わけても長年の食生活の慣習を断ち切れぬ干物中毒患者たちを購買層とするハゼの密漁・干物の密売は一部に人間に富の集積をもたらし、深刻な経済問題を招いた。
「なんか変な雰囲気だよね」
「まぁ榊さんの気持ちもわかりますけど、今回はやりすぎじゃないですかねぇ」
「僕のにわとりどうなるんでしょうねぇ」
「時代錯誤なんだよ、いまどき仕事場が精神修行の場なんてさ」
「俺は支持するぞ、だいたい警察に奉職しているのになんだあのエロ本の山は。おやっさんが怒るのも当然だ」
「あんただって見てたじゃないか」
「えー、太田さんのエッチ」
「篠原、貴様おとこの授業を」
「いいじゃないか たかがポルノの一冊や二冊」
「百冊以上ありましたけどね」
「お巡りさんだって人間だぜ 眠いときは眠い、腹も減るし、ポルノ見て興奮したいときだってあるさ。それをなんでもかんでも抑えつけようとするから突然拳銃ぶっぱなすようなしょうもない馬鹿がでてくるのさ」
「なんだと」
「やっぱりトマトの世話も禁止なんでしょうか」
「でもこれからどうなるんだろうね」
「シゲさんがみんなを代表して榊さんに規制緩和を申し入れるっていってましたけど」
「このままじゃすまんだろうな」
「まぁいこうか」
「ああどうも」
「実はな、こうしておめえを呼び出したのはほかでもねぇうちの若い奴らのことなんだ」
「おやっさん そのことについては俺の方からも聞いていただきたいことが」
「なぁシゲおめえおれのとこきてどのくらいになる」
「俺が本庁の特車整備課に配属になって以来ですからかれこれ十年」
「はええもんだな、俺は今でもお前が入ってきた日のことが昨日のように思い出される。新進気鋭 本庁警備部特車二課のエースとして将来を嘱望されてる天才が来るってんで現場の連中が騒々しいの何の、新旧交代、榊清太郎の時代もこれで終わったと。へへ、そんなことをふれてまわる奴もいたっけ」
「馬鹿な話ですよ ちいとばかし腕が立つのを鼻にかけ、おやっさんを煙たがる連中の口車にのせられているのもしらずに、いっぱしの口の利き放題。井の中の蛙のなんとやら、あのときのことを思い出すと … 」
「いつまで踏ん張っているのよ後ろがつっかえているだからさ、老人はおうちに帰って猫でも抱いてなさいってねー、せいちょー」
「穴があったら入りたい」
「腕に覚えがある若者なんざそんなもんさ」
「そんなある日知りあいの若い隊員に頼まれた俺は、おやっさんが仕上げたバイクを勝手に手をいれ」
「うわあぁ」
「幸い布団工場に突っ込んだ隊員は奇跡的に傷ひとつおわなかったものの、バイクは大破。警察を追われるはずだった俺を救ってくれたのがおやっさんだった」
「おめぇの腕を惜しんだのさ。整備の心は不動の心。人の命をあずかる俺たちの仕事は技術に血をかよわせなくちゃならない」
「そのことを教えてくれたおやっさんを、おれは生涯の師と思い定めた」
「おれはなぁシゲ、あいつらにも同じこと教えてやりたい。だが、言ってもわからない奴には体で覚えさせるしかねぇ。おめえならそれをやれる」
「俺に?」
「この俺の後を継ぐおめぇならな」
「おやっさん」
のちに全整備班員がれんさを込めて語る上海亭の裏切りと呼んだこのシバシゲオのはいせつは、その後の事態の推移を最後まで決定づけたのだった。
(間)
彼は本庁出身組とよばれる班長直系の部下をたばね、特車二課整備班風紀粛清統制委員会を直ちに編成、自ら突撃隊長となって血の粛清にのりだしたのだった。
「アンタッチャボー」
「天誅ぅぅぅ」
たれこみやスパイの横行、時に破滅した二重スパイの悲劇をそのエピソードに加えつつ、のちに黒い重圧と呼ばれたそれはシバシゲオ一世一代の凶器の弾圧であった。だがしかし権力のテロは新たな反権力のテロの向上を促す。
抵抗組織の結成からサボタージュ破壊活動そして要人テロへ、絶対的権威であり整備員たちの無意識領域にまでタブーとして刷り込まれた榊班長本人への実力行使がきしされた結果もあってか、統制委員会議長と懲罰部隊隊長を兼ねるシバシゲオに彼らの憎悪は集中した。
「待て、話せばわかる」
「天誅」
「裏切りものぉ」
無論抵抗組織の破壊活動わけても要人へのテロは、その数倍の規模において権力の報復を呼ぶこともまた歴史の教えるところである。
(テロ行為の描写)
「物騒なことになっちゃったなぁ」
「このままほっておいてもいいの」
「あれでで仕事だけはちゃんとやってるし、任務に支障をきたしているわけではないからねぇ」
「でも仮にも警察内部で二派に分かれてテロの応酬だなんて」
「本庁にたれこむなんて馬鹿なことをするやつはいないよ。課長だって自分の首がかかっているしさ」
「それにしても、なぜこんなことになってしまったのかしらねぇ」
「偉い人がむちゃをはじめると困るよなぁほんとに、歯止めをけかける人がいないだからさぁ」
「ねぇ、もしかしたらおやじさんて人は大人になりたくないって思ってる人かもしれないって、そう考えたことない? レイバーもキャリアもあの人にとっては玩具、この埋立地も子供の日に遊んだ空き地の延長なんだよ、きっと」
「まさか」
「大人の女にはわからんか」
統制が滞欧を招き、テロが報復テロを呼ぶ状況にさらに混迷の度合い加えたのが抵抗組織内部の派閥抗争であった。もともと娯楽と食欲の追求以外にかくたる思想もイデオロギーももたず強力な指導部も不在のまま運動を重ねてきた抵抗組織は、事態が武装闘争の局面を色濃く情勢しだした段階で、その戦術と事態の核心をなす榊班長の評価を巡って支部五裂、一時は三派十一流の分派が競合する異常自体を生み出した。
榊の存在を批判的にとらえつつシゲ一派を放逐して、整備班の民主化を達成せんとする整備班人民民主戦線事務班。
広くその主張を特車二課内部に展開しつつ本庁警備部整備課の介入を要請せんとする改革の通達派。
これに反対し本庁の介入を拒否して特車二課独自の解決を模索する埋立地通信派。
はやばやと非暴力を宣言して歌い続ける自由泡立ち連合。
ひたすら統制委員会への報復を追求する血のスパナ同盟。
その頭目であるシゲへの個人的怨念に燃える死ね死ね団等々。
正確には誰もその実態を把握しえない、これらの無数の集団はその最大動因時においてもふたケタに達することはなかった。そのいずれもが絶対的なヘレモニーを確立するにいたらず、全整備班員をまきこんだ未曾有の闘争劇は、鉄片とようかんが乱れ飛ぶ不毛な暗闘へとなだれこんでいったのである。
「うわあぁ」
(テロ行為の描写)
驚くべきことに闘争に明け暮れる日々にあって、それでも特車二課整備班はその本来の機能を果たし続けていた。
しかしあのエロ本焚書事件から七日目、よにひる武力衝突での脱落者の増加に耐えかねたか部隊発足以来ただの一度も消えたことのなかった整備班控え室の灯りがついに消えた。
「そこまでだ、覚悟はできているな ぶち山」
「いやだ、逆さ磔はいやだ」
「おおとどめまこじゃないか、最新アルバムの特典ポスターか」
「真っ赤な女神です」
「俺はどっとな?の方が好きだなぁ」
「班長」
「あの、じゃあ整備班民主化の象徴としてこのポスターをここに張っておいてもよろしいですね」
「よろしいわけないだろうが馬鹿野郎、なにが民主化だ、寝言言ってる暇があったらさっさと掃除でもしろ」
「わかったな馬鹿」
「馬鹿はお前だ、なんだそのなりは、いつからナチスの手先になった」
「いやあのしかし」
「ここをどこだと思っている。総出で掃除だ。寝てる奴は叩き起こせ、そこにぶら下がってる馬鹿さっさと降ろせ、だらだらしている奴は海にたたきこむぞ。 … 渡辺と杉田はどうしたぁ」
「特車二課人民戦線事務局は(Ш) … なにいっているんでしょうか … もとい襲撃にあい善戦むなしく袋叩きにあい負傷して … 」
「負傷だぁ 誰が怪我していいと言った」
「いやしかし」
「てめぇらに私生活はねぇ。したがって怪我も病気もねぇ。おまえいって起こして来い」
「そんな無茶な」
「なにが無茶だ、俺のわけぇ頃はなぁ」
かくして特車二課を襲った不条理極まりない闘争劇、火の七日間は突然その幕を閉じた。得るところの少ない戦いからも人は多くの結論を引き出すが、しいてこのむなしい闘争から教訓を導くなら、仏ほっとけ神かまうな。合掌。
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火の七日間
レイバー。それは産業用に開発されたロボットの総称である。建設土木の分野に広く普及したが、レイバーによる犯罪も急増、警視庁は特化車両二課パトロールレイバー中隊を新設しそれに対抗した。通称パトレイバーの誕生である。
警視303より特車二課小隊へこうかくレイバーは羽田線よりほうわ島らんぽ方面(?)へ逃走中。繰り返す、こうかくレイバーは引き続き羽田線よりほうわ島らんぽ方面(?)へ逃走中。
「泉、太田 …… 来た。」
「うおわあぁ であああ 」
「太田さん、なにやってるの」
「いっちゃった」
「甘い」
「食らえ悪党」
「太田さん逆さま、銃が逆さま」
「これでどうだ」
「うわわわぁ」
「メーカー修理にまわしますか」
「パーツまだあっただろ」
「腕はともかく、ふっとんじまった頭部はセンサの塊ですからね。うちじゃちょっと … それとも三号を稼動状態にもちこんで二号の代替機に。」
「あんなたけえ機体おいそれと現場にまわせるか、どうせ馬鹿が乗るんだ。頭はいらねぇ、腕だけ治して頭の方は発注しとけ」
「はぁぁ、い いやぁそれはいいんですけどね。今からだと総出でかかっても明日の昼まではいくんじゃないかなと」
「徹夜は嫌えか」
「おりゃーいいんですけど …… ここんとこフル稼動が続いていたもんで、今晩はなんとか半分だけでも帰してやりたいなぁと」
「いつ起こるかわからない事件を相手にしているんだ、しかたあるめぇ」
「班長にこんなことまで言いたかねぇんですが、相当まいっているんですよ連中。特に今月に入ってからというものの交代で仮眠をとるだけでも精一杯、そのうち事故でも起こしゃしねえかと思うと」
「シゲ、(へぇ)二号機をキャリアにのっけろ。今日中にメーカーにまわして」
「ん …… たきゃ」
「日本の美、長良川の四季」
総員起床
(エロ本、ビデオの一斉検挙)
「燃やせ」
(泣き声)
そうこれが特車二課を震撼させ、高貴ある整備班の歴史に唯一の汚点を残したあの火の七日間の発端だったのだ。
「はじめろ」
「はっ」
現行の館内における風紀の乱れにはまさに目をおおわしめることにある。
よってここに整備班特注発行ボリューム2を定め、もって法規の粛清をはかり整備作業の能率向上のさらなる刷新にあてるものとする。
それはまさに凄まじい内容であった。
雑誌ビデオファミコンソフト等含むの私物の職場への持込禁止、定時以外の飲食睡眠排泄私語等の禁止。じんけん?乗り馬プロレス等、危険な肉体的遊戯の禁止 東京湾への高速艇による出漁および干物製作等を含む作業外生産活動の禁止、二課塔内の全コンピュータにおけるゲームソフトのロード禁止、そしてそれに付随するおそるべき厳罰の数々、腕立て伏せ500回の刑、永久便所掃除の刑、回転式逆さ磔の刑等々
「以上」
「じょうだんじゃねえぜ」
「俺たちの人権はどうなるんだ」
「干物づくりまで否定されて、俺たちはいったいどうやって自分を表現したらいいんだ」
「誰がてめえらの意見聞いたあぁ。 いいか、俺たち整備にたずさわる人間にとってこのハンガーはてめえの技量を鍛えあげる修練の場だ。この神聖な場所にあんなくだらないものしこたまためやがって、この大馬鹿野郎ども」
「班長、しかしそれはあまりにも、やつらはやつらなりに必死に」
「うるせぇ、だいたいてめえが甘い顔するからこいつらいつまでたっても半人前なんだ」
「俺たちの若いころはなぁ鉄板の上に寝て頑張ったもんだ。鉄板の上に」
いつはてるとも知れぬ悪夢のような説教、それは翌朝の5時まで続いた。
だがしかし、私生活やプライバシーと呼ばれるものがほとんど存在しない特車二課にあって、エロ本のまわし読み、補助食物の生産等、ささやかな快楽を含むいっさいの私的活動を否定し排除せんとする榊整備班長のフロムエー的思索は明らかに時代に逆行するものであり、整備員としてこうばいな理想に燃えつつも娯楽と食欲の追求を回避して混迷する現代をトレンドに生き抜かんとする若き整備班員たちの複雑怪奇な欲望がそのはけ口を求めて潜在化ゲリラ化しつつ発言することは避けることのできぬ歴史的必然であった。
データ圧縮技術および二課とうないのローカルエリアネットワークを駆使した、データ転送による作業環境の改善、カップ麺缶コーヒー等の闇取引、わけても長年の食生活の慣習を断ち切れぬ干物中毒患者たちを購買層とするハゼの密漁・干物の密売は一部に人間に富の集積をもたらし、深刻な経済問題を招いた。
「なんか変な雰囲気だよね」
「まぁ榊さんの気持ちもわかりますけど、今回はやりすぎじゃないですかねぇ」
「僕のにわとりどうなるんでしょうねぇ」
「時代錯誤なんだよ、いまどき仕事場が精神修行の場なんてさ」
「俺は支持するぞ、だいたい警察に奉職しているのになんだあのエロ本の山は。おやっさんが怒るのも当然だ」
「あんただって見てたじゃないか」
「えー、太田さんのエッチ」
「篠原、貴様おとこの授業を」
「いいじゃないか たかがポルノの一冊や二冊」
「百冊以上ありましたけどね」
「お巡りさんだって人間だぜ 眠いときは眠い、腹も減るし、ポルノ見て興奮したいときだってあるさ。それをなんでもかんでも抑えつけようとするから突然拳銃ぶっぱなすようなしょうもない馬鹿がでてくるのさ」
「なんだと」
「やっぱりトマトの世話も禁止なんでしょうか」
「でもこれからどうなるんだろうね」
「シゲさんがみんなを代表して榊さんに規制緩和を申し入れるっていってましたけど」
「このままじゃすまんだろうな」
「まぁいこうか」
「ああどうも」
「実はな、こうしておめえを呼び出したのはほかでもねぇうちの若い奴らのことなんだ」
「おやっさん そのことについては俺の方からも聞いていただきたいことが」
「なぁシゲおめえおれのとこきてどのくらいになる」
「俺が本庁の特車整備課に配属になって以来ですからかれこれ十年」
「はええもんだな、俺は今でもお前が入ってきた日のことが昨日のように思い出される。新進気鋭 本庁警備部特車二課のエースとして将来を嘱望されてる天才が来るってんで現場の連中が騒々しいの何の、新旧交代、榊清太郎の時代もこれで終わったと。へへ、そんなことをふれてまわる奴もいたっけ」
「馬鹿な話ですよ ちいとばかし腕が立つのを鼻にかけ、おやっさんを煙たがる連中の口車にのせられているのもしらずに、いっぱしの口の利き放題。井の中の蛙のなんとやら、あのときのことを思い出すと … 」
「いつまで踏ん張っているのよ後ろがつっかえているだからさ、老人はおうちに帰って猫でも抱いてなさいってねー、せいちょー」
「穴があったら入りたい」
「腕に覚えがある若者なんざそんなもんさ」
「そんなある日知りあいの若い隊員に頼まれた俺は、おやっさんが仕上げたバイクを勝手に手をいれ」
「うわあぁ」
「幸い布団工場に突っ込んだ隊員は奇跡的に傷ひとつおわなかったものの、バイクは大破。警察を追われるはずだった俺を救ってくれたのがおやっさんだった」
「おめぇの腕を惜しんだのさ。整備の心は不動の心。人の命をあずかる俺たちの仕事は技術に血をかよわせなくちゃならない」
「そのことを教えてくれたおやっさんを、おれは生涯の師と思い定めた」
「おれはなぁシゲ、あいつらにも同じこと教えてやりたい。だが、言ってもわからない奴には体で覚えさせるしかねぇ。おめえならそれをやれる」
「俺に?」
「この俺の後を継ぐおめぇならな」
「おやっさん」
のちに全整備班員がれんさを込めて語る上海亭の裏切りと呼んだこのシバシゲオのはいせつは、その後の事態の推移を最後まで決定づけたのだった。
(間)
彼は本庁出身組とよばれる班長直系の部下をたばね、特車二課整備班風紀粛清統制委員会を直ちに編成、自ら突撃隊長となって血の粛清にのりだしたのだった。
「アンタッチャボー」
「天誅ぅぅぅ」
たれこみやスパイの横行、時に破滅した二重スパイの悲劇をそのエピソードに加えつつ、のちに黒い重圧と呼ばれたそれはシバシゲオ一世一代の凶器の弾圧であった。だがしかし権力のテロは新たな反権力のテロの向上を促す。
抵抗組織の結成からサボタージュ破壊活動そして要人テロへ、絶対的権威であり整備員たちの無意識領域にまでタブーとして刷り込まれた榊班長本人への実力行使がきしされた結果もあってか、統制委員会議長と懲罰部隊隊長を兼ねるシバシゲオに彼らの憎悪は集中した。
「待て、話せばわかる」
「天誅」
「裏切りものぉ」
無論抵抗組織の破壊活動わけても要人へのテロは、その数倍の規模において権力の報復を呼ぶこともまた歴史の教えるところである。
(テロ行為の描写)
「物騒なことになっちゃったなぁ」
「このままほっておいてもいいの」
「あれでで仕事だけはちゃんとやってるし、任務に支障をきたしているわけではないからねぇ」
「でも仮にも警察内部で二派に分かれてテロの応酬だなんて」
「本庁にたれこむなんて馬鹿なことをするやつはいないよ。課長だって自分の首がかかっているしさ」
「それにしても、なぜこんなことになってしまったのかしらねぇ」
「偉い人がむちゃをはじめると困るよなぁほんとに、歯止めをけかける人がいないだからさぁ」
「ねぇ、もしかしたらおやじさんて人は大人になりたくないって思ってる人かもしれないって、そう考えたことない? レイバーもキャリアもあの人にとっては玩具、この埋立地も子供の日に遊んだ空き地の延長なんだよ、きっと」
「まさか」
「大人の女にはわからんか」
統制が滞欧を招き、テロが報復テロを呼ぶ状況にさらに混迷の度合い加えたのが抵抗組織内部の派閥抗争であった。もともと娯楽と食欲の追求以外にかくたる思想もイデオロギーももたず強力な指導部も不在のまま運動を重ねてきた抵抗組織は、事態が武装闘争の局面を色濃く情勢しだした段階で、その戦術と事態の核心をなす榊班長の評価を巡って支部五裂、一時は三派十一流の分派が競合する異常自体を生み出した。
榊の存在を批判的にとらえつつシゲ一派を放逐して、整備班の民主化を達成せんとする整備班人民民主戦線事務班。
広くその主張を特車二課内部に展開しつつ本庁警備部整備課の介入を要請せんとする改革の通達派。
これに反対し本庁の介入を拒否して特車二課独自の解決を模索する埋立地通信派。
はやばやと非暴力を宣言して歌い続ける自由泡立ち連合。
ひたすら統制委員会への報復を追求する血のスパナ同盟。
その頭目であるシゲへの個人的怨念に燃える死ね死ね団等々。
正確には誰もその実態を把握しえない、これらの無数の集団はその最大動因時においてもふたケタに達することはなかった。そのいずれもが絶対的なヘレモニーを確立するにいたらず、全整備班員をまきこんだ未曾有の闘争劇は、鉄片とようかんが乱れ飛ぶ不毛な暗闘へとなだれこんでいったのである。
「うわあぁ」
(テロ行為の描写)
驚くべきことに闘争に明け暮れる日々にあって、それでも特車二課整備班はその本来の機能を果たし続けていた。
しかしあのエロ本焚書事件から七日目、よにひる武力衝突での脱落者の増加に耐えかねたか部隊発足以来ただの一度も消えたことのなかった整備班控え室の灯りがついに消えた。
「そこまでだ、覚悟はできているな ぶち山」
「いやだ、逆さ磔はいやだ」
「おおとどめまこじゃないか、最新アルバムの特典ポスターか」
「真っ赤な女神です」
「俺はどっとな?の方が好きだなぁ」
「班長」
「あの、じゃあ整備班民主化の象徴としてこのポスターをここに張っておいてもよろしいですね」
「よろしいわけないだろうが馬鹿野郎、なにが民主化だ、寝言言ってる暇があったらさっさと掃除でもしろ」
「わかったな馬鹿」
「馬鹿はお前だ、なんだそのなりは、いつからナチスの手先になった」
「いやあのしかし」
「ここをどこだと思っている。総出で掃除だ。寝てる奴は叩き起こせ、そこにぶら下がってる馬鹿さっさと降ろせ、だらだらしている奴は海にたたきこむぞ。 … 渡辺と杉田はどうしたぁ」
「特車二課人民戦線事務局は(Ш) … なにいっているんでしょうか … もとい襲撃にあい善戦むなしく袋叩きにあい負傷して … 」
「負傷だぁ 誰が怪我していいと言った」
「いやしかし」
「てめぇらに私生活はねぇ。したがって怪我も病気もねぇ。おまえいって起こして来い」
「そんな無茶な」
「なにが無茶だ、俺のわけぇ頃はなぁ」
かくして特車二課を襲った不条理極まりない闘争劇、火の七日間は突然その幕を閉じた。得るところの少ない戦いからも人は多くの結論を引き出すが、しいてこのむなしい闘争から教訓を導くなら、仏ほっとけ神かまうな。合掌。
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daragnof at 15:09│Comments(7)│
この記事へのコメント
1. Posted by ぶち山 2008年11月14日 02:21
映像が手元にないので記憶を頼りに、気づいた点だけですが
ほうわ島らんぽ方面→平和島ランプ方面(首都高出入口)
高貴ある→光輝ある
館内における→管内における
整備班特注発行→整備班局中法度
二課塔内→二課棟内
フロムエー的思索→クロムウェル的施策
こうばいな理想→高邁な理想
回避して→介して
発言すること→発現すること
せいちょー→せーびちょー(整備長)
れんさを込めて→怨嗟を込めて
はいせつは→変節は
支部五裂→四分五裂
異常自体→異常事態
死ね死ね団→シゲ死ね団(ネタ元ではあるけど)
最大動因時→最大動員時
ヘレモニー→ヘゲモニー
鉄片→鉄拳
真っ赤な女神→真っ赤な眼鏡(押井の「紅い眼鏡」から)
どっとな?→怒濤のあなた(多分)
ではないかと思います。合掌。
ほうわ島らんぽ方面→平和島ランプ方面(首都高出入口)
高貴ある→光輝ある
館内における→管内における
整備班特注発行→整備班局中法度
二課塔内→二課棟内
フロムエー的思索→クロムウェル的施策
こうばいな理想→高邁な理想
回避して→介して
発言すること→発現すること
せいちょー→せーびちょー(整備長)
れんさを込めて→怨嗟を込めて
はいせつは→変節は
支部五裂→四分五裂
異常自体→異常事態
死ね死ね団→シゲ死ね団(ネタ元ではあるけど)
最大動因時→最大動員時
ヘレモニー→ヘゲモニー
鉄片→鉄拳
真っ赤な女神→真っ赤な眼鏡(押井の「紅い眼鏡」から)
どっとな?→怒濤のあなた(多分)
ではないかと思います。合掌。
2. Posted by 小野寺 2008年11月14日 14:38
まあ、恥ずかしいです。ありがとうございます。
3. Posted by ニヤリズム 2009年08月21日 03:31
お疲れ様です。
先にご指摘を頂いているようですので、それに補足したり、別な項目の誤字や誤用を修正したいと思います。
現行の館内における風紀の乱れにはまさに目をおおわしめることにある。
↓
現行の班内における風紀の乱れには、まさに目を覆わしめるものがある。
よってここに整備班特注発行ボリューム2を定め、もって法規の粛清をはかり整備作業の能率向上のさらなる刷新にあてるものとする。
↓
よって、ここに整備班局中法度ボリューム2を定め、もって綱紀の粛正を図り、整備作業の能率向上の更なる刷新に当てるものとする。
4. Posted by ニヤリズム 2009年08月21日 03:32
じんけん
↓
ジーケン(=ジークンドー。ブルース・リーが編み出した武術の一種。ブルース・リーの代表作に「死亡遊技」という映画作品がある)
フロムエー的思索
↓
クロムウェル的施策(クロムウェルは近代共産主義指導者の名前)
「篠原、貴様おとこの授業を」
↓
「篠原、貴様男の仁義を」
本庁警備部特車二課のエースとして
↓
本庁警備部特車整備課のエースとして
「穴があったら入りたい」
↓
「穴を掘っても入りたい」(本来は「穴があったら入りたい」が正しいが、無い穴を自ら掘ってでも隠れたい程恥ずかしいという意図で改語されている)
↓
ジーケン(=ジークンドー。ブルース・リーが編み出した武術の一種。ブルース・リーの代表作に「死亡遊技」という映画作品がある)
フロムエー的思索
↓
クロムウェル的施策(クロムウェルは近代共産主義指導者の名前)
「篠原、貴様おとこの授業を」
↓
「篠原、貴様男の仁義を」
本庁警備部特車二課のエースとして
↓
本庁警備部特車整備課のエースとして
「穴があったら入りたい」
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「穴を掘っても入りたい」(本来は「穴があったら入りたい」が正しいが、無い穴を自ら掘ってでも隠れたい程恥ずかしいという意図で改語されている)
5. Posted by ニヤリズム 2009年08月21日 03:34
おやっさんが仕上げたバイクを勝手に手をいれ
↓
おやっさんが仕上げたバイクに勝手に手を入れ
黒い重圧
↓
黒い十月(黒い九月=ブラック・セプテンバーというテロリズム組織・事件のパロディ)
シバシゲオ一世一代の凶器の弾圧
↓
シバシゲオ一世一代の狂気の弾圧
榊班長本人への実力行使がきしされた
↓
榊班長本人への実力行使が忌避された
「待て、話せばわかる」
「天誅」
「裏切りものぉ」
↓
「待て、話せばわかる」
「問答無用」(5.15事件の犬養毅暗殺時のやりとりとされる)
「あ、UFO」
「どこどこ?」
「裏切り者ぉ」
↓
おやっさんが仕上げたバイクに勝手に手を入れ
黒い重圧
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黒い十月(黒い九月=ブラック・セプテンバーというテロリズム組織・事件のパロディ)
シバシゲオ一世一代の凶器の弾圧
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シバシゲオ一世一代の狂気の弾圧
榊班長本人への実力行使がきしされた
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榊班長本人への実力行使が忌避された
「待て、話せばわかる」
「天誅」
「裏切りものぉ」
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「待て、話せばわかる」
「問答無用」(5.15事件の犬養毅暗殺時のやりとりとされる)
「あ、UFO」
「どこどこ?」
「裏切り者ぉ」
6. Posted by ニヤリズム 2009年08月21日 03:35
事態が武装闘争の局面を色濃く情勢しだした段階で
↓
事態が武装闘争の局面を色濃く醸成しだした段階で
整備班人民民主戦線事務班
↓
整備班人民民主戦線事務派
死ね死ね団
↓
シゲ死ね団(「レインボーマン」に登場した「死ね死ね団」のパロディ)
ヘレモニー
↓
ヘゲモニー
最大動因時
↓
最大動員時
特車二課人民戦線事務局は(Ш) … なにいっているんでしょうか … もとい襲撃にあい善戦むなしく袋叩きにあい負傷して …
↓
特車二課人民民主戦線事務局派(左派)の旧式派分派・・・何を言っているんでしょうか・・・もとい(失念)団に買収された(失念)会の戦闘員とおぼしき数名に襲撃を受け善戦むなしく袋叩きに遭い負傷して・・・
押井作品(脚本)は、歴史的パロディやマニアックな小ネタが満載なので、先にその知識があると、更に深く楽しめます。
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事態が武装闘争の局面を色濃く醸成しだした段階で
整備班人民民主戦線事務班
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整備班人民民主戦線事務派
死ね死ね団
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シゲ死ね団(「レインボーマン」に登場した「死ね死ね団」のパロディ)
ヘレモニー
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ヘゲモニー
最大動因時
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最大動員時
特車二課人民戦線事務局は(Ш) … なにいっているんでしょうか … もとい襲撃にあい善戦むなしく袋叩きにあい負傷して …
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特車二課人民民主戦線事務局派(左派)の旧式派分派・・・何を言っているんでしょうか・・・もとい(失念)団に買収された(失念)会の戦闘員とおぼしき数名に襲撃を受け善戦むなしく袋叩きに遭い負傷して・・・
押井作品(脚本)は、歴史的パロディやマニアックな小ネタが満載なので、先にその知識があると、更に深く楽しめます。
7. Posted by 小野寺 2009年08月23日 02:49
これはこれは、ご丁寧にありがとうございます。
知識不足が露呈してお恥ずかしい限りです。
知識不足が露呈してお恥ずかしい限りです。
