bandicam 2022-06-11 09-50-21-970オープニングは青い空。誰もいない海岸の砂浜に、エプロンを付けてスリッパ履きという完全に家庭内主婦の格好で、スリッパ履きの足を波でビショビショに洗われながら立つ人妻がポツリと呟きます。「ここは何処?」。続いて人妻のモノローグ。「思い描いた通りの人生を歩める人はほんの一握りしかいないって事は分かってる。でも私は信じてる。強い思いを持てば、いつかきっとここじゃない何処かへ羽ばたく事が出来るって」。この人妻の名前はヤヨイです。そうです、ヤヨイは羽ばたく事が出来るようになったんです。それも瞬間移動で。ある日突然にテレポーテーション能力を発動させる事が出来るようになった人妻ヤヨイ。そして海に向かって大きな声で叫びます。「自由だー!もう二度と家になんか帰らないぞー!」。
テレポーテーション能力を得る前の人妻ヤヨイの夫婦生活は悲惨でした。というのもちょっと良い大学を出てる旦那に短大卒の人妻ヤヨイは完全に見下されてて、グズグズとクソみたいな文句を垂れ流しにされて、人妻ヤヨイは俯いて「すいません」としか言えない日々だったんです。8年間の結婚生活は見下されて延々とグズグズ文句を言われ続ける日々。例えば帰宅した旦那の靴下に穴が開いてたら、「これはどういう事なんだ、確かに朝は穴がなかった。履いてる内に開いたんだろう。だけど君はちゃんとチェックをしたのか、靴下が劣化してそろそろ替え時だとか、そんな事も怠ってるのか」なんて言われるし、「医者に塩分を控えろと言われてるから」と薄味にした味噌汁の事では、「お前はバカか、俺は不味い味噌汁を作れなんて言ってない、味噌汁の味は薄いか濃いかだけじゃないんだ、もっと手間をかけて出汁を丁寧に凝縮させれば薄くても上手い味噌汁はできるんだ」なんて言われるし、話の途中でヤカンのお湯が沸いてピーッってbandicam 2022-06-11 09-54-50-095鳴った時も「お話の途中で申し訳ありませんが、お湯が沸いたので火を止めてきます」と言わないと「不愉快な女だ」とブチ切れられるし、話を聞き続けて火を止めに行かなければバカ扱いされる。セックスの時も文句の垂れ流しは止まらず、「優秀な僕と下等な君とは人としての種類が違うって事は分かってる。そこは割り切ったから結婚したんだ。だが君は僕に相応しい女性になるという努力を全くしていない」なんて事を延々と言われ続けながらセックスしなきゃいけないんです。それでクソみたいに屈辱的なセックスをされながら「いつかきっとここじゃない何処かに羽ばたく事が出来る」と思ってたら、人妻ヤヨイのテレポーテーション能力が発動したんです。最初の内はテレポーテーション能力がどんな状態の時に発動して何処に瞬間移動するのかが分からなくてとまどってたんだけど、何度か繰り返してる内にコツを覚えて自分が瞬間移動したい時に行きたい場所に移動する事ができるようになります。
だけど映画の内容としては、人妻ヤヨイのテレポーテーション能力はそんなに重要じゃなくて、人妻ヤヨイが瞬間移動した先で展開される人間模様を人妻ヤヨイが覗き見るというか、もちろん人妻ヤヨイもクソみたいな旦那から逃れてハッピーな日々を過ごしていくんだけど、だけど人妻ヤヨイのテレポーテーション能力はあんまり関係ないかなって感じなんです。人妻ヤヨイのテレポーテーション能力のおかげで人間模様の事態が好転したり、逆にややこしくなっちゃったりなんて事は全く起こらないし、別に人妻ヤヨイが瞬間移動して来なくても、何の影響も受けずに物語は流れてく、そんな感じなんです。展開bandicam 2022-06-11 14-04-26-823としては感動的で良い話なんです。悪くはないんです。だけど人妻ヤヨイのテレポーテーション能力が意味無いじゃんって感じで。
一番最初のテレポーテーションはセックスの最中だったので、全裸で瞬間移動です。移動した先はボロいアパートの一室で、どうやら作家が住んでるらしい。しかもその作家は人妻ヤヨイの高校時代の国語の教師で、しかも初恋の人。そこからの展開は色々と複雑で説明するのが面倒臭いので省略するけど、とにかくワケアリな人が続々と登場してきて、色々と因果な人間模様が展開されてくんです。作家もかなりのワケアリ人生を歩んで来てます。最初はそれぞれ別個のワケアリだと思ってたのが、実はそのワケアリな人達には繋がりがあって、その繋がりが縺れて絡み合って、それが解けてきた時に失われてた関係性を少しずつ取り戻してって、それぞれの暗く重たかった過去や現状に希望が見えてくる。良い話なんです。本当に感動的な話なんです。ワケアリなデリヘル嬢、ワケアリな定食屋、ワケアリな不動産会社の若手社員、そしてワケアリな作家。だけど残念ながら人妻ヤヨイのテレポーテーション能力はあんまり絡んできません。ここじゃない何処かへ自由に羽ばたく事が出来る人妻ヤヨイが覗き見る、他の場所ではないここ現在地に居続ける事しかできないワケアリな人達の人間模様、そう解釈すれば全く絡んでないって事にはならないんですが、ちょっと無理矢理っぽい理屈付けなので、却下します(笑)。そもそも人妻ヤヨイのテレポーテーション能力が無ければワケアリ作家ってか初恋の人と再会する事も無く、物語自体が始まらなかったので、きっかけを作ったからまあいいかって事で収めておきましょう。あんまりグズグズ言ってもしょうがない(笑)。
だけど物語に絡んでこないとは言ってもテレポーテーションな場面はそれぞれ面白いんです。それを書き始めたら長くなっちゃうんで省略するけど、俺としてはこっちのバカSF方面に転がして欲しかったなあ。ワケアリ人間模様も悪くはないってか確かに良かったんだけどね。そんなわけでちょっと納得はいかないけど、結果としては間違いなく良い映画です。
bandicam 2022-06-11 09-54-22-327











2021年日本映画
監督 山内大輔
出演 加藤ツバキ あけみみう 石川雄也 橘聖人 森羅万象 安藤ヒロキオ
    七菜原ココ 折笠慎也 佐倉絆 サーモン鮭山 山本宗介 佐々木麻祐子

今回の付録動画