亡国のイージス以下、ネタバレあります。……というか、作品側がネタばらし過ぎでは? チラシと映画館で渡された「完全攻略ガイド」を見れば、結末以外は、ほぼわかってしまいますので。原作を読んでいませんので、上下2巻に渡る展開が、どのように料理されているのかはわかりませんが、鑑賞に支障となるような意味のわかりにくさは、ありませんでした。
 
<ストーリー>
 
訓練中の海上自衛隊イージス艦「いそかぜ」が、副長の宮津(寺尾聰)と某国工作員ヨンファ(中井貴一)により、乗っ取られます。ヨンファが持ち込んだ、わずか1リットルで東京を壊滅させる威力がある化学兵器「GUSOH(グソー)」をもって、宮津副長は日本政府に要求を突き付けます。「(防衛大の学生だった自分の)息子の死の真相を明らかにせよ」「息子の論文を新聞に掲載せよ」「米軍が開発したGUSOHが日本国内にあることを世界に公表せよ」。期限は10時間。
 
ヨンファの動きを事前に察知していたDAIS(防衛庁情報局)の渥美(佐藤浩一)は、いそかぜ艦内に如月一等海士(勝地涼)を送り込んでいました。まさかのときは、艦を爆破して自沈させるために。その行動を実行に移す如月ですが、宮津副長と溝口(ヨンファ)の言を信じた先任伍長の仙石(真田広之)は、如月こそがヨンファであると信じて、如月の計画を阻止します。しかし、その後の艦の妙な空気に気付き、命令によりいったんは退艦したいそかぜに舞い戻り、如月と協力して宮津副長−ヨンファの計画を阻止します。
 
<感想>
 
ストーリーに盛り込まれたメッセージは全然違いますが、雰囲気・テイスト的には「沈黙の戦艦」+「ダイハード」という印象を受けました。
 
防衛庁・海上自衛隊・航空自衛隊の全面協力により、実際のイージス艦や戦闘機が登場するのが、この映画の強みのひとつですが、それは、逆に弱みにもなっていたと思います。というのは、おそらく、撮影上の制約だと思いますが、爆発後の煙など、艦絡みのエフェクトは、すべてCG処理でしたが、CGの質が低くて、全然それらしく見えません。フィルムに加筆した黒い絵といった感じで(バックとなじんでいない)、いささか興ざめでした。
 
一番の不満は、時間的な制約ゆえに、登場人物の人間がほとんど描かれておらず、ストーリーを流すだけで終わってしまい、本来のメッセージが埋もれてしまった結果、ドラマとしての厚みに欠け、アクション映画然で終わっている点です(そこからメッセージを読み取るには、作品の周辺情報がもう少し必要)。ヨンファは、「GUSOH」を打ち込むことで、自国が責めと攻めを受け、自国を外からつくり直すのが目的だったと思われますが、そのあたりと宮津副長の防衛論なども、もっと丁寧に、細かくひもといて見せてほしかったと思います。
 
同様に、アクション的な面でも、敵味方が見えないなかでの駆け引き(宮津−仙石ラインと仙石−如月ライン)が、もっと濃く、しっかり描かれていれば、より見応えのある作品になったのではないかと。
 
描写不足という点で、最も顕著なのが、ジョンヒの設定と描かれ方です。これなら、いてもいなくても同じではないかと。むしろ、ストーリー展開的には登場しないほうが自然です。自衛官には見えないので、存在を見られただけで計画にマイナスになりそうなのに、無自覚に動き過ぎます。なのに、仙石が如月の籠城を解いて出たときに、襲いかかって来たジョンヒを見て、何も疑問に感じないのは違和感大(服装も自衛官のそれではないのに)。副長や溝口に「彼女は誰ですか?」程度のセリフはあってしかるべきかと(溝口が仙石に説明するシーンはなかったと思います)。如月を追って海に飛び込み、意味不明のキスシーンを経て、スクリューに巻き込まれて死ぬというのも、「殺人マシン」という設定にしては、呆気なさ過ぎです。登場シーンがわずかとはいえ、ヨンファの妹としての部分も含めて、端折り過ぎです。
 
ヨンファたちの部下たちは、自害の道を選択しますが、その行為が、宮津副長の通達後なのか、ヨンファが仙石との戦いで死んでからなのか、ドラマ内時間は不明ですが、シナリオ的には、ヨンファと仙石の戦い時に、ヨンファに加勢、つまり、ヨンファとともに、最後まで目的遂行に突っ走るのが、映画内での描かれ方として自然なのではないかと思います。
 
といったあたりを除けば、基本的には、骨太で見応えある作品でした。真田広之は、他に適役が思いつかないほど、まさに仙石そのもの。中井貴一は、その顔つきもあって、某国テロリストらしさがピッタリ。身のこなしもまさに、という感じです。寺尾聰も言うことなし。ただ、時間的な制約から省略されていたと思われる、ことを起こすに至る過程や葛藤・苦悩(妻をひとり残すわけですから、妻とのやり取りもあったはずです)、宮津を慕う「宮津学校」出身の幹部たちとの決起に至る過程などが(幹部それぞれの思いも含めて)、もっときちんと見せてほしかったです。佐藤浩市は、独善・ひとり先走り型のように映りましたが、瀬戸(岸部一徳)と交わした防衛論=自らの思いと、所属組織における閉塞感のようなものが、もっと描かれていれば、と。勝地涼は、DAISに拾われて戦闘員にされたわりには、感情が出過ぎではないかと。絵的には、如月は、見た目が中井タイプのほうが設定に合っているように感じました。
 
十分に時間をとって、もっと丁寧なシナリオで見たかった作品でした。「スター・トレック(TNG)」「X-ファイル」などの米国テレビドラマのように、予算と時間をじっくり掛けたシリーズ展開で見たいところです。
 
 
「亡国のイージス」オフィシャルウェブサイト
http://aegis.goo.ne.jp/