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のだめカンタービレ回が進むにつれて、役者さんたちが見違えるほど活き活きとしてきて、もっともっと見続けていたいと感じさせてくれた「楽しい音楽の時間」も、今日で終わりです。今回の連続ドラマ化では、千秋とのだめが海外に旅立つまで(日本編)とのことで、最終回の今宵は、原作コミック第9巻「Lesson 49」「Lesson 50」「Lesson 51」「Lesson 52」にかけての、コンクールのショックで、ピアノを諦め、失意のまま実家に帰った(引きこもったままの)のだめの海外留学行きの決意と、R☆Sオケの再演にして日本での最後の演奏会を迎える千秋が描かれました。
 
●「そしてまた、この曲から始まる気がする」
 
原作では、R☆Sオケの公演→公演後の打ち上げ(飲み会)後に、成すべきことをすべて終えた千秋が最後の気掛かりとして“のだめサルベージ”のため、のだめの実家を訪れる展開となっていますが、ドラマでは、R☆Sオケの飲み会→のだめの連れ戻し→R☆Sオケの公演と、構成を変えています。公演よりも前に飲み会が先というのは一見、変ですが(前話での「編成の多い曲のときはオーディションする」との約束→「ベト7」のオーディション→元Sオケのメンバーが合格→全メンバーの顔合わせ飲み会の実施、ということなのでしょうけれど、説明カットの類はなかったと思います)、やはりラストは演奏会のシーンで締めたかったのでしょうね。
 
原作では、指揮者千秋の出発点であるSオケ対Aオケの定期演奏会の曲、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」を、ドラマは交響曲第7番に変更したことで、「ベト7」は、千秋が初めてオーケストラを指揮した記念すべき曲ながら、シュトレーゼマンにダメ出しをされて見事にプライドを打ち砕かれた曲という、指揮者・千秋の原点にして、日本を発つ千秋の総決算にふさわしい曲と=ドラマにとっての重要な位置付けとなる曲になり、さらにはこのドラマのオープニング・テーマでもあることで、ドラマのエンディングを演奏会シーンで盛り上げて終わらせる以上のカタルシスを生んでいます。「そしてまた、この曲から始まる気がする」との千秋のセリフが、エンディングに向かう期待感をより高めます。
 
●「それでもピアノを弾いている」「のだめも音楽と正面から向かい合う覚悟ができました」
 
ただ、それはそれで音楽ドラマとしての見応えはあったものの、一方で、原作の、のだめと心が通じ合った千秋が、のだめの家族から強烈なるもてなしを受け、あの忌まわしき(笑)“こたつ”で、のだめとふたりの朝を迎えるという、気だるくまったりとしたエンディング(9巻「Lesson 52」の終わり)のほうが、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」で燃え尽きたシュトレーゼマンと千秋が、控室でぐったり横たわりながら会話をするシーンと二重写しとなり、映像的なスケール感には欠けるものの、このドラマにテイストにはふさわしい締め方になったのでは、とも思います。「のだめも音楽と正面から向かい合う覚悟ができました」と、ドラマでは、原作にない場面で、のだめがシュトレーゼマンに新たな決意のほどを報告していますが、はっきりと明言させずに余韻を残して終わらせてもよかったように思います(きっちりさせて締めるということは、「(基本的には)続編の予定はなし」との現われなのかもしれませんが)。
 
とはいえ、テレビドラマ界において、数字と質との実績と歴史を持ち、番組放送枠自体がブランド化した“月9ドラマ”で、原作コミックのヒットという実績に裏付けられてのドラマ化とはいえ、「クラシック音楽」をテーマにしたドラマが、これだけの規模と質とで放送され、大きな支持を得ているのは、本当に驚くべきことだと思います。そして、その波及効果としての、「のだめ」関連のCD・コンサートの好セールス、テーマ曲の「ベト7」の10万を超えるダウンロードなど、これは作品だけでなく、業界全体を活性化させる物凄いコンテンツに成長したというか、もはや社会現象ですね。この流れが、いい方向へと流れることを、いちクラシック音楽ファンとしても期待しています。
 
●R☆Sオケの演奏(音源)はSオケのものだった?
 
R☆Sオケの再演=クリスマス・コンサート(プログラムは「クリスマス」ではありませんでしたが)は、日本の音楽ホールの“総本山”のような「サントリーホール」でした。番組スポンサーがサントリーだから実現したのか(使うことができたのか)、スポンサーがサントリーゆえに「最終回はウチのホールで!」という“大人の事情絡み”だったのかは知りませんが、クラシック音楽のドラマでサントリーホールを、しかも満員のエキストラを集めてというのは(エキストラ参加をCDの購入特典にするとは、ソニーも抜け目がないです)、何と贅沢な絵づくりでしょう(カメラワークの問題はさけおき)。ですが、そんな素晴らしい器と映像に対して、音源(演奏シーンに使った曲の録音)がそれに見合ったものだったのか、少々疑問が残る最終回でもありました。
 
というのは、今回の「ベト7」の音源は、第4話のSオケ対Aオケの定期演奏会で使われた「ベト7」と同じ音源に思えるフシがあるからです。番組を録画保存していないため、比較検証はできないのですが、第1楽章冒頭から30秒ほどのところで、クラリネットがミストーンをして「ピュー」という音が鳴っていたのが、第4話のときと同じだったからです。もしも同じ音源だったとすると、SオケとR☆Sオケと、オケが違うのに(付ける映像は違うのに)演奏が同じということになりますし(千秋の指揮は見違えるほど魅せる振りになっていましたが)、別々の音源だったら、クラリネットは同じようなミスを繰り返していたことになります。
 
ここで引っ掛かるのは、演奏ミスうんぬんではなく、音を外したのが明確にわかるテイクをOKとするのは、セリフを間違えたカットにOKを出すの同じではないかということです。音楽も重要なドラマなのに、ドラマ部分のクオリティに比べて、音楽の扱いが今ひとつラフというか(「まあ、こんなところで」という意識はなかったと思いますが)。ドラマ全体の仕上がりからすれば、“重箱の隅”のようなものかもしれませんが(笑)。
 
●「進化変幻」「進化していくオーケストラ」「このオケは本当に進化している」
 
「進化変幻」は、R☆Sオケの再演ポスターのキャッチコピー、「進化していくオーケストラ」は千秋が目指すR☆Sオケの方向性、「このオケは本当に進化している」はR☆Sオケの再演を聴いての佐久間評です。R☆Sオケの再演、ドラマは、千秋が振る最後の演奏会というのはさておき、オケにとっては常設化に向けての第一歩としての再演としてのみ描かれていますが、原作は、少しニュアンスが違います。
 
ドラマでも触れられているように、R☆Sオケから離れるのは、千秋だけではありません。清良や菊地、黒木など、海外に戻ったり留学するメンバーもいます。千秋同様、彼らもR☆Sオケでの最後のステージになるわけです。そして、その後を継ぐ者たちが、新・コンマスの高橋であったり、鈴木萌と薫の姉妹ら、オーディションで加わった新メンバーたちです。この再演は、離れる者の総決算にして、新たに加わる新メンバーのお披露目を兼ねているのです。そのあたりのオケ側の描写が、ドラマは希薄でした(千秋ひとりの“卒業公演”化)。のだめと千秋にとどまらず、多彩なキャラも大きな魅力であるこのドラマのエンディングとしては、いささか物足りないというか、もったいないというか(笑)。
 
●「音楽を続けられることが決して当たり前ではないことを、彼らは私に思い出させてくれました」
 
ドラマでは、千秋とオケの面々という構図で、人間模様を簡略単純化していますが(「ベト7」を前にしてた楽屋での卒業式のようなくだりが、その最たるものです)、原作では、清良や黒木や菊地ら、千秋同様、今回が最後のステージになるメンバーそれぞれの思いもきちんと描かれています。そのあたり、ドラマは、時間が足りなくてカットしたのではなく(時間が必要な描写ではありませんし)、千秋に焦点を当てた構成ゆえによるものと思われますが(指揮する千秋の回想シーンへの振り替え)、音大を舞台にしての音楽ドラマとしては、物足りなさが残ります。
 
R☆Sオケの優れた演奏だけでなく、オケの面々の思いがきちんと描かれてこそ、「毎年音大生は山のように卒業していくのに、プロオケの数は限られている」「どんなに実力があっても、それに入れるとは限らない」「力を持てあましている子がたくさんいる」というセリフ(原作では佐久間の、ドラマでは理事長・美奈子の言葉として語られます)の意味合いが、より際立つのではないかと。評論家という音楽界全体を俯瞰する立場にある佐久間ではなく、美奈子という音大の教育者が言うことで、さらにはその言葉を受けてシュトレーゼマンが「だからこそ、彼らの音楽は……」と受けるドラマの設定変更自体は、原作のメッセージを原作以上に印象深いものとしていますが。桃ヶ丘音大自体、埋もれた才能の発掘を意識しているわけですし。
 
●「何もできなかったどうかなんて、今はわかりません」
 
千秋の才能を見い出し、導こうとしている、悩める教育者・美奈子とシュトレーゼマン、一方、のだめのユニークな才能に気付き、導こうとしている谷岡と江藤。ふたりの会話は、ドラマオリジナルだと思いますが、のだめのコンクール後日談として、のだめの担当教官という“戦友同士”の思いの丈にふさわしい会話だったと思います。教育は、ビジネスにおける費用対効果のようには、掛けた時間や努力、熱意が、必ず実るとは限りませんし、音楽的な才能が絡むとなれば、ましてやです。佐久間いうところの、人と人との出会いやチャンスもあるわけですし。「プリごろ太NEWS」メールは、江藤の作戦勝ちでしたね。
 
●「さあ歌おう! 最後の一音まで、今できる最高の演奏を」
 
原作では、再演のコンマスは高橋が務めるのですが、その高橋に対して、「カルメン幻想曲」のソロを務めた清良は、「新しいメンバーをお披露目しなきゃいけないこの公演」「だから今回はコンマスをゆずったけど、負けを認めたわけじゃないのよ!」と、対抗意識を隠しません。ドラマのラストで千秋が言う「さあ歌おう! 最後の一音まで、今できる最高の演奏を」は、原作では、黒木の言葉として描かれます。「最後の一音まで、今できる最高の演奏を」「またこのオーケストラに戻ってきたいから」というのが元々のセリフです。ドラマは、千秋が言うのにふさわしい形でセリフを変更しているものの、やはり原作のように、指揮者(千秋)よりも演奏者(黒木)が自分のため、ここまで自分たちを引っ張ってくれた指揮者のためとして語るほうが、より味わい深い気もします。
 
ちなみに、菊地の思いは、やはり女が絡んでいて(笑)、「このオケは、女の子のレベルも高かった」「でも、手を出さなくてよかった」「(これで)また、いつでも帰ってこれる」と。ドラマでの、楽屋で千秋に「あっちの女には気をつけろ」というような言葉を贈るよりは、ずっと菊地らしいセリフです。
 
●「のだめはこうしてできたのか」「のだめを育んだ温床」
 
原作では「菌床」でしたが、ドラマでは「温床」と言っていたように思います。
 
北海道が近場のロケでお茶を濁していたので、こっちは千葉あたりででもと思っていたら、福岡県大川市のロケを敢行したのですね(実家からの宅配便の伝票には「〒831-0050 福岡県大川市無津13-12 野田辰男」とありました)。別のところで収録しても、ドラマ的には違和感はなかったと思いますが、原作そのままな雰囲気と映像にびっくりです。父・辰男は岩松了さん、母・洋子は宮崎美子というキャスティングでしたが、宮崎美子さんの洋子のハイテンションぶりや千秋を採寸(モード・サロン・ヨーコ!)しようと「ハア、ハア」する感じなんかは、原作の洋子そのままです。岩間さんは、見た目こそ原作の辰男とは雰囲気が違いますが、海苔農家という設定には、原作の辰男よりもマッチしています(原作の辰男は、東京でサラリーマンをしていた過去があるにしても、サラリーマン臭が強い気がします)。千秋が乗るタクシーの運転手さんは、個人的には、佐藤二朗さんのキャスティングでもマッチする気がしました。
 
のだめは、家族みんなに愛されていたのですね。千秋曰く、娘のピアノや音楽のことはどうでもいいような、がさつな感じの家族ですが、ピアノはきちんと調律していてくれているし。単にピアノや音楽のことがよくわからず、関心がないだけなのかもしれませんが、のだめの心を、ちゃんと気にして見ているから、のだめがいつ帰って来てピアノを弾いてもいいように、調律をしているのですね、きっと。続く、おばあちゃんとのピアノ談義は、心温まる素敵なシーンでした。おばあちゃんとの会話で、演奏者にとっての観客の拍手の魔力=ステージの魅力=これまで経験したのとは違う「ピアノを弾く楽しさ」を知る、のだめです。
 
●「ふざけるなよ、オレがどんなに勇気を出して言ったと思ってるんだ」
 
千秋とのだめ、龍太郎と清良と、2組の恋人たちの行方が描かれましたが、龍太郎と清良の「ラブホ」なカットを除くと、「のだめ」の恋愛パートは、極めて健全、かつサラリとしたものですね。やはり、物語の根っこは、音楽に対して、真摯に、ひたむきに情熱を注ぐ音大生たちのドラマだからでしょうか。普通のドラマの「愛してる」の代わりに、のだめは、千秋との共演=音楽界の「ゴールデンペア」となることを夢見て、龍太郎は、清良とのコンマス争いができるくらいの腕前上達を誓います。
 
ピアノを拒否したのだめに対して、「ふざけるなよ、オレがどんなに勇気を出して言ったと思ってるんだ」「いいも悪いも…それじゃ、オレが聴けなくなるじゃないねーか」「オレ様を2度も振ったら、もう絶対許さねぇ」「僕はあいつのピアノがすごく好きなんですよ」とつぶやく千秋ですが、そのセリフからは、飯でのだめを飼い馴らしていた千秋が、実はのだめに飼われていたかのような印象さえ受けます。最終回の実質的なクライマックス、のだめを後ろから抱きしめた千秋の顔は、あの“俺様”キャラはどこへ? というくらいに切ないものでした。しかも、涙まで流して(原作のキャラとはずいぶん違います)。その現場をのだめ・父に見られて、絶句、白目になるのと、落差が著しい玉木さんの表情です。
 
ちなみに、千秋の留学先は、原作ではオーストリアになっていますが、ドラマは第1話冒頭でも描かれたプラハに変更されています(ヴィエラを現役指揮者のマーツァルが演じることになったからでしょうか?)。父親のアパートが使えるからというのがその理由であるのと、父親が新たに活動の拠点として戻って来ることで避けるのと、第2候補がパリというのは、ドラマも原作も同じなので、千秋のの留学先とのだめの留学先・パリとの距離が「東京から佐賀ぐらいある」というのが、「オーストリアとパリ」から「プラハとパリ」へとそのままに替えられていますが、その両者も同じような距離感なのでしょうか? 大丈夫だから変更しているのでしょうけれど、地理にうといので一瞬、「えっ?」となってしまいました(笑)。
 
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●第11話のあらすじ(番組ホームページより)
 
のだめ(上野樹里)は、マラドーナ・ピアノコンクールで優勝できなかったことにショックを受け、福岡県大川市にある実家に戻る。のだめの父・辰男(岩松了)や母・洋子(宮崎美子)たちは、2年ぶりに帰郷した娘を温かく迎えた。が、弟の佳孝(別當優輝)は、高い金を払って音大に通っても就職が決まらないのなら不良債権だ、などと悪態をつく。のだめは、そんな家族の前では普通に振舞っていたが、ピアノには触ろうとしなかった。
 
一方、千秋(玉木宏)は、龍見(伊武雅刀)の店・裏軒で、音楽評論家の佐久間(及川光博)に会っていた。R☆Sオーケストラのクリスマス公演後にヨーロッパ留学することを決めた千秋は、R☆Sオケの後任指揮者を選定するために協力してほしいと佐久間に頼んでいたのだ。そこで佐久間は、千秋が指名した気鋭の若手指揮者・松田に会い、好感触を得たことを報告する。千秋は、そんな佐久間に感謝しつつも、何故そこまで面倒を見てくれるのか、と問いかけた。すると佐久間は、歴史に名を残す音楽家には人との大事な出会いがあったのだから、自分もそういう人間になりたいんだ、と照れくさそうに答える。けえ子(畑野ひろ子)によれば、佐久間自身も若いころ音楽家を目指していたのだという。
 
その夜、千秋や龍太郎(瑛太)、真澄(小出恵介)らは、R☆Sオケの飲み会に参加する。その席には、清良(水川あさみ)や黒木(福士誠治)たちに混じって、新たにR☆Sオケに参加することになった高橋(木村了)や、オーディションに合格した元Sオケの面々…玉木(近藤公園)、橋本(坂本真)、萌(松岡璃奈子)&薫(松岡恵望子)の鈴木姉妹らも参加していた。その席で千秋は、新しい指揮者の名前を皆に発表する。メンバーは、これで客が増える、と大喜びだ。その姿を見つめていた千秋は、安堵の気持ちと寂しさが入り混じったような不思議な気分を味わっていた。
 
あくる日、龍見から電話をもらった千秋は、のだめが実家に帰ってしまったことを教えられる。のだめは、龍見にクリスマスケーキを予約していたが、実家に帰ることにしたので代わりに千秋にプレゼントしてほしい、と言い残していったのだという。店にいてそのやりとりを聞いていた龍太郎は、龍見から受話器を奪うと、今日のR☆Sオケの練習は中止にする、と告げる。千秋をのだめの元に向かわせるためだった。
 
千秋は、のだめの携帯電話に電話するがつながらなかった。のだめの実家の電話番号もわからず途方にくれていた千秋は、ふいに佐久間の言葉を思い出し、タクシーに飛び乗った。新幹線で博多に向かった千秋は、のだめの実家から届いた宅配便伝票をタクシーの運転手に見せ、のだめの実家へと急いだ。
 
同じ頃、のだめは、やることもなく近所をただブラブラしていた。部屋に戻り、幼いころから触れてきたピアノを開けると、シューベルトの「ピアノソナタ第16番」を弾き始めるのだめ。それを聴いていた祖母の静代(大方斐紗子)が、のだめの部屋にやってきて拍手した。一次予選のことを思い出したのだめは、コンクールのときのことを嬉しそうに静代に話す。
 
携帯電話の電源を切りっぱなしにしていたことに気づいたのだめは、メールの問い合わせをする。すると、23件もの新着メールがあった。そのほとんどが江藤(豊原功補)からのメールだった。のだめは、その中から「プリごろ太NEWS」というタイトルのメールを開く。それは、他の22通と同じく、江藤から送られてきたものだった。そこには、マラドーナ・ピアノコンクールの審査委員長だったオクレールの勧めで、フランスの音楽院に願書を提出しておいたから試験を受ける気があるなら至急連絡しろ、と書かれていた。
 
そのころ千秋は、まだタクシーの中だった。実は大川市は、佐賀県の近くだったのだ。その際、千秋は、のだめが嘘を言うときは、必ず目をそらしていたことを思い出す。千秋に、お金欲しさにコンクールに出た、コンクールなんか楽しくなかった、と言ったときもそうだった。するとそこに、のだめから電話が入る。留学することにした、と千秋に告げるのだめ。と、そのとき、千秋は、電話をしながら河川敷を歩いているのだめとすれ違う。タクシーを降りた千秋は、のだめを追うと、後ろから彼女を抱きしめた。「一緒にヨーロッパに行こう! 俺様を2度も振ったらもう絶対許さねぇ」とのだめに告げる千秋。そこに、一艘の漁船が近づいてきた。それは、辰男の船だった。辰男は、のだめを抱きしめている千秋を舳先から怒鳴りつけ…。
 
千秋の出現に、のだめの家族は大騒ぎだった。のだめの留学宣言に一度は驚いてみせたものの、そこから先は、「恵に彼氏が出来た!」と盛り上がっていた。
 
あくる朝、千秋は、のだめにピアノを弾かせる。が、コンクールの後、まったく練習していなかったことが祟って、思うように指が回らなくなっていた。慌てた千秋は、のだめを東京に連れ帰ろうとした。ちょうどそこに戻ってきた辰男は、千秋とのだめを車で駅まで送ることになった。その途中、一ヵ所だけ案内したい、ということで辰男が千秋たちを連れて行ったのは干潟だった。のだめが干潟を見に行っている間、辰男は、のだめの子どものころの話を千秋に始めた。幼いころから周囲が驚くほどの演奏を見せていたこと、厳しい指導を嫌ってピアノ教室に行くのを嫌がるようになったこと、ピアノ教師に殴られてケガをしてしまったこと…。辰男は、そんなのだめがプロの演奏家になるのはムリではないか、というのだ。すると千秋は、それでもピアノに向かっているのだから大丈夫だ、と答えた。そして、「成功するかどうかなんてわからない。でも、僕はあいつのピアノがすごく好きなんですよ」と続けた。辰男は、その言葉に感激し、千秋のことを「息子」と呼んできつく抱きしめる…。
 
その日、結局帰郷しなかった千秋たちは、のだめの実家にもう一泊する。服を作ってやる、と無理やりサイズを測ろうとする洋子たちに押さえつけられながら、千秋は、パリではなくプラハに住むことにしてよかった、と心の中で思っていた。東京で、征子(黒田知永子)と彩子(上原美佐)が、千秋をパリに住まわせたらどうか、と盛り上がっていることなど知る由もなかった。
 
クリスマスコンサート前日、千秋たちは、正装姿で練習場に集まった。そこで真澄は、新都フィルに合格したことをのだめたちに伝えた。
 
クリスマスコンサートが始まった。2000人もの観客で埋まった客席には、シュトレーゼマン(竹中直人)や桃ヶ丘音大理事長・美奈子(秋吉久美子)らの姿もあった。その大観衆の前でも、R☆Sオケは期待を裏切らない演奏を披露した。サラサーテの「カルメン幻想曲」では、ソリストを務める清良が圧巻のパフォーマンスを見せ付けていた。
 
最後の1曲、ベートーヴェンの「交響曲第7番」の前に、20分の休憩があった。控室にいる千秋のもとに向かった龍太郎や真澄、桜(サエコ)ら元Sオケ組は、千秋に感謝の言葉を伝えた。やってきた清良や黒木、菊地(向井理)、高橋らも、千秋にエールを送った。
 
ベートーヴェンの「交響曲第7番」が始まった。千秋にとっては、初めてオーケストラを指揮した曲であると同時に、日本での学生時代最後の曲でもあった。千秋は、のだめやシュトレーゼマン、龍太郎らとの出会いを思い出し、涙を堪えていた。客席にいたのだめの脳裏にも、さまざまな思い出が甦っていた。メンバーも皆、それぞれの思いを胸に、心から音楽を楽しみ、いま出来る最高の音楽に感謝の気持ちを込めた。演奏が終わり、一瞬の静寂。次の瞬間、会場は大きな歓声に包まれ…。
 
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●第11話で使われた主なクラシック曲(ドラマ内登場順、2度目以降は省略)
 
ドヴォルザーク/スラヴ舞曲第2集(op.76)〜第2番(スラヴ舞曲第10番)
ブラームス/4手のためのワルツ集〜第15番
メンデルスゾーン/交響曲第4番「イタリア」〜第1楽章
オッフェンバック/喜歌劇「天国と地獄(地獄のオルフェ)」序曲(ディスコ・ビート編曲版)
ドヴォルザーク/チェコ組曲〜第2曲「ポルカ」
ブラームス/ハンガリー舞曲第5番
ベートーヴェン/交響曲第7番〜第1楽章
シューベルト/ピアノ・ソナタ第16番(D.845)〜第1楽章
J.S.バッハ/管弦楽組曲第3番(BWV1068)〜第2曲「アリア」
コダーイ/組曲「ハーリ・ヤーノシュ」〜第2曲「ウィーンの音楽時計」
ガーシュウィン/ラプソディ・イン・ブルー
モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」〜序曲
レスピーギ/リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲〜第1曲「イタリアーナ」
ミーチャム/アメリカン・パトロール
ショパン/12の練習曲(エチュード) op.10〜第4番
リムスキー=コルサコフ/歌劇「皇帝サルタンの物語」〜熊蜂の飛行
モーツァルト/ピアノ・ソナタ第15番〜第1楽章
ハチャトゥリャン/バレエ組曲「ガイーヌ」〜剣の舞
モーツァルト/ディヴェルティメント K.136〜第1楽章
チャイコフスキー/弦楽セレナード〜第2楽章
サラサーテ/カルメン幻想曲
ホルスト/組曲「惑星」〜第4曲「木星」
ベートーヴェン/交響曲第7番〜第1楽章+第4楽章
 
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演奏会がメインの最終回ながら、音楽てんこ盛りなのは、いつもと同じでした。今回使われた曲のなかでは、初登場のモーツァルトの「ディヴェルティメント」が、新鮮に響きました。ドヴォルザークの「チェコ組曲」やレスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲」もいい雰囲気です。
 
ベートーヴェンの交響曲のなかでは、曲の魅力に比べて、知名度が今ひとつだった「交響曲第7番」が、“のだめ効果”で一役“全国区”になりました。ドラマのなかで使われたのは(流れたのは)第1楽章と第4楽章のみですが、個人的には、「第7番」一番の聞きどころは、第2楽章にあると思っています。「のだめ」を機に「ベト7」に興味を持たれた方は、ぜひ全楽章通して聴かれることをお勧めします。
 
 
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玉木宏(のだめカンタービレ)