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華麗なる一族同じ作者の「白い巨塔」同様、知られざる業界の内幕物でありながら、描かれる登場人物たちそれぞれに魅力があり、スキャンダラスな物語に終わらない厚みと深みのある物語ですが、その登場人物の多彩さゆえに、テレビドラマ化にあたっては、限られた時間と主軸となるストーリー展開のなかで、役者という素材を用いて、それぞれの登場人物たちに血を通わせ、ドラマの世界観におけるリアリティに説得力を持たせ、作品をより魅力的なものへといかに再構築するかに掛かっているのではないでしょうか。もとより、定評のある原作であり、華のあるキャスティングなのですから。
 
なのに、本作は、ストーリーを追うことにしか関心がないのか、それとも、ストーリーの描写だけで手一杯なのか、これだけのリソースが投入されながらも、それに見当たった見応えのあるドラマとは言い難い出来にとどまっているように思えてなりません。しかし、ドラマも半ばを迎えてというか、大川の死を受けてというか、登場人物たちそれぞれの思いの交差が、やっと描かれ始めました。
 
視線と目力と表情による静かでダイナミックな演出が印象的な第5話でした。なかでも、万俵家恒例の新年会を前にして、大川の一件のリーク元が阪神銀行かを大介に問い詰める鉄平と、自らは語らず、美馬の言葉尻に乗る大介。それを見守る早苗に葬儀を中座したことを詫びる大介。そして、ことの成り行きを見守る周囲の、緊張感に満ちた目線と表情。さすがの大介も、早苗の目を見ることができません。それは、大介のポーズ(作戦)には思えませんでした(そこでの、その大介を真っ直ぐに見据える早苗の、腕を組み掛けたようなポーズには、場面的に不釣り合いさを感じました。いくら父親のこととはいえ、これまでの早苗の描かれ方からすると、大介に対する拒絶感や抵抗感よりも、早苗の性格には似つかわしくない不遜さを感じさせますので)。
 
経営者としても自らの思いを熱く語る鉄平とは異なり、自分の本心を見せようとしない大介は、大川の件を美馬に語らせたのと同様、二子の見合いに対しても相子に語らせるだけで、万俵家の家長、あるいは二子の父親として、本来なら場を仕切ってもよさそうなところで沈黙するのは、どうなのでしょう。相子がその筋書きを描いていたとしても、相子に語らせるのではなく、大介が語るべきものではないでしょうか。相子が直接的かつ前面に出過ぎなければ、鉄平との直接的な衝突も、もう少し穏やかなものになっていたと思うのです。自らの言葉で語らぬその姿勢には、語らぬことでの家長としての威厳よりも、腰が引けているように映ります。
 
唐突な弟の再開というシーンを通じて、今回、相子の過去を見ることになりましたが(弟の前では「愛人と呼ばれようとも」と気丈さを見せていましたが、万樹子に「妾」と言われたシーンでは、いつものように皮肉で切り返すことができませんでした)、同じように、人物像の描写がほしい登場人物は、まだまだたくさんいます。人物描写の薄さが気になっていた本作ですが、今回の相子のくだりを見て、その思いをより強く感じました。と同時に、登場人物たちが持つ万俵家にとっての役割=閨閥結婚・政略結婚という面において、大介や相子、大介(と鉄平)の父である敬介らの思いと成果がどうなっているのかも、もう少し盛り込まれていてもよいのではないかと思います。
 
相子の過去が描かれたのきっかけに、番組ホームページに掲載されている登場人物紹介を見て、「やっぱり」と「びっくり」を感じました。ここに書かれていることは、本来は、ドラマのなかで描かれてしかるべき(感じさせるべきもの)ではないのかと(ディテールは別にしても、せめて基本的な部分くらいは)。これでは、番組ホームページを見ることで、よりドラマを楽しむことができるというよりも、番組ホームページを見て、やっとドラマの全容がつかめるに等しいように思えます。となると、何のためのドラマなのかと。たとえば、今回の物語の軸のひとつの、閨閥結婚・政略結婚という面から、それぞれのキャラクター設定を見てみると、設定とドラマ内での描かれ方の差に驚きを禁じ得ません。
 
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●万俵大介
関西有数の都市銀行・阪神銀行のオーナー頭取にして、神戸を拠点とする万俵財閥・万俵家の家長。万俵家は、播州・姫路の十四代続いた地主。先代・敬介が創立した万俵銀行を、大介が全国第十位の都市銀行にまで発展させ、さらに万俵鉄工を近代的な設備の阪神特殊製鋼へと仕立て上げた。その手腕により絶対的な存在の家長として万俵家に君臨。万俵財閥の繁栄の為、と子供たちの閨閥結婚を推し進めている。貴族的な冷たさと品の良さを漂わせる端正な顔立ち。性格は経営方針に見られるごとく、常に現実的かつ冷静。関西財界でも一分の隙もない銀行の頭取として知られているが、一方で長年にわたり同じ邸宅に妻・寧子と愛人・相子を同居させ、更には“妻妾同衾”の生活を営むという信じ難い裏の顔を持つ。金融再編の大きな波を前に「小が大を喰う」銀行合併という野望を抱き、謀略を巡らす。その目的のためには我が子・鉄平さえも利用する、という経営者としての非情さを見せる。しかしその心の奥には誰にも語ることのできない苦悩が隠されている。
 
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物語本来の主人公、大介のプロフィールに関しては、ドラマ内でも概ね、それを感じさせますが、大介に対する“大きな何故?”のひとつである“妻妾同衾”生活の真意(1ベッドルーム3ベッドではなく、ひとつのベッドに3人で、のほうです)は、今ひとつピンと来ません。ドラマ内ではまだ語られませんが、そんな大介自身の結婚も、その父・敬介による閨閥結婚・政略結婚のひとつだったのでしょうか? 寧子を迎えることで、万俵家は、何を期待したのでしょう? そんな寧子のプロフィールです。
 
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●万俵寧子
大介の妻で、鉄平、銀平、一子、二子の母。京都の公卿・嵯峨子爵家の出で、没落した生家のため莫大な支度金によって万俵家に嫁いできた。内気で控え目な性格に加え、お嬢さん育ちのため家内の取り仕切りがまったく出来ず、子供達の家庭教師であった高須相子に家事万端を仕切られている。しかも自分の子供達の閨閥結婚においても、主導権を奪われている。その上15年もの間、妻妾同居、同衾という屈辱的な生活を強いられている。そのような屈辱を受けながらも抗えない理由が寧子にはあり、30年以上の間苦悩し続けている。
 
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万俵家が、何を狙っての結婚だったのかは、よくわかりません。そして、どのような経緯で、相子を迎え入れることになったのかも、よく見えません。
 
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●高須相子
人並みはずれた政治力があり、豊満な肢体と、彫の深い美貌の持ち主。15年前、大介の子供達の家庭教師として万俵家に迎えられたが、やがて大介と愛人関係となり、その能力で寧子を抑え万俵家を取り仕切る。さらに、次々と子供達の政略結婚を成立させ、閨閥(けいばつ)を作ることによって、万俵家中で絶大な地位と権力を持つに至った。野心に満ちた非情な人物。しかし、その過去は、留学先でアメリカ人の男性と結婚するも、舅の日本人差別が原因で離婚し帰国、という不遇な半生。失意の帰国の後、万俵家に入ってから劇的な転機を迎える。愛を否定するかのような生き方を選んだ女性だが、その実誰よりも愛されること、愛することを求めている、という深い業を背負っている女性。
 
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相子の過去、できることなら、相子の言葉だけで終わらせずに、今の相子を決定付けることになった象徴的なエピソードのひとつでも見せてほしかったところです。大介と相子が十分に描かれてこそ、鉄平や万俵家の女性たちの存在感が、より際立つと思いますので。
 
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●万俵鉄平
万俵家の長男。阪神銀行と並ぶ万俵財閥の主力企業・阪神特殊製鋼の専務。父・大介の「経営学を学び阪神銀行の後継者に」という意向に反し自らの意思を貫き、東京大学工学部冶金科を卒業し、マサチューセッツ工科大学に留学後、阪神特殊製鋼に入社。元通産大臣・大川一郎の長女・早苗と結婚、円満な夫婦生活を営んでいる。祖父に似て、「理想」と「情熱」を併せ持った経営手腕を持つ。その祖父似の「カリスマ性」に、父、大介は嫉妬を感じている。自らの仕事が今後の日本を支える基幹になると信じ、金儲けよりも現場を愛し、現場を重視した経営方針で技術者や労働者から慕われているが、その一方、優しさを捨て切れず経営者としての冷徹さや慎重さを欠く部分がある。大手製鉄会社の横暴に煮え湯を度々飲まされ、特殊製鋼会社初の高炉建設に情熱を傾けるが、大介の策略により阪神銀行の合併に利用されてしまう。
 
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主人公の鉄平には、その言葉の熱さとは裏腹に、ガラス細工のような脆さ・危うさを感じます。そんな鉄平が結婚した相手は、元通産大臣・大川の娘・早苗ですが、本来なら早苗よりも先に出会っていた芙佐子と結ばれなかったのは、相子の策略だったのでしょうか?
 
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●万俵早苗
鉄平の妻。元通産大臣・大川一郎の長女で、8年前、政略結婚で万俵家に嫁いできた。閨閥作りのための結婚であったが、鉄平とは男の子ももうけ、円満な家庭を築いている。しかし大介の妻妾同衾(さいしょうどうきん)の生活には嫌悪感を抱き、相子の存在も許容してはいない。幸せな結婚生活を送っていたが、物語の終盤になって自分と結婚する前に鉄平と芙佐子が恋仲であったことを知り…。鉄平の高炉建設への野望は、早苗の父・大川の動向が暗転の一つのきっかけとなるが、それはまた、早苗の人生にも暗い影を落とすこととなる…。
 
●鶴田芙佐子
料亭「つる乃家」老女将の養女。万俵家の先代・敬介に連れられてよく遊びに来ていた鉄平と恋に落ち、付き合っていた。しかし、老女将からの猛反対と、大介・相子からの強引な説得を受け、身を引くことを決意。突然鉄平の前から姿を消し、海外へ旅立っていた。しかし体調を崩した老女将を手助けするため、7年ぶりに帰国。今は、東京・麻布で「つる乃家」を営む。今でも鉄平への思いを忘れられずにいるが、彼の幸せな家庭を壊したくない、との思いから鉄平に冷たく接する。しかし図らずも鉄平と顔を合わせることになり、封印してきた思いが抑えきれなくなり…。
 
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万俵家が求めたのは、早苗の父・大川との関係づくりのようですが、その大川の育ちは(家柄としては)、どうだったのでしょう? プロフィールを読むと、家柄よりも裸一貫の成り上がり政治家のように見えます。
 
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●大川一郎
鉄平の妻・早苗の父。衆議院議員で元・通産大臣。自由党の派閥の領袖で、叩き上げの“党人派”代議士。婿・鉄平のことをかわいがり、高炉建設の後押しへの協力も惜しまない。永田大蔵大臣と次期総裁の座を争っているが、大介は大川、永田の両方と関係を保っている。やがて大川に訪れる転機が、鉄平の運命を暗転させる大きなきっかけとなる。
 
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対立する永田大蔵大臣も、大介とは浅からぬ付き合いがあるのですね。もともとは、鉄平のような熱き心も持ち主だったようにも思えます(津川雅彦のキャスティングだと、見た目の面で、そうは見えませんが)。
 
●永田大蔵大臣
凄みがある男。大蔵次官から政界入りし将来を嘱望されていたが、時の総理の経済政策に徹底的に楯ついたため、6年間冷や飯を食わされていた。その間ずっと経済的援助をしてきたのが大介であった。その理由は、娘婿・美馬と同じ茨城県出身で、美馬が心底尊敬する人物であるだけでなく、将来必ず大蔵大臣になると見込んだ男だったから。金融業界の再編・合併の鍵を握る重要人物。
 
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永田への布石ともいえる美馬が、長女・一子の結婚相手ですが、当時の大介は、阪神銀行の将来につながる大蔵省へのパイプラインとして、美馬を選んだのでしょうか?(今やっていることと比べると、先の読めない長期戦略=賭けであり、意外にスケールの小さな策略に映ります) 万俵家のような人間にとっては大いに気にしそうな、家柄面では不釣り合いなので。
 
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●美馬中
大介の長女・一子の夫。大蔵省(現・財務省)主計局次長で、未来の事務次官候補のエリートキャリア官僚。茨城の真言宗住職の家に生まれ、学歴を積みキャリアとなったが、29歳の時、銀行局金融検査官として阪神銀行に赴いた時、歳に似ぬ尊大さと俊敏さが大介の目に止まり娘婿にと口説かれた。大介は情報源としての利用価値から結婚を仕掛けたが、美馬もまた大介以上の野心を隠し持ち結婚した。政略結婚ということもあり、一子との間に必要以上の愛情関係は無く、その上、相子に対してはある感情を抱き、万俵家の外様勢力という同様の境遇を口にしながら、大胆にも義父の愛人に言い寄っている。
 
●万俵一子
大介の長女。大介と相子の企んだ最初の政略結婚で、美馬中の元に嫁ぎ、ひとりの男児をもうける。立身出世に野心を燃やし、家庭を顧みない夫との夫婦生活は冷え切っている。夫の美馬が経済的援助を受けているにもかかわらず万俵家に対し尊大であったり、女性問題を起こしたりすることに憤りを覚えながらも、母・寧子に似た大人しい性格から耐え忍んでいる。しかし自らの不幸な結婚生活ゆえ、政略結婚へ抵抗する妹・二子に対しては、鉄平同様理解を示す。
 
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もう少しじっくりとしたカメラワークで見せてほしかった、今回の人間模様ですが、役者陣の奮闘を持ってしても、やはり、物語を確固たるものとして紡ぐための絶対的な時間が不足しているようにも思えてなりません。このドラマでは、鉄平が、《自らの志のために必至で戦っていく姿に、現代のリーダーに求められる「人間の身の処し方」という観点を加え、「真のリーダー」のあるべき姿を描いていく》とのことですが、そんな脇目を振る前に、上記のプロフィールを感じさせるシナリオと演出で見せてほしいものです。
 
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●第5話のあらすじ(番組ホームページより)
 
大川一郎(西田敏行)の闇献金記事に憤怒する鉄平(木村拓哉)のことを案じて、大同銀行頭取・三雲が訪れてきていた。三雲は、ただがむしゃらに働き、アメリカ進出と高炉建設を成功させることが、大川の舅への一番の励ましだと信じている鉄平にある噂を伝える。闇献金の話は政治の世界には色々な意味があるのかもしれないが、銀行家の間では別の意味があると言う。三栄銀行は、銀行初の合併を水面下で進めていて、どの銀行も金融再編で生き残るために、一番最初の合併を狙っている。その一番手と噂される三栄銀行の合併を阻止しようと、どこかの銀行が黒い噂を流したのではないかというのだ。勿論真実は闇に包まれたままだが、鉄平には、考えを巡らすことがあった。ところが、病床の大川は、諦めていなかった。自分を陥れた人物を徹底的に探し出そうとしていたのだ。そんな父を案じる早苗(長谷川京子)は治療に専念してと頼むのだが、大川は、反して鉄平のことを案じるのであった。
 
そんな折、大蔵省は三栄銀行と平和銀行の合併に代わる新たな合併を画策していた。その中には何と阪神銀行も含まれているという事実を、伝えるべく、美馬中(仲村トオル)は自宅に大介(北大路欣也)を招いていた。その際、大川の噂をリークしたのが阪神銀行だということが漏れていないか、と確認する話をしているのを、長女の一子(吹石一恵)が聞いてしまう。ところが、志半ばにして、大川は息を引き取る。
 
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前話の予告編的には今回一番の見せ場に思えた、大介の傷は、大介に鉄平が銃を向けたのではなく、偶然の誤射でした。このときの思いは、以降、言葉として語られることになるのでしょうか? 後々、きちんとしたセリフで描かれてもいいと思います。
 
次回は、さらに事態は急展開? 吸収合併は日本サイドだけの話ではなく、鉄平が業務提携を取り付けて来ていたアメリカンベアリング社も、吸収合併に見舞われるようです。
 
 
>> 「華麗なる一族」番組ホームページ