ひと回り回ったら、元の場所に戻りそうな雰囲気。振り出しに戻って、何ごともなかったように、いつもと同じ時間が過ぎていく。それでも人は生きていくと…なんて。ヒューマンテイストあふれる不思議な怪作…。そんな印象を抱いた今回でした。でも、今ひとつ、手応えとつかみどころがなくて…。これだけの登場人物がいるのに、その考え方の根本とセリフの言い回しの根っこが、みな、同じように聞こえてしまって。山田太一さんは、キャラクターをくっきりさせないように、リアリティのなさを強調しているとコメントしていますが、それにしても…です。
毎回の、加奈と田崎の掛け合いによるオープニング。メールのやり取りというよりも、まるでチャットでもしているかのようですが、今どきさはなくて、むしろ、古めかしさを感じさせるのも、同じような意図に基づいてなのでしょうか。
加奈と田崎の父親ふたりが知り合いだったという、「ありふれた奇跡」ならぬ「ありえない偶然」の続き。ふたりの秘密が、この先バレる可能性があると。だから、やめるいい機会だと。ふたりの秘密は女装癖。実のところはわかりませんが、ドラマのなかで目にすると、やけに古めかしく映ります。紛れもなく平成のドラマなのに、平成のようには思えなくなってきて。
シルバーナとしのぶ。最後だから外を歩こう…って。このパート、思いっきり浮いているような気がするのですが（笑）。人には言えない自分だけの秘密があって、なのに、それを共有する他人がいて…という構図は、加奈と田崎と藤本と同じですが。街を闊歩する中年男ふたり。単なる女装癖であって、心まで女の振りをしてみたいということではないようです。翔太の父・重夫のほうは、和装でガニマタでスッタカスッタカ歩いて…。気色悪い（笑）。もっとも、こうして笑えるのは、ふたり（の役者さん）が真剣だからですが…。当人たちは、周囲の視線を集めて心が高ぶって、病み付きになりそうな勢い。女装をやめたら自分の人生は何も残らないと重夫。女装がバレたら人生破滅と朋也。ふたりの逢瀬は、まだまだ続きそうです。
加奈と田崎のふたりは、再び“例の店”に行くことに…。片がつくことは片をつけておきたい。加奈の、妙に理屈っぽい話が、また始まって。店長は怒っていなくて、自分も店長という立場でなければ、その気持ちもわかると…。初回の権藤以下、彼らを取り巻く人たちは、みな、妙に物分かりがよすぎるような気がしてなりません。
突然の、子供は何人話。私は私のせいで子供が生めないと加奈。唐突な展開に、とりなす田崎は空回り。自分から話を振っておいて、相手がそれを受け取って返してきたら、一転、これ以上話せない、今日は帰ると…。難しい性格ですね。互いにわかりあいたいと、もっと親しくなりたいと思っているのに、会話のキャッチボールを、ボールを投げた側が引っ繰り返して。わかるようでわからない加奈の心境。で、日が変わると、過去の自分の振る舞いを後悔して…。加奈は、前の彼とも、こんな感じだったのでしょうか？
加奈と藤本の会話も、地に足がついていない感じで…。でも、耳を傾けしまうセリフなのが、本作の不思議なところ。毎回、妙に気になって、ついつい見てしまう。わかった、ゴメンって…。自分には孤独を助ける人間がいないって…。でも、ここでの加奈と藤本のキャラクターも、あまりに“つくられた感”が強くて、まるで感情移入をドラマの側に拒まれているかのようです。ただ、そのやり方にあざとさは感じないので、自然体のようで違和感が著しいという不思議な雰囲気です。
キレイな子には周囲は甘い。孫を思う翔太の祖父・四郎の心遣い。子供の頃は、目に入れても痛くなかったほどの可愛がりようだったのでしょうね。
終わった不倫の痛手から立ち直れない加奈の母・桂。それを心配する夫の母・静江は、他人の夫に心を動かされたことを話し始めて。何か感じるところがあったのでしょうか。
それぞれの思いと思いが交差して、物語が流れていきます。その流れは、どこに向かうのか…。ドラマは折り返し地点を迎えました。
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■第5話のあらすじ（番組ホームページより）
中城加奈（仲間由紀恵）が田崎翔太（加瀬亮）の家を訪ねて以来、会わないまま1週間が過ぎた。翔太が恋愛関係になることを戸惑っているのは、自分が自殺しようとしていた理由を話さないからと思っている加奈は、次に会った時に話すとメールで告げる。
立川研次（吹越満）との別れ以来、具合が悪く起き上がれないでいる桂（戸田恵子）。事情を知らない加奈は、病院に行くように勧める。その頃、朋也（岸部一徳）は、再び重夫（風間杜夫）と会っていた。ふたりは、人目を忍ぶように、とあるビルへ入っていく。そこは女装サロンだった。ふたりは着飾ると、これが最後だと、そのまま街を歩く。驚いて振り返る街の人々の反応に喜びを感じるふたり。
加奈と翔太は、会う約束をするが、加奈が待ち合わせ場所に指定したのは、以前に加奈が店長に啖呵を切って飛び出した喫茶店だった。困惑する翔太だが、加奈は店に入ると店長を呼び、前回の行動を謝る。すっきりしたと笑顔になる加奈。喫茶店を出ると、歩きながら加奈は、翔太に、自分が子供の産めない体であることを打ち明ける。告白に戸惑いながらも、子供はいらないと答える翔太。しかし、加奈は先に帰ると告げて去っていく。
翌日、翔太は、気持ちは変わらないとメールを送るが、加奈からの返事はなかった。田崎家では、加奈のことが気になっている四郎（井川比佐志）が、進展具合をさりげなく聞いてくるが、翔太は話をそらす。中城家では、桂が相変わらず寝込んだまま。加奈は、心配と自分への苛立ちから病院に行かないことを責め、桂と口論のようになってしまう。のんきに構えている朋也にも、電話で桂に病院へ行くように言えと訴える加奈。静江（八千草薫）は、めずらしく桂の部屋に行く。横になっている桂に、自分が若かりし頃に夫以外の男性に恋をした話をする。言葉には出さないが、静江の話に何かを感じる桂。
ある日、朋也は、重夫に呼び出され喫茶店にやってきた。呼び出された理由がわからず戸惑う朋也に、重夫は女装をやめたくないと訴え、もうやらないと決めた前回の提案を撤回する。家族や会社に絶対にバラさないと約束する重夫を、信用できずにらみつける朋也。
同じ頃、「妙」に向かっていた加奈。店の前では、ママの妙（宮田早苗）が、藤本誠（陣内孝則）に見送られタクシーに乗り込むところだった。離婚して別居していた妙の高校生の息子が事故にあったという。「妙」で留守番をしていたふたりのところへ、妙から息子が助からなかったことを告げる電話が入った。やりきれなさから加奈に迫ろうとする誠。すぐに正気に戻り、猛烈な後悔で泣きながら謝る誠に、加奈は泣かないでと声を掛ける。
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