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容疑者Xの献身劇場版「ガリレオ」として2008年10月に公開された映画「容疑者Xの献身」のテレビ地上波初放送です。静かなる展開に反しての、圧倒的なドラマ力のようなストーリー。よかった。感動しました。ロードショーで見ていたら、間違いなく2008年のマイベストに入っていたと思います。
 
「すべての現象には理由がある」vs「私の論理的思考に任せてください」。テレビドラマが、人間ドラマの部分が希薄なところが不満に感じていたので、期待せずに見始めました。大学時代の同期にして親友だった物理学者と数学者、ふたりの天才が、殺人事件を通してスリリングな頭脳戦を繰り広げる類かと軽く見ていたら、その種のストーリーにありがちな展開=単なるテレビドラマの映画版ではなくて…。
 
こちらの思い込みの裏をかく展開に、グイグイ引き込まれました。さすがに東野圭吾さん、そして、第134回直木賞受賞作にして、第6回本格ミステリ大賞など、名だたる賞それぞれの1位を受賞しただけの作品です(とはいえ、冒頭の船の爆発事故は、「ガリレオΦ」からつなげていたわりには、意味があったようには思えないのですが)。
 
天才・湯川が唯一、天才と認めた男、数学者の石神。その石神が、全力で守ろうと決意した花岡靖子と美里のふたり。「誰にも解けない問題をつくるのと、それを解くのでは、どちらが難しいか? ただし、答えは必ず存在するものとする」「幾何の問題と見せかけて、実は関数の問題」、そして、「この問題を解いても(真実を明らかにしても)、誰も幸せにならない」。まさに、それを地で行く展開。用意周到な仕込みに見えて、あっさり被害者の身元が割れてしまった瞬間の「どうして?」が、先の先までを考えての“論理的思考”ゆえの台本だったとは、思いもよりませんでした(ふたつの殺人で、ひとつ死体を“演出”していたとは…)。
 
人生に絶望した自分を救ってくれたのは貴方です。花岡親子には、まったくその自覚はないものの、ふたりの存在に救われたと感じている石神。その気持ちが、痛いくらいに伝わってきました。3人の役者さんの演技は、細かな説明が不要なほど、圧倒的なリアリティをもって心に迫りました。花岡親子を救わんとするために、一点の綻びもない、しかも、二重三重の奥の手までを用意しての“論理的思考”。
 
殺人を隠すために嘘をつくのではなく、新たな真実をつくる。真実を答えるなら、綻びは出ないはず。そのために、まさか自ら殺人までを犯していたとは、本当に驚きました(二度に渡って、石神の通勤ルートがじっくりと描かれた理由、そして、一度目と二度目の違いは、そこにあったのですね)。どんな理由があろうとも、人を殺すことは許されませんが、それでも、そこまでしてしまった石神の気持ちには、心を打たれました。自分のすべて賭けての“献身”に、泣がこぼれました(とはいえ、ラストの絶叫は、ちょっと違うような印象を受けました。もっと静かに、抑えた演出がこそが、ふさわしかったのではないかと。切なさ半減。僕は、あれに、ちょっと引いてしまいました)。
 
石神の誤算は、論理的思考ではコントロールできない自らの心。工藤と頻繁に会う靖子の行動を、自分に対する裏切りに思えて…。ストーカーのような石神の行動。富樫が石神に変わっただけ。石神の厚意を忘れて、恐怖心と嫌悪感で一杯の靖子。思い込みの盲点を突く。それは、見ているこちら側にも突き付けられていました。
 
石神の、湯川を誘っての雪山行き(それにしても、凄い吹雪でした)。「捜査の進展を止めるために、まさか湯川を…」という展開が、一瞬、頭を過りました。湯川は、殺人は合理的ではないから、石神か人を殺すことはないと言っていましたが、その石神が、ついに殺しをしてしまうのかと(湯川も、まさかとは思いつつ、石神が自分に仕掛けて来るかもしれないと考えていた?)。ですが、そうではありませんでした(もっとも、石神自身、すでに殺人を犯していたのですが。それが、石神にとって合理的だったから)。石神に、友だちだからと言う湯川に対して、自分には友だちはいないと否定する石神。言葉とは裏腹の、孤独な天才同士の偽りのない心の交わり。この事件の結論は、すべて僕に任せてほしいと内海に告げてのクライマックスに向けた、見事な伏線のひとつでした。
 
いかにして、この現象が起きたのか? 興味は、真実を明らかにすることだけ。犯人が誰だとか、動機が何かとかには、一切興味がない。そんな湯川ですが、今回は、石神が、どうしてそのような行動、石神がモットーとする合理的な行動とは思えない行為。ヒントは、石神が口にした言葉にありました。君はいつまでも若々しくて、羨ましい。石神は、容姿を気にする男ではなかったはず。石神は、恋をしていると。
 
湯川にとっては、定義のしようがなく、まったく非論理的な行為にしか過ぎない愛。自分同様、そんなものに自己が流されることはないと思っていた石神が靖子に心を奪われ、自分の人生を犠牲にしてまで救おうとした行動を目にして、戸惑いを隠せない湯川。動揺し、苦悩する湯川。前夜の「ガリレオΦ」から一転の、陰鬱な表情の湯川。そんな湯川に、感情よりも論理、誰よりも真実を追求する人と言葉を掛ける内海(冒頭の、内海との愛についての問答も、きっちりとつながりました)。安易な恋愛展開よりも、こういう世界を、テレビドラマにも期待していました。
 
石神の指示に従わず、石神からの手紙を捨てずにいた靖子。あの手紙は、警察に見せたのでしょうか。説明過多にあるリスクはあるものの、もう少し、あの続きが描かれてもよかった気もします。
 
堤真一さんと福山雅治さんも魅せましたが、おふたり以上に、靖子を演じた松雪泰子さんが素晴らしかったです。富樫を殺めたことに気付いたときの表情、富樫が石神に変わっただけと、吐き捨てるように口にしたときの嫌悪感に満ちた言葉と顔つき、石神の電話にいつしか恐怖心を抱く心の内、移送される石神の前で泣き崩れたときの語り口とその姿など、目を奪われました。本作で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞というのも頷けます。
 
その娘・美里を演じた金澤美穂さんは、夏帆さんの妹のような雰囲気(まさかと、プロフィールを確認してしまいました)。本作が映画デビューとのことですが、堂々の存在感。母に対する石神の思いにも気付いていたのか(父親が父親なので、石神の誠実さに惹かれていたのかもしれません)、石神の厚意を踏みにじるかどころか、邪険に扱う母親に見せた表情。よかったです。心を打たれました。
 
監督の西谷弘さんは、映画は本作が2作目とのことですが、第1作は「県庁の星」。あの仕上がりを思えば、本作の素晴らしさも納得です(しかも脚本は、福田靖さんですし)。
 
 
PS.
◆「おまかせ弁当」って、日替わりの「サービス弁当」=安めの値付け=400円程度(少なくとも500円以下では?)と思ったら「600円」と、その種のメニューではないようで…。コース料理にある「メニューはシェフにおまかせ」の類? 日々、どのような中味だったのか、気になるところです(笑)。
 
 
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■あらすじ
 
帝都大学理工学部物理学科で准教授を務めるガリレオこと湯川学(福山雅治)は、相変わらず難事件の捜査協力を内海薫(柴咲コウ)に依頼され、科学的に実証している。そんなある日、薫が勤務する貝塚北署管内で殺人事件が発生。捜査には、内海が尊敬する本庁の刑事・草薙俊平(北村一輝)までが、駆り出されることに。
 
被害者は、身元がわかるものを何も所持しておらず、全裸。手足の指紋は、すべて焼かれ、顔も鈍器のようなものでつぶされていた。当初は被害者の割り出しに時間が掛かると思われたが、まもなく身元は判明。その経歴から、被害者には別れた妻・花岡靖子(松雪泰子)がいることがわかる。
 
靖子は、娘の美里(金澤美穂)とふたり暮らし。そこに、元夫の富樫慎二(長塚圭史)が訪ねて来る。どこに引っ越しても疫病神のように現われる富樫に暴力を振るわれた靖子と美里は、富樫を殺してしまう。我に返って呆然とする母子に救いの手を差し伸べたのは、隣の部屋に住む天才数学者、石神哲哉(堤真一)だった。彼は、自らの論理的思考に基づき、ふたりに指示を出し、ふたりの窮地を救う。
 
内海と草薙は、靖子の自宅を訪ね、事件のことを知らせる。靖子は、事件のことはまったく知らなかった様子で、アリバイも明確だったが、草薙は、それをできすぎていると不審に感じる。捜査が進むにつれて、靖子が犯人であることを確信する草薙だったが、あと一歩というところで確証が得られず、捜査は行き詰まりをみせる。
 
困り果てた草薙は、友人の天才物理学者、湯川に相談を持ち掛ける。驚いたことに、石神と湯川は、大学時代の友人だった。当初は事件に関わることを拒んでいた湯川だったが、石神が犯行に絡んでいることを知り、独自に解明に乗り出す。
 
 
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