さすが、テレビ朝日の看板ドラマ「相棒」というべきでしょうか。見事な出来でした。神戸が描いた事件関係者の似顔絵が、ではなくて、いえ、こちらもなかなかでしたが（笑）、本作の脚本が、演出が、役者陣の演技が。「シーズン10」を迎えるだけのことはあります。第2話以降もこの水準を期待、というよりも、第2話以降もこの水準を維持できるのか、逆に心配になりそうなくらい（笑）。最後に神戸のシーンをもってきたところが、上手い。ドラマを、より印象深いものとしています。事件が解決して一件落着ではなく、最後に明かされた、神戸の真実。今回のタイトルの「贖罪」、神戸にとっての「贖罪」でもあったと。序盤で「冤罪かもしれない、明確な根拠はないが」と言っていた神戸でしたが、実は、ちゃんと身に覚えがあったのですね。
ドラマの基本設定通り、細かいことに気がつき、気になる杉下が気付いて、苦々しい表情で、それを認める神戸。犯人とされた城戸充の言葉に耳を貸さず、犯人と決めつけ、裁判で検察側に請われるままに証言をしていたと。つまりは、偽証。しかし、こちらも、すでに時効。事件の“時”は、永遠に止まることとなりました。
神戸は、事件当時は適切な捜査が行なわれたと思っていましたが、杉下と出会った今は、警察の正義がねじ曲げられることがあることを身をもって知り、事件の検証を始めます。刑事、検事、そして判事。事件の翌年、関係者が退職していたのは、ただの偶然なのか？それとも、城戸充の事件と関係しているのか？ と。
それは、真犯人による、刑事・検事・判事への恐喝でした（殺人犯自らが、冤罪をネタに警察を恐喝するとは、何という事件なのでしょう）。犯人への金を支払いに充てるため、退職していたのです（冤罪に対する責任を感じての退職ではありませんでした）。しかも、彼らは、自分たちのミスの発覚を隠すために、今また、真犯人の無罪にもっていくための用意周到なシナリオを用意するという始末（呉越同舟とは、何だよ）。そんなことができるのか？ できるのですね。法律上のからくりというのか…。この展開も見事。
神戸と杉下の前に立ちはだかったのは、一次不再理。刑事訴訟において、一度判決が確定した事件については、再度の訴訟・審理を禁止するという刑事訴訟法の原則に守られて、真犯人を罪に問うことができなくなりました。
そこで杉下がとった手は、殺人事件ではなく、強盗致死事件での捜査です。相手が真犯人との不法な“取り引き”で冤罪の隠蔽をはかるなら、こちらも“取り引き”を持ち出して不法な“取り引き”を崩すと。この展開も見事。
杉下も言っていたように、事件における一番の疑問は、被害者がストーカー男を、すんなりと部屋に入れていることですが、これは、テレビを見ている視聴者も感じること。被害者が男からの贈り物を部屋に置いているというのも妙。素人でも感じる疑問。当時、これらの疑問を口にした捜査関係者は、いなかったのでしょうか。だとしたら、当時の関係者は、素人以下です（笑）。凶器に指紋があったからということで、あのような無理のある調書が通るとは、恐ろしくなります。
