妹「突然ですが来月のバレンタインは中止になりました」レッド「へ? ラルトス……?」
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2010年01月15日

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 19:14:20.69 ID:8cb3pVhr0
――長いバイトを終え、気だるい気分で家の戸を開けるとでかい狐が居た。
普通の狐のサイズは良く分からないが、多分その二、三倍くらいの大きさだろう。
白く美しい毛並みと触り心地の良さそうな尻尾。狐は扉の開く音に反応しこちらを振り向く。

……驚きのあまりに声も出せなかった。
えーと、こういう場合どうすれば良いんだ? 保健所? 警察?
っつーかこの狐、どこから入って来た? 大体こんな街中にどうしてこんなでかい狐が? 誰かが飼ってたヤツが逃げ出したのか?
いきなり噛みついてきたりしないよな? どうしよう? どうすれば良いんだ?

はてなマーク乱発して混乱する俺を狐は涼やかな色の目で見つめ、そうして口元をにやりと歪めた。









狐「しばらくここに住まわせて貰う。……良いな?」




2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 19:20:26.32 ID:8cb3pVhr0
男「き、狐が、しゃべ、しゃ、喋っ……」

狐「喋って悪いか?」

男「あわわわ……おば……お化けええええええええええ!」

狐「少しは落ち着かんか、阿呆」

ぺしっ、と尻尾で頬を叩かれる。
痛いのやら怖いのやら訳が分からないやらで更に混乱する男。

狐「お化けとは失礼な。わしゃあ神の使いじゃ。喋るくらい造作もない」

男「か、神……?」

狐「んむ、神の使いじゃ」

男「そ、その神の使いがどうしてこんなボロアパートの一室に……?」

狐「それは何か食いながら説明しよう。わしは腹が減った」

男「え、えっと……」

狐「いやぁ、ここまで来るのにだいぶ難儀な思いをした。……何か作ってくれぬか?」

男「その……」



8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 19:23:54.76 ID:8cb3pVhr0
この摩訶不思議な状況をどうすべきなのだろう。
目の前の狐の化物を無暗に刺激して、大変なことになるのだけは避けたい。
とりあえず、要求に従って何か食べる物を用意することにする。

男「えっと、何か食べたいものあります?」

狐「そうじゃな……久々に鼠の唐揚げが食いたい」

男「ねず……」

神の使いの願いとはいえ流石にそれは無理だ。
確かにこのボロアパート、たまに鼠がちゅーちゅー駆け回っているがひっ捕まえて鍋で揚げる勇気はない。

狐「それが無理なら油揚げが良いな」

男「あ、それなら……」

狐「じゃあそれで頼む。……わしは疲れたから少し眠らせて貰うぞ」

そう言うと狐は身を丸め、自分の尻尾を枕に畳に寝そべった。



13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 19:26:41.03 ID:8cb3pVhr0
男「ご、ご飯出来ましたよー……」

油揚げたっぷりの味噌汁と、油揚げと小松菜の煮びたし。
あとは油揚げとキャベツのソテー……とりあえず油揚げオンリーのメニューにしてみた。
大学生活とともに独り暮らしを始め、自炊は得意中の得意だ……が、この狐の口に合えば良いのだけど。

狐「もう出来たのか。……ええ匂いがしとるのぅ」

狐は起き上がるとトテトテとちゃぶ台まで歩み、当然の如く料理が並べられるのを待っている。
そうして茫然としている俺に向かって、

狐「何をしとる。わしゃ早う食いたい」

と、せかす。

男「あ、は、はい。ちょっと待ってて下さい」

何で霊長類様が狐に向かって敬語使ってんだろ……?
とりあえず出来たての料理を目の前に並べてやる。



15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 19:31:07.08 ID:8cb3pVhr0
狐「ふむ……中々美味そうじゃの」

狐はそう言い、器用に箸を持ち料理をヒョイヒョイと口に運ぶ。

狐「うむ、こりゃあ美味い。男は料理が上手いのぅ」

満足げに笑う狐に俺はぎこちなく愛想笑いを返す。
……ん? いや待てよ……?

男「ど、どうして俺の名前知ってるんですか?」

狐「どうしてもこうしてもお主が教えたんじゃろが」

男「あれ? 教えましたっけ……?」

狐「ま、十年以上も前の話じゃがな」

男「じゅ、十年前……?」

狐「なんじゃ、覚えとらんのか」



16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 19:36:44.19 ID:8cb3pVhr0
狐は味噌汁をぐいっと飲み干すと話し始める。

狐「あの時はこの姿じゃなかったからの。……これで思いだすじゃろ」

そう言うと狐は二本脚で立ち上がって飛び上がり、くるんと宙返りする。
どろん、と音がして煙が立ち上り、狐の姿が和服を着た幼い女の子に変わった。

男「う、うわ……」

狐「どうじゃ? 思い出したか?」

男「……」

狐「何とか言わんか」

男「えーと……どちら様ですか?」

狐「……」



21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 19:45:07.57 ID:8cb3pVhr0
男(まずい、怒らせたか……?)

狐「……。……まぁ良い。十年も前の話じゃからな。覚えていなくても当然か……」

少し寂しげな表情を浮かべる幼女(狐)を前に俺はどぎまぎした。
記憶を探るがこんな幼女の姿、どこにもない。

男「えと、その……すみません」

狐「それでも○○山と言う名は覚えておろう?」

男「あ、ああ……爺ちゃんと婆ちゃんが住んでた村の……」

狐「……お主が幼い頃、その村に遊びに来たことがあろう?」

男「八歳くらいの時かなぁ……確かにありました」

狐「ふむ、それは覚えておるようじゃの」



27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 19:50:47.88 ID:8cb3pVhr0
狐「で、お主は一人で山に入り込み迷子になって……」

男「あ」

思い出した。
街育ちの俺は山の様子が珍しく、蝉を追いかけ、好奇心に任せてずんずん進んでしまったのだ。
気付けば辺りは夕闇が包まれ、あちこちで鳴くカラスの声が恐ろしい魔物の声に聞こえた。
帰り道も分からなくなり、半ベソで木々の間を歩き回っていた時……――

狐「そこでわしと出会った。……変化したこの姿でな。そのままの姿を晒しても良かったが、幼いお主は恐らく怖がるであろう?
だから同じ年頃の童女に化けてみたんじゃ。中々可愛いであろう?」

男「あ、はぁ……まあ……」

男(今でも急にでかい狐が現れたら怖えぇよ。てか怖かったっつの……まあ、確かに今の姿は可愛いけど)

狐「わしはお主の手を引き山の麓にある神社まで連れて行ってやり、そうしてお主は無事帰りつくことが出来た。……だったな?」

男「よ、ようやく思い出しました……その節は本当にありがとうございます」

狐「お主の爺様と婆様はわしの使える神の御座す神社の手入れもようしてくれた。供え物も欠かさなかった。
……でなければ、人の子一匹ぎゃーぎゃー泣き喚こうが放っておいたさ」

幼女の姿をした狐は愉快そうに笑うと油揚げの煮びたしを口に放り込んだ。



31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 19:57:02.12 ID:8cb3pVhr0
男「でも爺ちゃんも婆ちゃんももう死んで、村も……」

狐「そうじゃ……気付けば人も減り、廃村になっとった。稲荷神は田の神じゃ。……田を耕す者も居らんくなれば神も必要とされなくなる。
神もあの村に見切りをつけて、何処かへ消え去ってしもうた。……使いのわしを残して、な」

男「……」

狐「それでもわしは待った。また村に人が戻り、田を耕す者が現れれば神も戻っておいでになるかもしれぬと。だがな……」

男「……今は確か、あそこも山も切り崩されて街になってますよね」

狐「……うむ。田が在った場所も固い道路に覆われ、『びる』とやらが立ち並び……わしらの神社も、取り壊された」

男「……」

狐「もうわしには行く当てなどない。さっきは己のことを『神の使い』などと言ったが、その神ももう何処にも御座さぬ。
……わしはもう、何者でもないのじゃ。笑うてくれ、この無様な狐を」

男「……」



34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 20:04:44.41 ID:8cb3pVhr0
男「……それで、どうして俺の家へ?」

狐「そうじゃのう……あの爺様と婆様の血を継ぐ者、わしのことを無下には扱わんじゃろうと思うてな。あと……」

男「あと?」

狐「……虫取り網片手にベソをかいてたお主が可愛かったから、かのぅ」

男「な……」

狐「ふふふ……照れんでも良い、照れんでも良い」

男「て、照れてなんかいませんよ……」

狐「あ。あと、敬語も止めてくれぬか? わしはこれから居候する身。対等にいこうぞ?」

男「……分かった」

狐「ふふ。それで良い」



38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 20:08:51.48 ID:8cb3pVhr0
男「で。しばらくここに住むって、どれくらい居るつもりなんだ?」

狐「なんじゃ、迷惑か……?」

男「いや、そういうわけじゃないけど……」

男(可愛い女の子の姿でそんな切なげな顔するなよー……)

狐「そうじゃの。また新たに使える神が現れるまで、かの」

男「新たな神?」

狐「今のわしはどの神にも使えとらん。つまりな、現代語で言うと、に、に……」

男「ニート?」

狐「そう、それじゃ。だから、人間風に言えば再就職先を探し当てるまでここで世話になるつもりじゃ。……嫌か?」

男「(断りづらい……)嫌……ではないです、ハイ」

狐「だから敬語は止めいと言うとるじゃろが」

男「あ、すみませ……ごめん」

狐「うむ」



41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 20:14:46.54 ID:8cb3pVhr0
男「でも、それで良いの? 前に使えてた神様は?」

狐「必死になって探してはみたが未だ行方不明じゃ。……もう諦めた」

男「……そっか」

狐「……。……飯、美味かったぞ。ありがとうな」

男「お粗末さまでした」

狐「さて、風呂にでも入らせて貰おうかの。長旅で疲れた」

男「今風呂沸かすよ。待ってて」

狐「すまんの」



43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 20:18:20.05 ID:8cb3pVhr0
狐「ほぅ……蛇口を捻るだけで湯が出るのか」

男「爺ちゃんたちの家じゃ薪で沸かしてたもんな。ついでにこれシャワーって言って、こう捻るとお湯が出てくるから」

狐「便利な世の中になったの。全く、人間様様じゃ」

男「あはは……」

狐「これはなんじゃ? 入浴剤?」

男「どれにする? 草津の湯とか別府の湯とかあるけど」

狐「ふむ。これを入れればこの浴槽が草津の湯になるのか?」

男「まぁそんな感じ」

狐「人間とは摩訶不思議な物を作りよるの。……草津の湯に浸かりたい。これを入れてくれんか」

男「分かった」

狐「むふふ……草津。草津の湯か。楽しみじゃのぅ」

男(すげー笑顔……)



45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 20:25:09.80 ID:8cb3pVhr0
男「沸いたよ。狐さん、お先にどうぞ」

狐「すまんな。ではお言葉に甘えて入らせて貰おうぞ」

狐はいそいそと風呂場に向かう。
俺はその後姿を眺めた後、テレビをつけた。
テレビの中でつまらない芸人がつまらないやり取りをしているのをぼんやりと見ながら俺はこの状況をしばし冷静に思い返す。

男(……いやいや、ありえんだろ)

男(狐が突然現れて、油揚げ食って、女の子になって……ないない、有り得る訳がない。夢だ、これは夢だ)

しかし、風呂場からは湯を浴びる音がする。
頬をつねるが普通に痛い。目が覚めることもない。

男(やっぱり現実か……。受け入れるしかないよなぁ……はぁ)

狐「あがったぞー」

男(あ、そういや着替え渡してなかった。……って)

狐は幼女の姿から元の狐の姿に戻り、濡れた身体をぶるんっと震わせ湯を弾く。

狐「ふぅ……良い湯じゃった。……ん? どうしたのかえ?」

男「いや……何で狐の姿に戻ってんの?」

狐「化けるのも結構力を使うのじゃぞ?」

男「あ、ああ……そう……」



48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 20:33:34.67 ID:8cb3pVhr0
狐「人に化けておいた方が良いか?」

男「で、出来ればそうして欲しい……」

狐「この姿も見慣れれば結構可愛げがあるとおもうのじゃが……わしも居候の身。文句も余り言えぬな。仕方ないが化けてやろうぞ」

そうしてまた宙返りすると、先程の幼女の姿になる狐。

狐「さて、これで良いか?」

男「ああ。……でも、こんなちっさい子と同じ屋根の下って何か犯罪くさいなぁ。何か、こう、罪悪感が……」

狐「……? よう分からんがこんな姿もとれるぞ、どうかの?」

狐が袂をふわりと揺らすと、男と同じ年頃の女子に変わる。
ちょうどさっき化けていた童女が成長したらこういう風になるだろうといった感じの。

男「……っ」

狐「どうじゃ?」

男(び、美人だ……すげー美人さんだ……)

狐「どうじゃと問うとる。答えんか」



53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 20:38:17.18 ID:8cb3pVhr0
男「……それでお願いします」

狐「ふむ、ではしばしの間この姿で居ろう。あと敬語を止めい」

男「いや、何か、つい……」

狐「ふふっ、お主は可愛いの。……ここへ来て正解じゃった」

男「……。……あ、耳が狐に」

狐「はぁ……最近は気が緩むとすぐこれじゃ」

狐耳を人間の耳に戻す狐。

狐「神から離れてしもうて妖力も多少弱まっとる。油断すると……ああ、今度は尻尾が出て来よった」

今度は尻尾を元に戻そうと躍起になる狐。

男「……えーと、家の中に居る時だけなら耳と尻尾そのままで良いよ。どうせ俺しか居ないしさ」

狐「そうか。それは助かるの」

狐がそう言うと同時に狐耳と尻尾がぴょんと出る。

狐「特に尻尾を仕舞うのが難儀でなぁ。ほれ、人間にはない部位だからの。耳も、こうやってピンと立てて居らんと座りが悪い」

男「ふーん……そういうもんなんだ」

狐「そういうものじゃ」



55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 20:41:34.24 ID:8cb3pVhr0
男「……俺も風呂入って来るか」

狐「じゃあわしは『てれび』とやらを見ておろう」

男「テレビ知らなかったの?」

狐「存在だけは知っとるが、こうやってじっくり見る機会はこれが初めてじゃ」

男「あ、そう。これ、リモコンって言ってチャンネル変えられるから。えーとチャンネルっていうのは……何かこう、色々だ」

狐「色々か。ま、使えば要領も掴めるじゃろ」

男「じゃ、風呂行ってくる」

狐「良い草津じゃったぞ」

男「あ、そう……」



57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 20:46:44.33 ID:8cb3pVhr0
男(俺が風呂上がったのにも気付かず熱心にテレビ見てる。そんなに珍しいのか?)

狐「……♪」

男(あ、尻尾が揺れてる。面白いのかな……?)

狐「……!」

男(お、耳がぴくぴく動いてる。これは……何だろ?)

狐「ん……男、もうあがったのか」

男「だいぶ前からな」

狐「『てれび』という物は面白いのぅ。動くし、喋る」

男「そうか。……もうこんな時間だし俺は寝る」

男(時間がどうのというより、あまりの超展開に疲れた……寝たい……)



58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 20:51:51.62 ID:8cb3pVhr0
狐「じゃあ、わしも眠るとするか……」

男「あ」

狐「どうした?」

男「布団、ひとつしかない」

狐「……一緒に眠れば良いだろう?」

男「そ……それは……」

狐「照れんでも良い。それとも何か? この姿で添い寝したらお主、疾しい気分にでもなるのかのぉ?」

狐は妖怪じみた表情でケケケと笑う。……いや、実際に妖怪みたいなモンだけど。

狐「では、元の狐の姿に戻ろうか? 毛も柔らかくて共に寝たら気持ちがええぞ?」

男「いや……人の姿のままで頼む」

狐「……ふふっ」

一緒に布団に入ると女特有の甘い香りがした。
童貞の俺は、もうどうにもならない気分で狐を見やる。
が、狐はそんな俺のことを知ったことかと言わんばかりに安らかな寝息を立てている。
……何だか俺もどうでも良くなって、目を閉じた。暑い中、二人で密着して暑苦しい筈なのに不思議と寝心地が良かった。



59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 20:58:48.63 ID:8cb3pVhr0
――その夜あの日の夢を見た。山で迷った、あの日の夢。

男(幼)「う……ぐす……っ。ここ、どこだよ……」

男(幼)「このまま、帰れないのかなぁ……いやだよぉ……」

ふいに、どこからか同い年の童女(狐)がふらりと現れた。
こちらへ向かって手招きする。

男(幼)「……だれ?」

狐   「お主こそ誰じゃ。ここらじゃ見ん顔じゃの」

男(幼)「××(←名字)男。……じいちゃんとばあちゃんの家に遊びに来たの」

狐   「××か……ふむ。お主、迷ったのかえ?」

男(幼)「……うん」

狐   「そんなに泣き腫らしよって」

男(幼)「べ、別に泣いてなんかないもん……っ」

狐   「強がらんでも良い。……ふふっ」



62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 21:06:29.97 ID:8cb3pVhr0
狐   「……ん? その虫籠は?」

男(幼)「えっとね、セミ! いっぱい採ったんだ。自由研究に使おうと思って」

狐   「その蝉を追っておったらこんな山深くまで、か。お主は馬鹿じゃのう」

男(幼)「ば、ばかじゃないよ!」

狐   「……山へ返せ」

男(幼)「え?」

狐   「その蝉は山の物じゃぞ。命の糧にするのならまだ妥協出来るが……山の物は山の物じゃ。返した方がええ」

男(幼)「でも、折角捕まえたんだし……」

狐   「返さぬのならお主も帰さん」

男(幼)「……? よくわかんないけど、逃がせばいいんでしょ? ……わかったよ」

しぶしぶながらも虫籠から蝉を解きった。童女はそれを見ると満足げに笑う。

狐   「ふむ、聞き分けの良い人の子じゃ。あの爺様と婆様の血を継いでおるだけあるな」

男(幼)「じいちゃんとばあちゃんを知ってるの?」

狐   「ああ、良く知っておる。……さぁ、こっちじゃ」



65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 21:10:34.62 ID:8cb3pVhr0
俺は童女に手を引かれ、山を降りる。
同じ年頃の子の手を握る機会なんてあまりなかったので、すこしどぎまぎしながら。

男(幼)(変なしゃべり方する子だなぁ……でも、かわいい……)

狐   「ここらの山は夜も更ければ魑魅魍魎が現れる。早う帰らんと恐ろしい目に遭うぞ」

男(幼)「おそろしい目……?」

狐   「ああ。ここらは妖だらけじゃ。ほれ、今もあの木陰からお主を狙っておるわい」

男(幼)「……ぼくには何も見えないけど?」

狐   「奴らは妖力も低いからの。それにわしとおったら手出しも出来まい」

男(幼)「家までつれて帰ってくれるの……?」

狐   「家までは面倒じゃし、麓の神社までだ。恐らく爺様と婆様、お主の母親や父親もお主のことを探しまわって居ろうからな。……そこまで案内すれば帰れるだろう」

男(幼)「……よかった」

狐   「ほら、神社が見えた。……男よ、もう金輪際山で迷うでないぞ? 良いな?」

男(幼)「うん、わかった」



66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 21:16:17.73 ID:8cb3pVhr0
狐   「じゃあな。わしが案内するのはここまでじゃ」

男(幼)「あ、待って」

狐   「なんじゃ」

男(幼)「せっかく会えたんだしさ……一緒に遊ぼ?」

狐   「……。……仕様もない奴じゃ。少しばかりだぞ?」

男(幼)「ありがと!」

狐   「童の遊び……ふむ、鞠つきでもするか」

童女はどこからともなく鞠を取り出す。
暮れた空の下、鞠つき歌を歌いながらぽーんと鞠をつく童女を俺は不思議そうに見ていた。

狐   「何をぼさっと見ておる。お主もやらんか」

そう言うと童女は俺に向けて鞠を放った。
俺はそれを受け取ると、笑顔で頷いた。



71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 21:22:30.56 ID:8cb3pVhr0
男(幼)「……あー、面白かった。ねえ、明日になったらまた遊ぼうよ。……あれ?」

振り向けばいつの間にかあの童女の姿は見えなくなっていた。
可笑しなことに足もとに転がっていた筈の鞠も消え、代わりに木の葉が風に吹かれて舞っていた。

爺さん 「おお、男。こんなところにおったんか」

男(幼)「あ、じいちゃん」

爺さん 「みんな心配しとったぞ。山へ行ったっきり中々帰って来なかったから」

男(幼)「あのね、山の中で迷ってたらぼくと同い年くらいの女の子が出て来たの。
その子がここまで案内してくれたんだ。……さっきまで一緒に遊んでたのに、どこ行っちゃったんだろ?」

爺さん 「……。……男、きっとそれはこの神社の神様かそのお使い様だよ」

男(幼)「神? お使い?」

爺さん 「礼を言わんといけないな。……ほら、男も」

男(幼)「このおっきい鈴鳴らせばいいの?」

爺さん 「ああ。男も拍手を打って頭を下げなさい」

男(幼)「かしわで?」

爺さん 「爺ちゃんの真似すれば良い。ほら」

俺は首を傾げながら爺さんのするように二拝二柏手一拝した。
あの子にまた会えると良いなぁ、なんて漠然と思いながら。何で今まで忘れていたんだろう。何で……――



73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 21:28:32.82 ID:8cb3pVhr0
目を覚ませば眼前にあの童女の姿があった。……但し、狐の耳付きの。

狐「おい、男。起きんか。朝だぞ」

男「……ん」

男「……何でその姿なの?」

狐「寝てる途中で布団が窮屈に感じてな。小さくなってみた」

男「あっそう……」

狐「さて、成長するかの」

狐は昨日やったように袂をふわりと揺らし、また同じ年頃の娘に姿を変えた。
やはり耳と尻尾はそのままだが。

狐「昨日は夕餉を馳走になったからの。朝餉はわしが作っておいた」

男「そっか。ありがとう」

ちゃぶ台の上に置かれた皿に乗っている油揚げを見て愕然とした。
……また油揚げかよ。二日連続かよ。げんなりしながら箸をつける。

狐「甘く煮しめてみた。美味いであろう?」

男「美味いけど……美味いけどさ……」

狐「……?」



76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 21:34:01.19 ID:8cb3pVhr0
男「じゃあ大学行ってくる」

狐「『大学』……?」

男「集中講義だけどな。あー、面倒くせー……」

狐「わしも行く」

男「え」

狐「……いけんのかえ? 家で待っておるのも暇じゃ」

男「いけなくないけど……耳と尻尾、ばれないようにしろよ」

狐「うむ。分かっておる」

狐が言うと尻尾が引っ込み、耳も人の形になった。

男「油断して尻尾ださないようにしてくれよ」

狐「そのつもりじゃ」



77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 21:36:20.51 ID:Cx/g5ZgTO
尻尾出さないようにとかだれうま



78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 21:42:45.61 ID:8cb3pVhr0
男「あと……その格好」

狐「……?」

男「着物で出歩くのはどうかと思う」

狐「いけぬか?」

男「いけなくはないけど……着物で大学ってちょっと怪しいぞ」

狐「仕方ないのぅ……」

何を思ったか、狐はベランダから身を乗り出すと側に生えていた木からいくつか葉をむしる。

男「何するつもりだ?」

狐「黙って見ておれ」

狐が葉を捏ねる様に丸め、宙へ放ると白いワンピースに変わった。

狐「昨日『てれび』に出よった女子の着ていた奴を元に作ってみた。どうじゃ、凄かろう?」

男「うん。普通にすげーよ」



80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 21:47:22.82 ID:8cb3pVhr0
狐「ついでに耳が出た時隠せるように帽子でも作っておくかの」

そうして余った葉をまた丸めて投げる狐。
狐の手に戻って来る頃に葉は立派な麦わら帽子になっていた。

狐「似合うかえ?」

男「うん、似合う。なんか夏っぽくて良いよ」

狐「個人的にゃあ着物の方が落ち着くんじゃがな……」

男「ま、ワンピースの下ならちょっと尻尾が出ても気付かれないだろうし……行くか」

狐「大学とはどういう場所なんじゃろうか。楽しみじゃなー」

男「あんまりはしゃぎ過ぎないでくれよ」

狐「わしゃ元・神の使いじゃ。そこまで浮かれはせんわい」

男「……だと良いけど」



82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 21:56:23.37 ID:8cb3pVhr0
狐「ほう……ここが大学という場所か。広いのぅ」

男「こんなとこ来てないで新しい神様探しした方が良いんじゃないか? 今更だけど」

狐「今まであの村にしか居らんかったからな。見聞を広める為じゃ」

男「ふーん……あ、友だ」

友「おはよ、男……あれ? 誰?」

男「え、えーと……」

狐「男の従妹のホノじゃ。夏の休暇を使ってしばらくここに遊びにおるつもりでな」

友「ホノさん? 可愛い名前ですね」

狐「ふふふ。そうかえ? 嬉しいの」

男「……」

狐「さ、男。さっさと『講義』とやらに行こうぞ?」スタスタ…

男「……じゃ、じゃあな、友」

友「あ、ああ……(変な喋り方……でも美人だなぁ。男め、羨ましいぞ……)」



84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:01:51.00 ID:8cb3pVhr0
男「お前、ホノって名前だったのか? 知らなかったぞ」

狐「ありゃ偽名じゃ」

男「偽名……?」

狐「稲荷は田の神。稲穂の穂を文字って『ホノ』じゃ」

男「何で偽名なんて使うんだ? 名前がない訳じゃないだろ?」

狐「わしらのような存在は本当の名をおめおめと明かさん」

男「何で?」

狐「名を知られるという事は名を、その存在そのものを握られるという事じゃ。
……お主もむやみやたらと名前を教えるでないぞ? 良いな?」

男「……? まあ良いや。じゃあ俺もお前の事これからホノって呼ぶわ」

狐「うむ」

男「……それにしても良くとっさにあんな嘘思い付くな」

狐「あれくらいの嘘つけんでどうする。お主は馬鹿じゃの。……流石蝉を追って迷うだけの事はある」

男「それはあの時俺がガキだったからだ」

狐「……ふふっ」



86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:04:26.00 ID:8cb3pVhr0
狐「で、その『講義』はわしが受けても良いのかえ?」

男「大人数の授業だし別に一人増えたって構わないだろ」

狐「さてと、どんなものか楽しみじゃ」

ばさばさっ

男(あ、ワンピースの下で尻尾が揺れてる……)

男「おい、ホノ。尻尾、尻尾」

狐「ん? あ、ああ。また油断したの」

男「……ちゃんと引っ込めたか?」

狐「うむ」

男「講義中も尻尾出すなよ。あと、部屋ん中で帽子かぶってたら不審人物だからな。
特に耳はそのままで頼む。……本当、頼むから」

狐「分かっとる、分かっとる」

男「言ってるそばから耳が狐の形になってるぞ」

狐「……む」

男(不安だ……)



90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:11:23.46 ID:8cb3pVhr0
男「……とりあえず耳も尻尾も出さずに済んで良かった」

狐「なんじゃ『講義』というもんはつまらんの。期待はずれじゃ。
訳の分からぬことばかり繰り返しておる」

男「神の使いでも分からないものはあるのか」

狐「代わりにお主も知らないような事も知っておる」

男「ふーん、例えば?」

狐「……聞きたいかえ?」ニヤァ…

また狐は妖怪じみた顔で笑う。
ゾッとするような笑みにたじろぐ俺を見て狐はケケケと笑った。
馬鹿にされたような気がして俺はそっぽを向いた。

狐「どうした。怒ったのかえ?」

男「別に……」

狐「ふふふ。お主はやはり可愛いな。図体がでかくなっただけで最初に会った時と変わらぬの」

男「……」



91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:17:13.45 ID:8cb3pVhr0
男「んじゃ、俺これからバイトだから」

狐「『ばいと』?」

男「手短に言えば金稼ぎだ」

狐「ふむ。じゃあわしも……」

男「それはついて来るな」

狐「む」

男「どうする? 家帰っとくか?」

狐「そうじゃの……一通りこの街の様子でも見て回ろうかの」

男「迷子になるなよ?」

狐「なりゃせんわい。お主じゃあるまいに」

男「だから、あれはガキだったからだっつの」



94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:20:38.23 ID:8cb3pVhr0
狐「まあ良い。あ、そうだ……この街に神社はあるかえ?」

男「一応あるけど。俺は初詣くらいしか行ったことないけどな」

狐「そうか。この街に住まわせて貰うんじゃし、挨拶に行っておくかの。あわよくば……」

男「新しく仕えさせて貰えると良いな」

狐「じゃといいんだがな……」

男「じゃ、家の鍵渡しとくわ。無くすなよ?」

狐「無くしゃせぬ。……んじゃあ『ばいと』とやら、頑張って来いよ」

男「分かった。じゃ、後でな」

狐「うむ」



96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:23:43.00 ID:8cb3pVhr0
狐「ふーむ……神社の場所を訊いとらんかった。わしとしたことが迂闊じゃったな」

狐「まあ良い。歩いていればいつか辿り着くじゃろ……む、あっちの方から神の気配がする。行ってみるか」テクテク…

狐「しかし……どこへ行っても『びる』、『びる』、『びる』……」

狐「味気のない景色じゃの……けほけほ、車の煙も酷いのぅ」

狐「やはり街は住み難い場所じゃ……はぁ。……あ、また耳が」

狐(……ま、帽子で隠れておるからそのままでも良いか。直すのも面倒じゃし)

DQN1「おいそこのねーちゃん」

狐「む? わしのことかえ?」

DQN2「可愛い顔してんじゃんwちょっと今から俺らとつき合わね?」

狐「……すまんの。今から行く所があるんじゃ」

DQN1「そんなのどーでもいいじゃんw」

DQN2「俺らとイイことしよーぜww」

狐「良い事……」

DQN1「そうそうwイイことしよーぜwwww」

狐(こいつら良からぬ事を考えておるな……全身から醜い念が滲み出ておるわ)



98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:28:35.07 ID:8cb3pVhr0
狐「悪いが、断る」

DQN2「つれねーな……無理矢理連れてっちまおーぜww」

DQN1「だなwwwww」

狐(汚らわしい奴らだ……妖力を使って吹き飛ばしてやろうか。いや、街中でやたらと力を使うのも……)

友(あれ? あれって……ホノさん? ……って不良に絡まれてるし!
うーん……放っとく訳にもいかないよな……よしっ)

友「あ、あのー……」

DQN1「あぁん? なんだオメー」

友(こええええええええええ! こえぇけど何とかこの場を切り抜けなくては……)

友「あのぅ、俺の彼女に何か用ですか?」

DQN1「あん? 彼女?」

DQN2「んだよ、彼氏持ちかよ。しらけるな」

友「……そ、それじゃあ行こうかホノ」

狐「……。……うむ」



101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:33:16.04 ID:8cb3pVhr0
狐の手を引きかなりの早足でその場を去る友。

友「あー……怖かった。まだ心臓バクバクしてる……」

狐「おい、お主よ。わしらはいつ恋仲になったんじゃ?」

友「あの、えっと……あれはその場を切り抜けるための嘘で……すみません」

狐「……ふふっ。分かっておる分かっておる。お陰で助かったわい」

友「とりあえずホノさんが無事で良かったです……これからどこか行くんですか?」

狐「ああ、神社にな」

友「神社? どうして?」

狐「挨拶にじゃ」

友「……? ふーん……。こっから神社って結構遠いですよ?」

狐「それでも良い」

友「……俺も暇だし、一緒に行っても良いですか?」

狐「別に構わぬよ。さて、行こうか」



104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:38:59.92 ID:8cb3pVhr0
友「あのぅ……」

狐「なんじゃ?」

友「ホノさんって今、男さんと一緒に暮らしてるんですか?」

狐「昨日からじゃがな」

友「へー……(羨ましすぎる……男、俺と代われよ……)」

狐「しかし街とは住みづらい場所じゃ。お主らよう平気な顔をして暮らせるの」

友「ホノさんはどこから来たの?」

狐「とある村からじゃ」

友「村ですか。自然に囲まれた生活ってのも良いですね」

狐「……今はここと同じような事になってしまっておるがの」

友「……?」



107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:43:19.44 ID:8cb3pVhr0
狐「神社が見えてきたの。ふむ……街中にもこんな立派な神社があるのじゃな」

友「あー、階段上るのきついなー……無駄に長いし……」

狐「近頃の若者は軟弱じゃの」

友「ホノさんだって若者じゃないですか」

狐「ああ……ふふふ、そうじゃったの」

友「ふー……ようやく着いた」

狐「これ、鳥居の真ん中をくぐるでない」

友「え?」

狐「そこは神の通り道じゃぞ。……近頃の若者は常識も知らぬのか」

友(美人だけど変な子だなぁ……)



110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:47:10.85 ID:8ATIepP/0
そうだったのか…



111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:47:26.08 ID:a0HUzTYKO
そうだったのか



112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:48:00.98 ID:BGC/iBuf0
そうだったのか



113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:48:40.01 ID:8cb3pVhr0
神 「……何か来る」

巫女「参拝の方ですか?」

神 「いや……妖の類だ」

巫女「妖? それはまた珍しい……追い返した方が良いですよね?」

神 「……通せ」

巫女「良いんのですか? もしも神様を仇む者だったら……」

神 「その時は滅するまでの話。……主なら出来るだろう? それが無理なら我が直々にやる」

巫女「……分かりました」





神 「……そんな事より今我は忙しいんだ。うはwwwwwwこやつID真っ赤にして必死だなwwwwwwwwwwww
神に楯突く人の子よ……ふるぼっこにしてやるぞwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

巫女(PCなんて供えるんじゃなかった……)



115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:49:58.96 ID:BGC/iBuf0
この神駄目すぐるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww



117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:51:34.81 ID:Cx/g5ZgTO
俗っぽい神……だけども日本の神は俗っぽいの多いしな



118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:53:42.94 ID:4+sZmNoZ0
最近の神は2chすんのかwwwwww



119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 22:54:43.19 ID:8cb3pVhr0
狐 「うむ……清浄な空気であふれておる。心地が良い……」

友 「うーん……確かに木がいっぱいあって空気は綺麗だけど」

狐 「それもあるが……そういう意味ではない。この空気、懐かしいの……まぁ、匂いは違うがな」

友 (……やっぱり変な子)

巫女「……あら、参拝の方ですか?」ニコッ

友 「えーと……まぁ、そんな感じです」

狐 「ま、そういう事じゃ。ほれ、行くぞ」

友 「は、はい……」

狐が巫女の前を通り過ぎようとした時、狐にだけ聞こえるような声でぼそりと巫女が呟いた。

巫女「……貴方、人ではないですね?」

狐 「……っ!」

友 「ホノさん、どうしたの……?」

その時唐突に強い風が吹き、狐の麦わら帽を遠くへ飛ばす。

露わになる狐の耳。



122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:00:12.96 ID:8cb3pVhr0
友 「……!? ホ、ホノさん……耳、耳が……!」

狐 「……見られてしもうたなら仕方ない。隠す必要も、もうあるまい」

言った途端、狐の尾がばさりと現れる。

友 「し、尻尾……? え? え? 何これ? 夢? 幻覚?」

巫女「……どうして此方へいらしたんです」

狐 「そんな敵意剥き出しの目で見んでも良い。わしゃ、何もせんよ。ただここの神に挨拶に来ただけじゃ」

巫女「挨拶、ですか」

狐 「ああ。あと一つ願い事をな」

巫女「お願い事?」

狐 「それはわしが直接言う。頼む……ここの神に会わせてくれんかの?」

巫女「……。分かりました……案内いたしましょう」

友 (全然状況が把握できねぇ……)



125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:03:41.35 ID:8cb3pVhr0
すると、何処からともなくふわりと神が現れる。

神 「案内せずとも良い」

友 「う、うわぁ!?」

巫女「神様……」

狐 「……主様がこの神社の主なるか」

神 「ああ、そうだ。さぁ、こうして我も姿を現したのだ。……主も真の姿を現せ」

神が狐に手を翳すと、纏っていた白いワンピースは緑の葉に戻り地に落ちた。
女の姿をした身も白い毛に覆われた狐へと戻る。

友 「ぎ、ぎゃあああああ!」

神 「主、ただの妖狐ではないな?」

狐 「昔、○○山の麓の神社に仕えておりました」

神 「あー……もう潰されちまったあの神社か。気の毒だな、主も。……して、願いとは何だ」

狐 「初対面にてかかること言うもうちつけなるとは思いまするが……主様に仕えさせて給えたい」

神 「我に? 主が?」

狐 「……ええ」



128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:08:24.54 ID:8cb3pVhr0
神 「……と言われてもなぁ。使いは特に必要としてないし。巫女が居れば事足りるし、大体ここ稲荷神社じゃないから狐はなー……」

狐 「……」

神 「そう悲しそうな顔をするな……何か我が悪者みたいではないか」

狐 「……申し訳ない」

常識では考えられない光景に腰を抜かして巫女に縋り付く友。

友 「あ、あれ、誰なんですか? な、な、何なんですか、何ですかあの化け狐は!? ホノさんは? ホノさんはどこに!?」ガクブル

巫女「あの、離して戴けません? ……付き添いの方なのに知らなかったのですか?」

友 「知らない知らない!」ガクガクブルブル

巫女「……先程の女性は見ての通り元は狐で、あの方はこの神社の神様です」

友 「……はい?」

巫女「ですから……」



130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:14:10.50 ID:8cb3pVhr0
友 「えと……本当にホノさん?」

狐 「ああ、そうじゃ。すまんの、驚かせたようで」

気まずそうに牙の揃った口元をにやりと歪める狐。
その異様な光景に身を引く友。

友 「か、噛みついたりしないですよね?」

狐 「そんなことしやせんよ。正体は秘密にしておくつもりじゃったがな。
男にも迷惑がかかるかも知れぬからの。お主、この事は男以外に他言するでないぞ。さもなくば……」

友 「ひっ! わ、分かりました!」

狐 「うむ。良い返事じゃ」

巫女「貴方が敵意のない妖で安心しました。……参拝に来る方なんてお正月かお祭りの時くらいしか居ません。
久々のお客さまですし……お茶でも飲んでゆっくりしていかれたらどうです?」

神 「いや、それより飲みに行かないか? 我は茶より酒が飲みたい。
……今さっきVIPで馬鹿な人の子を論破した所で気分が良いのだ。祝杯をあげたい」

狐 「『びっぷ』?」

巫女「お酒は程々にして下さいよ……あとインターネットも」



131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:15:31.35 ID:T0juve+u0
神がvipperだと・・・?



132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:16:02.82 ID:4+sZmNoZ0
神様VIPPERかよwwww



133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:17:08.23 ID:Cx/g5ZgTO
巫女さんもvipperだったりして



134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:17:24.68 ID:8cb3pVhr0
神 「おい狐よ、主は酒が好きか?」

狐 「ええ。大好物じゃ」

神 「……そこの人の子はどうだ?」

友 「え、えと……俺は遠慮しときます……」

狐 「良いではないか。共に飲み明かそうぞ」

友 「(断るのこえぇ……)……はい」

巫女「全く、もう……お金はどうするんですか」

狐 「この木の葉で作れば良かろ? 術を使えば簡単じゃ」

巫女「駄目ですよ、それは。犯罪ですよ」

神 「大丈夫だ。賽銭がある」

巫女「また賽銭をそんなのに使って……」

神 「我に奉納した金だろう。我が使っても良いじゃないか」

巫女「……」

神 「さあ行こうか。近所に良い飲み屋があるんだ」

狐 「ではまた人の姿に戻らねばな。ふふ、酒じゃ酒じゃ」



138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:21:49.88 ID:8cb3pVhr0
神 「今宵は無礼講だ。神も妖も人も関係ない。人よ狐よ、畏まった物言いはせんで良い。
んでもって、全部我の奢りだ。遠慮せずに飲め飲めwwwwwwwwww」

巫女「奢りって……お賽銭じゃないですか」

狐 「ありがたいのぅ。ではお言葉に甘えて」

神狐「「かんぱーい!」」

友 「……あの二人だけやけにテンション高いですね」

巫女「……ですね。あ、私ウーロン茶で良いです」

友 「じゃあ俺もそれで」

狐 「何を言うとる。居酒屋で酒を飲まんでどうするのじゃ」

神 「そーだそーだwwwwwwwこれは神からの命令だ! 飲め! 天罰下すぞ!」

狐 「神よ、この『ちゅーはい』とは何ぞや?」

神 「甘い酒だ。旨いぞー」

狐 「そうか。じゃあそれにするかの。友と巫女は何にする?」

友・巫女「「……」」

神 「狐よ、飲み過ぎて尻尾出すなよーwwwwwwwwwwwwwwwww」

狐 「心配ご無用じゃ」



147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:28:37.53 ID:8cb3pVhr0
男 「……バイトから帰ったのにホノが居ない」

男 「あいつに鍵渡しっぱなしだった……家にも入れねぇ」

男 「ったく、どこで油売ってんだ……」

男 「……ん? 携帯が鳴ってる。……友からだ。何だろ?」

男 「もしもし?」

友 『もしもし……』

男 「どうした友? いやに元気のない声だな」

友 『男、助けてくれ……狐と神に拉致られて無理矢理飲まされてる』

男 「狐……ってまさかお前ホノの正体を……!?」

友 『うぇっ。飲み過ぎた、つか飲まされ過ぎた。吐きそう。……大丈夫だ、ホノさんの正体の事、他の人には言わないから』

男 「なら良いんだけど……」

友 『……それより早く来てくれ。今、近所の居酒屋に居るから。出来るだけ早く頼む。
もう大変な事になってる。……あ、もう無理吐く』プツッ…ツーツー

男 「……」



149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:30:59.66 ID:8cb3pVhr0
友 (あぁ……帰りたい……)

神 「あはは、友よ。吐いたかwwwww吐いたら吐いた分飲めwwwwwwwwwwww」

友 「……つか、こんなに飲んで大丈夫ですか? お賽銭で足ります?」

神 「うぃー、ひっく。賽銭だけじゃあ飲み代足りなくなったら神の力で増やすんだよ」

友 「神の力?(絡み酒かよ……最悪だ)」

神 「ああ。主にパチンコ、たまに競馬。競艇も良いぞー。我は神だからな。そこらの人間より勘が鋭いんだ」

巫女「……」

友 (こいつ本当に神かよ……)



157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:37:05.71 ID:8cb3pVhr0
狐 「う……ぐす……いくら待ってもわしの神は帰って来ぬ……。
村も田畑も潰され、山も切り崩され……仲間ももうおらなんだ……」

神 「そーか……」

狐 「様変わりする村の姿を独りきりで見る寂しさ……わしゃあな、切のうて、切のうて……ぐすっ」メソメソ

神 「ま、飲んで忘れな。飲めば何でも忘れられるwwwwうはwwwww酒スゴスwwwwwwwww」

狐 「酒なんて久々じゃ。こうやって誰かと酒を飲み交わすのも……」

神 「湿っぽいのは無し無しwwwwwほぅら、神直々にお酌してやろうwwwwww」

狐 「ありがたいの。……こんな、仕えてた神に見捨てられるような狐に……ううう……」

神 「泣くな泣くなwwwwwwwあっはっはっはwwww泣き顔ワロスwwwwwww」



158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:41:28.74 ID:rwqKgind0
だめだこの神wwwww



159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:43:10.04 ID:Cx/g5ZgTO
もうやだこの神



160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:43:26.39 ID:8cb3pVhr0
友 「……うぇ。吐いたのにまだ気分が優れない……」

巫女「らいじょぶれふかー?」

友 「巫女さんこそ大丈夫ですか? 顔真っ赤ですよ。呂律回ってないし」

巫女「……あんまり、らいじょぶじゃにゃいれふ」

友 「横になった方が良いですよ」

巫女「……膝枕」

友 「え?」

巫女「膝枕してくらはいー。お願いひまふぅー」

友 「え。あ。それはちょっと……」

巫女「私じゃらめれすか? らめにゃんれふかー?」

友 (うげ、この人も悪酔いしてる……ホノさんは泣き上戸で泣きっぱなしだし、神様は笑い上戸で笑いっぱなしだしもう収拾つかねー……)

神 「あ、巫女って酒弱くてさー。飲ますとすげー面白いだろ?wな?ww」

友 (男……早く来てくれえええええ)



163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:48:12.47 ID:8cb3pVhr0
男 「ホノ! 友!」

友 「あぁ男……! ようやく来てくれたか……」

狐 「お、男おおおおおお!」ガバッ!

男 「うをっ!?」

狐 「ううう……わしゃあな、村も神社も無くなった今、頼れる者はお主しかおらなんだ。
お主だけなんじゃあああ……ぐす……うわあああん」

狐 「そこに御座す神にも断られた。わしゃ、もう永遠に『にぃと』なんじゃ……ふえぇぇん」

神 「あ、ども。△△神社の主やってます神でーすwwwwwっうぇwwwwwほら賽銭寄こせwwwwさwwwいwwwせwwwんwwwwwwwww」

巫女「こんにゃ職業じゃ神様以外のはにゃしあいて何てほろんどいにゃいし、出会いもにゃいひ、もうやーだー!
巫女しゃん辞めらいのー。そいで、ふつーのおんにゃにょこににゃるんれすー」

神 「おいおいwwww主が辞めたら誰が我の世話をするんだwwwwww」

狐 「わし! わしが致す! 仕わせてくれぬか!」

巫女「やー! いやれすー。神様は私がお世話するんれふぅ!」



男 「……確かに大変な事になってるな」

友 「……だろ?」



166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:54:12.15 ID:8cb3pVhr0
男 「えっと……神様? 神主さんじゃなくて?(和服着た普通のにーちゃんにしか見えない……)」

神 「そだ。我が神なりwwwww畏まらなくて良いぞwwwwwwwwwwwww
敬語とか苦手なんだよねー。そこの巫女にも再三言ったけど全然直そうとしなくってさーwwwwww」

男 「あー……そうなんですか」

神 「だから敬語は止めろってwwwwwwwそこの狐にも後で言っといて。今言っても酔ってて覚えて無いだろうし」

男 「分かりまし……分かった」

神 「あと主よ、正月くらいしか参拝に来ないだろ?」

男 「はぁ、まあ……」

神 「たまには来い。話し相手が巫女だけというのも中々寂しいもんだ。そこの人の子もだ」

友 「はぁ……」

神 「来てくれたら茶ぐらい出すから。代わりに賽銭寄こせよー」

友男「……」

神 「っと。結構飲んだな。もうそろそろお開きにすっかー」



169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 23:59:34.17 ID:8cb3pVhr0
神 「おーい、巫女。立てるかー?」

巫女「立てまひゅよー。ほらー」フラフラ

神 「無理せんで良い。ほら、肩貸してやるから」

巫女「しゅいません……」

男 「ホノ、帰るぞ」

狐 「嫌じゃー。まだ飲むんじゃぁ」

男 「我儘言うな」

狐 「むー……」

男 「むくれるな」

狐 「……分かった。帰れば良いんじゃろ」フラ…ッ

男 「おっと。足元ふらふらじゃないか。……肩に腕回せ。掴まってろ」

神 「あ、狐よ。そういえば主の真の名をまだ聞いてなかったな。何と言う?」

狐 「……それは仕わせてくれせば教えましょうぞ」

神 「ふ……あはははは。そーか、そーか。分かったよ」



172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 00:06:42.62 ID:deaxD/Ph0
―帰り道―

友「しかし、びっくりしたなぁ。急にホノさんから尻尾が生えるわ狐になるわで。
で、本当にホノさんとは従妹なの? ま、まさかお前の正体も狐だったり……」

男「んなわけねーだろ。……かくかくしかじかで、家に置いとく事になったんだ」

友「はぁ……大変だな、お前も」

狐「うぅー……男よ、お主には迷惑かけるの……」

男「良いよ、別に。……でも鍵持ったまんま勝手に飲みに行くのだけは止めてくれ」

狐「うむー……わしゃ、ただ『にぃと』のままで安穏と生活する気は無い。
明日からはちゃんと家事も手伝う。これで『家事手伝い』に昇格じゃー……ふにゃ」

男「はいはい分かったから。今度から飲み過ぎるなよ……って、耳と尻尾!」

狐「うぅ……酔って上手く力が使えぬ……あぁ、段々眠気が……」

女の形をした姿はみるみる崩れていき、大きな白狐に戻る。
コンクリート道路の真ん中で腹を見せぐうぐう寝息を立てる狐。

男「あー……もう」

友「……良かったな、周りに人が居なくて」

男「誰かに見られる前に家に運び込まなきゃな……友、手伝ってくれ」

友「はいはい……」



176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 00:12:40.30 ID:deaxD/Ph0
―こっちも帰り道―

巫女「酒ばっかり飲むひ、何かにちゅけてパチンコ行くひ、ネット漬けでたまに訳にょ分からない事言うし、
神とひての威厳皆無だけど……私、神様の事大好きれふよー。にへへー」

神 「そーかそーか。そりゃ良かった」

巫女「そーじゃにゃかったらこーんな職とっくにょ昔に辞めてまひゅよー。えへへー。かみしゃまー、ちゅー。ちゅーしてぇ」

神 「はいはい(酒のせいで相当壊れてるな)」チュッ

巫女「へへへー。嬉しいー」

神 (こんな可愛い巫女に仕えて貰って……我、結構リア充? それにしても……あの狐、どうしようか)

巫女「あにょキチュネなんかになびかにゃいでくらはいよー、かみさまー」

神 「……。……あの狐が仕えていた神は、きっともうどこにも居らんだろう」

巫女「へにゃ?」

神 「信仰する者を失い、社も崩された神は恐らく……」

巫女「……おしっこしたいでひゅ」

神 「え」

巫女「漏れちゃふ……」

神 「か、厠はどこだー!」



177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 00:13:32.48 ID:mJFCzMRF0
これはwwwwwwwwwww



178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 00:15:54.11 ID:sZgdoktD0
ちょwwwwwwww



187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 00:35:09.56 ID:deaxD/Ph0
―明くる朝―

巫女(頭がガンガンする……ほとんど飲まされた後のこと殆ど覚えてないし……)

巫女(それでも巫女という聖職に就いた身。早起きしてしっかり職務をこなさなきゃ。まずは境内の掃除を……)

巫女(……って、何で狐が箒持って居るの!?)

狐 「おや、巫女よ。遅かったの」ニヤニヤ

巫女「……どうして貴方が掃除してるんですか」

狐 「そういう気分だからじゃ」

巫女「さてはそうやって神様を懐柔させる魂胆ですね……この女狐め! 神様に仕えるのは私だけで充分なんです!」

狐 「懐柔とは人聞きの悪い。わしは掃除をしとるだけだ」ニヤッ

巫女「ぐぬぬぬ……」



神 (朝っぱらから騒がしいなぁ……こちとら帰って来てからおっぱいうpスレで一晩中kskしてたってのに……)



191 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 00:41:17.34 ID:deaxD/Ph0
男 「むにゃ……もう朝か」

男 「あれ? ホノが居ない」

男 「ん? 置手紙がある。……達筆すぎて読みにくい」

『男へ
昨日は世話をかけたな。すまんかった。
代わりに掃除と洗濯は済ませておいた。
朝飯も作ってあるのでちゃんと食うように。
わしはあの神社に行って来る。
今日も『ばいと』とやら、頑張って来いよ   ホノ(偽名)』

男 「朝飯……いやな予感がする」

冷蔵庫を開ける男。
そこには稲荷寿司が。

男 「……もう油揚げ食べ飽きたっつの」



192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 00:41:26.33 ID:LFgWqW8s0
この神は間違っている方向へのアクティブさが成長した模様



193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 00:42:19.79 ID:tMsZznb8O
おっぱいに釣られてkskしちゃう神様とか
信仰したくねえwww



198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 00:54:32.31 ID:deaxD/Ph0
神 「何だ朝からうるさいぞー……って、昨日の狐じゃないか」

狐 「神よ、おはようございます」

巫女「神様ちょっと聞いてくださいよ。この女狐が私の仕事取りやがったんです」

神 「広い境内を一人で掃除するのも大変だろ。手伝う者が出来て良いんじゃないか?」

巫女「良くないです!」

狐 「……」ニヤニヤ

神 「狐よ、掃除が終わったら茶でも出そうか。……それまで我は寝る。諸事情で夜更かししすぎた」

狐 「こりゃありがたいの」

巫女「神様!」

神 「……但し、いくら掃除してもここに仕わすつもりは今のところ無いからな」

狐 「……」

巫女「……」ニヤッ



201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 01:05:39.07 ID:deaxD/Ph0
友 「お邪魔しまーす……」

巫女「あら、友さん」

友 「参拝に来ました。昨日は結局昨日は飲むだけだったから」

巫女「神様なら本殿にいらっしゃいますよ」

友 「そうですか。じゃあ、ちょっと会って来ます」

巫女「後でお茶でも出しますから、ごゆっくりどうぞ」

友 「ありがとうございます。それじゃあ」



友 「神さ……」

神 「50……51……」

友 (何でこの人腹筋してんだろ……)

神 (何で一眠りするつもりだったのにあんなスレ開いちゃったんだ我……)



203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 01:12:23.94 ID:LFgWqW8s0
この腹筋は修行なんです
決して腹筋スレなんて開いたんじゃありません



204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 01:17:31.60 ID:/Nijf7g+O
てかやるのかwwww
律儀だな



206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 01:20:29.58 ID:deaxD/Ph0
友 「あの……腹筋中失礼します……」

神 「52……53……お、何だ友か」

友 「どうして腹筋なんか……」

神 「人間如きに釣られるとは我もまだまだだな……」

友 「……?」

神 「いや、独り言だ。こ、これは体力づくりを兼ねてだな……ゴニョゴニョ」

友 「えーと、何供えて良いか分からないからとりあえずお酒買って来ました」

神 「おお! 嬉しいな。……主にはいつか幸を与えようぞ」

友 「あ、ども。ありがとうございます」

神 「何だ、缶チューハイと甘いカクテルばっかじゃないか。
日本酒が良かったんだけどなー……ん、まぁ贅沢は言えないか。で、賽銭は?」

友 (酒供えたのに賽銭も要求するのか……)チャリーン

神 「その小銭も後々我の力で三倍にも四倍にもしてやるからな。ぬふふ」

友 「……」



210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 01:25:23.23 ID:deaxD/Ph0
友 「そういえばここってどんなご利益があるんですか?」

神 「恋愛成就」

友 「え」

神 「何だその顔は」

友 「恋愛? あなたが?」

神 「神に対して何て言い草だ。天罰下すぞ」

友 「す、すみません……」

神 「ま、恋愛以外にもその他諸々って感じだな。恋愛関係無い願掛けする奴も多いし」

友 「……あのー、本当に恋愛成就の神様なんですか」

神 「ああ、そうだが?」

友 「……ちょっと、お願い事がありまして」

神 「ほう?」



242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 07:20:32.93 ID:gOwd2qWD0
>>241
kwsk



259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 10:45:19.45 ID:deaxD/Ph0
―男、バイトを終え大学へ―

男 (今頃ホノ神社で何してんだろ……)

男 (仕えさせて貰えれば良いな……でも、あの神はちょっとなぁ……)

先輩「男くん」

男 「せ、先輩さん!」

そこには男が密かに思いを抱いている先輩の姿があった。

先輩「バイト帰り?」

男 「は、はい! 店長にこき使われて疲れちゃいましたよ。もー、この歳で肩こり気味です」

先輩「肩こり? じゃあ肩揉んであげよっか」

男 「へ?」

男の返事を待たず、先輩は男の肩を揉み始める。

男 (や、やばい……この密着感……)

先輩「本当だ。カチカチだよ、ココ」

男 (それは多分緊張のせいもあると思います……)



261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 11:01:53.44 ID:deaxD/Ph0
神 「で、男とその先輩とやらをくっ付けてやりたい……と?」

友 「……実は、俺も気になってるんです。先輩のこと。男には秘密にしてるんですけどね」

神 「あらら」

友 「これのせいで友情に亀裂が走るようなことになるのも嫌だし……」

神 「ならば主が身を引けば良いだけの話じゃないか」

友 「でも、俺、男より先輩のこと好きだって言える自信あるんです」

神 「おー」

友 「それに男にはホノさんが居るじゃないですか。……正体は狐だけど、綺麗で可愛いし」

神 「確かにあの化け方は今まで見てきた妖狐の中でもピカイチだな」

友 「……まぁ、先輩は俺のことも男のことも何とも思って無いんでしょうけどね」

神 「行くか」

友 「え?」

神 「その先輩とやら、見に行こう」



263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 11:15:35.98 ID:deaxD/Ph0
狐 「ふぅ、掃除終了!」

巫女「……殆ど私がやりましたけどね」

狐 「な。わしの方が沢山やったじゃろう」

巫女「いーえ。私がほぼ全部やりました」

狐 「わしがやった」

巫女「何か文句ありますか」

狐 「嘘つきは泥棒の始まりじゃぞ!」

巫女「私は泥棒じゃなくて巫女です」

巫女(神様に仕え、私の地位を奪おうとする女狐め……神様は私のものなんだから)

神 「巫女、それと狐よ。我はちょっと出かけてくる」

巫女「出かける? ……またお酒ですか?」

神 「いや、大学にな」



265 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 11:26:40.20 ID:deaxD/Ph0
狐 (確か男は『ばいと』を終えたら『大学』に行くと言っておったな……)

狐 「わしもついて行って良いですかの?」

神 「ああ、良いぞwwww友も狐も敬語使わんでも良いのにwwwwwwwwww」

友 「一応神様ですし……」

神 「……一応? 我、神としての威厳無い?」

友 「……正直言って無いです」

神 「神様ちょっぴりショック……」

巫女「しっかりして下さいよ」

神 「ま、行って来るから。そんじゃ、そういう事で。留守番よろー」

巫女「はい。気をつけて行ってらっしゃいませ」



268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 11:47:44.04 ID:deaxD/Ph0
―大学―

神 「大学ねー。若い姉ちゃんがいっぱいでうはうはwwwwwwっうぇwwwww
参拝に来る奴なんざ殆どジジババばっかだもんなーwwwwフル勃起ものだなwwwww」

友狐「「……」」

友 「……あ。先輩と男だ……って」

友 (あいつ肩揉んで貰ってやがるぅぅぅぅ! 羨ましいぃぃぃぃ!)

狐 (……何じゃろう? こう、嫉妬心のようなものが、ふつふつと……?)

先輩「気持ちいーい?」

男 「は、はい。丁度良い感じです……」

友 「……男」

男 「あ、友とホノと神様……」

先輩「ホノ? 神様?」

神 (話こじれると面倒だし自分が神な事伏せとくか……)

神 「△△神社の神主やっててあだ名で神って呼ばれてるんだwwwwwそういう事にしといてくれwwwwwwww」

狐 「わしは男の従妹のホノじゃ。よろしくな」

先輩「へー……」



271 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 12:00:36.97 ID:deaxD/Ph0
先輩「今から学食行くんですけどぉ、一緒に行きますかー?」

友男「「行く行く! 行きます!」」

神 「じゃ、我も行こうかな」

狐 「おおおー! 狐うどんがあるではないか! わしはこれがええ!」

男 「はいはい。分かったよ」

男 (尻尾出してたらきっと千切れんばかりに振ってるんだろーな……)

狐 「男よ、食券とは何ぞや?」

男 「ここで券買って食べ物と交換するんだよ」

狐 「ふむ」

神 「じゃ、我はカレーにするかな」

男 (その金も元は賽銭なんだろうな……)

先輩「ボクはたぬきうどんにしよっと」



274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 12:16:09.67 ID:QvvdmTVj0
先輩が…ボクっ娘だと…っ!?



275 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 12:16:20.81 ID:jHLAyGcPO
まさかの先輩ボクっ子



301 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 14:59:57.80 ID:yw8fPpzJ0
しっぽもふもふしたい



302 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 15:04:50.41 ID:deaxD/Ph0
狐も先輩もメスですよ


狐 「揚げがうまーいっ」

男 「そっか、良かったな。……つか、普通飽きないか? 油揚げに」

狐 「お主は油揚げの魅力に気づいとらんな。人生の半分以上を損しとる」

男 (言いすぎだろそれは……)

友 (さすが狐……本当に油揚げ好きなんだなぁ)

友 「先輩はどうしてたぬきうどんにしたんですか?」

先輩「え、あ、えーと……何となくだよー、何となく。ボクもうどん食べたいなーって思って」





神 「うひひ……最近の若者は露出度の高い服を着てるなwwwwwwテラモエスwwwwwwwww」



306 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 15:25:32.59 ID:deaxD/Ph0
狐 「さて、うどんも食うたしこれからどうするかの?」

先輩「あ、ボク△△神社行ってみたいですー。近所なのにまだ行ったこと無くって」

神 「お賽銭はずめよー。その分幸せになれるからなwwwww」

男 (この神は本当にどうしょうもないな……)

狐 「……神よ、ちょっと良いかの」

神 「……。……ああ」

神 「悪いけどちょっとホノと話してくる。待っててくれ」

先輩「……?」



310 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 15:42:50.43 ID:deaxD/Ph0
狐 「あの先輩とやら……」

神 「……主も気付いてたか」

狐 「恐らく……」

神 「狸かその類だな」

狐 「……どうしましょうぞ?」

神 「どうもこうも。別に向こうに敵意があるわけでも無し、本人も正体隠して勉学に勤しんでいるようだし」

狐 「気付かなかった振りをしろ、と?」

神 「我は神社に居る時以外、神の気配を消して完全に人に成りすましている。が、主が変えられるのは容姿だけだ。
もしかしたら向こうも主の正体に気付いているかもしれないぞ」

狐 「……」

神 「と言うわけで、気付かなかったフリをしましょうって事で会議終了ー。また男たちンとこ戻るぞー」



316 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 16:02:48.37 ID:deaxD/Ph0
神 (狐の七化け狸の八化けという言葉があるからな……狐より化ける能力に長けている狸だから人の世でも生きていけるんだろう)

先輩「神さまー、ホノさーん。早かったですねぇ」

狐 「ちょっとした話し合いじゃからな」

神 「ま、そゆこと」

男 「何か良く分からんがとりあえず神社行こうか」

先輩「だねぇ」

狐 (うむ……人間の女の香を上手く纏っておるが、微かに狸のにおいがする)

狐 (狸か……昔、○○山に住まう狸と化け比べをして惨敗してからは狸はあまり好いておらぬ……)

狐 (じゃが、男や友に囲まれて普通の人間として暮らして居るようだし無暗に正体をばらすのも一寸可哀想……だな)

狐 (……神の言うとおり秘密にしておくかの)



341 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 19:06:25.52 ID:deaxD/Ph0
先輩「うわー。ここが△△神社かぁ。広いなぁ。広くておっきいなぁ」

神 「だろ?wwwwwあ、巫女。ただいま◯こー」

巫女「ちょ、神様ったら……」

友男((駄目だこの神……早く何とかしないと……))

巫女「……って」

巫女、神を引っ張りヒソヒソ話。

巫女「狐の次は狸ですか」ヒソヒソ

神 「本人は正体ばれてないつもりみたいだから、そこら辺よろしくな」ボソボソ

巫女「まさかアイツも神様に仕えたいとか言い出したりしませんよね」ヒソヒソ

神 「それは多分無いから大丈夫。あと、我は神じゃなくて神主って事になってるからそこら辺もよろしく」ボソボソ

巫女「はいはい、分かりました」ヒソヒソ

先輩「あのぅ、何を話してるんですかー?」

神 「何でも無い何でも無いwww折角来てくれたんだし茶でも出そうか。
友が朝に持って来た酒もあるぞー? どうする?」

先輩「じゃあ、お言葉に甘えて……」



344 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 19:22:16.65 ID:deaxD/Ph0
先輩「ふはぁ……お茶おいしいです。神社で木々を眺めながらお茶ってのも風流で良いですねぇ」

巫女「お茶菓子もあるので遠慮無く食べて下さいね」

神 「グビグビ……ファジーネーブルってのも中々旨いな」

友 「……昼っぱらから酒ですか」

男 (駄目な大人の代表だな、この神は……)

狐 「ムシャムシャ ハグハグッ……この饅頭旨いのぉ。……む。もう無い。巫女よ、おかわりは?」

巫女「この大食らい狐……」ボソッ

先輩「きつね……?」

狐 (こやつ、わしの正体に気付いていないのか……?
……となると、変化以外ではそこまで妖力を使いこなせてないのか。ふむ……)

巫女「今、新しい茶菓子持って来ますよ」



346 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 19:31:55.25 ID:deaxD/Ph0
巫女「さあ、ホノさん。どうぞ召し上がれ」

狐 「うむ。すまんの」

狐は迷うこと無く一番大きな饅頭に手をつけ、がぶりと貪る。
……と、その瞬間狐は硬直する。

狐 「ぬああああ!! 辛い、辛いいいいい!!」

巫女「あ、すみません。言うの忘れてましたが、これロシアンルーレット饅頭です。
当たりにはカラシがたっぷり練りこまれてます。大当たりですよ、ホノさん」ニコッ

狐は大慌てで手元の茶を一気飲みするがそれでも足りず、手水舎に顔を突っ込んで水をぐいぐい飲む。

巫女(ふふふ……狐が人に騙されるなんて愉快愉快……)

狐 「お主、何て事してくれたんじゃ!」

辛さのショックのせいか、振り返った狐の耳は狐のソレになっていた。

男 「あちゃー……(先輩にも見られちゃったよ……)」

先輩「……」



349 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 19:48:35.56 ID:deaxD/Ph0
男 「……ホノ。耳、耳」

狐 「む。……しまったのぅ」

先輩「……」ポカーン…

友 「あ、あの先輩。あんまり驚かないで下さいね? ……実は、ホノさんは狐で……その……」

先輩「えっと……ボク、そういうのあんまり気にしない方だから」

男友((気にしない方って……))

男 (先輩って優しくておっとりしてて何事にも動じなさそうとは思ってたけど……)

友 (普通の人間だったら流石に驚くだろ。人だと思った奴が狐だったら)

男友((先輩すげーな……))

先輩「あのぅ……ちょっと二人きりでお話ししても良いですか?」

神 「じゃー我も混ざるわwwwwwww」

先輩「え。でも……」



352 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 19:52:34.09 ID:deaxD/Ph0
神は先輩の耳元で囁く。

神 「我は神だ。神主などでは無い」

先輩「へ……?」

神 「そうです。この神社の神は

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   \  丶       i.   |      /     ./       / 
    \  ヽ     i.   .|     /    /      / 
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 /    /    /       |    i,      丶     \ 」



357 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 20:07:57.04 ID:deaxD/Ph0
先輩「もしかして……ボクの正体気付いてましたか?」

神 「そりゃもうばっちりとwwwwwwwwwww」

狐 「逆にお主は耳を出すまでわしの正体に気付いておらんかったのか? ……うぅ、口の中がまだ辛い」

先輩「全然、全く気付いてませんでしたー……まだ修行中で、化ける以外は何にも出来ないんですよぅ」

神 「修行中、か。今の今まで人間に悟られず過ごせたなんて結構大した事だと思うが?」

先輩「そんなことないですよぅ。……あの、」

神 「なんだ?」

先輩「た、たぬき汁にするのだけは勘弁して下さい……」

狐 「煮るのが嫌なら焼いて食おう」ニヤッ

先輩「ひゃあっ」

狐 「冗談じゃ。狸の肉は不味いから好かぬ」

先輩「た、食べた事あるんだ……」

狐 「ふふふ、これも冗談じゃよ」



359 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 20:20:18.01 ID:deaxD/Ph0
先輩「ひ、酷いですよぉ。ボクの事からかって遊んで楽しいですか?」

狐 「或る狸と化け比べして負けた事があるんじゃ。狸は好かぬ、というのは本当じゃ」

先輩「ホノさん、もしかして……○○山に住んでいましたか?」

狐 「む。何故それを」

先輩「ボクの父君が神の御使いの狐と化け比べをした事があるって言ってましたぁ。
ボクが小さい頃だからあんまり覚えてないんですがね」

狐 「ほぅ……お主はあの時の子狸か。立派に成長したの。
その血を継いでおるから人の世でも正体を悟られずに過ごせとるんじゃろな。
その父は今どうしとるか? 住んどった山も切り崩されてしもうとるだろう?」

先輩「父君はふいをつかれて猟師に殺されました……助けに行こうとした母君も……」

狐 「そう、か……獣も人も最期は呆気無いものじゃからな。また『りべんじ』したかったの……」




神 「……なーんか湿っぽい話になって来ちゃったな。我、場違い?」



364 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 20:38:46.53 ID:deaxD/Ph0
狐 「で、お主はどうしてここへ?」

先輩「父君も母君も、住む場所も失ってボクは自暴自棄になってました……。
人を憎みながら、人間を化けて驚かせては次の街、驚かせては次の街と当て所も無く彷徨っているうちにここへ」

神 「この街では人を化かさないのか? 妖が悪さをしてるといった噂はとんと聞かんが」

先輩「……虚しくて、止めました。こんな事しても父君も母君もあの山も帰って来ないですから……」

神 「そーか……」

先輩「それで、決めたんです。人に化けて、色んな事を学ぼうって。だから大学に入ったんです」

神 「色々な事を学んで、どうするつもりだ? このまま人として生きていくつもりなのか?」

先輩「……いつか山を取り戻すんです」

狐 「取り戻す?」

先輩「今、植林ボランティアとかしてるんですよぉ。木の苗を植えたり、花を植えたり。
まだあの時伐られた山の木々の数には遠く及びませんがねぇ。いつかボクら狸が住めるような山を取り戻せたらなぁ……って」

狐 「ふむ……そうか」



370 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 20:58:22.30 ID:deaxD/Ph0
先輩「あ、あの」

神 「どした?」

先輩「男君と友君にはこの事、黙っていてくれませんか……?
……大学へ入ったばかりの時は、人が憎くて怖くて仕方ありませんでした。
まるで地獄でしたよぉ。でも……あの子たちが居てくれたお陰でボクは……」

神狐「……」

先輩「だから、もし正体がばれたりしてあの二人が離れて行ったら……ボク……」

神 「……言わないよ。でも、主はそれで良いのか?」

先輩「え?」

神 「主にそのつもりが無くても男や友を騙し続ける事になるんだぞ? ……良いのか、それで」

先輩「……。でも、ボクが狸だなんて知ったら……きっと避けるに決まってますよぉ……」

狐 「そーでも無いぞ? わしなんか普通に男に真の姿を見せとるしの」

先輩「でも……でも……」

狐 「わしも言いやせんよ。わしの口からは、な」

先輩「……。……ボク、今日は帰ります。お茶、御馳走様でした。……それじゃ」

先輩はそう言い残すと踵を返して凄い速さで走って行ってしまった。
まるで野生の獣のように足で砂利を噛み、遠のいていく姿を見、神と狐は顔を見合わせ溜め息を吐いた。



374 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 21:14:54.15 ID:deaxD/Ph0
男 「あれ? 先輩は?」

神 「帰った」

男 「え?」

狐 「何でも急用が出来たらしいぞ」

友 「ふーん……」

残念そうな顔の男と友。
そんな男に何となくムッとする狐。

狐 (何じゃ。あの狸は確かに上手く化けとるが、わしの化けた姿の方が可愛いじゃろうに……)

巫女「あら? ホノさん、お饅頭はもう食べないんですか?」

狐 「食わぬ! 頼まれたってもう一口も食わぬ!」

巫女「あ、そうですか。勿体無いですねぇ、当たりはあの一つだけだったのに」

そう言ってにやにやしながら茶を啜り、とても美味そうに饅頭を齧る巫女。
尻尾をソワソワさせながらそっと饅頭の皿に手を伸ばす狐。しかし、ひょいっと皿ごと巫女に奪い取られる。

巫女「頼まれても食べないんじゃ無かったんですか?」ニヤニヤ

狐 「……おい神よ。こんな性悪女雇うよりわしを仕えさせた方が良いじゃろ?」

神 「うーん……」



382 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 21:28:29.82 ID:deaxD/Ph0
狐 「もうこの巫女には我慢ならぬ! わしゃ先に帰る」

巫女「二度と来ないで下さいね」

狐 「明日も来ちゃる。絶対来るからの!」

巫女「……ケッ」

神 「巫女ー、茶のおかわり」

巫女「はーい。今すぐ持って来ますよー」ニコニコ

友男「「……」」



385 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 21:46:30.51 ID:deaxD/Ph0
狐 「全く……こうなったら絶対あの神に仕えてみせようぞ……」ブツブツ…

ドンッ

狐 「痛っ」

ヤクザっぽい人「んだこら、ねーちゃん何処に目ぇ付けて歩いとるんじゃ」

狐 「すまぬの。少し考え事をしておった」

ヤクザ「すまぬ、じゃ済まねえよ。いてて……こりゃ骨折しちまったなぁ」

狐 「骨折って……ちょっとぶつかっただけじゃろ。お主の骨は飴細工か」

ヤクザ「ごちゃごちゃうるせえねーちゃんだなぁ。どう落とし前つけてくれるんじゃいヴォケ!」

狐 「落とし前と言われてものぅ……」

男 「……」

狐 (男……? 今は神社に居る筈じゃあ……)

男は黙って、狐の手を取り物凄い勢いで走り去る。

狐 「お、おい男……」

狐 (……む。このにおいは……)



386 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 21:52:56.34 ID:0r8iWa010
・・・ゴクリ



391 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 22:02:52.84 ID:deaxD/Ph0
男 「ハア、ハア……走りつかれたぁ」

狐 「お主、男じゃないな」

男 「あれれ? やっぱりばれちゃいましたかぁ」

どろんっ、と音がすると男は先輩の姿に戻る。

先輩「えへへ……ホノさんが何か怖い人に絡まれてたから、ちょっと男君の姿借りてみちゃったぁ」

狐 「ああやって絡む奴は昔からどうにも苦手なんじゃ。ありがとうな」

先輩「そういえばホノさん、どうしてみんなと一緒じゃないんですか?」

狐 「あの巫女にむかっ腹が立ったから先に帰ったんじゃ」

先輩「はぁ……」

狐 「お主よ、今から暇かえ?」

先輩「ええ。特に用事は無くって……さっきは逃げてすみません。
一気に色んな事考えるとすぐ頭の中パンクしそうになっちゃうんですよぉ」

狐 「ならばわしの家で茶でも飲みながら話そうぞ。……正確に言えば男の家なんじゃがな」

狐 「合鍵も作って貰うた。お主が良ければ来れば良い」



394 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 22:18:46.79 ID:deaxD/Ph0
―男の家―

先輩「うわぁ、男君の家だぁ」

狐 「来た事ないのかえ?」

先輩「はい、初めてですよぉ」

狐 「今、茶を沸かす……っと、冷たい茶の方が良かったかの?」

先輩「じゃあ冷たい方で」

狐 「うむ。分かった。……ほれ、遠慮無く飲むが良い」

先輩「ありがとうございます。……そういえばホノさんはどうしてここへ?」

狐 「ま、かくかくしかじかあって、かくかくしかじかと言うわけじゃ」

先輩「なるほどー……ホノさんも苦労してるんですねぇ」

狐 「まぁの。と、ところで、その……」

先輩「はい?」

狐 「お主、男とは、どういう関係なんじゃ……?」



401 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 22:35:11.65 ID:deaxD/Ph0
先輩「どうって言われても……先輩と後輩ですよぉ?」

狐 「そうか……つまり恋愛感情は無い、と。そういう事じゃな?」

先輩「大事な人ではありますけどねぇ」

狐 「そうか……ふむ……」

先輩「……ホノさんは男君の事、好きなんですか?」

狐 「……さぁな。自分でも分かりゃせん。あの泣きべそ坊やが結構な色男になっとるとは思ったがの。
ふぅ……変化していると少々疲れるの。お主はあの『大学』とやらで耳や尻尾を出した事は無いのかえ?」

先輩「ちょっとだけ出しそうになった事はあります。焦りましたよぉ、本当。
でも、何だかんだでここまで誰にも正体をばらさずに済んでます」

狐 「ま、ここに居ても誰も来やせん。男も当分帰って来ないじゃろうし、元の姿に戻って良いぞ」

先輩「それじゃ、そうしましょうか」

どろん、どろん、と音がして狐は元の狐の姿に、先輩は狸に戻る。
狸は茶の毛をし、普通の狸よりも一回り小さいくらいの大きさだ。

先輩「ホノさんは大きいですねぇ」

狐 「お主の正体は小さくてかわええのぅ」



405 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 22:48:29.65 ID:deaxD/Ph0
狐の手で器用にコップを持ち、ぐいっと茶を飲み干す狐。

狐 「お主は今、何処に住んどるんじゃ?」

先輩「ちょっと先にある雑木林に良い穴ぐらがあるんですよぉ」

狐 「そこに他の狸は居るのかえ?」

先輩「残念ながら。鼠みたいな小動物なら居ますけどね。だから食べる物には困りません」

狐 「ふむ。今度行ってみたいの」

先輩「良いですよ。ホノさんも良い人……良い狐さんですから」

狐 「わしもあの化け比べ以来狸はあんまり好いておらんかったが、お主は可愛いの」

先輩「か、可愛いくなんかないですよぉ!」

狐 「だが化けた人の姿じゃったらわしの方が上じゃ」

先輩「……そうですよね。ボクは父君みたいに上手くは化けられないから……」

狐 「だが、お主も化けたお主も充分かわええぞ。自信を持たねばこの世界、渡って行けんぞ?」

先輩「……はい!」



412 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 23:04:02.95 ID:deaxD/Ph0
ちゃぶ台を挟み、向かい合う狸と狐。
妖怪同士で話が弾む。

狐 「……ほう。お主も『ばいと』をやっておるのか」

先輩「はい。食糧は鼠だけでも充分なんですけど、人前で鼠なんか食べられないでしょう?
それに、そればっかりだと飽きるし。あと学費も稼がなくっちゃいけませんからねぇ」

狐 「学費など木の葉で札束作れば良かろ?」

先輩「駄目ですよ! お金の偽造は犯罪ですよぉ?」

狐 「む。昔は人に化けてようそれで団子を食いに行ったりしたんじゃがな。あと油揚げもな」

先輩「昔の事は時効だとしても……もうやっちゃ駄目ですよ?」

狐 「うむ。『自動販売機』とやらに葉で作った札を入れたら葉に戻って出て来よった。
どうやら現代は偽の金と本物を見分ける技術が凄いようじゃ」

先輩「もう試したんですかぁ……」

狐 「もうやりゃせんよ。ばれたら男に迷惑がかかるかも知れぬからの」

先輩「そうした方が良いです」

狐 「『ばいと』かぁ……わしも何か始めようかの。生活費も男に出させっぱなしじゃし……」

先輩「うちのバイト先紹介しましょうか?」

狐 「ありがたいの。で、どんな『ばいと』じゃ」



424 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 23:18:58.06 ID:deaxD/Ph0
狐 「冥土喫茶? 何じゃ、茶に毒でも盛ってるのかその喫茶は」

先輩「違いますよぉ。メイドっていうのは……女中みたいなものです。ニュアンスはちょっと違いますが」

狐 「ふーむ……よう分からんの。百聞は一見に如かず。今度男と見に行ってみるかの」

先輩「働いてる姿見られるのはちょっと恥ずかしいなぁ……」

狐 「そこでは恥ずかしい事をするのかえ?」

先輩「そういうわけじゃ無いですけど……他にはコンビニの深夜バイトとか掛け持ってます」

狐 「掛け持ちか……辛くは無いかえ?」

先輩「辛くない……って言ったら嘘になりますけど、人の世の仕組みを勉強するのに丁度良い機会だと思ってますよぉ」

狐 「のんびりしてそうな顔しとるが、意外と苦労しとるんじゃの……」

先輩「えへへ……でも、これが自分で決めた生き方ですし」

狐 「お主は偉いの。……わしも見習わねばな」



426 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 23:26:42.40 ID:deaxD/Ph0
がちゃっ

狐・先輩「「……!?」」

男 「ただいまー」

狐 「お、おかえり。早かったの」

男 「うわ、何だその狸!?」

先輩「ボクが狸だって事は秘密ですよ」ヒソヒソ

狐 「分かっておる」ヒソヒソ

男 「……何ぼそぼそ話してんの?」



427 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 23:31:06.44 ID:deaxD/Ph0
狐 「こ、これはその……ついさっき知り合った狸でな。話が弾んで連れて来てしもうた」

男 「……狸なんてこの辺に住んでんのか?」

狐 「住んどるようじゃの……あ、はは……」

男 「ふーん……。そいつもお前みたいに喋ったり化けたりするのか」

狐 「で、出来ぬようじゃ。な?」

先輩「……」コクコクッ

男 「喋れないって……さっき『話が弾んで連れて来た』って」

狐 「そ、それは言葉の綾で……」

男 (何か怪しいな……)



429 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 23:42:49.39 ID:deaxD/Ph0
男 「あれ? どうしてここに先輩の鞄が?」

狐・先輩「「……!!」」

狐 「そ、それはな、神社から帰る途中に先輩に会ってだな……それで……」

男 「それで……?」

狐 「何かよう分からんが預かった。理由は明日先輩に訊けば良かろ」

先輩(ええー……明日何て言おう……)

狐 「えっと、とりあえずこの狸も帰りたがってるようじゃし……」

男 「……そうか」

狐 「じゃ、わしはこの狸を送って行くから。絶対について来るで無いぞ! 良いな!」

男 「はいはい……」



432 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/02(水) 23:54:29.28 ID:deaxD/Ph0
男 「ついて来るなと言われると……気になる……」

男 「ちょっとついて行こーっと……」





狐 「男め、急に帰って来おって……」

先輩「ばれてないですよね? ばれてないですよねぇ?」

狐 「とりあえずそこら辺の物陰で人の姿になって来い。わしが見張っとるから」

先輩「それじゃ、ちょっと失礼しますね……」



434 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 00:01:45.61 ID:7yuA31Fl0
どろんっ

先輩「……ふぅ。後は木の葉で服を作って……」

どろんっ

狐 「おーい、まだかえ?」

先輩「今着替えてる途中ですー。すみません、待たせちゃってぇ」

狐 「……」ピクッ

狐 (誰かの気配がしよる……誰か見とるな……)

先輩「お待たせしましたぁ」

狐 「来るな」

先輩「え」

狐 「誰かに見られよる。……こっちから出るのは止めよう」

先輩「誰かに……まさか男君……?」

狐 「それは分からぬ。向こうから出るぞ」

先輩「……はい」



440 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 00:08:10.32 ID:7yuA31Fl0
男 (狸が入って行った物陰から先輩の声が聞こえた……?)

男 (まさか……まさか、な……)




先輩「ばれちゃいましたかね? ばれちゃいましたかね?」

狐 「それは元神の使いのわしでも分からぬ」

先輩「そんなぁ……この事がばれたらもう、ボク、明日から学校行けないよぅ」グスッ

狐 「ああ。泣くな、泣くな。多分大丈夫じゃろう……多分」

先輩「多分ってそんな、無責任なぁ……」



443 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 00:18:48.81 ID:7yuA31Fl0
狐 「……ただいま」

男 「お帰り。遅かったな」

狐 「今から飯作るから待っとれ。腕によりをかけて作るからのー」

男 「良いよ。どうせまた油揚げ料理だろ」

狐 「悪いかえ?」

男 「悪い。つーか、お前に買い物頼んだせいで冷蔵庫ン中が油揚げまみれなんだが」

狐 「買った物は消費せねば勿体無いじゃろ? 今日は揚げのツナサンドと、油揚げのカリカリ生姜焼きじゃ」

男 「うぇ」

狐 「『うぇ』とはなんじゃ。失礼な」

男 「そりゃたまに油揚げ食べるなら良いよ。でも毎日はキツイって……身体が拒否反応を起こしてる……」

狐 「じきに身体も油揚げに慣れる」

男 「それもそれで嫌だな……」

狐 (狸の話を出さんな……やはりただの杞憂だったか……)

男 (先輩が狸……? ……んな訳、無いよな。無い……よな?)



444 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 00:25:57.15 ID:7yuA31Fl0
狐 「出来たぞー」

男 「美味そうだな……美味そう、だけど……」

狐 「何じゃ、不満か?」

男 「油揚げを使わないメニューを作るって選択肢は無いの?」

狐 「気が向いたら作る」

男 「早く気を向けてくれ……」

狐 「しばらくは無理じゃの」

男 「うぇ……ま、作って貰って文句は言えまい」

狐 「それじゃあ」

男狐「「いただきます」」

狐 「一応お主が油揚げに飽きぬように工夫しとるんじゃぞ?」

男 「ん……まあ美味いんだけどさー……」



456 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 00:36:42.98 ID:7yuA31Fl0
男 「そういえばあの狸……」

狐 「た、狸がどうかしたのかえ?」

男 「……何でそんなに動揺してんの?」

狐 「動揺などしとらぬ」

狐は何かを隠すかのように油揚げを口に入れる。

男 「まぁ良いや。あの狸とはさ、どこで会ったの?」

狐 「あの巫女に酷い仕打ちをされたからな。怒りを紛らわそうとそこらを当て所も無く散歩しとったんじゃ」

男 「へー」

狐 「で、そこら辺で会った」

男 「そこら辺ってどこら辺? ここらに狸が住めそうな場所ってあったか?」

狐 「……。……そこの雑木林でだ」

男 「雑木林……ああ、あそこもうそろそろ伐られて家が建つらしいぞ」

狐 「なっ。それは真か!?」

男 「う、噂だけど……多分本当だと思う」

狐 「……そうか」



459 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 00:43:33.58 ID:7yuA31Fl0
―あくる日―
先輩(バイト疲れたぁ……あの事考えながらだったからいつもの五倍は疲れたよー……。
はぁ……男君にばれてないと良いんだけど……)

男 「せーんぱい」

先輩「ひゃあ!?」

男 「びっくりしすぎですよ……」

先輩「ご、ごめんねぇ。急に声かけられたから、つい」

男 「はい、鞄」

先輩「あ、ありがとぉ……」

男 「で、どうして昨日はホノに鞄なんて預けたんですか?」

先輩(どうしよー……結局言い訳なんて思いついてないし……)

先輩「な、何となくだよぉ。何となく」

男 「何となく?」

先輩「な、何となく……」

男 「……そうですか」

先輩(やっぱり何か疑ってるよぉ……助けて神様……。……ん? 神様?)



462 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 00:55:10.34 ID:7yuA31Fl0
巫女「貴方は隅の方でも掃除してれば良いんです。後は全部私がやりますから」

狐 「お主の方こそ窓の隅っこでもちまちま拭いてりゃ良いんじゃ」

神 (朝から元気だなー……こちとら夜を徹してSSスレに張り付いてたから眠気限界だぞ……)

巫女「あ、神様!」

狐 「お早う御座います」

神 「おはよ。主ら、また仲良く喧嘩してんの?」

巫女「仲良くなんて無いです。この狐がまた私の仕事を奪おうと……」

狐 「お主一人でやっておったら日が暮れるじゃろうが」

巫女「暮れません。貴方と違って仕事はテキパキこなせますから」

狐 「何じゃと」

巫女「言い返したかったらどーぞ?」

狐 「お主、元神の使いを舐めるでないぞ?」

巫女「私は現神の使いですけど?」

狐 「うぬぬ……」

神 「何でも良いから静かにして欲しいなー。我、今から寝るから」



464 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 01:01:06.06 ID:7yuA31Fl0
先輩「神様ああああああああああああ!」

神 「……寝ようと思った矢先に何ですか、オイ」

先輩「ボク、もうどうしたら良いか分かりません……」グス…ッ

神 「ん」

先輩「え」

神 「願いがあるならお賽銭。これ、神社の常識」

先輩「えーと、今小銭が無くって……」

神 「小銭が無いなら札で良いよwwwwwwwwwwwwww」

先輩「……はい、どうぞ」

神 「どーも、ありがとーごぜーまーすwwwwwwwwwwww」

先輩「それで、願いというか、悩み事がありまして……」

神 「ふむ。狸の子よ、その悩み言ってみろ」

先輩「実は……」



468 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 01:13:10.74 ID:7yuA31Fl0
神 「……つまり、正体がばれてるかも知れないと」

先輩「貴方神様ですよねぇ? 疑う心をごっそり取り除いたりとか、疑う要因になった記憶だけ抜き取ったり出来ないんですか?」

神 「無理」

先輩「えー……」

神 「だってここ恋愛成就の神社だよ? 魚屋でピーマン買おうとするようなモンじゃん、それ」

先輩「……だったら、さっきの千円返して下さいよ」

神 「えっ」

先輩「えっ」

神 「いや、だって我に奉納したら我のモンでしょ普通」

先輩「でも願いは叶えてくれないんですよね?」

神 「うん」

先輩「この世に神も仏もあるもんかぁ……ぐすっ」



469 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 01:22:47.00 ID:7yuA31Fl0
神 「あー……泣くなって。ちぇー……面倒くさいけど一肌脱ぐか」

先輩「神様……!」

神 「あんま期待はするなよー。言っとくけど専門外だからな。
農家が畑で鯖を養殖するようなモンだから期待はするなよー」

先輩「大丈夫です! あんまり期待してませんから。本当、藁にもすがる思いなんですよぉ」

神 「我、藁かよ……」






神 「という訳で、また大学行ってきマウス」

巫女「またですか……」

神 「この狸がどうしてもって言うからさ。それに学生気分ちょっぴり堪能出来るしwwwwwww」



473 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 01:37:46.43 ID:7yuA31Fl0
狐 「じゃあわしも行くかの」

巫女「貴方は二度と来ないで下さい。仕事の邪魔です」

狐 「手伝って貰っておいて何て言い草じゃ。明日も明後日も来ちゃるからの! 覚悟しておれ!」

巫女「べー、っだ」




狐 「さて、気を取り直して行くか」

先輩「昨日、男君は何か言ってなかった?」

狐 「特にはな。『あの狸とはどこで会ったの?』くらいしか訊かれんかった」

先輩「杞憂……だと良いな」

狐 「じゃな……。……あと、もう一つお主にとって死活問題な出来事が発覚した」

先輩「死活問題……?」

狐 「あの雑木林……ばっさり伐られて家が建つそうじゃ」



474 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 01:43:59.30 ID:7yuA31Fl0
先輩「そ、そんな……山を崩された上に新しい住処まで……」

狐 「狸……」

先輩「……また人間不信に陥りそうです」

神 「あーあ。ご愁傷様」

先輩「神様ぁ、何とかして下さいよぉぉ」

神 「だから我、恋愛成就の神だって。……ん、まぁ賽銭寄こしてくれるなら考えても良いけど」

先輩「……。……どうぞ」

神 「うはwwwwwwwww五千円札wwwwww神降臨wwwwって我が神だったwwwwwwwwwwwww」

先輩「……本当にどうにかしてくれるんですよねぇ?」

神 「尽力は尽くすよ、尽力は。お、大学が見えて来た。……まずは男が勘付いてるかどうか確かめねばな」



477 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 02:03:36.02 ID:7yuA31Fl0
―ラウンジ―
男 「……で、狸が入った物陰から先輩らしき声がしたんだ」

友 「先輩が狸? そんなバカな。ただの聞き間違いじゃないか?」

男 「だと良いんだけど……」

友 「考えすぎだっつの。あれだろ、日常生活に突然狐が乱入したせいで頭混乱してるんだろ?
だからそういう思考になっちゃってる。ただそれだけだ。……この話、終わり!」

男 「ああ、考えすぎだよ……な」

友 「大体狸って徳利ぶら下げて、腹膨らませて腹鼓ぽんぽこさせてる間抜けなイメージじゃん? 先輩がそんな事すると思うか?」

男 「……思わない」

友 「だろ?」

―ラウンジ近くの物陰―
先輩「間抜けなイメージ……うぅ……」

神 「……何だ、大丈夫そうじゃんかwwwwww心配して損したwwwwwwwwwwwww」

狐 「じゃが男は煮え切らん顔しとるの……まだ安心は出来ぬ」



479 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 02:12:26.75 ID:7yuA31Fl0
―ラウンジ―
友 「先輩は可憐で可愛くて天真爛漫で優しくておっとりしてて、狸というよりは天使の化身だな。うん」

男 「……そういえば先輩って独り暮らししてるって言ってたな」

友 「あー……そういえばな」

男 「でも、家って行った事も見た事も無いよな。場所も教えて貰って無いし」

友 「そう言われてみれば……」

男 「後で会ったらちょっと訊いてみようかな」

友 「家訊き出してどうするつもりだ? ストーカーにでもなるつもりかよ」

男 「人間なら普通の家に住んでる筈だ。もし、狸だったら……」

友 「だーかーらー、考えすぎだって」

―物陰―
先輩「あわわわわわ……どうしよう……どうしましょうぅ……」

神 「ヤバスwwwwwwwつか、とりあえずもちつけwwwwwwwwwwwwwwwwww」

狐 「……わしに策がある」

先輩「策?」

狐 「主としていた神から離れて久しいからの。ちゃんと力を使えるかはちと不安じゃがな……」



483 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 02:28:26.85 ID:7yuA31Fl0
狐 「神よ、この辺りに広い空地はあるかの」

神 「んーと……確かあった筈」

狐 「では案内して下され」

神 「えー……もうちょっと女子大生の匂い嗅いでたいのに。お、あの子パンツ見えそうなくらいミニスカwwwwwうはwwwwwwwwww」

先輩(この神変態さんだ……)

狐 「狸から計六千円も巻き上げたじゃろが。行きますぞ」

神 「分かったよー……分かったから服引っ張らないで。一張羅が千切れちゃう」

先輩「あの、策って何です?」

狐 「お主はわしを負かした父の血を継いでおる。何にでも化けれるじゃろ?」

先輩「何でも……というわけじゃ……。ボクは父君と違って修行中だから……」



485 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 02:31:06.39 ID:7yuA31Fl0
狐 「今まで何に化けてきた」

先輩「色々ですよぉ。他の妖怪の類に化けて人を脅かしたり、地蔵に化けて供え物を頂戴したり……」

狐 「ほぅ、物にも化けられるのか。狐の七化け狸の八化けと言われるだけあるな。……お主、建物に化けた事はあるか?」

先輩「え? へ? ……む、無理無理、無理ですよぉ! そんなの考えた事もありません」

狐 「じゃあ今考えるんじゃ。ばれたく無かったらな。……こっちも幻術を使って援護する。そこに御座す神もな」

神 「えー……我も協力しなきゃ駄目?」

狐 「巻き上げたからには六千円分働いて下され」

神 「……この前酒代全部奢ってやったのに」

狐 「それはそれ。これはこれじゃ」



488 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 02:39:25.96 ID:7yuA31Fl0
狐 「ここか……うむ、申し分無い」

神 「ほんとにやるのー……? 神様は無謀だと思うけどなー」

先輩「ボクも無謀だと思います……」

狐 「わしも無謀だと思うとる。正直なところな」

先輩「全員無謀って言ってるじゃないですかぁ。本当にするんですかー……?」

狐 「四の五の言うても始まらぬ。とりあえず、家に化けてみせよ」

先輩「失敗しても笑わないで下さいよ?」

狐 「笑わぬ」

先輩「怒らないで下さいよー……?」

狐 「怒らぬからやってみせよ」

先輩「自信ないなぁ……家……家……」

先輩は目を閉じ、じっとそこに座りこむ。
そしてカッと目を見開きくるんと宙返りする。どろん、という音と共に白い煙が辺りを包みこむ。



490 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 02:49:48.59 ID:7yuA31Fl0
煙が晴れればそこには一階建ての小さな家が建っていた。

神 「ふーん、結構やるじゃん」

狐 「ふむ……上出来じゃ」

先輩「これ、結構疲れますね……ちょっとの間しか化けてられませんよぉ」

狐 「ちょっとの間欺ければよい。わしらは狐と狸、人間を化かすのは得意中の得意じゃろうが」

狐がおもむろに家の外壁に手を当てると家がぐらぐら揺れる。

先輩「あはは……そこ、くすぐったいから触るの止めて下さいよぅ」

狐 「見てくれは良いが……触り心地がまんま狸の毛じゃの。しかも一々くすぐったがってどうする。前言撤回、話にならん」

先輩「ですよねー……」

狐 「触り心地についてはわしらが幻術を使うてどうにかする」

神 「わし“ら”ってやっぱり我も込み? 我、幻術とかあんま使えないよ?」

狐 「それでも良い。何とか凌げるじゃろ。……後はお主がくすぐったがらなければそれで良い」

先輩「無茶ですよぅ……」

狐 「無茶でもするんじゃ。ばれたく無いんじゃろ?」



492 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 02:57:28.65 ID:7yuA31Fl0
狐 「で、わしがお主の人間状態に化ける」

狐がくるんと宙返りするとそこには先輩が立っていた。

狐 「すぐ男を呼んで来る。そのままで待っておれ」

去っていく狐の背中を見送る神と家の姿をした先輩。

先輩「……本当に大丈夫ですかね?」

神 「我に訊かれてもなぁ」

先輩「だって貴方神様でしょー……?」

神 「神だからって万能じゃないんだっつの。人も獣も妖もそこら辺分かって無い奴多すぎなんだよなー。あとさ……」

先輩「はい?」

神 「今、主は家なんだからむやみやたらに喋ったり動いたりするなって。
家が喋って揺れてるのってかなりシュールな光景だぞwwwwww」

先輩「……はい」

先輩(あー……この体勢疲れるなぁ……ホノさんと男君早く来てよー……)



496 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 03:05:00.86 ID:7yuA31Fl0
男 「あ、先輩」

狐 (あの狸のフリ、あの狸のフリ……)

狐 「おはよぉ、男君」

男 「先輩、この後暇ですか?」

狐 「うん、暇だよぅ」

男 「もし良かったら……先輩の家に遊びに行っても良いですか?」

狐 (来たっ!)

狐 「うん。いーよぉ」

友 「あ、男が行くなら俺も行きたいです」

狐 (……ちっ、もう一人増えたか。二人いっぺんに幻術をかけるのも面倒じゃの。
だが、ここで断ると怪しまれるかも知れぬ……うーむ……)

狐 「良いよ、友君も来なよ。あ、でもそういえば『ばいと』があったや。
『ばいと』が始まるまでの間で良かったら来て。ちょっとだけ、ちょっとだけだよぅ?」

男 「ちょっとで良いですよ」



497 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 03:13:05.29 ID:7yuA31Fl0
友 「ここが先輩の家かぁ……先輩の匂いがする……」

男 「おい、キモい事言うなよ」

狐 (匂いがして当然じゃ。その先輩が家そのものになっておるんじゃからな)

男 (なんだ、普通の家じゃないか……もし先輩が狸だったら今頃どっかの穴ぐらにでも招待されてるよな。
やっぱり俺の思い過ごしだったのか……良かった……)

先輩(うぅ……歩かれる度にくすぐったくて……はぅ……そこはらめぇ……)ビクンビクン

友 「あれ? 今揺れた?」

男 「地震か?」

狐 「多分そーだよぅ。最近、地震多いじゃん。怖いよねぇ」

友 「ですよねー」

狐 (二人いっぺんに幻術をかけるのは難儀じゃの……あの神もちゃんと協力しとるのか?)

神 『最大限努力してるっての。あ、ちなみにこれ心に直接話しかけてるから。所謂テレパシー?
うはwwww我めっちゃ神っぽい事してるwwwwwwwwwwwwwwwww』



499 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 03:25:51.42 ID:7yuA31Fl0
狐 (狸も限界に近いようじゃの……さて、追い返すか)

狐 「あ。そろそろ『ばいと』の時間じゃ……時間だねぇ。ごめんだけど今日はこの辺で……」

男 「そうですか……」

友 「んじゃ、お邪魔しましたー」

がちゃり

先輩(あ。そ、そこのドアノブは……ひっきゃあぁああっっ!! 急に回しちゃらめぇえええっ!」

友男「え」

その途端、家の形がぐにゃりと曲がり、どろん、という音と共に煙が立ち込める。
煙が消え去ればそこはただの空き地で、ぺたんと座りこんで居る小さな狸とその傍らで気まずそうに立ち尽くしている神が居た。



先輩「ふ……ふええええん! だから、だから、無謀だって、言ったじゃないですかぁぁぁ!
う、ぐす……もう学校にも行けないよぅー! ばれちゃった、ばれちゃったようぅぅ!」



507 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 03:46:22.62 ID:7yuA31Fl0
友 「え。……これ、何かの冗談ですか? 先ぱ……」

友が振り向けばそこには狐が居るだけだった。

狐 「……作戦失敗、じゃの」

男 「……ホノ、この状況なんだよ。説明しろ」

狐 「説明と言われてものぅ……」

友 「この狸……先輩の声で喋ってやがる……」

先輩「ぐす……そうだよ、ボク、実は狸だったんだ……ごめんねぇ、今まで、騙してて、ごめ……うぇぇぇぇん!」

友 「……マジかよ」

神 「ほら、泣くなって。千円返すから」

千円を差し出す神の手を、ぺちっ、と撥ね退ける先輩。

先輩「もう、そんなの、要りません……ぐすっ」

神 「っうぇwww拒絶されたwwwwwじゃあこの千円は有難く頂戴しとくわwwwww」

先輩「ボクは、ボクはぁ……」

男 「先輩……」



512 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 04:05:10.73 ID:7yuA31Fl0
泣き崩れる小さな狸にゆっくりと歩み寄る友。

友 「先輩」

先輩「友、君……?」

友 「しょ、正直……びっくりしたと言うか……ビビったというか……」

先輩「……だよね。ごめ……ひぐっ……ごめんねぇ……」

友 「でも。……でも、先輩は先輩ですから」

先輩「……え?」

友 「正体が狸だろうが何だろうが、先輩は先輩ですから」

先輩「友君……」

友 「大体、ホノさんの正体見てからこういうの慣れたっつか……。
あー……何て言ったら良いんだろ……とりあえず、先輩は先輩です」

先輩「ボクの事、嫌いになっちゃったり、してないの……?」

友 「どうして嫌いにならなきゃいけないんですか?」

先輩「……ぐすっ。友君……」



517 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 04:18:36.89 ID:7yuA31Fl0
友 「だから……泣き止んで下さいよ。先輩」

男 「そうですよ、先輩。俺なんて狐と屋根の下一緒に暮らしてるんですよ?」

友 「人も、狸も、狐も関係ありません。だから……ね?」

先輩「……ありがと。二人とも、ありがとう……ぐす、えぐっ……」







神 「……なーんか、ばれちゃったけど結局円満に終わってんじゃん」

狐 「……そうじゃな」

神 「別にあんな事せんでも良かったんじゃない?」

狐 「……かも知れぬな」

神 「完全に無駄骨じゃん。あー、何か神様白けちゃった」

狐 「ま、これで良いんじゃろ。……多分」



521 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 04:41:34.22 ID:7yuA31Fl0
神 「さて……と、一仕事終えたし、手元に六千円もある事だし飲みに行くか」

狐 「駄目じゃこの大人……」

神 「それでもまだ仕えたいの?」

狐 「いつまでも『にぃと』はしてられぬのでな。……それに主様の神社が男の家から一番近いからの」

神 「おやおやー? もしかして狐さん、男に『ほ』の字ですかー?
我、恋愛成就の神様だからそういう話好きだよー?」ニヤニヤ

狐 (こやつ恋愛の神とか何とか言うとるがただ単に色恋沙汰に首突っ込みたいだけじゃろ……)

狐 「そんなんじゃ無いわい。そんなんじゃ……」

神 「……ま、いっか」ニヤニヤ


神 「諸君、今宵は神も人も狐も狸も入り混じって飲もうではないか!」

男 「またか……まぁ良いや」

友 「また吐くまで飲まされ続けるのか……考えるだけで吐き気が……」

友 「……先輩はどうします?」

先輩「……。……うん! 行くよぅ!」


神 「あ。ただし今回は割り勘ね」



522 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 05:09:10.74 ID:7yuA31Fl0
―神社―

巫女「……で、こんなベロンベロンになるまで飲んで来たんですか」

神 「あっはっはっはっ。我、酒にはけっこー強い方なにょになー」

巫女「今お水持って来ますよ」

神 「あの狐も結構酔っとったのに中々真の名を言おうとせん。また言われたよ。『それは仕わせてくれせば教えましょうぞ』ってなwww」

巫女「あんな狐放っておけば良いんです」

神 「……きっと、前に仕えてた神の事を忘れられんのだろうな。
神に仕える妖にとって真の名は神から与えられた大切な宝物」

巫女「はい、お水。今日はネットなんてやらないでちゃんと眠って下さいよ?」

神 「……。……我はな、あの狐を使いとしてここに置いても別に構わないんだよ」

巫女「何言ってるんですか。神様には私がついていますし、それに……」

神 「巫女だって、一人であれやこれやするのも大変だろ? それに我と二人きりで淋しい時もあるだろう?」

巫女「そんな事ないですよ」

神 「我の下に仕えるのを拒んでいるのは……あの狐自身だ」

巫女「神様ったら酔っ払っちゃって……あの狐、あれから毎朝掃除に来てるんですよ」

神 「そういう事ではない……。……そういう事ではないんだ」



524 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 05:27:10.68 ID:7yuA31Fl0
―帰り道―

男 「また足元ふらふらじゃないか……元神の使いなら限度を知って自制して酒を飲みなさい」

狐 「らいじょぶじゃー。元の姿にゃ戻りゃせん。ほれほれー、耳も尻尾も出とらんじゃろー?」

男 「分かったから分かったから。頼むからじっと掴まってろ」

先輩「ふぃー……おしゃけにょむのひしゃびしゃで、限度がじぇえんじぇんわかりゃなきゃったよぅ」

友 「先輩もう何言ってるか分かりませんよ……」

先輩「こんにゃしぇんぱいでもいいにょ? たにゅきらけど、いいにょ?」

友 「だから、狸も何も関係ないって再三言ってるじゃないですか」

先輩「ほんろに? ほんろにいいにょ?」

友 「ですから……あ、先輩。耳が」

誰も通らない暗い夜道、ちかちか光る街灯が茶の髪の毛からぴょこんと出た丸くて可愛らしい狸の耳を照らし出す。
それを見て友は思わず声を上げた。



525 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 05:35:58.02 ID:7yuA31Fl0
友 「誰かに見られでもしたらどうするんですか」

先輩「なーんかもう、ばれちゃったひ、いいやーっておみょったらあんひんひちゃって……」

友 「しっかりして下さいよー……って尻尾も!」

先輩「ふにゅ……もう、ばけるにょ、めんどくしゃい……」

そうして先輩の姿はみるみるうちに小さな狸へと戻ってしまった。

友 「あーあ……」

狸に戻った先輩を腕に抱き抱える友。
友の腕の中、先輩は眠っているのか何かむにゃむにゃ言いながら丸まっている。

男 「あちゃー……戻っちゃったか。でも、ホノが戻るより良いか。小さいから運びやすいし」

狐 「なんじゃ! お主、その狸になびくつもりか!」

男 「なびくって……大体、俺らつき合っても無いだろ」

狐 「んじゃあ、今からちゅきあおうぞ! ほりぇ、口づけをせにゅか!」

男 「しません。友も先輩も居るだろ」

狐 「むー。じゃ、二人っきりにょ時はしゅるにょか?」

男 「そういう意味じゃ……」



527 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 05:57:10.09 ID:7yuA31Fl0
友はそんなやり取りをしている男と狐を眺めながら、腕に抱いた狸を無意識のうちに撫でていた。
狸はそれを拒むこと無く、安心しきってくぅくぅと静かに寝息を立てている。

友 (毛が柔らかくて、あったかい……)

友 (これ、本当に先輩なんだよな。俺、今先輩の事抱きかかえてんだよな……やべ、何か緊張してきた)

友 (この姿の先輩も……ちっちゃくて可愛いなぁ……)

友 (もふもふしてる……可憐だ、嗚呼可愛すぎるっっ!!)

男 「あ、そうだ。先輩どうしようか」

友 「……今夜は俺の家に泊めるよ」

男 「え?」

友 「男はホノさんでいっぱいいっぱいだろ?」

男 「ん……まぁな。……先輩に変な事するなよー」

友 「しねーよ」



553 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 10:39:52.18 ID:7yuA31Fl0
友 「じゃあ、また明日な」

男 「ああ。先輩の事、よろしくな」

狐 「友ー、あひたもあおうぞー」




狐 「そうじゃ、狸が『ばいと』しちょりゅ所で、わひも働こーとおみょっとるんじゃ」

男 「それって、まさか……」

狐 「めーどきっしゃ、っちゅーとこりょでな。よう分からにゅが、どんにゃ様子か確かみぇに行きたい」

男 「……そこで働くの、多分お前向いてないと思うぞ?」

狐 「わしゃばんにょーじゃ! ふかにょうなろない!」

男 「まぁ……様子見に行くくらいはしようか。先輩が働いてる姿も見てみたいし」



555 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 10:51:41.21 ID:7yuA31Fl0
―友の家―

友 「……先輩お持ち帰りしちゃった」

先輩「……」スヤスヤ…

友 「まだ寝てる。……とりあえずベッドに寝かせとこうか」

友 「先輩……寝顔可愛い」

さわさわ

友 「ふわふわで気持ち良い……」

友 「はは……耳、ぴょこぴょこしてる」

友 「かわいー……眺めてるだけで癒される点は人間の時となんら変わらないな」

先輩「むにゃ……あれ?」

友 「先輩、起きましたか」

先輩「友君がいちゅもよりおっきく見える……あー、ボクが狸に戻ってるだけかぁ。へにゃ……」

友 「飲み過ぎですよ。今、水持って来ますから」

先輩「ありがとぅ……」



559 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 11:17:58.75 ID:7yuA31Fl0
友が持って来たコップを両手で抱えるようにして水を飲む先輩。

友 (仕草は先輩のまんまだ。……そりゃそうだよな、この狸先輩だもん)

先輩「うぅ……まだくらくらするよぅ」

友 「大丈夫ですか? 横になってた方が……」

先輩「……やっぱり、人間の姿になった方が良いよね?」

友 「いえ。そのままの姿でも先輩可愛いですし」

先輩「ふぇ……」カアァ…ッ

友 「あの、その……」

先輩「……。……嬉しい。ありがとう」ニコッ

友 「……水、もう一杯持ってきます!(狸になっても笑顔可愛すぎる! 反則だろ、鼻血出そう!)」

先輩「あ、そんなに要らないよぅ……行っちゃった」

先輩(正体はばれちゃったけど、友君と男君が狸のボクも受け入れてくれて良かった……)

先輩(……でも、雑木林はどうなるんだろ。あの神様、本当に何かしてくれるのかなー……)

先輩(……ちょっと胡散臭い神様だし、六千円無駄にしちゃったなぁ)ウトウト…



562 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 11:36:52.07 ID:82Qk9hM20
先輩可愛いすぎるだろjk
支援



564 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 11:39:22.51 ID:7yuA31Fl0
―男の家―

男 「あー、ようやく着いた」

狐 「たらいまぁ……うぅ、元の姿に戻りたい」

男 「勝手にどうぞ」

どろん、と音がして狐は元の姿に戻る。

狐 「うむ、やはりこの姿の時が一番落ち着くのぅ。あの狸はよう一日中あの姿で居れるもんじゃ」

男 「明日の朝も神社行くのか?」

狐 「当り前じゃ。その後に『めーど喫茶』じゃ」

男 「……」



566 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 11:43:01.72 ID:7yuA31Fl0
友 「先ぱ……あれ? また寝ちゃった?」

先輩「すー……すー……」

友 「……」ナデナデ

先輩「むにゃむにゃ……」

友 「……」サワサワ

先輩「くー……」

友 (良い毛並みだなぁ……触り飽きない……)





男 「で。先輩の事撫でまわし続けてたらいつの間にか朝になっていた、と。馬鹿かお前は」

友 「眠い……」

男 「……それって普通にセクハラじゃねーか?」

友 「先輩が起きた後に撫でまわしてた事謝ったけど『そんなの、全然気にしなくていいよぅ』ってさ」

男 「あ、そう……」



568 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 11:52:46.61 ID:7yuA31Fl0
巫女「また性懲りも来たんですか、この狐は!」

狐 「ふんっ。性懲りもなく来てやったわ。感謝せぬか。あと箒を貸せ」

巫女「誰が貸すもんですか」

神 「朝っぱらから本当に元気だねー……喧嘩するほど仲が良いって言うし、もう君たち付き合っちゃえば?」

巫女狐「「はぁ?」」

神 「我は百合もいけるぞ。むしろ大好物だwwwwwwwフヒッwwwwwwwwww」

狐 「あの神は百合の花が好きなのかえ?」

巫女「……多分、女同士の恋愛の事だと思います」

狐 「れ、恋愛……!? 誰がお主となどするものか!」

巫女「こっちこそ願い下げです!」



569 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 12:00:26.23 ID:ALxgM6bs0
この神は・・・なんというwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww



570 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 12:09:03.16 ID:aEMt+k+2O
絶対に崇めたくは無いが、ありえないほど親近感を覚える神だなw



571 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 12:11:59.49 ID:7yuA31Fl0
巫女「ニート狐め……」

狐 「……ふふふ。わしゃ、『にぃと』から『ふりーたー』に昇格するんじゃ」

巫女「ふーん、バイト始めるんですか。そっちに集中して金輪際この神社に来ないで下さい」

狐 「『ばいと』もするが、ここにも通い続けるぞ。良いでしょう、神よ」

神 「いいよー、別に。で、バイトってどこの?」

狐 「うむ。『めーど喫茶』という所じゃ」

巫女「……」

神 「うはwwwwwwメイド喫茶とかwwwwwwwwwwktkrwwwwwwwwwww」

狐 「神よ、主様も来るかえ?」

神 「行く行くwwwwwwww巫女はどうする?wwwwwwwwwwwwwww」

巫女「……私は遠慮しときます。あんな場所あんまり行きたくないです……」

神 「あんな場所って……巫女装束も充分コスプレっぽいと神様思うんだけどなーwwwwww」

巫女「そ、そんな事ないです!」



573 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 12:24:16.15 ID:7yuA31Fl0
男 「よう、ホノ。神社の方は終わったのか」

狐 「ああ。またあの巫女から仕事を奪ってやった。……む? 友も一緒に来るのかえ?」

友 「先輩の働いてる姿見たくって。……でも先輩、大丈夫かなぁ。今日の朝二日酔い気味だったし」

男 「……神様も一緒なんだ」

神 「メイド喫茶wwwwwwww萌え萌えですなwwwwwうはwwwwwwww」

友男「……」

神 「楽しみすなwwwwwwメイドたんモエスwwwwwwwwwwww」

狐 「……?」



581 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 13:10:25.70 ID:7yuA31Fl0
実はメイド喫茶って憧れてるけど行った事はないんだぜ
だから勝手なイメージだけで話進めるんだぜ


―そんなこんなでメイド喫茶―

メイド「お帰りなさいませー、ご主人様」

狐  「お帰り? ご主人? ……なあ男よ、いつからわしゃこやつの主人になったんじゃ?」

男  「……まぁ、そういうお店だから」

神  「ただいまーwwwwwっうぇwwww」

狐  「主様はこういうのが好いのかえ?」

神  「好きすぎて勃起しちゃいそうwwwwwwwwwwwwwwww」

狐  「うーむ……難解じゃの」



586 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 13:35:43.60 ID:7yuA31Fl0
とりあえず案内されて席に着く五人。

狐 「奇妙な格好をした女子だらけじゃの……」

男 「あれ、メイド服って言うんだよ」

狐 「『めーど服』……?」

神 「メイド服に黒ニーソ……嗚呼、その姿まさしく女神……絶対領域さいこおおおおお!!wwww」

友 「誰かこの変態止めろ」

神 「我、このオムライスにするわ。ケチャップで文字書いてくれるやつ」

狐 「ここは油揚げ料理は置いとらんのかえ?」

男 「……多分、無いと思う」

友 「あ。先輩だ……」


先輩「ご主人様、ご注文はお決まりになりましたかぁ?」

友 「あ、えっと……」

先輩「(ぼそっと)本当に来てくれたんだぁ。ありがとねー」



653 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 21:54:04.92 ID:7yuA31Fl0
先輩「萌え萌えオムライスですよぅ」

先輩「神さ……ご主人様ぁ、ケチャップおかけしますねぇ。何てお書きしましょう?」

神 「うーん……じゃあピー(放送禁止用語)って書いて」

先輩「ふぇ?」

男 「いくら神でもあんま調子こいてるとしょっ引かれますよ。このセクハラ野郎」

神 「じょーだんだって。んじゃ、祝詞書いて。祈念祝詞」

友 「いや、それも無茶でしょ……」

先輩「か、書ける範囲で頑張りますよぅ!」

狐 「じゃあわしの『おむらいす』には稲荷祝詞を頼む」

先輩「が、頑張りますっ」


かなり細かい字で丁寧に祝詞を書いていく先輩。
しかし、祝詞全て書き終わる前にオムライスはケチャップの文字で埋まる。

先輩「あうぅ……」

神 「……ま、途中かけでもいっか。元々無茶だって分かってたし」

狐 「じゃな」



664 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 22:11:45.81 ID:7yuA31Fl0
神 「やっぱり前の神が忘れられないんだ」

狐 「む?」

神 「稲荷祝詞頼むって事はそうでしょう?」

狐 「……。……ああ。わしゃあ心の何処かでは期待しとるのかも知れぬな。
前に仕えておった神がお戻りになる事を……」

神 「……そっか」



665 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 22:13:36.98 ID:7yuA31Fl0
先輩「今から料理がもーっと美味しくなるおまじないかけますねぇ。美味しくなーれ、美味しくなぁれ☆」

狐 「……おい狸よ」

先輩「何ですかぁ、お嬢様?」

狐 「……働いておって虚しくないか、これ」

先輩「(ぼそっ)でも、お給料良いですから」

狐 「あー……そうか」

先輩「学費の為ですからなりふり構ってられませんよぅ」

神 「メイド手作りのオムライスまじうめぇwwwwwwwこれが本当のメシウマ状態wwwwwwwwww」





狐 「……わし、あそこで働くのは止めるわい。性に合わん」

男 「ああ、無難な判断だと思う」

神 「今度巫女にもメイド服着せようっとwwwwwwwwメイド神社wwwwwwテラ新ジャンルwwwww」



666 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 22:15:19.93 ID:zGCeexfVO
メイド神社ワロタwww



667 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 22:20:34.68 ID:nbeV6Fm70
駄目だこの神様早く何とかしないと…



668 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 22:21:13.42 ID:V8ArWM2wO
斬新すぎるだろw



669 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 22:22:02.12 ID:/XJYEPR80
この神もう手遅れだw



673 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 22:27:25.19 ID:7yuA31Fl0
―その日の晩、神社にて―

先輩「お邪魔しますぅ」

巫女「あら、こんな夜遅くに珍しいですね。どうしたんです?」

先輩「……神様に会わせてくれませんか?」

巫女「良いですよ。神様ー、狸さんが……」

神 「メイドエロzipwwwwwwwktkrwwwwwwww」

巫女「……」

神 「はっ! あらら、巫女ったら画像見ちゃった? 顔赤いよー?wwwwwww」

巫女「そ、そういう、破廉恥なのも、ひ、控えて下さいよ……」

神 「ウブだねぇ。モエスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

巫女「それより狸さんが今来てるんですよ、ほら」

神 「ふーん。何で来たの?」



676 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 22:40:49.85 ID:7yuA31Fl0
先輩「何でって……ボクの住処、雑木林が伐られるかも知れないって事、覚えてますよね」

神 「……あ」

先輩「忘れてたんですか……」

神 「いや、最近物忘れ激しくってwwwwwwwwwwwwww」

先輩「……本当にどうにかしてくれるんですかぁ?」

神 「うん。ま、何とかなるでしょ。多分」

先輩「多分じゃ困りますよぅ……」

神 「ま、泥船に乗ったと思って安心しろってwwwwwww」

先輩「泥船ってカチカチ山連想するんで止めて下さい。……というか全然安心できません」

神 「任せとけって。それ言いに来ただけ?」

先輩「はい。もうそろそろコンビニバイトもありますんで」

神 「昼はメイドで夜はコンビニ店員かー……あんま根詰めると倒れるぞ。また人前で正体現しちゃったらどーすんの」

先輩「あはは……気をつけますよぅ」



677 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 22:47:28.31 ID:7yuA31Fl0
神 「んじゃあ、お昼のおかえしするわ。結構萌えさせて貰ったし」

先輩「へ?」

神 「今から狸がもーっと元気になる御呪いかけますねぇ。がんばーれ、頑張ぁれ☆」

先輩「……ふふっ。ありがとうございます」

神 「雑木林の件は心配するな。何も心配しないで働いて来な」

先輩「はい。それじゃ、バイト行って来まーす」

神 「いってらー。……さて、メイドフォルダをいっぱいにする作業に戻るか」





先輩(何だか昼間働いてた疲れが取れたような気がする……?)

神 (たまには神様らしい事もしなくちゃなー)



680 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:00:14.19 ID:7yuA31Fl0
―明くる朝―

狐 「お主、その格好……『めーど』ではないか」

巫女「か、神様が着ろって言うから仕方なく……」

狐 「今日のお主は巫女じゃのうて『めーど』じゃな……ぷふっ」

巫女「何笑ってるんですかっ」

狐 「いやぁ似合っとると思うぞ。そのまま巫女辞めて『めーど』になりゃええんじゃ。
……で、代わりにわしが神に仕える。それで丸く収まるじゃろ?」

巫女「丸くない! 収まらない!」

おもむろに狐は頭に葉っぱを乗せる。どろりと音がすれば狐は巫女装束を纏った姿に変わる。

狐 「今日はわしが巫女じゃな。お主は『めーど』をやっておりゃ良いんじゃ」

巫女「ぬぬぬ……」


神 「今日も仲良く喧嘩かー……巫女服にメイド服……うん、悪くない眺めだ……うひひwwwww」



683 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:15:00.97 ID:7yuA31Fl0
―雑木林―

「う、うわぁ!」

「どうした?」

「見てくれ……木を伐ったら赤い液が……」

「こ、これ……血じゃないか……?」

「き、気味が悪いな……」

「こっちの木からもだ……」

「何だこの雑木林は……」

?「立ち去れ……立ち去れ……」

「こ、この声は……?」

葉の揺れる音に混じり、幾重にも幾重にも重なる「立ち去れ」という不気味な声。
その場に居る誰もがその場に硬直する。その顔は皆青い。



神(我、縁結びの神なのに何やってんだろ……ま、六千円も貰ったしなぁ。文句は言えないか)



688 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:31:29.15 ID:7yuA31Fl0
―大学―

先輩「……って神様は言ってくれたけど、本当に大丈夫かなぁ?」

友 「もし雑木林が伐られても……俺の家来れば良いじゃないですか」

先輩「へ?」

友 「えっと、その、うちも独り暮らしだし……もう一人くらい住めるスペースもあるし……ゴニョゴニョ」

先輩「……。へへ、もし雑木林が伐られたら……その時はよろしくねぇ」

友 「は、はい!」

―神社―

神 「ただいま◯こー」

巫女「お帰りなさい。どうでしたか?」

神 「案外あっさり引き下がりそうだよ。ちょっと驚かしただけで皆顔面蒼白wwwwwワロスwwwwww」

巫女「そうですか。それは良かったですね」

神 「うーん……縁結びの神的にはあんま良い仕事したとは言えないんだけどさ」

巫女「え?」

神 「……まぁ、狸自身がそう願っちゃったから仕方ないんだけどねー。……さーて、VIP行くか」



693 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:48:53.98 ID:7yuA31Fl0
神 「あれ? 狐、まだ居たんだ」

狐 「ズズズ……一仕事終えた後の茶は美味いのぅ」

巫女「何勝手にお茶飲んでんですか、この狐は」

狐 「なんじゃ『めーど』よ?」

巫女「神様、この害獣どうにかして下さい」

狐 「害獣とは何じゃ。『めーど』なら『めーど』らしく、わしをお嬢様と呼ぶんじゃな」

巫女「害獣様。勝手に茶を沸かして飲むのは止めて下さい」

狐 「なんじゃあ。神よ、ここの『めーど』は教育がなっとらんの。代わりにわしを雇わぬか?」ズズ…ッ

神 「あー……それについてさ、ちょっと話があるんだよ」

狐 (お。もしや、わしを仕えさせようとようやく思ってくれたのかのぅ)

神 「二人きりで話したい。……巫女、ちょっと向こう行ってて?」

巫女「……。……はい、分かりました」



698 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:05:21.64 ID:N5gWfHId0
狐 「何じゃ、ようやくわしを使いとして迎える気になり申したか」

神 「……主は、本当にそれを望んでいるのか」

狐 「……? 当り前じゃ。何を今更……」

神 「前に仕えていた神と、我。どちらを好いてる」

狐 「……え?」

神 「……前の神、だろう? 図星じゃないか?」

狐 「……ああ」

神 「神の使いは同時に二柱の神に仕える事は出来ない。……我の言ってる意味、分かる?」

狐 「前の神の事を……綺麗さっぱり忘れろと」

神 「ま、そゆこと」



706 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:21:25.99 ID:N5gWfHId0
神 「昨日主は言ったな。前に仕えていた神が戻る事を心の何処かで期待していると」

狐 「……ああ」

神 「諦めろ」

狐 「え」

神 「主の神は、もう二度と帰って来ない」

狐 「……言われずとも、もう半分諦めておりますわい。
きっと廃村となり、様変わりしてしまったあの場所に見切りをつけて今は何処かの村の田を見守って居られるじゃろう」

神 「いや、違うね。これだけは断言できるよ」

狐 「……? 何で主様にそれが分かるんじゃ?」

神 「……我は主が仕えていた神の居場所を知っている。知りたいか?」

狐 「……! し、知りたいに決まっておるだろう! 何処じゃ? 何処に行けば逢えるのじゃ!?」







神 「根の国。黄泉国。……暗く冷たい死の世界だ」



715 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:39:00.97 ID:N5gWfHId0
狐 「……え」

神 「神という存在はな人に信仰されず、忘れ去られてしまえばその存在は消えてしまうんだよ」

狐 「嘘……じゃろ?」

神 「実は我も昔よりだいぶ力が弱ってんだよねー。最近の人は神社とかあんま来ないからww
参拝客は正月だけ来る奴とか、ジジババばっか。……ま、そのお陰で我は存在してられるんだけどさ」

狐 「……」

神 「廃村になり、信仰する者を失い、社も取り壊され……主の神は忘れ去られ、消えた。
消える、即ち神の死だ。……黄泉の国に入ればもう二度と戻っては来れまい」

狐 「嘘じゃ……そんなの、嘘じゃ……。わしの神は死んでなど居らぬ。きっと、まだ何処かに……!」

神 「狐よ。……これは嘘ではない。現実だ」

狐 「そんな……」



722 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:51:46.17 ID:N5gWfHId0
狐 「わしは……わしはこれからどうすれば良いんじゃ……」

神 「それは我にも分からんよ。……ただ、変な事は考えるなよ」

狐 「……」

神 「主の神は己の身が消える時、使いを道連れにするという選択肢もあった筈だ。
……でも、それはしなかった。だから主は今ここで生きている」

狐 「……」

神 「……今日はもう帰りな。男の家へ、帰りな」

狐 「……分かった」

神 「……。……またな」

狐 「……ああ」

とぼとぼと去っていく狐の後姿をただ黙って見送る神。
辺りは秋の始まりの冷えた風が吹き渡っていた。

神 (なーんかシリアスで我らしくないわwこういう空気慣れないんだよなーwwwwwww
……でも、いつかは言うべき事だったし、これで良いんだ。これで……)



727 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:14:21.97 ID:N5gWfHId0
―男の家―

がちゃり

男「あ、おかえり。遅かったな」

狐「……。……ただいま」

男「……何か暗いぞ?」

狐「わしは……わしは……本当に馬鹿な狐じゃ」

男「どうした? ……何か、あったのか?」



728 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:16:05.09 ID:N5gWfHId0
男「そうか……死んじゃってたのか……」

狐「己の神が死んだ事にも気付けず、阿呆のように待ち続けて……本当に、阿呆じゃ。わしは」

男「……」

狐「……わしゃ、いっそ道連れにして貰った方が良かった。
神を失った孤独は、使いにとって死ぬ程、辛い……。いっそ、死んでしまいたい……」

男はそっと狐に腕を回し、抱きすくめる。

男「死ぬなんて……言うなよ……」

狐「う……うぅ……」

狐は男の肩に頭を凭れさせ、ぽろぽろと涙を流す。

狐「わしは、わしは……もうどうすれば良いのか分からぬ……」

男「……」



731 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:26:19.28 ID:N5gWfHId0
―あくる日の神社―

巫女「……今日はあの狐が来てませんね」

巫女「あー、すっきり。これで静かに掃除が出来ます」

巫女「……」

巫女「……これもこれでなーんか、張り合いがないですね」

巫女「……」

神 「ふぁー……おはろー」

巫女「お早う御座います、神様」

神 「……あの狐は来てないのか」

巫女「ええ。お陰で清々しますよ」

神 「……本当はちょっと寂しいんだろー?」

巫女「そ、そんな事あるわけ無いじゃないですか!」



735 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:35:12.49 ID:N5gWfHId0
神 「あのさー、変な事言って良い?」

巫女「いつも変な事ばっかり言ってるじゃないですか。何を今更」

神 「ま、そうなんだけどさ……。……もし我が死んだらどうする?」

巫女「はい?」

神 「我が消えちゃったりしたら、巫女はどうする?」

巫女「どうって……そんな事急に言われても、どう答えて良いか分かりませんよ」

神 「だよなぁ。そんなモンだよな……」

神 「……。……我だったら道連れにしちゃってるかも」

巫女「え?」

神 「何でも無いよwwwwwwwただの独り言wwwwwwwww」

巫女「そうですか……。それより……いつまでメイド服着てれば良いんですか? いい加減巫女装束に戻りたいんですけど」

神 「巫女装束も萌えるけど、実はメイド服のが好きなんだよな、これがwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

巫女「……」



738 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:51:09.31 ID:N5gWfHId0
―大学―

先輩「友くーん、聞いてよぅ。雑木林、伐られずにすみそうなんだぁ。
何かね、伐ろうとしたら木から血が出たり不気味な声が聞こえたりしたんだって」

友 「神様がやったのかな?」

先輩「多分ねぇ。それで皆気味悪がって近寄りもしなくなっちゃったって。あとで神様にお礼言いに行かなくちゃあ」

友 「そーですね……(同棲の夢が潰えた……でも、先輩にとってはこっちのが良いんだよな……うん)」

先輩「住む場所が無くならないで済んで良かったぁ。……あ、でも」

友 「でも?」

先輩「たまには友君の家に泊まっても……良いかな?」

友 「……! も、ももも、もちろんですっ!」




神 (雑木林の木に仕込んだ血糊代、狸に請求しよっかな……全部の木に仕込んだから六千円じゃ足りなかったし。
……まぁ、今回は大まけにまけとくか。パチンコで大勝ちしたしなwwwwwwwwwwwwwwwwwww)



740 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:59:42.52 ID:N5gWfHId0
先輩「……あれ? そういえば男君は?」

友 「そういや今日は学校来てないな。……単位落とすぞ、アイツ。何やってんだろ?」



―駅のホーム―

男 「……本当に行くのか」

狐 「ああ」

男 「……更に辛くなるかも知れないぞ?」

狐 「それでも……行くんじゃ。……そうすれば気持ちに踏ん切りがつきそうな気がしてな」

男 「……。……そうか」

狐 「……」

男と狐は到着した電車に乗り込む。
……狐の故郷、今は亡き神が御座した地へ向かって。



742 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 02:14:51.45 ID:N5gWfHId0
がたん ごとん

狐「電車には乗り慣れぬからな。乗り換えもややこしゅうて訳が分からぬ。お主に全て任せるぞ」

がたん ごとん

男「ああ、分かった。行き方は調べといたから多分、大丈夫だ」

がたん ごとん

狐「……取り壊された社の跡には何が建っておるんじゃろうか」

がたん ごとん

男「……さあな」

狐「……」

男「……」

がたん ごとん がたん ごとん…



746 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 02:32:50.26 ID:N5gWfHId0
―そして二人は到着する―

男「久々に来たなー……けど、全然あの時の面影が無い」

狐「ああ、すっかり都会に成り下がってしもうた。
信じられるかえ? あそこには田畑が広がっておったんじゃ……。
……こんな場所に一匹だけで取り残される気持ち、お主には分かるかえ?」

男「……」

狐「……。すまぬな……こんな気持ち、分からんで良い。良いんじゃ……」

男「ごめんな……」

狐「何故謝る?」

男「……」

狐「……お主は、何も悪くないじゃろう?」

淋しげに佇む狐に俺は何もしてやれない。
何と言葉をかけて良いのかも思いつけない。
己に対しての悔しさともどかしさに胸を締め付けられ、俺はただ黙って唇を噛み締めた。



748 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 02:45:10.47 ID:N5gWfHId0
狐「この川もこんなに濁って……前は清い水が流れとったというのに。よく他の狐と魚を捕りに行ったものじゃ」

狐「ここも『びる』が建つ前は木々が生い茂っておった。春は桜が淡く彩り、夏になれば青々とした葉が、秋は黄金と紅に染まって……実に美しかったものよ」

狐「あの『まんしょん』が建っとる場所はここらで一番大きな木があってな。秋になったら実をもいで食っておった。……甘くて、美味しかったの」




狐「……何故、こんなに変わってしまったんじゃろうな」




――狐は、様変わりした村を歩きながらぽつりぽつりと呟くように昔を思い返す。
その表情はどこまでも切なげで、物悲しかった。そして……――



751 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 02:57:49.69 ID:N5gWfHId0
狐「ここじゃ……ここに……神社が、あった」

消え入りそうな程小さな声で狐が呟いた。
そこには何の変哲も無いビルが建っているだけだった。
ここに神社が在っただなんて到底思えぬ光景だ。

男「……」

狐「……はは。神の気配も、もう微塵もせぬ」

男「……」

狐「わしの神は本当に、もう、何処にも居らなんだ……」




狐「神も、社も、村も、田も畑も、山も……わしは全て、全て失ったんじゃ……っ!」

狐はビルに向かって叩きつける様に叫んだ。
聞いている者の胸の奥にずきり、と突き刺さるような、どこまでも悲しく切ない声だった。



756 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 03:25:50.86 ID:N5gWfHId0
狐「わしは……神の使いだというのに何も出来やせんかった……」

狐「わしは……わしはぁ……っ!!」

狐が声を上げた刹那、ピシリッと音を立ててビルの一部に亀裂が走った。

男「……!? お、おい、ホノ……?」

俺が狐の方を見やるといつの間にか狐は元の大きな白狐に戻っていた。
全身の毛を逆立て、獣の唸り声を上げている。

ピシッ、ピシリッ!
またビルに亀裂が走る。

それを反映するように白い狐の身体にも傷が一筋、二筋と走る。
白狐の目は己から流れる血より紅く、燃えさかる様に光っている。
それでいて、その両眼には冷たい悲しみも宿っていた。

男「ホノ……!」

俺のかけた声にも反応せず、狐は唸り続ける。
――元・神の使いの狐は、完全に我を忘れてしまっていた。



757 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 03:36:14.03 ID:3HCKHhlK0
やりやがった…!!!



758 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 03:38:20.24 ID:lELLSn15O
ホノ幸せになれ



759 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 03:44:46.69 ID:N5gWfHId0
異変を感じた人々がビルから飛び出す。
血塗れの大きな白狐をぎょっとした目で見やり、逃げて行く。

ピシピシピシッ! ビルに更なる亀裂が走る。
――狐の身体も傷が幾筋も走る。

……ビルが倒壊するのが先か、狐の身体がもたなくなるのが先か。

傷から噴き出る血の飛沫を浴びながらそれを想像して、ゾッとした。

俺は大きな狐の身体にしがみつき、その尖った耳に向かって叫んだ。

男「ホノ、止めろ!」

狐「うぅううぅぅ……っ!」

男「そんな事をしてもお前の神は帰って来ない!」

狐「うぅうあぅぅ……っ!」

男「頼む! このままじゃお前も死んじまうぞ!」

狐「ぅううぅうぅ……っっ!」

男「お前に死なれたら……俺は……っ!」



762 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 04:11:10.20 ID:N5gWfHId0
ぴたり、と唸り声が止んだ。

俺の声が届いたのか……?
一瞬安堵したが、毛は逆立ったままでビルの亀裂も狐の傷も増すばかりだ。
……これが妖気という物なのだろうか? 熱いとも冷たいとも形容しがたい温度が辺りに充満している。

ぱりんっ、と窓が割れる音と同時に狐が牙の揃った口を開いた。

狐「男ヨ……ワシハ、ヤハリ、ドウシテモ許セヌノジャ」

狐「田ヲ奪イ、村ヲ奪イ、神ヲ奪ッタ人間ドモガ許セヌノジャ……」

――血みどろの狐が発した、怒りと悲しみに満ちたその声はいつものホノの声では無かった。

また一筋、傷が出来る。
滴る血で舗装されたコンクリート道路は赤黒く濡れていた。

男「でも、こんな事をしても意味無いだろ? お前だって分かっている筈だ」

狐「分カッテオル……分カッテオッタツモリジャ……」

狐「シカシノ、駄目ナンジャ。自分デモ、抑エ切レヌノジャ。
怒リモ悲シミも淋シサモ……ソシテ、己ノ妖力モナ」



764 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 04:32:03.32 ID:N5gWfHId0
狐「建物ヲ壊ス事ガ出来テモ、元ノ村ヲ取リ戻ス事ハ出来ヌ。ハハ……ワシハ、最期マデ馬鹿ナ狐ジャッタ」

男「最期……」

狐「ワシハ、コノママ妖力ヲ使イ果シテ死ヌダロウ……」

男「馬鹿狐! 死ぬなんて言うな、死んだら駄目だ……!」

狐「自分デモ、如何スル事モ出来ヌ。……仕方ノ無イ事ナノジャ」

男「ホノ……」

狐「……死ヌ前ニ、オ主ダケニ、ワシノ真ノ名ヲ教エヨウゾ」

狐「ワシノ神カラ授カッタ、大事ナ大事ナ名ジャ。
コレデ、ワシノ真ノ名ヲ知ル者ハ三人目ジャノ。ワシ自身ト、名付ケ親ノ神……ソシテ、オ主ジャ」


狐「ワシノ、本当ノ名ハ……――



768 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 04:49:21.95 ID:N5gWfHId0
子狐「うむー……なかなか、うまくばけられぬのぅ……」

「狐の子よ。また化ける練習か」

子狐「はい! かみさまのおつかいになったんじゃから、ちゃんとばけられねば、ならぬとおもっての」

「良い子だね、君は。ご褒美に真の名を与えよう」

子狐「しんのな……?」

「大事な物だからね。本当に大切な者にしか明かしてはならないよ」

子狐「はい。わかりもうしたー!」

「ふふ……。君は翌檜(あすなろ)という名の木を知っているね? 君にとても似た木だ」

子狐「あすなろはしっておりますが、わしとはぜんぜんにてませぬよ?」

「あの木はね、明日こそ立派な檜になろうと頑張っているんだよ。君みたいにね。
君の真の名は翌檜から取って『あすな』にしよう。……そうだ。漢字もあてねばね」

――そうして、わしの神は木の枝を拾い地面に書いた。



『亜須奈』と……――



770 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 05:10:18.04 ID:N5gWfHId0
男「亜須奈?」

狐「良イ名ジャロウ? ……コノ名ハ、本当ニ大切ナ者ニシカ明カシテハナラヌモノジャ」

男「本当に大切な者……って、俺で良いのか?」

狐「……アア、オ主ガ良イ。ソノ名ヲ忘レンデ居テクレ。ソウデナケレバ折角神ガ付ケテ下サッタ名ガ、コノ世カラ消エテシマウ」

ず、ずずんっと凄まじい音がした。
亀裂だらけのビルが崩れ始めている。このままここに居たら瓦礫に押し潰されて死にかねない。
俺はすっかり紅に染まってしまった狐を引っ張った。

男「逃げるぞ!」

狐「オ主ダケ逃ゲロ。……ワシハコノママ死ヌ。妖力ノ暴走ヲ止メラレヌ今、無暗ナ破壊ヲ止メル術ハ、ワシガ死ヌ事。ソレダケナンジャ」

男「嫌だ! 一緒に逃げよう……亜須奈!」

狐「……結局ワシハ、檜ナドニハ成レズ仕舞イカ」


狐「色々世話になったの。――……ありがとうな、男」

狐の声がいつものホノ……いや、亜須奈の声に戻った。
その瞬間、俺の身体は弾き飛ばされた。……ビルの瓦礫が届かぬ場所に。
ガラガラガラッ。ビルの瓦礫が狐の身体に降り掛かろうとする。紅に染まった狐は覚悟を決めたように目を閉じ、天を仰いだまま動かない。

男「亜須奈ぁ!」



772 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 05:32:41.19 ID:N5gWfHId0
― 一方、神社にて―

神 「うはwwwww釣られてやんのーwwwww人間アホすぎワロタwwwwwっうぇwwwww」

神 「さて、次はどんなスレ立てよっかn……」ピクッ

巫女「……? 神様、どうしたんですか?」

神 「巫女。元の巫女装束に着替えてきて。今すぐ」

巫女「え? え? 良いんですか?」

神 「……なーんか凄く嫌な予感がするんだ」

巫女「嫌な予感?」

神 「我、千里眼は使えないケド、百里眼くらいは使えるんだなー、これが。うはwww我スゴスwwwwwwwwwwww
という訳で、巫女の正装よろ。予感が当たってたら……あの狐が危ない」

巫女「狐? ……あんなの放って置けば良いんですよ」

神 「……とか言いながらもう着替え終了してるし」

神 「んじゃ、神様らしい事致しましょうか。レッツ・テレポーテーションwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」



160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 05:13:38.07 ID:GrsTnIv+0
――ずどんっ。
地響きを立てて瓦礫が地に落ちた。
俺は思わず目を覆う。……結局、俺はホノに、亜須奈に何もしてやれなかった。

後悔に胸を締め付けられ、瓦礫に潰された狐の亡き骸を想像しながら俺は恐る恐る目を開く。
……しかし、そこには俺の想像した光景は無かった。









△△神社の主、胡散臭いあの神が血濡れの狐を抱きかかえ、落ちた瓦礫の上に悠々とした表情で立っていた。


神  「ピンチの時に我、参上wwwwwwwwうはwwwwwwwwテラ格好良くね?wwwwwwwwww」



163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 05:21:55.24 ID:GrsTnIv+0
男 「神様!?」

神 「嫌な予感的中だなー……何か大変な事になってるしwwwwwwwwっうぇwwヤバスwwwww」

巫女「男さん、大丈夫ですか?」

いつの間に居たのだろう。振り向けば巫女の姿があった。

男 「お、俺は大丈夫だ……でも……」

俺は神の腕の中、ぐたりとしたまま動かない狐の方を見やった。
遠くからでも分かるほど、傷の数が増えている。

ピシッ、ピシピシピシッ。
倒壊したビルの周りの建物にまで亀裂が入り始めている。
そうして、また狐の傷も広がり……。



165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 05:22:37.53 ID:sc/IA+s2O
神パネェッすwwww



167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 05:24:41.66 ID:SJMJRFDcO
神様マジ神懸かり過ぎだろwwwww



171 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 05:35:02.45 ID:GrsTnIv+0
俺は思わず狐と神の所へ走り寄った。

神 「面倒な事になっちゃってるなぁ……」

男 「神様! あんた神だろ!? 何とかしてくれよ!」

神 「困った時の神頼み……っと」

そう言って、神は狐の身体を俺に委ねる。

神 「何とかするよ。そのつもりでここに来たんだし」

神 「妖力の暴走か……よっぽど感情が高ぶらんとこうはならんぞ、普通。何かあったの?」

男 「……ここは、狐が仕えていた神の神社でした」

神 「あー……成程ね。……で。さっき叫んでた『亜須奈』って名前、もしかしてこの狐の真の名?」

男 「……ああ」

神 「ようやく真の名を頂戴出来た。……これでちょっとは仕事が楽になるわwwwwwwwwww」



172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 05:50:17.30 ID:GrsTnIv+0
神 「巫女、神符を」

巫女「はい」

神 「今から、拡散した妖力を狐の中に戻す。こりゃあちょっと骨が折れるなぁ」

男 「俺に、俺に何か出来る事は無いのか!?」

神 「そうやって狐を抱き締めて、真の名を呼び続けろ。根の国に行ってしまわぬように名を呼ぶ事で現世に縛りつけとけ。
……真の名を明かすという事はつまり、お前がそれ程大事な存在だって事だろ? これはお前にしか出来ない仕事だ。……出来るな?」

男 「……? と、とりあえず名前を呼び続ければ良いんだよな? 分かった」

神 「あとで賽銭はずめよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」




神「……んじゃ、巫女よ。始めるぞ」

巫女「はいっ!」



176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 06:15:30.72 ID:GrsTnIv+0
――神は唄ともまじないともつかぬものを唱え始める。
巫女は傷だらけの狐の身体に両手を翳して神と同じようなものを唱えている。
その顔は今まで見た事無い程に真剣な眼差しをしており、その額には汗が滲んでいた。

俺は力いっぱい亜須奈の身体を抱き締め、萎れたように倒れたその耳に向かって呼びかけ続けた。


亜須奈、死ぬな。亜須奈、頼む、生きてくれ。

生きて油揚げでも何でも一緒に食おう、亜須奈。

また一緒にあの居酒屋に飲みに行こう、亜須奈。

……一緒に、生きてくれ。亜須奈。

亜須奈、亜須奈……――



177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 06:27:38.19 ID:GrsTnIv+0
狐 「……ん」

――狐が、目を開いた。

男 「亜須奈!」

狐 「わしは……一体……」

神 「ああ、疲れたぁ……とりあえず大成功wwwww今の我超パネェwwwwwwwwww」

巫女「ふー……何でこんな狐になんか労力割かなきゃいけないんですか、全く」

そう言いながら巫女は汗を拭く。
俺の腕の中に居る狐の血は、いつの間にか止まり、傷も塞がっている。

神 「拡散した妖力は総て在るべき力の主の元へ戻った。男……そして亜須奈狐よ。もう安心しろw」

男 「あ、ありがとうございます!」

神 「感謝するなら金をくれwwwwwwwwwwっうぇwwwwwwwwwwwwwwww」



179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 06:31:03.16 ID:tUwNUlARO
神がまともに見えるなんて…



180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 06:39:59.87 ID:lpXrNJzhO
この神になら掘られてもいい



182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 07:01:32.28 ID:GrsTnIv+0
巫女「それにしても……派手にぶっ壊しちゃってますね……。
法律とか詳しく無いですが、損害賠償とかされたらどんだけになるんでしょう?」

男 「……」

狐 「……男よ、本当にすまぬ」

神 「ま、事故みたいなモンだってwwwwwwwwwwwwwよし逃げるぞwwwwwwwww」







神 「そんじゃあレッツ・テレポーテーションwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」



184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 07:10:59.37 ID:GrsTnIv+0
―△△神社―

男 「あ、あれ? いつの間にここへ……?」

神 「どう? びっくりした?wwwwwwwwwwwwwwwwwwww
伊達に神様やってませんからwwwwっうぇwwwwっうぇwwwwww


……巫女。今すぐ亜須奈の傷を手当してやってくれ」

巫女「不本意ですが、神様が言うのなら仕方ありませんね。仕方なくですよ、仕方なく」

男 「亜須奈は、大丈夫なんですか?」

神 「見て分かるように妖力が戻ったとはいえ、傷が完全に治る訳ではない。
……ま、時間が経てば傷も癒えるだろwwwwww主、心配し過ぎだぞwwwwwww」

男 「良かった……。本当に、良かった……」



188 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 07:40:37.61 ID:GrsTnIv+0
巫女「……とりあえず、血も洗い流した事ですし。今から薬塗りますね。
少し沁みるかも知れませんが我慢して下さいね」

狐 「……すまぬな」

巫女「今日はやたらとしおらしいですね。いつもの威勢は何処に行ったんですか」

狐 「……」

巫女「……まぁ、良いです」


男 「亜須奈、大丈夫か?」

狐 「男。……ありがとう。お主のお陰で、こうして生きて帰って来れた」

男 「俺、何もしてないよ。お礼なら巫女さんと神様に……」

狐 「確かに巫女とあの神が居らんかったら今頃わしは死んでおった。
……だがな、お主も居らんかったら生きていられなかったかも知れぬ」

男 「え?」



190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 08:01:12.84 ID:GrsTnIv+0
狐 「死の淵を彷徨うとった時……我が神に逢った」



……

………

「亜須奈……」

狐「……っ! 神よ……!」

「それ以上近づいて来てはいけないよ。君も現世に帰られなくなってしまう」

狐「わしは、わしは……また主様の下に仕えたい……!」

しかし、わしの神は静かに首を横に振った。

狐「何故じゃ。何故……」

「すまなかったね。独りきりにさせてしまって。……淋しい思いをさせてしまって、本当にすまないと思っている。
……でも、耳を澄ませてみなさい。現世から、君の名を呼ぶ声が聞こえる」



191 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 08:07:50.04 ID:GrsTnIv+0
『亜須奈……亜須奈……!』

狐「……これは、男の声?」

「大切な者だから名を明かしたのでしょう?
……現世に戻りなさい。これは、最後の命令だよ」

「……もう、君は独りではない。だから、帰るんだ。いいね?」

狐「……。……はい」

「良い子だ。……それじゃあ、ね」





――その瞬間、目が覚めたんじゃ。
目覚めて最初に目に入ったのは男、お主の顔じゃった。
……お主がわしの名を呼び続けてくれたお陰で戻って来れたんじゃ。いくら感謝してもし足りぬよ。



195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 08:30:53.27 ID:GrsTnIv+0
男 「亜須奈……」

狐 「ああ、その名は“特別な時”以外はあまり口にせぬように。いつもは前と同じように『ホノ』と呼べ。
わしの神と、ここの神。そこに居る巫女とお主と、わし自身以外には知られぬようにな」

男 「……分かった」

狐 「うむ」

神 「うーっす、調子はどう? 大丈夫そう?」

狐 「大丈夫じゃ……神よ、有難う御座います」

神 「どうもwwwwwwwwwたまには神っぽい事せんとねwwwwwwwwwwwww」

狐 「それと……」



198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 08:46:28.32 ID:GrsTnIv+0
狐 「……主様の、使いにして下され」

神 「……。……主自身は、それで良いの?」

狐 「確かに前の神の事を忘れる事は多分出来ない。でも……」

神 「でも?」

狐 「何と表現すれば良いんじゃろうか。諦め、とは違うが……とにかく、わしは今を生きる事にしたんじゃ」

神 「ふーん……そっかw ……良いよ。使いにしてあげても」

狐 「……!」

神 「我は良いと思うけど……巫女、一緒に働きたい?」

巫女「……。……神様が言うなら仕方ありませんね。不本意ながら一緒に働く事にします」

神 「不本意とか言いながら本当は職場仲間が出来て嬉しいんだろwwwwwテラツンデレwwwww」

巫女「ツ、ツンデレなんかじゃありません!」

男 「良かったな、亜須奈」

狐 「ああ。今日から神の使いとして頑張らなくてはならんな」

神 「今日は良いって。ゆっくり休んどきなwwwwwwwww……さて、また釣りスレ立てに行こーっとwwwwww」



222 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 14:34:11.54 ID:GrsTnIv+0
―それから幾日も経ち……―

先輩「あのぅ、おみくじ引きたいんですけどー」

友 「俺もお願いします」

狐 「一回三百円じゃ。ほれ、よこさぬか」

巫女「何また人の仕事取ってんですか! この狐は!」

狐 「お主の仕事だといつ決まった? 何時何分何回地球が回った時?」

巫女「またこの狐は……!」

友 「えーと……」

先輩「お二人とも仲が良いんですねぇ」

巫女狐「「良くない!」」



神 「『我、神だけど質問ある?』っと……」カタカタ…



226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:10:31.75 ID:GrsTnIv+0
先輩「あー、ボク大吉だよぅ。友君はー?」

友 「小吉です。……何か微妙だなー」

先輩「あらら……じゃあボクのと交換しようよぅ」

友 「それってあんまり意味無いんじゃ……」

先輩「そーかなぁ?」


巫女「何かあの二人、良い雰囲気ですね」

狐 「じゃな」

神 「あとはどっちかが勇気出して告白すりゃあカップル成立だな、ありゃ」

狐 「そうなのかえ?」

神 「伊達に縁結びの神やってませんからwwwwwwっうぇwwwwwww
……お。主の恋人が来たみたいだぞwwwwwwwwwwwwwww」ニヤニヤ



230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:23:32.93 ID:GrsTnIv+0
男 「ホノー、頑張ってるかー?」

狐 「男! 頑張っているに決まっておろう」

男 「そうか。そりゃ良かった」

狐 「……む。油揚げの匂いがしておる」

男 「頑張ってるお前にご褒美だ」

狐 「ありがたくいただく」ニコニコ

男 「本当に油揚げ好きなんだなぁ」

狐 「悪いかえ?」

男 「……俺と油揚げ、どっちの方が好き?」

狐 「え?」



242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:26:00.20 ID:GrsTnIv+0
狐 「……お主、自分と油揚げを比べてどうするんじゃ」

男 「何となく訊いてみただけだ」

狐 「そうじゃの。油揚げは大好物じゃが、お主は……大好きじゃぞ」

男 「……」カアァ…

狐 「自分で訊いておいて何赤くなっとるんじゃ。
……わ、わしも恥ずかしくなるじゃろが」

ちょっとだけ赤みの差した狐の顔。
……俺は目の前の狐にしか聞こえないよう小声で“あの名”を呼んだ。

男 「俺も大好きだよ……亜須奈」

狐 「……。……その名は“特別な時”以外はあまり口にせぬようにと言うたじゃろ」

男 「何となく、“特別な時”みたいな気がしてさ」

狐はそれを聞くと、嬉しそうににやりと笑う。

狐 「そうか。……もう夕飯時じゃし飯でも食って行かんかえ?
お主が折角買って来たんじゃ。腕によりをかけた油揚げ料理を振舞ってやるからの」

男 「また油揚げかよ。飽きないな」

俺が笑いながら言うと、狐も笑って頷く。
神社を秋の始まりを告げるひんやりとした風が吹き渡っていた。 【おわり】



246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 16:28:32.46 ID:dWG5tHHQ0
>>242



268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 17:06:20.12 ID:BcMRTP4+O
>>1

乙!
次も期待してるよ。



279 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 17:49:38.12 ID:DU3TMqjoO
>>1
心の底からほんわかできたよ。乙!



316 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 21:56:29.17 ID:fm/5aq9w0
>>1

 



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22:53│Comments(4) 擬人化・人外「〇〇」 

この記事へのコメント

1. Posted by     2011年04月17日 00:21
うはwwwwwwwwwダメだこのネ申wwwwwwwwwwwwwwうぇっwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
2. Posted by ななしさん   2014年06月18日 22:40
何度みても面白い
3. Posted by ななしさん   2016年09月17日 01:03
久々に読んだ。
 これは良策
4. Posted by ななしさん   2019年04月22日 21:04
5 仙狐さん見て思い出して検索した
こっちの狐さんもかわいいし、周りのキャラもかわいい

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