2010年02月09日
男「そんなに飛びたけりゃ飛べばいいじゃん」
女「だってほら、疲れるし」
男「やっぱ疲れるもんなのか、羽って」
女「まぁねー」
女友「おーい女ー!なにやってんの、行くよー!」
女「はいはーい! それじゃあね、男くん!」
男「おう、またなー」
そういって女は女友と一緒に飛んでいった
比喩じゃなく、本当に飛んで。背に生える羽を使って
別に変な事じゃない。今の世の中じゃ普通の事
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 00:18:12.39 ID:hc+lP5Bu0
大昔、まだ人間に羽が無かった頃
大きな国が戦争を起こし、世界は荒れた
核とかいうもののせいで殆どの大陸は生き物が住めなくなり
僕らが住んでいるこの島国が唯一生き物が暮らせる土地だ
そんな中で、羽が生えた人が生まれ出した
なんで人間に羽が生えたのかは判らない
ただ、羽を持った人は羽を持たない人より有利だった
科学を失った人間に対して、彼らは“飛べる”という点で優位に立った
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 00:21:35.80 ID:hc+lP5Bu0
彼らは自分達を“空人”と名乗り、そして人間狩りが始まった
科学で地球を滅ぼしかけた人間を消すという名目で
実際は自分達が地球上の生態系の頂点に立ちたかったから
結果は始まる前から見えていた
そして現在、科学が失われ、僕らがいる
車とか船とか飛行機とかは教科書の中だけの存在だ
空を飛べるから、移動には大して困らなかった
ただ一人、この僕を除いて
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 00:24:57.70 ID:hc+lP5Bu0
女友「ねぇ女、アンタまた男といたよね?」
女「うん」
女友「やめておいたほうがいいと思うよー? あいつ、危ないっていうし」
女「危ないって、何が?」
女友「なんでも倉庫に籠って、機械作ってるんだって!」
女「…機械って、何?」
女友「アンタねぇ…人間が作ってた科学の一種よ!」
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 00:28:22.84 ID:hc+lP5Bu0
女「へぇー! 初めて聞いた! そっか、科学なんだ」
女友「そ! 今時あんな物騒な事やるのアイツくらいだって」
女「でも男くん、いい人だよ? 話してて楽しいし」
女友「何いってんの! 羽無しなんて、それこそ人間じゃない!」
女友「人間は地球を滅茶苦茶にした悪魔なのよ! 判ってるの!?」
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 00:32:05.18 ID:hc+lP5Bu0
女「で、でも男くんは羽が無いだけで空人には…」
女友「羽が無ければ空人じゃないの! いい? もうなるべく男には近づかない事!」
女「う、うん…判った」
男「…ひぇっくし! なんだ、何処かのカワイコちゃんが僕の噂でもしてんのか」
親方「おらー男! ぼさっとしてんな!」
男「うぃーす」
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 00:36:04.41 ID:hc+lP5Bu0
僕は大学に通いながら街の工場で働いている
科学が無くなった今、工場の仕事と云えば
壊れた家具とかの修理がもっぱらだ
こういう仕事は実生活に生かせるからいい
親方「じゃあこの椅子と、あとそこの箪笥な。任せたぞ」
男「がってんッス」
ここで働き始めてもう三年になる
これくらいは楽勝だ
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 00:40:04.95 ID:hc+lP5Bu0
男「(えーっと、これはもう駄目だから新しいの作ったほうがいいな…)」
学生A「皆ー! 男がいるぞー!」
男「(…あー、またか…)」
学生B「おー本当だ! 羽無しが汗かいて働いてら!」
学生C「大変だよなぁ! 親に見放されて一人暮らししてる奴は!」
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 00:44:39.48 ID:hc+lP5Bu0
親方「おらぁぁああ! クソガキ共が! 仕事の邪魔すんじゃねぇ!」
学生A「ひゃー! チギレ爺がキレたぞー!」
学生B「逃げろ逃げろー!」
親方「全く! 最近の若いモンは…どういう教育受けてやがんだ!」
男「すんません、親方…」
親方「何、お前さんは気にするな! それよりさっさと仕事片付けな!」
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 00:48:06.19 ID:hc+lP5Bu0
親方には羽があったが、今は千切れて無くなっている
なんでも昔は兵士だったらしく、その時の負傷のせいだそうだ
親方は一人でこの街に来て、仕事を探していた僕を雇ってくれた
羽無しに用はない、何処に行ってもそういって門前払いされた
だから親方は僕にとって恩人だった
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 00:52:45.11 ID:hc+lP5Bu0
男「どうッスか?」
親方「…うん! しっかり修復出来とるな! 模様彫りも上手くなった!」
男「よかった…ちょっと不安だったんスよ」
親方「がはは! お前ももう三年目だもんなぁ。随分成長したな!」
男「へへっ、そう褒められると照れくさいッスね」
親方「よし、じゃあ後は儂に任せてお前は帰りな。輸送の手配は儂がしとく」
男「えっ、いいんスか?」
親方「おう。それとほれ、先月分の給料だ。ちょいと早いが持っていけ!」
男「うひょー! 親方様有り難う御座います!」
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 00:56:19.69 ID:hc+lP5Bu0
男「ただいまー…といっても誰もいないけど」
男「さて、妹からの手紙読みながら飯食べようかな」
僕の家族、両親と妹はこの街から遠く離れた街で暮らしている
大学に通い始める少し前、両親から
「お前もいい歳になったのだから、一人で暮らしてみなさい」
そう云われてこの街に来た
多分両親は羽無しの僕を遠ざけたかったんだろう
僕が家を出たその月に、遠くの街に引っ越す事にしたと連絡が来た
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 01:00:46.33 ID:hc+lP5Bu0
それから僕は両親の元に一度も行っていない
行ったら帰らされるだろうし、行きたいとも思わなかった
ただ、妹には会いたいと思ってた
彼女は僕とは違ってちゃんと羽はあったが、僕の事を慕っていてくれた
小さい頃、羽が無い事で虐められていた僕を助けてくれた事もある
今考えれば、駄目な兄だったなぁと思う
妹は毎月一回、僕に手紙を寄越してくれていて
一人暮らしで友達も少ない僕にとってそれは数少ない楽しみだった
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 01:03:38.36 ID:hc+lP5Bu0
男「へぇ…テストで好成績か。流石僕の妹だ、うん」
男「…この○○って名前、最近よく書いているな…さてはボーイフレンドか!」
男「おのれー、我が妹に手を出そうとしてるのか!? 許せん!」
男「…といっても、此処からじゃ会いにいくのだけで月給が底を付くか…はぁ…」
男「…寝よ」
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 01:09:19.84 ID:hc+lP5Bu0
翌朝、大学へ向かう道
ぼろぼろになっている歩道を僕は歩いていた
皆空を飛んで大学に行くから歩道を使う人は少ない
飛ぶ力がない老人、羽を怪我した人
僕以外はそんなもんだ
学生A「おーおー今日も羽無しは歩道を歩く、か!」
学生B「ぎゃはは! それあの本のパロだろ?」
学生C「さっさと行こうぜー、あの教授遅れるとうっせーし」
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 01:13:34.78 ID:hc+lP5Bu0
男「このペースじゃ、一限間に合わないな…」
男「…いいや、サボるか」
飛べないとこういう時に不便だ
飛べたらこの時間でも始業には間に合うだろう
けど徒歩じゃ到底無理だ
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 01:16:14.89 ID:hc+lP5Bu0
男「…はぁ、漸く着いた…」
大学は僕の家から歩いて一時間半掛かる
飛べば何分なんだろうな、とよく思う
男「…倉庫、行くか」
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 01:20:28.53 ID:hc+lP5Bu0
大学の端っこに、今は使われていない倉庫がある
少し前は密会やら校内性交を目論む連中が溜まっていた
けど最近ではそんな連中も近寄らなくなっている
何故なら
女教師「おや、もう来たのかい?」
この人がいるからだ
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 01:24:32.40 ID:hc+lP5Bu0
男「暇だったんで、今日は早めに来たッス」
女教師「暇って…今の時間は××先生の授業じゃなかった?」
男「寝坊したんスよ。遅刻したらあのカタブツ、入れてくれる訳ないし」
女教師「成る程ね…いや、遅刻しないようにしなよ…」
男「どうせあんなの役に立たないし…それより、昨日の続きやりましょうよ」
女教師「続き? …ふふっ、君も好き者だね。判った、おいで」
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 01:29:20.84 ID:hc+lP5Bu0
女教師「どう? 昨日君が帰った後に少し弄っといたんだけど」
男「うーん…これじゃ回転弱くなるんじゃないッスか?」
女教師「それはそうなんだけどね。重さを考えるとこうせざるを得ない」
男「重さか…うーん、壁だなぁ…」
女教師「ま、とりあえず動かしてみよ?」
男「それもそうッスね」
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 01:34:23.30 ID:hc+lP5Bu0
ドドドドドドドドド
男「やっぱり遅くなってるッスね」
女教師「これじゃ飛ばすのは無理っぽいねぇ…ん?」
ドドドビビビブブブ
男「こ、この音…明らかにやばいんじゃ…」
女教師「そうかもね…」
ドーンッ
学生D「きゃあっ! な、何!?」
学生E「どーせまた倉庫で爆発したんだろ」
学生F「あの二人どうにかなんないの? 迷惑過ぎ」
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 01:38:04.47 ID:hc+lP5Bu0
女教師「けほ、けほ…男くん、大丈夫?」
男「口の中にワンダーワールドな味が広がってるッス…」
女教師「私もだわ…あー、駄目だ。コンプレッサーのシャフトがトんでる…」
男「また作り直しッスか?」
女教師「いや、材料がなくなったから遺跡いかなきゃ」
男「うへぇ、面倒臭…」
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 01:42:57.50 ID:hc+lP5Bu0
遺跡っていうのは、この街の外れにある
人間達が作っていた物が色々ある所だ
現代には科学を毛嫌うする風潮があるので
遺跡に行く人は殆どいないし、街も管理していない
僕らはここから材料を調達してエンジンを作っている
目的は、空を飛ぶ事だった
女教師「じゃ、私は先に行ってるから。男くんは集団教育に埋没してきな」
男「うぃーッス。本当は俺も行きたいんスけど」
女教師「君は学生、勉強が仕事でしょ? ほら、行った行った」
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 01:47:40.96 ID:hc+lP5Bu0
男友「おーっす男。なんだ、また倉庫爆破したのか」
男「爆破じゃねぇっつーの…似たようなもんだけどさ」
男友「お前も懲りないよなぁ…あの女教師といい」
男「喧しいわ。羽が無い者の辛さが判るのか!」
男友「判りません」
男「ですよねー。というわけでノート見せて」
男友「あいよ。ついでに出席、誤摩化しといてやったぜ」
男「ははー、有り難き幸せ」
男友「というわけで女さんとの遊びの約束、宜しく」
男「合点承知」
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 01:53:06.22 ID:hc+lP5Bu0
授業中、今は歴史の授業。僕は女教師先生の事を考えていた
あの人にはちゃんと羽がある、それもとても立派な羽が
学生時代、競飛行で一位になった事もあるそうだ
初めて会った日、あの人は僕にこう云って来たのだ
「空を飛んでみる気はないかい?」
最初は疑った、バカにされてるんじゃないかと思った
けど初めて倉庫で作り掛けのエンジンを見た時
僕はこの人とやってみようと思ったのだ
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 01:57:56.45 ID:hc+lP5Bu0
教師「で、あるからしてこの時日本の首相は “感動した!” と云った」
男「(どーでもいい…眠い…早く遺跡に行きたいな…)」
女「ねね、男くん」
男「ん? 何?」
女「今日の放課後、暇? うちに来ない?」
男「あー今日は駄目だわ…なんかあんの?」
女「え? い、いや、駄目ならいいんだけど…」
男「また暇な日があったら呼んでよ。行けるようにするからさ」
女「うん、判った! ありがとね!」
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 02:02:33.91 ID:hc+lP5Bu0
昼休み、大学の中庭
上空からは空中野球に興じる連中の声がする
僕は男友と学食パンを齧っている
いつも僕は学食パンとコーヒー牛乳だ
男友「…で、お前はそれを断ったのか!?」
男「らってひょうははいひゃん。ひょうはひぇんへいまはひてふし」
男友「かーっ! このバカチン! 何故今日承諾しない! そして俺を誘わない!」
男「ごくん…あ、そうか。そうすりゃ手間省けたか」
男友「お、お前って奴は…! えぇいそのパンを寄越せ!」
男「うわっバカ! コーヒー牛乳あふれちゃうぅぅぅううう!」
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 02:06:32.21 ID:hc+lP5Bu0
女「(男くん、楽しそうだなぁ…私も輪に入りたいなぁ)」
女友「こーら、女! 何男みてニヤニヤしてんの!」
女「えっ! 私ニヤニヤなんかしてないよ!? うん、全然!」
女友「はぁ…全く、昨日云った事、覚えてないの?」
女「お、覚えてるって! 本当!」
女友「もうっ…今度男と話してるの見たら、絶交だかんね!」
女「う、うん。判ったよ…」
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 02:10:12.63 ID:hc+lP5Bu0
大学が終わってすぐ、僕は街外れの遺跡に向かった
といっても全力疾走しても一時間掛かる距離だ
そして全力疾走なんてそうそう出来るもんじゃないから
結局歩いて行き、二時間半掛かってしまった
男「つ、疲れた…」
女教師「お疲れ様。ほら、炭酸水。砂糖溶かしてあるよ」
男「あざまッス。んぐ…っぷはー! 生き返る!」
女教師「とりあえず、使えそうなの見つけといたよ。ほら、あれ」
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 02:15:30.27 ID:hc+lP5Bu0
そういってツナギをきた女教師先生は親指で背後の山を示した
そこには錆びた金属の固まりや、朽ち果てたエンジンがあった
男「おー! こりゃすごいッスね!」
女教師「ちょっと奥まで行ったら飛行機が落ちててね、それから拝借したんだ」
男「…飛行機? それ、本当ッスか?」
女教師「見てみたい?」
男「超見たい!」
女教師「じゃ掴まって。飛べばここから十分も掛からないから」
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 02:22:22.05 ID:hc+lP5Bu0
女教師先生に掴まって飛んで、数分後
瓦礫の山の中腹あたりで何かが光って見えた
近づくと、それがなんなのかがはっきり判った
菱形の鉄の羽、灰色の機体、鈍く光るキャノピー
本で見た事がある飛行機だ
男「…お、おお…本物の飛行機だ…凄い…」
女教師「ざっと二百年前くらいのかな? 三次元ベクタードノズル式、戦闘機ってやつ」
男「よく残ってたッスねこんなの…あ、コクピットも残ってる」
女教師「当時の機械は物持ちが相当良かったみたいよ。百年経っても動いたらしいし」
男「…これは動かないんスか?」
女教師「残念ながらね。エンジンかたっぽ完全に壊れてたから」
男「あー…」
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 02:29:10.98 ID:hc+lP5Bu0
女教師「でも、昔はこんなのが空を飛んでたんだねぇ。不思議な気分だ」
男「そうッスね…羽が無いなんて、当然だったんだろうな」
女教師「やっぱり気にしてるんだ?」
男「そりゃまーそうッスね。羽があったら、なんてよく思うし」
女教師「じゃあこの飛行機のエンジン使って、今度は成功させよう!」
女教師「小型化さえすれば、ボードには載せられるだろうしね」
男「おーっし! 今度こそ飛んで大学の連中を見返すぞー!」
女教師「そのイキだっ! 私も頑張るぞー!」
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 02:34:37.06 ID:hc+lP5Bu0
その夜、僕は変な夢を見た
僕には羽が生えていて、空を飛んでいる
ふと下を見ると、羽が傷付いたカラスがいて
僕はそのカラスを放っておけなくて、抱えて飛んだ
するとカラスは真っ白な白鳥になって僕の先を飛んでいく
それを追うように、僕も飛んでいく
そんな夢
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 02:38:10.45 ID:hc+lP5Bu0
男「おはよーございまーす」
女教師「また一限はサボり? 仕方ない子だね君は…てか、まだ始業時間じゃないでしょ?」
男「いやぁ、昨日のエンジンが気になっちゃって」
女教師「ははぁ、欲求が抑えきれないわけだ」
男「で、どうなんですか? エンジン」
女教師「はいはい、わかったわかった」
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 02:43:16.14 ID:hc+lP5Bu0
そういって倉庫の中に案内された
倉庫の中は相変わらず腐敗した木々のものや、余っていた酒
それと、僕らのエンジン制作の為に使う油の臭いが漂っていた
そしていつもの作業場に着いた時
僕は目を疑った
男「なん…だと…? ボードが、出来てる…?」
女教師「へへ…実は昨日一晩掛けて作業しちゃったんだよ。で、試しにと思ってね」
男「す、すげぇ…これ、飛ぶんですか!?」
女教師「試してみる?」
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 02:49:18.05 ID:hc+lP5Bu0
大学の屋上
授業中という事もあって誰もいない
いるのは僕と女教師先生だけ
そして僕の足下には試作型の飛行機があった
僕らはそれを“ボード”と呼んでいた
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
男「すげー! これ絶対行けますって!」
女教師「あー!? 何ー!?」
男「絶対飛べるって云ってるんですよ!」
女教師「でしょ!? 私の自信作舐めないでね!」
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 02:53:24.28 ID:hc+lP5Bu0
ボードに足を置いた
エンジン音に合わせて地面が揺れている
僕の鼓動もそれに合わせるように高鳴っていく
男「じゃ、行ってみます!」
女教師「おー! 行ってこーい!」
男「うぉぉぉおおお!」
ボードを持って、駆ける
精一杯のジャンプをして、屋上から空に飛び出し
そしてエンジンの掛かったボードに飛び乗った
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 02:56:50.84 ID:hc+lP5Bu0
キィィィイイインンン――
学生A「あーっ! なんだよこの音! るせー!」
学生B「また男と女教師がなんかしてんじゃねーか!?」
学生C「にしたってこれは五月蝿すぎだろ!」
女「(男くん、危ない事してないかな…)」
学生D「ね、ねぇ! あれ男じゃない!?」
女「え?」
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 03:02:51.90 ID:hc+lP5Bu0
ゴォォォオオオ――
男「とっ、飛んだ…飛べたぞー!」
学生A「は、ははっ…」
学生B「マジかよ…」
学生C「男が、飛んでる…」
女友「お、恐ろしい…科学の、旧時代の悪魔の再来だわ!」
女「(男くん、嬉しそう…)」
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 03:06:58.67 ID:hc+lP5Bu0
男「ひゃっほーう! 自分で空を飛ぶってこんな気分だったのかー!」
学生D「ね、ねぇ。男が飛んでる方向って…」
学生E「ああ、教会だな。ありゃ下手したらぶつかるぞ」
学生F「…あの変なのって、止まれるの?」
76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 03:11:20.22 ID:hc+lP5Bu0
男「イヤッホー! 気持ちイー! お、教会が…止まんなきゃ危ないな」
男「…あ、あれ? そういやこれ、ブレーキとかそういうのは…」
女教師「あ、やっべあれブレーキつけてないじゃん私」
ずどーん
学生達「や、やったー! やりやがったー!」
女「お、男くん!」
78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 03:14:20.25 ID:9u5l52tcO
ボードってどんな感じの奴?
エウレカのリフボードみたいな奴?
80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 03:18:09.27 ID:hc+lP5Bu0
>>78
アニメ見てないからリフボードについてはよく判らんけど
サーフボードにエンジンがくっ付いたようなもんだと思って欲しい
81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 03:20:05.83 ID:hc+lP5Bu0
その後、僕はぼろぼろになって瓦礫の山から救出された
教会の塔部分が木製だったのが幸いし、大事には至らなかったが
僕は大学の学長から無期限の停学を食らい
責任を取る形で女教師先生は大学を辞めさせられた
事故から一週間、今は親方の工場で住み込みで働いている
僕も大学が無ければ大した用もないので工場に住み込みで働いていた
といっても沢山仕事がある訳でもないので
暇な時は工場地下を借りた作業場でボードを弄っていた
親方は科学や機械に対しては特になんとも思わないようで
逆にボードが出来たら自分も乗せろといっている
そんな風に毎日が過ぎていた頃
84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 03:21:08.97 ID:hc+lP5Bu0
あ、ミスした
今は親方の工場で住み込みで働いている
→
女教師先生は今は親方の工場で住み込みで働いている
で頼む
86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 03:26:13.39 ID:hc+lP5Bu0
女教師「これはこんなもんで大丈夫だと思う?」
男「もうちょっと削ったほうがいいッスよ。これじゃキツ過ぎる」
女教師「はいはい」
親方「おーい! 男ー! ちょっと来い!」
男「あ、はーい!」
88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 03:30:58.09 ID:hc+lP5Bu0
作業場から出て、親方の元に行くと
其処には見慣れない女の子が立っていた
年は僕と同じくらいだろうか、正直いって美人だった
でもその風貌、凛とした佇まい、背に生える漆黒の翼
そして短く切られた黒髪の影からこちらを見る眼は
とても同世代には思えなかった
親方「今日からウチで働く事になった新入りだ。お前、面倒見てやれ」
男「ぼ、僕がッスか? 女教師さんもいるのに、ちょっとキツいッスよ…」
親方「じゃあ、あいつは儂が面倒を見る。お前も同年のほうが話易いだろ」
男「…僕と同い年ッスか?」
親方「ああ、お前二十歳だったよな? こいつもそれくらいだ、なぁ?」
黒髪の少女「……(こくり)」
90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 03:36:06.44 ID:hc+lP5Bu0
男「(本当かよ…そうは見えない、いや、思えないオーラが…)」
親方「じゃ、宜しく頼んだぞ。儂は部屋で書類を片付けとるからな」
そういって親方は行ってしまった
取り残された僕と黒髪の美少女
お互い話し出す切欠が見つからず、黙ってしまう
いや、彼女は様子を伺ってるだけかもしれない
92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 03:39:33.80 ID:hc+lP5Bu0
…いかん、このままじゃいかん
男「あ、あの…よ、宜しくね! 僕、男ってんだ」
黒髪の少女「…こちらこそ、宜しく…」
男「(うわぁ…これ気まずい…いや、ちゃんと話さねば!)」
93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 03:44:48.77 ID:hc+lP5Bu0
男「あ、あの。君の名前は…?」
鴉「…鴉」
男「へ、へぇ! 鴉か! 変わった名前だね!」
鴉「…そう?」
男「ご、ごめん…気に触ったかな?」
鴉「…別に…大した事じゃない…」
それが彼女との、最初の会話だった
94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 03:50:46.93 ID:hc+lP5Bu0
それから数週に渡り、僕は鴉に仕事を教えていった
修理依頼の応対、修理時の判断の仕方、材木からの掘り出し
彼女はみるみるうちに仕事を覚えていった
気がつけば一ヶ月が経ち
彼女は模様彫りに関しては僕より上手くなっていた
他も、僕より少しだけ下手なだけで
それでも仕事をする上では十二分だった
女教師「いやぁ、鴉ちゃんの仕事ぶりには本当溜め息が出るね」
男「本当ですよね…模様彫りなんて、ありゃもう芸術の域ッスよ」
女教師「国宝級よねー。仕事も増えて来たし、こりゃあ鴉ちゃん様様ね」
親方「おらー! お前らくっちゃべってる暇があったら手ぇ動かせ!」
男・女教師「うーす!」
96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 03:56:44.82 ID:hc+lP5Bu0
親方「よぉーし、今日はもう上がってよし! 各自勝手に帰るなりなんなりしろ!」
男達「わー」
女教師「ごめん男くん。今日は私、ボードの作業パスするわ」
男「へ? 珍しい。なんか用でもあるんスか?」
女教師「都市から彼氏が来てるのよ。久しぶりに会ってくるんだ」
男「へいへいノロケ乙ノロケ乙」
女教師「そいじゃ、また明日ねー」
98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 04:02:44.70 ID:hc+lP5Bu0
そういって女教師さんは出て行った
親方はすでに部屋に戻っている
止む無く僕は一人で地下作業場に行こうとした
すると、鴉が視界に入って来た
鴉「…男くん、何処かに行くの?」
男「ん? ああ、地下に作業場があってね。其処に行こうかと」
鴉「…作業場?」
男「うん。そうだ、良かったら見てく?」
鴉「(こくり)」
99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 04:08:23.49 ID:hc+lP5Bu0
そういえば、鴉には僕らが飛行機を作っている事を云ってなかった
云ったところで嫌に思われたらどうしようという思いがあったからだ
でも彼女の事だから、見せたところで何も変わらないだろう
そう思って僕は鴉を地下の作業場に案内した
作業机の上には、修復途中のボードが置かれていた
鴉「…これは、何?」
男「ああ、飛行機だよ。ボードっていってね、僕と女教師さんで作ってるんだ」
鴉「…飛行機?」
男「あーっと…まぁ要するに機械だよ。科学の代物」
103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 04:15:41.24 ID:hc+lP5Bu0
鴉「…科学。飛行機、初めて見た…」
男「まぁ最近じゃ絶対見ないしね。多分、こいつが世界で只一つの飛行機だよ」
鴉「…どうして、これを作ってるの? 飛ぶなんて、羽があるのに…」
男「ああ。ほら、僕羽無しじゃん。飛べないからバカにされんのも癪だし」
鴉「…そう…飛べると、いいね…」
男「へへっ、実はもう、一度飛んだ事あるんだぜ?」
鴉「…そうなの?」
105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 04:20:54.55 ID:hc+lP5Bu0
男「ああ。それで教会にぶち当ってさ、それで停学させられちゃったよ」
鴉「…そうなんだ…」
男「うん、でも今度飛ぶ時はそうはいかないぜ。事故なんか絶対起さない」
男「子供の頃からの夢だったんだ、空を飛ぶのがさ…バカみたいだろ?」
鴉「…そんな事ないと思う…けど、空は飛べないほうがいいかもしれない…」
男「え? な、なんで?」
鴉「…ううん、独り言。気にしないで…」
106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 04:25:23.49 ID:hc+lP5Bu0
その後、僕は鴉と別れて自宅に帰った
帰り道、彼女の言葉がずっと心につかえていた
“空は飛べないほうがいいかもしれない”
僕にはよく判らなかった
空は飛べた方がいいに決まってる
あの邪魔なものがない空、空には自由がある
だから僕は飛行機を作り続ける
122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 05:58:13.01 ID:hc+lP5Bu0
ある日の朝
前日の仕事の疲れが残っていたのか
気がつけば昼まで後少しという時間になっていた
こうも微妙な時間に起きるてしまうと
正直どうしていいのか判らなくなる
男「さて、一体どうしたものか…腹はまだ減ってないし…」
男「…工場にでも行くか…つか、工場くらいしかいくアテないか」
123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 06:04:19.95 ID:hc+lP5Bu0
男「…あれ、郵便受けになんか入ってる」
男「だ、大学から? …なんだろ、退学通知だったりして…」
開いた其処には大体このような文章が書かれていた
『教会の件はもういいから大学に来てもいいよ』
――あんまりに唐突だったので、思考が数秒停止した
男「…ま、いいや。行くかな、大学」
124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 06:11:38.98 ID:hc+lP5Bu0
そうして僕は大学に行った
大学に来るのは一ヶ月とちょっと振りだろうか
なんだかそれ以上に居なかった気がする
男友「おっ、戻って来たか問題児! 久しぶりだな!」
男「出会い頭にソレかよ、凹むぞ」
男友「まぁそういうな。一ヶ月半くらいか? どうだった、謹慎中」
男「工場で働いたりしてたよ。そっちこそ何かあったか?」
126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 06:18:16.22 ID:hc+lP5Bu0
男友「おう! それが聞いてくれ。この大学にすげー美人が来たんだ」
男「美人?」
男友「翼まで全身真っ黒でな、それでいて無口、素性も判らない子なんだよ」
男友「登下校はおろか、飛んでる姿を見た奴もいないという不思議ちゃんだ!」
男「…黒い? 待て、ちょっと心当たりが――」
鴉「…男くん?」
男「おおうっ!? …か、鴉?」
127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 06:25:34.64 ID:hc+lP5Bu0
鴉「…男くんの学校、此処だったんだ…」
男友「なんだなんだ!? おい男、お前鴉ちゃんと名前で呼び合う仲なのかっ!?」
男「いや、工場で一緒なんだよ。それにしても驚いたな。お前、大学通ってたのか」
鴉「…うん…工場休んでる日は大学に行ってたんだ…」
男「ふーん。って事は、編入扱いで今一年か?」
鴉「…うん、男くんは、三年? …やっぱり、敬語とか使った方がいいのかな…」
男「ああ。でもま、校内だろうが校外だろうが関係ないな。普段通りでいいよ」
鴉「…わかった、それじゃ、授業あるから…またね…」
男「おう、それじゃなー」
129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 06:34:10.85 ID:hc+lP5Bu0
男友「うぉぉぉおおおんんん! 男ぉぉぉおおお!」
男「うおびっくりした! なんだよいきなり叫んで」
男友「女さんといい鴉ちゃんといい…なんでお前ばっかモテるんだ! 神も仏も…!」
男「いや、モテるとかそういうんじゃねぇよ。第一、鴉は仕事仲間だし…」
男友「るせぇ! 知らんのか貴様! 鴉ちゃんは誰が話しかけてもすぐ会話を切るんだぞ!?」
130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 06:42:40.92 ID:hc+lP5Bu0
男「…うっそだー、またそんな事いっちゃって」
男友「本当だ! 校内一のイケメンと有名な学生Gなんかな…」
学生G『鴉ちゃん、今日暇? 帰りに俺と遊んでいかねぇ?』
鴉『ごめんなさい今日は五限まで授業あってその後仕事だから(棒読み)』
男友「翌日リトライしても同じ台詞を吐かれたといって泣いていたぞ」
男「容赦ないな、鴉…しかし、そんな風な奴には思えないんだがなぁ」
131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 06:51:29.10 ID:hc+lP5Bu0
男友「そうなんか?」
男「ああ。仕事教え始めた頃は確かに取っ付き難かったけど、今じゃ普通に…」
男友「なんだと!? 貴様、鴉ちゃんに仕事を教えてたのか!?」
男「まぁ、仕事では僕のほうが先輩な訳だし…」
男友「…お前はこの大学、全男子生徒を敵に回したな…」
男「お前は味方だよな? 今日の昼飯奢るから」
男友「当たり前だろマイブラザー。ついでに女さん+鴉ちゃんとの遊びプランも頼む」
男「善処してみる」
133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 07:01:01.76 ID:hc+lP5Bu0
昼休み、男友に奢り代を渡して昼飯を買いに行かせ
僕は先に久々の学食パンを齧っていた
パンはもう飽きていたはず味はせず、なんだか妙に美味く感じた
随分食べていなかったからだろうか
一ヶ月前までほぼ毎日食べていたのだから
男「(しかし結局は学食パンなのである…もぐもぐ)」
女「あっ、男くーん!」
男「おう女。久しぶり」
135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 07:08:28.90 ID:hc+lP5Bu0
女「本当、一ヶ月半振りだね! 元気だった?」
男「まぁね。女はどうだった?」
女「元気だったともー! あ、そうだ。男くん、今日暇?」
男「ああ、仕事も今日は休ませてもらったし暇だよ」
女「よかったぁ。あのさっ、今日ウチに来ない?」
男「(チャーンス)」
男「ああ、いいよ。他のメンツは?」
女「あと女友ちゃんだけど、そっちも誰か呼ぶ?」
男「男友、呼んでいいか?」
女「全然オッケーだよ! じゃ、放課後ね!」
男「おう、ほいじゃな」
136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 07:14:44.02 ID:hc+lP5Bu0
男「というわけで女の家に行く事になりました」
男友「うはwwwwwみwなwぎwっwてwきwたwww」
男「そして此処は女の家の前です」
男友「正直辛抱たまりません」
女「あ、二人ともいらっしゃい! 上がって上がって!」
男友「すまんちょっとトイレいってくる」
男「お前もう戻ってくんな!」
138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 07:20:12.76 ID:hc+lP5Bu0
一人暮らしの女性の家に入るのは、これが初めてだった
中は女の子らしいとでもいうのだろうか
壁は綺麗な模様の布が張られており
机は赤に塗装されていて、上には四つのマグカップ
部屋の隅には可愛らしい熊の人形が置かれていた
男「(ほえー、これが女の子の部屋か…ん?)」
女友「(じとー)」
男「あ、あの…僕になんかついてます?」
女友「…ねぇ、なんでこいつがいるの!?」
141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 07:28:12.17 ID:hc+lP5Bu0
女「あっ、あのね! 女友ちゃんに男くんがどんな人か判ってもらおうと思って…」
女友「前から云ってるでしょ!? 科学なんてものをする奴嫌いだって!」
女「女友ちゃん、お、落ち着いて…」
女友「大体、羽も無いのに空人? はっ、ちゃんちゃら可笑しいわ!」
女「お、女友ちゃん…」
女友「あんたなんて人間よ! 地球を滅ぼす悪魔だわ!」
男「…ッ!」
142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 07:35:25.57 ID:hc+lP5Bu0
男友「うぃーす、遅くなりましt…あ、あら? なんか嫌な空気が…」
男「…悪い、僕帰るわ」
男友「…男?」
女「わ、私、そこまで送るよ…」
男「…女友さん」
女友「なっ、何よ…」
男「あなたは、どれくらい高く飛べるんですか?」
女友「…? し、知らないわよそんな事! で、なんだっての!?」
男「…僕は僕の力で、少なくとも女友さんより、高く飛んでみせる」
144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 07:44:53.38 ID:hc+lP5Bu0
その後、ぎゃあぎゃあ喚き叫ぶ女友と
状況が読めずにおたおたしていた男友を残し
僕は女と一緒に帰り道に着いていた
正直、あそこまで云われるなんて思ってもいなかった
女「ご、ごめんね…こんな事になるなんて、思ってなかったから…」
男「気にしないでいいよ、僕は大丈夫だし。しかし、悪魔かぁ…」
145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 07:50:40.76 ID:hc+lP5Bu0
女「…本当、ごめんね…ぐすっ…」
男「わーわー! お、お願いだから泣かないで! ほらっ、僕大丈夫だから! ね!?」
女「…う、うん…ぐすん…」
泣きじゃくる女を慰めた後、僕は彼女と別れた
明日からどういう顔して会えばいいんだろう
女友は女とよく一緒だから必然的に会ってしまうだろうし
男友にも謝らないといけないな、今頃どうしてるのか
僕の足は気がついたら工場に向かっていた
148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 07:57:47.69 ID:hc+lP5Bu0
男「…親方、いますかー?」
女教師「おー男くんじゃないか。今親方さんなら出掛けてるよ」
男「そッスか…女教師さんは何を?」
女教師「んー? まぁ、ちょっとね。待ってて、お茶煎れるわ」
先生を待っている間、工場の隅に眼がいった
そこには削りかけの白い板があった
見た事がない素材だった、女教師さんが持って来たのだろうか
少し形になっているそれは、ボードのように見えた
ただ機首方向に羽のようなものが取り付けられていて
それがなんだか図鑑で見たシュモクザメみたいで可笑しかった
152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 08:06:02.52 ID:hc+lP5Bu0
女教師「はい、お待たせ。レモンティーしかなかったんで」
男「ありがとうございます。ところで、あれってボードッスか?」
女教師「うん。遺跡で拾って来た、FRPってヤツを使った試作型」
男「FRP?」
女教師「繊維強化セラミック。昔は飛行機に使われていた素材らしいよ?」
男「そりゃすごいや! じゃああれに新しいエンジン積んじゃいましょうよ!」
女教師「まだ駄目ー。ボード自体がまだ作り掛けだしね。見てみる?」
男「…ふむ、強化セラミックより軽い、のかな? …ん、なんだこれ?」
154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 08:12:06.06 ID:hc+lP5Bu0
女教師「おっ、良いトコに眼がいったね。それは鴉ちゃんに彫ってもらったんだよ」
男「鳥…白鳥かな? へぇ、あいつ良い趣味してるなぁ…」
女教師「この変な部分は上昇、下降をするための補助翼、エルロンね」
女教師「本当はもっとでっかいほうがいいんだけど、それじゃボードじゃないし」
男「これが完成したら、前回みたいな事なく飛べますかね?」
女教師「そりゃもう! ほら、後部にエアブレーキも付けたし」
155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 08:20:12.54 ID:hc+lP5Bu0
男「…おお、鳥肌が立ってきた。飛びてぇ…」
女教師「ふふっ…じゃあより一層、頑張んなきゃね」
その後、FRPのボードを片付けて女教師さんは帰ってしまった
まだ彼氏さんがこちらに残っているらしい
僕はそれを見送り、親方に地下にいると書き置きを残すと
作業場に籠って自分のボードの制作を続けた
157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 08:29:20.41 ID:hc+lP5Bu0
男「……」
女友『あんたなんて人間よ! 地球を滅ぼす悪魔だわ!』
男「…あ、くそ。涙出て来た…悪魔か、ははっ…」
あの時はなんとか平静を保てていた
それでも心は随分傷ついていたらしい
思い出したその途端、涙が止まらなくなった
こんなに泣いたのは何年振りだろうか
161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 08:38:27.82 ID:hc+lP5Bu0
男「…畜生、好きで羽がないんじゃねぇんだぞ…アホ…」
鴉「…男くん?」
男「へ、へっ!?」
気がつけば後ろに鴉が立っていた
手には紙袋を抱えている、買い物してきたのだろうか
彼女の瞳はじっとこちらを見て来ていた
163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 08:45:22.00 ID:hc+lP5Bu0
鴉「…どうしたの? 眼、赤いよ?」
男「なっ、なんでもないよ!? 本当! なんでもないって!」
鴉「…泣いてたの?」
男「ばっかだなー! そ、そんな訳…あ、あれ、なんだこれ。眼から汗が…」
170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 09:00:27.10 ID:hc+lP5Bu0
鴉「…男くん…」
男「な、何…?」
鴉「…私でよければ話、聞くから…ね?」
男「か、鴉…う、うう…」
鴉「…大丈夫、私がいるから…」
僕は声を上げて泣いた
そんな僕を、鴉は優しく抱きしめてくれて
それが涙腺の弛みに拍車を掛けた
もう一生分の涙が出尽くしたであろう頃
僕は鴉に女宅であった事を話した
172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 09:09:34.75 ID:hc+lP5Bu0
男「悪魔、だってさ…はは、僕はそんなに悪い事してたのかな…」
鴉「…男くんは、どうして飛行機を作り続けてるの?」
男「え? そ、それは…空を、飛びたいからだよ」
鴉「…なら男くんは悪魔じゃない。空を飛びたいって思うのは当たり前…」
鴉「…それに男くんは誰も傷つけてない。そうでしょう?」
男「う、うん…でも、それが誰かを傷つける事に繋がってるのかもってさ…」
鴉「…それは男くんが悪いんじゃない、そうした人がいけないだけ…」
177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 09:20:25.22 ID:hc+lP5Bu0
鴉「…男くんがしてる事、私はすごい格好良い事だと思うな…」
男「か、格好良い、か?」
鴉「…うん、私ならきっと諦めてる。飛べなくなったら、それで御仕舞…」
男「鴉…」
鴉「…私ね、実は飛べないんだ…」
男「へっ? い、いや。そんな立派な羽があるのに何を…」
180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 09:26:17.81 ID:hc+lP5Bu0
鴉「…見て、男くん。これが私…」
男「!」
彼女が広げた翼には穴が空いていた
それも何カ所も、痛々しいほどに
そういえば鴉が飛んでいるところを見た事が無い
それは見れていなかったのではなく
そもそも飛べなかったからだったのか
182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 09:32:19.13 ID:hc+lP5Bu0
鴉「…私ね、前は都市部に住んでて…都市軍にいたの…」
鴉「…ブラックウィドウなんて呼ばれてて、エースだったんだ…」
鴉「…でもある日、いきなり上空から槍を食らったの。それも、何本も…」
鴉「…眼が覚めたら、こんなになっていて…そして、軍を辞めた…」
男「そんな事があったのか…」
鴉「…この街に来たのも、軍の事を忘れたかったから…」
鴉「…離れた街で静かに暮らそう、もう空を飛ぶなんて事忘れようって…」
185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 09:38:14.25 ID:hc+lP5Bu0
鴉「…でも、其処で男くんに会った…」
男「僕に…?」
鴉「…羽が無いのに、それでも空を飛ぼうとする男くんが、最初は判らなかった…」
鴉「…空を飛んだって、いずれは落とされるのに。歩いて生きていくほうが、ずっと楽なのにって…」
鴉「…でも男くんを見ていたらね、この人は飛んでも落とされないんじゃないかって、そう思えて来たの…」
鴉「…私みたいに、一度羽を失っても、またきっと高く飛ぶんだろうって…」
187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 09:42:57.58 ID:hc+lP5Bu0
男「(高く、飛ぶ…)」
鴉「…男くん。飛行機、必ず完成させて。そして、空を飛んで…」
鴉「…そしたら私も、頑張れる気がするから…」
男「ああ、云われなくたって完成させるつもりだよ…でも、鴉」
鴉「…?」
190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 09:47:10.53 ID:hc+lP5Bu0
男「僕が飛ぶ時は、君を連れて飛ぶ…もう一度、空を飛んでみたくないか?」
鴉「!」
男「もしかしたら一年、いや、もっと掛かるかもしれない。十年後かもしれない」
男「でも、必ず飛んでみせるから。その時は、一緒に飛ぼう。約束だ」
鴉「…うん」
275 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 17:07:56.23 ID:hc+lP5Bu0
一年の月日が流れた
僕は大学を辞めた、というより辞めざるを得なかった
出席日数と単位が足りなくなっていたのだ
学長からは年度末の補講に出ればなんとかするとも云われたが
正直言ってもう大学にいる必要も無くなっていたし
それから僕はほぼ毎日、工場で働くようになった
親方と女教師さん、そして鴉と毎日を共にして
仕事が終われば飛行機の制作に明け暮れた
部屋の隅には壊れた試作機の山が出来始めていた
それでも僕らは制作を続けた
そうやっているうちに改善点が見つかり
回を重ねる度にボードの性能は上がっていった
そんなある日の事――
277 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 17:13:04.43 ID:hc+lP5Bu0
親方「おーい男! お前にお客さんだぞ!」
男「僕に? …誰だろ」
呼ばれて行った先に居たのは
なんだか偉そうな服を着たヒゲの中年だった
親方が僕を紹介し、さて何のようかなと席に着くと
彼はいきなり話を始めた
ヒゲ「単刀直入に云おう、男くん。私達の科学研究所に来てくれないか?」
280 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 17:19:21.81 ID:hc+lP5Bu0
男「…はい?」
ヒゲ「私は都市で科学を研究している者だ。風の噂で君の事を聞いてね」
なんでも郊外の街に飛行機なるモノを作っているバカがいる
そんな話を当てにしてあちこちの街を巡り巡って
そうして僕を見つけ出したそうだ、ご苦労様な事だ
ヒゲ「君のような若者は、世界中探したってそうそういないよ」
男「そりゃまぁ、今の世の中じゃ科学は禁忌みたいなもんですしね」
ヒゲ「そう! 私はそれを覆す為に活動をしているのだよ!」
男「うおびっくりした! く、覆す?」
283 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 17:25:16.84 ID:hc+lP5Bu0
ヒゲ「今の人々は今の生活に慣れてしまい、向上心を忘れてしまっている!」
ヒゲ「それすなわち科学的発達! 文化の進展は科学無くして成し得ない!」
ヒゲ「科学を禁忌、なんていう時代はもう終わらせるべきなのだ!」
男「お、おお…何がなんだかよく判らんが何か凄い事を云ってる気がする!」
ヒゲ「男くん! 君のその飛行機に捧げる科学魂を、私に貸してくれないか!?」
男「はっ、はい! ヒゲさん!」
その後、親方にもヒゲさんの演説は行われ
親方もなんだかノリノリで『行って男を上げてこい!』と云ってた
286 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 17:33:34.00 ID:hc+lP5Bu0
そして、都市に行く手続きが済んだらまた来るからと云い残し
ヒゲさんは颯爽と工場を去っていった
女教師「へーぇ、科学研究所のねぇ。変わった人もいるもんだ」
男「勢いで承諾しちゃったんスよ…まだボードも完成してないのに」
女教師「でもま、向こうに行けば完成も早くなるんじゃない? より高性能にさ」
男「まぁそれもそうなんスけどね」
女教師「そっかー。男くん、この街出ちゃうのかぁ…寂しくなるね…」
290 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 17:42:52.26 ID:hc+lP5Bu0
その後女教師さんは用事があるからと行って帰っていった
僕も残っていた自分の仕事を片付けて帰路に着く
ふと振り返ると、高台にある大学が眼に入った
今日は工場で鴉に会ってなかった、講義が長引いたのだろうか
しかし今日は仕事に来ると行っていた
彼女に限って無断でサボるなんて考えられない
何かあったのだろうか?
男「(ま、明日には顔を出すだろ、大学も休みだしな)」
294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 17:48:55.00 ID:hc+lP5Bu0
その晩、早々に夕飯を食べ終え
する事もなかったので僕は床に着いていた
しかし久しぶりの暑さがなかなか眠らせてはくれず
仕方なくぼけーっと天井を見つめているしかなかった
男「(あーあのシミ顔みてー超ウケるー…はぁ、つまらん)」
そんなアホな事を考えていた時だった
家の戸が叩かれて、聞き慣れた声がした
296 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 17:56:02.82 ID:hc+lP5Bu0
女教師「男くん、起きてるかい?」
男「ふぁ? 女教師さん? 今出るッス」
扉を開けると、そこにはやはり女教師さんが立っていた
その表情は何処か思い詰めたようにも見えた
男「ど、どしたんスか? こんな時間に…」
女教師「ごめんね…ここじゃなんだし、ちょっと場所変えようか。掴まって」
男「はぁ…」
298 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 18:04:00.50 ID:hc+lP5Bu0
そういって女教師さんは僕が掴まったまま空へ飛び出した
いつも思うのだが、よく僕を抱えながら飛べるもんだ
僕だって男なわけだからそれなりの重さはあるだろうに
掴まっている間、女教師さんの身体からはオイルの匂いがしていた
それはさっきまで作業していたかのように真新しいものだった
やがて僕らは街で一番高い灯台の上に着いた
299 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 18:07:12.98 ID:hc+lP5Bu0
男「(うおー高いトコ寒ッ!)…へ、へっくしょい!」
女教師「ごめんね。こんな場所に連れ出して…やっぱ寒い?」
男「そ、そりゃまぁそれなりに…で、話ってなんスか?」
女教師「うん…あのね、私、明日の早朝にこの街出て行くんだ」
302 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 18:15:21.99 ID:hc+lP5Bu0
男「へぇ、そらまた…ってうぉぉおおお――!?」
女教師「ちょっ、声でかいってば!」
男「あっ、す、すいません…で、でもマジっすか…?」
女教師「ほら、私都市に住んでる彼氏居たじゃん。こないだプロポーズされちゃってさ…」
女教師「私みたいな変な女を好きでいてくれる人、あの人しかいないしね…」
男「そうッスか…」
304 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 18:20:08.02 ID:hc+lP5Bu0
女教師「結局、男くんのボードの完成を見る事も無かったか…ごめんね、男くん」
男「気にしちゃいないッスよ。それに、ボードはいつか僕が完成させるッス」
女教師「うん…ああ、そうだ。これ、渡しておくよ」
男「…? なんスかこれ? 封筒…?」
女教師「私のお父さんが残した、飛行機の設計図」
男「女教師さんの…お父さんが?」
女教師「私のお父さんはね、科学研究者だったんだ」
男「なんと!?」
307 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 18:26:57.76 ID:hc+lP5Bu0
女教師「お父さんはちゃんと羽がある空人だったけど、上手く飛べなくてね…」
女教師「それで飛行機の事を知ってからは、死ぬまで研究をしてたわ」
女教師「私やお母さんもそれの手伝いをしてたんだけど…殺されちゃってね」
男「こっ、殺されたって…誰に!?」
女教師「科学を毛嫌いする連中。お母さんも一緒に殺されちゃった…私が教員になった頃よ」
女教師「それでこの街に飛ばされて…でも私はお父さんの夢を叶えてあげたかった」
女教師「だから一人で倉庫に遺跡から材料持ち込んで作っていたの。そして、君に会った」
308 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 18:32:57.55 ID:hc+lP5Bu0
女教師「純粋に空を飛びたいっていう夢を持ってるところが、お父さんに被ったんだよ」
男「そうだったんスか…」
女教師「なんか、押し付けるようで申し訳ないけれども…男くん」
男「…はい」
女教師「必ず空を飛べるようになってね? そしたらお父さんも、喜んでくれると思うから」
男「…判りました。飛べるようになって、女教師さんに会いに行きます! 鴉も一緒に!」
女教師「ふふ…じゃあその日を楽しみにしてるよ。さ、帰ろうか」
311 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 18:38:30.33 ID:hc+lP5Bu0
家に飛ぶまでの間、僕はふと思った
こうやって女教師さんに掴まって飛ぶのも、最後なんだなと
そう考えると涙が溢れ出てきそうで仕方が無かった
僕は気づかれないように涙を流した、気づかれなかっただろうか
男「じゃ、お幸せに。女教師さん」
女教師「ははっ、まさか君からその台詞を聞くとはなぁ…」
男「二人で、すぐに行きますからね! 覚悟しておいて下さいよ!」
女教師「そっちこそ、がっかりさせるような飛び方しないようにね!」
男「はいっ!」
303 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 18:18:02.42 ID:BDVhS1SsO
支援
世界観の元ネタおせーて
312 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 18:43:50.40 ID:hc+lP5Bu0
さて、ここで閑話休題を
今晩中には終わりそうだね
>>303
大体は西島大介氏という漫画家に影響を受けて
同氏は月刊IKKIで連載持ってるはず
あとは俺が空だの鳥だの飛行機だのが好きだからこうなった
319 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 18:56:14.70 ID:hc+lP5Bu0
その夜、僕は女教師さんが渡してくれた飛行機の設計図を見た
そこに書かれているのはあのボードによく似てはいたけれど
それは綿密に計算された、隙の突き所のないものだった
結局その一晩、僕は設計図に眼を通して過ごしてしまった
男「あーくそ…もう朝じゃないか…工場にでも行くか」
男「ふぁ…眠い…」
320 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 19:02:34.94 ID:hc+lP5Bu0
その日、工場に着くといつもと何かが違った
工場の作業場には僕と親方だけ
女教師さんはもう出発してしまったという
僕が来る一時間くらい前に親方に挨拶しに来てたそうだ
親方「まさかあの小娘が結婚するなんざ、思ってもなかったなぁ」
男「そッスねぇ…そういえば、鴉はまだ来てないんスか?」
親方「ああ。昨日も来なかったしな…模様彫りの依頼あるのに、困った奴だ…」
322 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 19:08:52.40 ID:hc+lP5Bu0
男「あっ、じゃあ僕代わりにやりま」
親方「ん? 誰かこっちに来るみたいだな…」
男「聞いて下さいよ僕の話…って、あれは男友? それに女も…」
男友は工場に転がり込むようにして入って来た
入り口で足を引っ掛けて、文字通り転がり込んで来たのだ
その後から女が慌てるようにして入って来た
男「男友、大丈夫か?」
男友「お、おう…って、ンな事どーだっていいんだ!」
女「ねぇ男くん! 鴉ちゃん見てない!?」
324 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 19:14:31.30 ID:hc+lP5Bu0
男「へ? い、いや今日はまだ来てないけど…」
男友「それが昨日大学に来てなくてさ! いつも休む時は必ず連絡するらしいんだ」
女「変に思った鴉ちゃんのクラスメートが家に行ったら、居ないらしくて…」
男「んなっ!? お、親方! 昨日鴉は一度も来てないんスよね!?」
親方「あ、ああ! それに今日はいつもならとっくに来てる時間だぞ!」
男「鴉…と、兎に角探そう! 男友と女は向こうを頼む!」
男友「わ、判った!」
女「何かあったらすぐそっち行くから!」
327 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 19:22:03.58 ID:hc+lP5Bu0
男「親方、行ってもいいですよね!?」
親方「当たり前だろポンキチ! 早く行け!」
男友と女はもう飛び去った後だ
僕は作業着を脱ぎ捨てて、動き易い格好になる
こういう時、なんで空を飛べないのかと本当に自分を恨む
飛べたら早く見つける事が出来るだろうに
男「(鴉…待ってろよ!)」
僕は駆け出した
飛べるんじゃないかってくらいのスピードで
けれども、僕の両足はしっかり地面を蹴っている
353 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 21:08:37.14 ID:hc+lP5Bu0
男「(しかし地面這ったって無駄だな…この街高い建物多いし…)」
男友「男ー!」
男「! 男友! それに女も!」
女「どう!? そっちは何か掴めた!?」
男「いや、残念ながら何も…そっちは?」
男友「ああ、それが昨日都市軍の人間と一緒にいた鴉ちゃんを見てる奴がいたんだ」
男「都市軍…?」
女「でも、なんで鴉ちゃんが軍の人と…」
355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 21:14:17.68 ID:hc+lP5Bu0
その時だった、上空から轟音が響いて来た
それは飛行機のエンジンとは程遠いもので
しかし圧倒的にけたたましい音だった
バラバラバラバラバラバラ――
男友「なっ、なんだこの音!?」
女「ね、ねぇあれ!」
357 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 21:20:54.06 ID:hc+lP5Bu0
「キャー!」
「な、なんだありゃあ!?」
「なんでなんなものが浮いているんだ!?」
「科学だ! 悪魔の術が蘇ったんだ!」
男「飛行機…いや、ヘリコプターだったか? それもあんな大きい…」
男友「お、おい! あれに描いてある紋章!」
女「剣、貫かれた羽…都市軍の!」
男「!」
361 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 21:26:41.91 ID:hc+lP5Bu0
鴉『…私ね、前は都市部に住んでて…都市軍にいたの…』
男「あれだ…鴉は、あの中にいる!」
男友「あっ、あの中っつったてどうするんだよ!? あんなのにどうやって…」
女「羽があってもあんな高いとこじゃ、行けないよ…」
男「…羽が無くたって…!」
僕は云うなり駆け出した
362 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 21:33:01.24 ID:hc+lP5Bu0
親方「うおっ!? 男、どうした血相変えて!」
男「鴉が! 軍に連れて行かれてしまうんです!」
親方「ぐ、軍にだぁ!?」
女「今表に軍のヘリコ…えーっと、なんだっけ…」
男友「兎に角軍のなんかが飛んでるんです! 多分、その中に鴉ちゃんが…」
女「あれ、男くんは何処に…あっ!」
364 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 21:39:12.63 ID:hc+lP5Bu0
親方「お、おい男! お前そんなの出してどうするつもりだ!?」
男「このボードで、あの飛行機のとこまで行きます!」
親方「馬鹿野郎! お前それってこの間失敗したやつだろう! また落ちるぞ!?」
男「で、でも! そうじゃなきゃ鴉が…」
親方「…待て! 今思い出したもんがある! ちょっと待ってろ!」
365 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 21:39:58.54 ID:hc+lP5Bu0
ミス
× 飛行機
○ ヘリコプター
368 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 21:45:04.18 ID:hc+lP5Bu0
男「んなっ! 待ってろなんて云ったって…」
親方「いいから! 少しは待てんのか!」
そういって親方は走って工場の外に出て行った
その後、数分間物凄い音がし続けていて
僕と男友と女は顔を見合わせていた
そして、戻って来た親方の手には何やら大きなものがあった
372 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 21:50:44.16 ID:hc+lP5Bu0
親方「ふぅ…あの小娘、面倒なとこに隠しおって…」
男友「おじさん、なんなんですか、それ?」
親方「おい、男! 女教師からお前への贈り物だそうだ!」
男「へ? 女教師さんから、僕に…?」
女「なんだろうね…」
男「! …こ、これってボードじゃ…しかも完成してる!?」
374 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 21:57:01.12 ID:hc+lP5Bu0
それはあのFRPで出来た
鴉の彫った白鳥のマークがあるボードだった
そういえばあの日以来、見ていなかったけれど
まさか女教師さん、一人でこれを作っていたのか?
親方「ほれ、ついでに手紙もあるぞ」
男「手紙…?」
377 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 22:02:49.86 ID:hc+lP5Bu0
男くんへ
あの設計図ともう一つ、君にこのボードを置いていきます
君と飛行機作りをする傍らで組み上げていた
私のお父さんの技術を使った垂直離陸式のボードです
出力も申し分無いと思うから、十分飛べるはずだよ
本当は結構前に出来ていたんだけど、君が頑張って作っているの見てたら
これを出すのはなんか悪い気がしてたんだ…ごめんね
でも性能は保証するから! いざという時に試してみて!
それじゃあ、またね。あ、これ使って私のトコ来たら怒るからね!
女教師
380 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 22:06:37.47 ID:hc+lP5Bu0
男「(女教師さん…こいつを使わせてもらいます!)」
男友「お、おい男! まさかそれでいくつもりじゃ…」
男「大丈夫、女教師さんが保証してるんだから、きっといける!」
男友「そんな曖昧な根拠…」
女「行かせてあげて、男友くん…」
男友「お、女さんまで…わ、わーったよ! 行ってこい、男!」
男「男友、女…よしっ!」
384 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 22:13:35.67 ID:hc+lP5Bu0
僕はボードの本体に右足を乗せると
カチリという音がして、ボードに足がロックされた
エンジンのスイッチを入れる
ヒィィィィイイイインン――
今までのエンジンより静かだけど
とても心地良い音がした
そしてボードがゆっくり浮き上がっていく
388 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 22:18:25.64 ID:hc+lP5Bu0
男「うぉおっとと…よ、よし、バランスは取れる…」
男友「す、すげぇ…浮いてる…羽も生えてない白い板なのに…」
女「初めて間近で見るけど、すごいね…」
男「…よし、行ける。皆、下がってて!」
親方「男! 行くなら絶対連れて帰って来い!」
男友「軍の連中に一泡吹かせてやれー!」
女「男くん…気を付けて!」
391 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 22:23:12.00 ID:hc+lP5Bu0
エンジンを最大出力にまで上げる
今まで下を向いていた後部エンジンが水平になり
そして一気に点火した
男「うぉぉぉぉおおおおああああ――――!」
ギィィィィイイイインン――
男友「お、おお…行ったな…飛んでるわ…」
親方「男ー! しっかりやってこーい!」
女「男くん…」
395 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 22:28:46.72 ID:hc+lP5Bu0
ここでまた閑話休題
というか言い訳を
ボートの形状は、皆の想像でいいけれど
ナウシカのメーヴェとかよりも、エウレカのリフボードに近いかな
ただ主翼(というよりカナード翼)が前方に着いているので
そこらへんが違うかな、推進力はエンジンで
ワンピとかは全然読まないから判らないや
あとタイトルだけど
こうじゃなきゃ誰も見ないと思ってたんだ
実際は別のがあるんだけどそれは伏せる
ちょっと風呂入ってくる
427 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 23:39:00.21 ID:hc+lP5Bu0
随分、高いところを飛んでいる
前に教会にぶつかるまでに飛んでいた高さは
その後の試験飛行じゃ一度も到達出来なかった
それさえも今は超えてしまった
下には見慣れた景色の初めて見る角度
こんな街に、僕は住んでいたのか
432 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 23:45:30.41 ID:hc+lP5Bu0
男「はは…すげぇや…っと、感動に浸るのはこれくらいにしとくか」
前方、少し離れた場所に軍のヘリコプターが見える
今僕が乗っているボードと比べてずっと大きい
女教師さんに見せてもらった資料の中にあった輸送型だろうか
――あの中に、鴉がいる
436 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/01(月) 23:52:30.52 ID:hc+lP5Bu0
鴉「…私は、戻ったらどうなるの?」
軍人A「今我が軍は士気が低下している。貴女にはそれを上げる為に尽力してもらおう」
軍人B「女のエースってだけで、俺らはいきり立ってしまうんでなぁ」
軍人C「ま、飛べずとも放っときゃ勝手に騒ぐだろうよ。それともベッドに置いておくか?」
軍人B「はは、なら先に俺らで楽しんでおくか? なぁA」
軍人A「くだらん…それより操縦に気を使え」
443 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 00:00:08.47 ID:22PR2hW30
軍人B「へいへい、ったく固いんだから…ん? なんだぁ?」
軍人A「どうした?」
軍人B「いや、何か後方から来てるんだが…人か? でも立ってるように見えるな…」
軍人C「…おい、なんかしらんが速いぞ! 追い付かれる!」
鴉「(…もしかして、男くん…?)」
軍人B「チッ…しゃあねぇな。おいC、操縦任せるぞ。ハエを落としてくる」
軍人A「相手は民間人かもしれん。殺すなよ」
軍人B「ヘヘッ、どうだかね…」
鴉「(…男くん…)」
455 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 00:06:16.05 ID:22PR2hW30
ヘリコプターとの距離を大分縮めた時だった
一人の軍人が、手に剣を持って飛び出してきた
こちらは、丸腰だ
軍人B「おい、てめぇ一体何者だ? 俺らが誰だか判って付いてきてんのか?」
男「…鴉を攫ったのは、お前らだな?」
457 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 00:11:39.06 ID:22PR2hW30
軍人B「ははは! 攫った、ね。まぁ間違ってもいねぇけどよ。それでどうしようってんだ?」
男「鴉を取り返しに来た。どいてくれ」
軍人B「ひひ、若いなガキ。そんなへんちくりんなモンに乗んなきゃ飛べないのか?」
男「生憎羽無しでね」
軍人B「あー、殺すなって云われてるけどな…まぁ面倒だ。落ちな」
464 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 00:17:45.38 ID:22PR2hW30
そういうとその軍人はいきなり切り掛かってきた
慌てて右斜め上に逃げる
こっちには武器が無い、あるといえばこのボードの機動性だけ
さて、どうしようか
軍人B「ちっ、逃げ足だけは速ぇみたいだな…」
男「(そういえば、見せてもらった本にあったマニューバの技で…)」
軍人B「だか、次はそうはいかねぇぞ! うらぁ!」
男「くそっ、イチかバチかだ!」
467 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 00:22:49.15 ID:22PR2hW30
向かってくる軍人に対して
僕は機体を右回転ロールさせた
そしてその場で一回転して一気に元の位置までに戻す
向かってきた軍人はその位置にいて
男「どりゃぁぁぁあああ!」
ごしゃっ
軍人A「(あの青年…!)」
469 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 00:27:39.86 ID:22PR2hW30
軍人B「あぎゃっ!」
男「ふぅ…バレルロール、上手くいってよかった…」
短い悲鳴を上げて、軍人はそのまま下の森林地帯に落ちていった
この高さなら危ないかもしれないが、木々がクッションになってくれるだろう
それにやらなければ、こっちが殺されていた
472 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 00:32:33.73 ID:22PR2hW30
軍人C「嘘、だろ…Bが落とされた…武器も持ってないのに、なんなんだあのガキ…」
軍人A「…おいC、ヘリを止めろ。ホバリングさせておけ」
軍人C「…お前、行く気か?」
軍人A「いや、違う…」
男「…? ヘリコプターが止まった? チャンス!」
473 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 00:39:03.83 ID:22PR2hW30
一気に差を詰める、エンジンを噴かせて
そして目前に迫った時だった
ヘリコプターの扉が開いた
其処には屈強な面構えの軍人
そしてその横に、鴉がいた
男「鴉ッ!」
鴉「…男くん!」
軍人A「…少し下がっていろ。私はあの青年と話がある」
鴉「…話?」
軍人A「心配するな、すぐに済む」
474 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 00:45:25.64 ID:22PR2hW30
鴉を少し奥の方に押しやると
その軍人は羽を広げて飛んできた
こちらもスピードを弱めて空中で待機する
軍人A「…君の名前は、なんという?」
男「男だ。鴉を、助けに来た」
軍人A「そうか…男君、君にとって彼女は一体どういう存在なのだ?」
軍人A「私達は都市軍の兵士だ。このように軍刀も持っている。君を斬る事も出来る」
軍人A「しかしその危険を顧みずに、君は此処まで来た…何故だ?」
480 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 00:50:32.99 ID:22PR2hW30
男「あいつは…鴉は僕に飛ぶ為の本当の理由をくれたんだ」
軍人A「飛ぶ為の理由…?」
男「…僕は羽無しで生まれて、それからずっと羽が無い事で苦しんで来た」
男「だから、飛べるようになる事で今まで自分をバカにしてきた連中を見返してやりたい」
男「自信が持てなかった自分を捨てたいって、内心ずっとそう思って来てたんだ…」
482 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 00:54:58.39 ID:22PR2hW30
男「でも、今は違う。鴉と一緒に飛ぶっていう目標がある。だから僕は、此処にいる」
男「あいつに、空をもう一度飛ばしてやりたいんだ」
軍人A「成る程、な…判った…連れて行け」
軍人C「お、おいA! 正気かよ!?」
軍人A「上には私が話をつける。心配はいらん」
軍人C「マジかよ…」
486 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 00:59:38.38 ID:22PR2hW30
軍人A「…男君」
男「?」
軍人A「今、君が乗っているのはなんという乗り物なんだ?」
男「これは…ボード。僕の、羽だ」
軍人A「ボード、か…君は良い翼を持ったな。その翼、もっと多くの人に与えてやるといい」
その後、僕はボードに鴉を乗せ
そして都市軍のヘリコプターは飛び去っていった
Aとかいう軍人は、最後に僕に敬礼をしていて
僕と鴉はヘリコプターが見えなくなるまでそれを見送った
492 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 01:05:08.19 ID:22PR2hW30
軍人C「はぁ…Bは落ちたから迎えに行かなきゃならんし、帰ったら面倒な事があるし…」
軍人A「Bはあの程度じゃ死なんだろう。それに話は私が全てつける。心配するな」
軍人C「…しっかしあのガキの乗ってたの、スゲー格好良かったなぁ」
軍人C「お前の奥さん、羽不自由なんだったっけ? ああいうの、あったらいいだろうな」
軍人A「ああ…あの少年とあの翼なら、妻の夢も叶えてくれるかもしれんな…」
498 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 01:10:36.28 ID:22PR2hW30
男「行ったな…あの軍人、いい人だったな」
鴉「…うん…」
男「…で、鴉さんや」
鴉「…何?」
男「あの、失礼ですが胸が当っていてですね…もうちょい力を…」
鴉「…だって怖いんだもの…こんな高いとこ飛ぶの、久しぶりで…」
男「昔は飛べてたのか?」
鴉「…軍の中で、一番高く飛べていたんだ…」
511 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 01:15:43.35 ID:22PR2hW30
男「へぇ…し、しかしこのけしからん感覚はどうにかならんのか」
鴉「…嫌?」
男「嫌じゃないけどさ…はぁ、まぁいいや。そろそろ帰ろうか。皆心配してるぜ?」
鴉「…うん…」
男「よしっ、じゃあしっかり掴まってろ!」
鴉「……(ぎゅー)」
男「(ぎゃあ男たんの息子がピンチと思われ)」
513 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 01:20:12.83 ID:22PR2hW30
街に戻ったら、親方達が迎えてくれた
親方は「良くやった!」といって僕をバシバシ叩き
男友も「うん! お前はよくやった」といって叩いて来た
男友にはお返しにボディーブローをかましたら動かなくなった
女はずっと嬉し泣きしながら鴉を抱いて、鴉は戸惑っていた
ふと、空を見てみる
いつもと変わらない空が其処にはあった
やっぱり、空はいいもんだと
改めて僕は思うのだった
521 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 01:28:58.45 ID:22PR2hW30
それからすこし経って――
男「よいしょっと…ふぅ、重たかった…」
男友「な、なんで俺まで運ばなきゃならねぇんだよ…あーもー! 重!」
女「男友! ほら、あと少し!」
男「ほれ、彼女もああいってるぞ」
鴉「…男友さん…頑張って」
男友「チクショー! ヤケクソだー! ぬぉぉぉおおお!」
525 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 01:33:07.78 ID:22PR2hW30
街の工場の前、親方と僕と鴉、そして男友と女がいた
あれからヒゲさんから連絡があり、漸く僕が都市に行く準備が出来たそうだ
そして僕は、鴉と一緒に都市に行く事にした
男友は僕の荷物を運んでいた、手伝ってもらっているのだ
男友「『もらってるのだ』じゃねぇよ、クソーッ!」
男「こういう時にとても便利な男友なのだ」
531 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 01:39:10.61 ID:22PR2hW30
男友「うぉぉぉおおお! どっせい!」
女「お疲れ様! はいっ、タオル」
男友「おうサンキューマイスイートハニー」
親方「これで全部か? 男」
男「はい、多分。まぁこれ以上は運べないですし、向こうに行けば色々あるでしょう」
男友「しかし、行き先都市だろ? 此処から結構あるし、これでも多いくらいじゃね?」
男「僕の作った最新型ボードの耐久重量、なめんなよ?」
鴉「…でも私とは別々のボード」
男友「まー酷い彼だこと! 信じられない!」
540 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 01:44:42.41 ID:22PR2hW30
男「しょうがないだろ…さすがに人一人加えたら重過ぎるって」
鴉「…むー」
男「あーもう…ごめんごめん(なでなで」
鴉「…ふぁ」
男友「あーいーないーな! 女、俺にもやって? やって?」
女「えっ、やるの普通逆じゃない? 嫌だけど」
男友「ああああああ!」
あの後、男友は女に告白し
結局付き合う事になったようだ
一方的に男友がバカップルになっているが
女も女で楽しそうにやっている
545 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 01:50:29.34 ID:22PR2hW30
男「…よし、それじゃそろそろ行きます、親方」
親方「おう! しっかりやってこいよ! そしてたまには帰って来い!」
男友「男、鴉ちゃんを大切にな! 俺も女を幸せにするから…」
女「逆に私が面倒を見る事になりそうだけどね?」
男友「お、女ぁ…さっきからあんまりじゃないか…」
女「フフ、冗談だってば! それより男くん、頑張ってね! 鴉ちゃんも!」
鴉「…うん。男くんの面倒は、私が見る」
男・男友「僕(俺)らの立場って一体…」
親方「男はな、そういう生き物なんだよ、若者達…」
547 :以下、名無しに変わりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 01:51:34.40 ID:zrZP/wMt0
親方悟り開いてるなwww
553 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 01:53:45.24 ID:wmzdPZbmO
親方wwwwwwwwwwwwwww
554 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 01:56:12.77 ID:22PR2hW30
親方に男友と一緒に慰めて貰った後
僕らは互いのボードに荷物を載せ
そして都市へ向かって飛んだ
三人は、僕らに向かってずっと手を振ってくれた
三人の姿が米粒になるくらい遠くになるまで
ずっと、ずっと
558 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:00:46.45 ID:22PR2hW30
僕と鴉が並行して空を飛んでいく
時間は既に夕刻近い
今日は飛べる所まで飛んで近場の街に泊まろう
このボードなら一時間もあれば行けるはずだ
男「どうだ? ボードの調子」
鴉「…問題ないよ、いつも通り」
男「そっか…なぁ、鴉」
鴉「…何? 男くん」
男「ちょっと、こっちに来て」
鴉「…?」
565 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:04:48.78 ID:22PR2hW30
男「これ、受け取ってくれ…」
鴉「…木箱?」
男「いや、重要なのは箱でなく中身でして…」
鴉「…! 綺麗…白い、指輪?」
男「……(どきどき)」
鴉「…ありがとう、大切にするね」
男「がくっ…そうじゃなくて!」
鴉「…?」
574 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:10:22.61 ID:22PR2hW30
男「あーもー…婚約指輪だよ! それは!」
鴉「!?」
男「鴉! 僕と! 結婚してくれ!」
鴉「……」
男「……」
鴉「…飛んでる時に、いう事?」
男「うぐっ…」
鴉「…都市部に着いてからでもよかったんじゃない?」
男「いや、あの…」
579 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:15:29.31 ID:22PR2hW30
鴉「…でも、嬉しい…」
男「鴉…」
鴉「…男くんは、また私を空に戻してくれた人。私の、一番大切な人」
鴉「…こんな私だけど、もらってくれますか?」
男「鴉…っ! 当たり前だってうわわわわっ!」
鴉「…! 男くん!?」
591 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:19:53.44 ID:22PR2hW30
男「ははっ…慌ててひっくり返りそうになった…」
鴉「…もう、心配かけないで」
男「ごめんごめん…でも、本当嬉しいや…良かった」
鴉「…男くん」
男「うん? 何…んむっ!?」
鴉「ん…」
男「――――!」
596 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:22:39.48 ID:22PR2hW30
鴉「…びっくりした?」
男「…そりゃ、まぁ(ほ、本当に落ちるかと思った…)」
僕らのボードは隣合わせで都市への空を飛んでいく
視線を右にやると、夕焼けに燃える街が見える
それは初めて見る美しさだった
598 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:25:57.31 ID:22PR2hW30
男「今度戻る時は、このボードにもう一人乗せて来れたらいいな…」
鴉「…それなら、三人一緒で乗れるような飛行機を作ってね?」
男「はーいわかりましたー。でも、その前にまず作らないといけないものが…」
鴉「…! 男くんのえっち…」
男「ははっ…急ごうぜ、早くしないと暗くなっちまうよ」
鴉「…うん!」
599 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:26:49.59 ID:22PR2hW30
手を繋ぎ、僕らは共にボードのスピードを上げた
どんどん街が遠ざかっていく
色々な事があった街、出会った人々
親方、男友、女、大学の皆
そして、今横を飛んでいる僕の大切な人
皆、あの街がくれたものだ
空は何処までも広がっている
だから、いつかまたこの街に戻ってこよう
いつまでも、空はこの街まで繋がってる
――end.
601 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:28:07.74 ID:JW5/macgO
乙!
久々にいいもの読ませてもらった!
603 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:28:19.64 ID:eTUv2ZOc0
ええわぁ おもろかった
またなんか書いておくれよぉ
乙っした!!!
605 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:28:30.06 ID:xBv5sc1b0
乙!
楽しかった…。久々に心に残る作品VIPで見た。
633 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:37:30.28 ID:22PR2hW30
んじゃぽつぽつと設定を書きます
質問とかもあったらどうぞ
冒頭で云ってる通り、核かなんかで世界はほぼ壊滅
島国(ぶっちゃけると日本)にしか人は住んでません
空人の出生は…まぁ何かがあったんで(ry
環境に適応する為進化、したみたいなので行こうとも思ったけど
じゃあ一体どういう環境に適応したんだと。なので放置
空人達は科学を毛嫌いしています
というよりそのように教育されてます、某国みたい!
なので大学とか軍とかいっても、昔の西洋みたいな感じ
鴉が居た都市軍もようは騎士団です
637 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:40:16.68 ID:22PR2hW30
で、終盤で出てきた都市軍のヘリ
科学毛嫌いしてんのにヘリ使ってんじゃん! と云われそうですが
都市では科学は禁忌、みたいなのは薄れつつあり
特に軍部に関してはそれが顕著だ、と
鴉の羽を貫いた槍というのも
高空からの機銃掃射の事を云ってます
この辺書けなかったのは不覚
626 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:33:39.45 ID:FqOq8+qK0
>>1
乙
ホント面白かったよ
出来たら鴉や女や男友が男と出会う前の話とかも読んで見たい
>>58読んだ時に思ったんだけど
今更だけど鴉は男が昔介抱した鴉?
636 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:40:19.80 ID:FqOq8+qK0
>>633
>>626の質問
あと何で女と男友は男と仲良くしてくれてたの?
638 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:41:00.72 ID:m1dHvCqJ0
質問
女友はどうなったたの?
あと男友と女は最初からくっつけるつもりだったんかね?
639 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:46:07.25 ID:22PR2hW30
>>626
んな超展開あってたまるか!
>>636
羽が無いだけで虐めるような性格じゃなかったって事です
>>638
俺「っていうか君らもう背景だよ!」
女友「なんですと!」
妹「私なんて出てすら…」
書いてる途中で片思いじゃ可哀想
という事で男友の願いを叶えました
ちなみにタイトルは女の台詞ですが
書き始める前からヒロイン=鴉は決まってました
640 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:46:33.65 ID:YbUcFAqO0
タイトルがジャガイモの芽www
642 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 02:48:56.85 ID:22PR2hW30
>>640
それはいっちゃ…!
つか浅野いにお氏の作品で同名のが(内容は関係ない)
721 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 09:50:17.62 ID:22PR2hW30
女教師「ふんふんふ~ん♪」
夫「ふふっ、随分楽しそうだね」
女教師「うん、まぁね」
私は久しぶりに引っ張りだした服を着て
鏡の前で最終チェックをしていた
そんな私を見て夫は微笑んでいる
722 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 09:52:24.74 ID:22PR2hW30
女教師「でも、本当にいいの? なんだか悪いな…」
夫「私は彼と直接な認識がないからね、会っても仕方ないと思うし」
女教師「そりゃあ、そうだけどさ…」
夫「君から、御礼を云っておいてくれないか。“羽をくれてありがとう”って」
女教師「…うん、わかった。伝えておくね」
私は今から、ある人に会いに行くところだ
それは私が街に居た時の生徒の一人で
そして私の自慢の生徒だった
今となっては、そんな事をいうのも気兼ねしてしまう程だが
彼は今も変わらず、私を先生と呼んでくれている
723 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 09:55:16.01 ID:22PR2hW30
女教師「帰りは多分遅くなるだろうから、先に寝ていてもいいよ」
夫「いや、起きているよ。土産話を楽しみにしながら、ね」
女教師「それじゃ、沢山話をしてこないとね! もっと遅くなっちゃう」
夫「おいおい…朝まで、っていうのは勘弁しておくれよ?」
そういって私達は笑いあった
私の夫は、昨年羽を怪我してしまっていた
そんな夫を救ってくれたのは、教え子である彼だった
今は彼が作った羽が、夫を支えていてくれている
724 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 09:57:43.94 ID:22PR2hW30
女教師「…じゃあ、行ってくるね」
夫「ああ、気をつけて。そして楽しんでおいで」
夫の見送りを受け、私は家を出た
夜でも少し明るい都市の空
私は羽を広げてそこに飛び込んで行く
鼓動は高鳴り、静まる気配はない
726 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:00:10.66 ID:22PR2hW30
女「…あなたー、まだなのー?」
男友「ちょ、待ってくれ! あと少…ぎゃあ小銭が!」
女「はぁ…全く、世話の焼ける人…」
都市の大きな宿、私達は二日前に都市に来た
三日目の夜、都市に来た本当の目的は今日にあった
そして今、宿をチェックアウトしようとしてたのだが
慌てん坊の夫は小銭をカウンターにぶちまけてしまい
私はそれを拾う手伝いをしている
729 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:04:25.05 ID:22PR2hW30
男友「め、面目ない…」
女「もう…いっつも慌てて損してるでしょ? いい加減、其の癖治さないと」
女「これからもずっとそんなだったら私、逃げちゃうよ?」
男友「! わ、判った! もう慌てないからそればかりはってうぉぉぉああああ!」
女「云ってる傍からまたぶちまける…はぁ、もう慣れてるけどね」
まだ私達が学生だった頃
私はある人の事が好きだった
周りにそれを話すと嫌な顔をされたけれども
それでも私は彼の事が好きだった
今の私の夫、男友とは彼経由で知り合った
男友と彼は親友といえる仲だった
730 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:05:59.55 ID:eeI9DDjH0
不倫フラグktkr
731 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:06:59.59 ID:zMxJC0EsO
寝取りですね
大好物です
732 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:07:12.67 ID:22PR2hW30
まだ付き合う前だっただろうか
私は男友に質問した事があった
女「ねぇ、男友くんはいつから彼と仲がいいの?」
男友「んー? そうだなぁ…入学したばっかの時にさ、あいつ一人だったんだ」
男友「で、興味本位で話しかけたら面白いやつだったからさ、それ以来だな」
女「…男友くんが話しかけるまで彼、ずっと一人だったの?」
男友「みたいだぜ? まぁ羽が生まれつき無い、なんて普通あり得ないもんな」
女「男友くんはそういうの、気にならなかった?」
男友「なんで? 別に羽があろうがなかろうが、あいつは俺らと同じ空人じゃん」
735 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:10:34.59 ID:22PR2hW30
今思えば、あの頃から男友に傾き始めていたのかもしれない
好きだった彼にはその時、大事な人が出来ていた
最初はその人に嫉妬していた、彼女さえいなければ…とも思った
だけど二人が本当に好き合っていると判った時
私は、私を好きで居てくれる人といようと決めた
そんな矢先に、男友が告白してきてくれた
これは二人だけの秘密なのだが、私はその時嬉し泣きをしている
740 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:14:17.11 ID:22PR2hW30
宿主「ご利用、ありがとうございました! 次も御贔屓に!」
男友「はぁ…やけに時間とっちゃったな…時間、平気だよな?」
女「うん、まだ余裕…とも、いってられないみたいだね…」
男友「なん…だと…! い、急ごう女! 遅刻するわけにはいかん!」
女「誰のせいでこうなったんだかー」
男友「ぐっ…ええい、ほら! 早く行くぞ!」
女「痛っ! ちょ、引っ張らないでって! もう…」
夫に半ば強引に連れられ、私達は空へ舞い上がった
少し間が抜けていて、慌てん坊で、よく騒ぐ人だけど
私は男友とこうして家族になれた事を本当に感謝している
そして、私達を巡り会わせてくれた彼にも
そんな彼に、私達は今から会いに行く
741 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:18:23.20 ID:22PR2hW30
親方「ふぅ…都市は本当に人が多いな。気後れしてしまうわい」
鴉「親方、大丈夫?」
親方「はっは! 大丈夫じゃて、無駄な心配するんじゃない」
私は何十年振りかの都市に来ていた
まだ若かった頃、妻と暮らしていた所である
目的は元教え子に会う為
今はその元教え子の妻となったもう一人の教え子と居た
彼女の手には白く光る銀色の指輪
そしてすやすやと寝息を立てる赤ん坊がいた
742 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:21:56.51 ID:22PR2hW30
親方「今いくつだったっけかのう、その子は」
鴉「今、丁度一歳半かな?」
親方「そうか…手紙で聞いてはいたが、まさか本当に子供が出来てたとはなぁ」
鴉「私達だって夫婦ですよ? 子供くらい、ちゃんと作れます」
親方「はは! いや気に障ったか、すまんすまん」
鴉「…今度バカにしたら、おじいちゃんって呼ぶからね?」
親方「ぐっ…お前も云うようになったな…」
元教え子だった彼女、鴉も随分と変わった
会った当初は暗い性格だったと記憶している
喋るときもぼそぼそと、俯き加減で口数も少なかった
それが今では明るい口調ではきはきと喋っている
こうなったのも、あいつの御陰なのだろう
744 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:24:48.13 ID:22PR2hW30
親方「…しっかし、あいつはまだ来んのか?」
鴉「今日は早く上がるって云っていたんだけどな…」
親方「まぁ、都市科学研究所の副主任じゃ忙しいわな」
鴉「でも、いつも定時には上がって家に帰ってきてるのに…変ね」
親方「ひょっとしてあいつ、浮気でもしとるんじゃないか? ハハ…」
鴉「親方…冗談でも本当に怒るよ!?」
親方「あっ、いや…すまん…ん?」
鴉の怒鳴り声に驚いてしまったのか
今まで寝ていた赤ん坊は大声を上げて泣き出してしまった
745 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:27:35.39 ID:22PR2hW30
鴉「あっ…ご、ごめんね、五月蝿かったね…親方、ごめん。ちょっと席外すね」
親方「おう、心配すんな。それより早く泣き止ませてこい」
鴉は泣き止まない赤ん坊を抱えて少し離れた所に行った
その後ろ姿が、兵士時代に亡くなった妻と被った
そういえば私がうっかり息子を泣かせてしまった時
あんな風にあやしに行ったのを覚えている
746 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:30:29.57 ID:22PR2hW30
息子は私と同様兵士となり、そして死んだ
私に家族と云える存在は、もう彼らしかいない
親方「(おじいちゃん、か…それもまた、いいのかもしれんな)」
少し、眠気が出てきてしまった
まだあいつが来るには少し時間が掛かるだろう
それまで私は寝る事にして、瞼を閉じた
748 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:34:01.04 ID:22PR2hW30
妹「ほら、お兄ちゃん。これなんてどう?」
私は久しぶりにに会った兄と宝石屋に来ていた
兄が奥さんに渡すプレゼント探しを手伝って欲しいと
そう連絡を受けたのが一週間程前だった
兄が結婚したと両親から聞いて以来
私は、兄に会いたくて仕方がなかった
751 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:40:51.78 ID:22PR2hW30
妹「これとか、きっと凄い似合うんじゃないかなー」
妹「ふふっ、お兄ちゃんが好きになる人だもの、大体は想像付くよ」
妹「あー早く会ってみたいなぁ! 子供もいるんでしょ? 楽しみ~♪」
小さい頃、兄はいじめの対象だった
怪我で羽を失ったり、不自由な人は沢山いたけれど
先天的に羽が無いなんてのは兄だけだったからだ
両親でさえ、兄を遠ざけようとしていた
それでも私は兄を庇った。兄は、私の只一人の兄だったから
そして今、兄は有名人になっている
現代科学の全てを担う人物だとか、そんな風に云われている
753 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 10:51:23.37 ID:22PR2hW30
妹「ねぇお兄ちゃん、まだ決まらないの?」
妹「…そんな事いったって、もう結構時間危ないんじゃない?」
妹「はぁ…そういうところ、相変わらずだね…」
私の彼氏も、兄に救われた一人だ
兄は自身が作ったボードを、羽が不自由な人に無償で提供している
それに救われた人は私の彼氏を含めて沢山いる
救われた人にとって、兄は神様みたいな存在だった
そんな兄を、私は誇りに思う
756 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 11:01:27.71 ID:22PR2hW30
夫人「貴方、此処で宜しいんですか…?」
A「ああ、間違いない」
夫人「そう…随分、高い塔ですね…」
私と妻はある人物に呼ばれ
都市で最も高いと呼ばれる建物に来ていた
現代科学の結晶だとかいうそれは
圧倒的に巨大で、上を見るのも面倒だった
757 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 11:05:05.47 ID:22PR2hW30
夫人「でも、貴方があの方と御知り合いだなんて知りませんでしたわ」
A「昔、少しあってな。軍部でも何度か会話を交わしている」
最初に彼に出会ったのは、ある街からの帰還途中だった
ボードと呼ばれる、今となっては有名になった飛行機に乗り
彼は単身である少女を助けに来たのだ
私は彼と自分を、勝手ながら重ねて見ていた
同じような境遇にある大切な女性を持つ者同士として
759 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 11:10:11.49 ID:22PR2hW30
A「しかし、誘いがあった時は私も驚いた」
夫人「ふふ…貴方程の軍人でも驚かれる事があるんですね」
A「私だって、それは驚く事もあるさ」
都市で彼に再会した時、私は少尉になっていた
その時は、都市軍の新兵器導入に向けての会議だった
上官の付き添いで行って見た時、すぐに彼と判った
760 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 11:17:23.17 ID:22PR2hW30
ボードの兵器利用を持ち掛ける上官に対して
彼の放った言葉は、私やその場にいた人々を震撼させた
「私は――僕は人殺しの為に飛行機を作ってるのではない」
彼はそう怒鳴るとその場から憤怒の様相で去っていった
帰路の車中、上官は始終悪態を付いていたが
私は彼の発言に心を打たれていた
以来、私はその言葉を守るように軍部で活動をした
現在軍が保有する飛行機械は輸送用の物のみに留まっている
中佐となった今、私が出来る彼への最大の恩返しだ
763 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 11:22:06.50 ID:22PR2hW30
A「彼には、礼を尽くしても尽くしようがないな」
夫人「ええ…私が空を飛べる日が来るなんて、思ってもませんでしたもの」
A「本当に、彼は素晴らしい男だ…行こう。彼が待っているかもしれんしな」
夫人「そうですわね…」
今となっては、彼は私にとって最高の友人であり
そして妻を救ってくれた恩人でもある
人の出会いとは、実に判らないように
それでいて上手いように出来ているものだと思う
765 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 11:30:48.75 ID:22PR2hW30
男「まだ時間、平気そうかい!?」
妹「ちょーっと危ないかも!」
男「くっそー…やはり昨日のうちに済ませるんだった!」
夜だというのに明るい都市の上空
僕は妹と共にそこを飛んでいる
子供の頃には考えても居なかった事だ
767 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 11:36:06.51 ID:22PR2hW30
妹「約束取り付けた本人が遅刻じゃ、格好つかないよ!」
男「判ってるって! 今度、もっと速度が出るボード作ろうかな…」
今、僕と妹はある場所に向かっている
そこには僕が呼び集めた人達がいるはずだ
妻も其処に、先に行かせてある
769 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 11:41:05.98 ID:22PR2hW30
妹「あっ! 見えたよお兄ちゃん! あの建物だよ!」
男「よし! 全速力で行くぞ!」
空を飛ぶという夢に希望を与えてくれた女教師先生
学生時代に一人だった僕を救ってくれた男友と女
羽無しという事で雇われなかった僕を拾ってくれた親方
小さい頃から僕を慕っていて続けてくれる妹
僕の志に賛同してくれて、共に頑張ってくれているA中佐
そして、僕に飛ぶ本当の理由をくれた鴉
皆の姿が次第に見えてきた
男友が気がついたのか、こちらに手を振り始めた
他の皆もこちらに顔を向けている
771 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 11:48:28.19 ID:22PR2hW30
妹「皆、もう来ちゃってたね…」
男「はは…でも、これもこれで、悪くないな」
妹「何格好つけてんの! 早く行くよ!」
男「おう!」
始めは、大した理由もなく始めた事だった
ただ単に空を飛んで、馬鹿にしてきた連中を見返す
それが今じゃ多くの人を救う結果になった
終わりよければ全て良し、というわけではないけれど
今はこれでいい、そうだと断言出来る
775 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 11:53:30.14 ID:22PR2hW30
男「皆、お待たせ!」
鞄の中にこっそり忍ばせた、妻へのプレゼント
いつ、どのタイミングで渡そうか
考えていなかったけれど、まだ時間は沢山ある
地に着いた僕を、皆が迎えてくれた
後日談 完
――全編 了
777 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 12:00:54.37 ID:eeI9DDjH0
お疲れッしたぁあああああああああああああああ!!!
780 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 12:06:34.35 ID:22PR2hW30
そしておまけ(もようなもの)
ttp://www.rupan.net/uploader/download/1220324201.zip
俺のPCがMacなのでWinの人が見れるか不安
というわけで、これで終了です
あとスレも少し残ってるし、三日縛りもまだ余裕があるし
漫画描くといっていた人がいたのでそれにwktkしてよう
それじゃ、本当にありがとうございました
782 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 12:12:05.16 ID:ATNC8PWJ0
おつ
最初からずっと張り付いてたぜ
783 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 12:13:37.77 ID:FqOq8+qK0
おつ
面白かったよ
次回作も期待してる
893 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/02(火) 22:30:17.03 ID:eRcVeX1RO
いいストーリーだった!
>>1超乙!!
1000 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/09/03(水) 02:18:07.66 ID:eIgI1twr0
このスレの雰囲気は最高だった
ここまでほとんど荒れずに終わるなんてめちゃくちゃ珍しいと思う
このスレを立てた>>1、書き込んで行った皆に感謝を込めて
1000なら皆幸せ







