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2011年04月13日

4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 14:45:59.17 ID:AyCo8+JZ0
たそがれ時、むささびのような物体が我が家の薄暗い土間を這いずっていた。


「え、なに?」
『あなたは座敷わらしも知らないんですか』
「そっちこそ座敷わらしってのがなんなのか知ってるの?」


よく確かめようとした矢先、獣は闇の中へ溶けるように消えていった。
無駄に広い旧家だ。何かしら変なものが迷い込むこともあるだろう。




6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 14:51:35.61 ID:AyCo8+JZ0
電気の届かない薄暗い床の上をむささび状物体が気ままに這い回っている。


「座敷わらしってこういう生き物だったっけ」
『座敷わらしの一種 "のたばりこ" とはこういうものだよ』
「のたば……ああ、土間から座敷にかけてひたすらに這いずっているとかいう、あの」
『おまえらが知っている座敷わらしとは、その中のほんの限られた種類でしかない』


お話の中の座敷わらしはほとんど二足歩行ばかりだったから、不自然だとは思っていたんだ。
でもその帳尻を、何も我が家を使って合わせることはないじゃない。


7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 15:02:19.54 ID:AyCo8+JZ0
なにかを削るような音に目をさます。


懐中電灯片手に家中を調べてみたが、
音がしている部屋に踏み込んだとたん、別の部屋へと音は移ってしまう。


翌朝、食事の支度をしようと思ったらかじられたような穴が水屋の木扉に開いていた。
あいつか? あいつの仕業なのか?


8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 15:13:39.66 ID:AyCo8+JZ0
我が家の大黒柱へ逆さにとりつき長い尻尾を背中に垂らして、
ワオ逆柱、などとむささび状物体がぬかしている。


「なにか驚いたほうがいいんだろうけど、驚くポイントがいまいちわかんないねキミは」
『勝手に居着いて好きにやってるんで、そっちも気にしないでください』
「うちを幸せにしにきたんじゃないの? 座敷わらしだって言ってたじゃない」
『幸せ(微笑)』
「齧歯類に笑われたのは初めてだわ」
『正確には富貴自在な。幸せ(嘲)って、おまえ、漫画の読み過ぎ』
「座敷わらしに座敷わらし観を否定されたのも初めてだわ」


古い日本家屋というのは、座敷わらしはともかくむささびには棲みやすいのかもしれない。


9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 15:17:22.09 ID:tTr5nf7HO
何げにおもしろいな
良いぞもっとやれ


10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 15:23:56.45 ID:AyCo8+JZ0
神棚の上でむささび状物体がくつろいでいた。
この仕草は俗にいう毛繕いというものでほぼ間違っていないと思われる。


そういえば座敷わらしとほかの家付き神仏との関係はどうなっているのだろう。

神棚に尋ねてみても、返ってきたのは数本の獣の毛だけだった。


キンチョール片手に戻ってきたときには、もう獣の姿はどこにも見あたらなかった。


13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 15:34:12.07 ID:AyCo8+JZ0
むささび状物体が布団の上をがさごそと這いずっていた。
座敷わらしは出現する部屋が決まっているというが、
こいつはそんなことお構いなしに出るようだ。


『おはよう。でもまだ夜だぜ?』
「降りなさい妖怪」
『人をなにかの経立(ふったち)みたいに言うなよ』
「年経て化けた悪質なけだものは経立としか呼びようはないでしょう」


布団で包み込んで捕まえてやろうと手を出したとたん、
その手を掴まれ投げ飛ばされて、気が付いたら四つとなりの部屋で朝を迎えていた。


15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 15:47:09.26 ID:AyCo8+JZ0
押し入れからお手玉を引っ張り出し、中の小豆を頬張るむささび状物体がいた。


『小豆うめー』
「やりたい放題ね経立」
『座敷わらし十二大特徴の一つ、『食物は小豆類を好んで食するということである』』
「経立系の弱点はたいてい犬だったよねえ」
『人のいやがることはやめなよ』


近所の犬を借りて戻ってきたときにはもう逃げ去っていた。
中途半端にかじり残した小豆を散らかしたままで。


16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 15:58:07.94 ID:AyCo8+JZ0
今宵もむささび状物体は薄暗い廊下を這いずるのに余念がない。


『一緒に這い這いしようよー』
「やだ」
『座敷わらし文明の遺跡は丈が低いから、這いずらないと探検できないよ』
「その文明じゃ二足歩行の座敷わらしの立場はどうなってたの」
『当時この星を席捲していたのは多数種であるのたばりこだったから』
「のたばりこの分際で一大文明の痕跡なんか遺さなくてよろしい」
『狂気の詩人宮沢賢治の "春と修羅" に隠された暗号を読み解けば遺跡の場所はわかるといいます』
「遠野物語じゃなくて宮沢賢治を持ってくるあたり、キミもホラ慣れしてるね」


だいたい人のうちに寄宿するしか能のない連中がどんな自力文明を築くというんだ。


18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 16:06:29.78 ID:AyCo8+JZ0
むささび状物体がキーボードの上にぐってりと横たわっていた。
毛でも入っていたら困るので、キーボードを逆さにして振ってみたら
あり得ない量の血が畳の上に飛び散った。


「これはなんのまねかな」
『座敷わらし、その死闘の果てに』
「傷はないよね。どういう怪我の仕方なの」
『へへっ、ぬかったぜ』
「で、どこの猛禽類につつかれたの」
『渡辺さんちの座敷わらしとお菓子をめぐってちょいと、な』
「その座敷わらしもやっぱ黄昏時に民家に迷い込んでくる獣の経立なわけ?」
『花染めの着物がよく似合うかわいい女の子です。あ、人間型の』


我が生涯最大の怒りを込めた渾身のチョップが届くよりも速く、
経立は机の下に潜り込みそのままどこかへ消えてしまった。
なんだ、けっこう元気そうじゃないか。


19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 16:18:12.24 ID:AyCo8+JZ0
むささび状物体がお大師さまを連れてきた。


『お大師さま、今晩泊まってくわー』
「待て待て、いつからここはキミんちになった?」
『同じ来訪神友達だしよぉー。ここはきちんともてなさんとなー』
「待て待て、キミは家憑きの神でしょ。いつ来訪神になったの」
『座敷わらしは家から家へと自分の意志で自由気ままに旅してるじゃないですか』
「家憑きの性質じゃなくそっちの性質のほうが座敷わらしの本質なの?」
『座敷わらしにもいろんなタイプがいるんだよー』
「急に来られてもねえ。真言宗系のお寺さんならこの辺、いくらでもあるでしょう」
『言っとくけどお大師さまを無下にしたご家庭は100%没落するぜ?』
「それはキミの座敷わらしとしての力より上なわけ?」
『あなたの神である主を試すようなことをしてはならない(申命記6-16)』
「なに言ってんのキミ?」


宿のお礼にとお大師さまはスパモンTシャツをおいていった。
うどんを日本に持ち込んだとはきいていたけど、
まさか、あれは、スパモンのヌードル意志だったのか?


21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 16:29:11.66 ID:AyCo8+JZ0
むささび状物体がリモコンをくわえて持ち去ろうとしていた。


「妖怪リモコン隠しの正体の一つは小動物の仕業だったのね」
『家に居着いてなんかしたりしなかったりするものはみな等しく座敷わらしだよ』
「怒られる前にリモコンを返しなさい」
『龍宮童子の例に漏れず、福運をもたらす神異にはそれなりのリスクもあるのです』
「乙姫さまが貸してくれるお子さん? あれは我慢ならないぐらい汚いけど確実に金運を呼ぶじゃない」
『投資は長い眼で見つめましょう。素人さんがデイトレなんか手を出すもんじゃありません』


死闘の末奪い返したリモコンには齧歯類特有の歯形がくっきりと残っていた。


22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 16:38:11.12 ID:AyCo8+JZ0
水屋の食器棚にむささび状物体が潜んでいた。
このあいだの穴からじっとこちらを窺っている。


「狭いところに潜って、猫かキミは」
『狭いながらも楽しい我が家』
「怒らないから出ーてーきーなーさーい」
『座敷わらしを自分から追い出そうなんて、馬鹿なまねはやめろ』


せっかくの穴からキンカンを突きつけてみたら、
ぎゃあぎゃあと獣みたいに喚いてうるさいことうるさいこと。


24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 16:49:28.95 ID:AyCo8+JZ0
またしてもむささび状物体が血みどろで布団の上に横たわっていた。


『へへっ、ぬかったぜ』
「今度から庭以外で血みどろになってたら保健所に引き渡すよ」
『座敷わらしを保健所に引き渡す話をしたのはたぶんおまえが日本初だおめでとう』
「ありがとう」
『渡辺さんちの座敷わらしにゃあ気をつけな。ありゃあ、デンジャーだぜ』
「今度の原因はなに?」
『クソしながら飛んでたらいきなりクロスボンバーがきやがった』
「そりゃあキミが100%悪いね」
『もう少しで顔の皮を剥がれるところだった』
「ミッショネルズじゃなくイクスパンションズのほうか!」


渡辺さんちの座敷わらしは女の子が二人か。
そうか。
渡辺さんちの座敷わらしは花染めの着物がよく似合うかわいい女の子が二人か。


25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 16:54:47.78 ID:NzNp/XupO
魔物と聞いて飛んできました

わけだが、これは……っ!


26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 17:00:14.99 ID:AyCo8+JZ0
むささび状物体がうちに居着いてからというもの、
富貴自在家運隆盛どころか、ただひたすらに迷惑なだけのように思えてならない。


『幸せはそのさなかにはわからないものだよ』
「家計簿を客観的に見ても何もかわってないんだけど」
『金銭的生活的な幸せから精神的な幸せへと、座敷わらしが司るものも変わったのさ』
「心のお話ってお金のお話と違って形がないから、話をごまかすのに便利なのよねえ」
『ヘイ、リンダ。医学と民俗学は日々発展してるんだよ?』
「キミ、こないだは抽象的な『幸せ』を鼻で嗤ってなかったっけ?」


座敷わらしにアメリカンジョーク、
しかもその結論部だけで話をそらされるとは、世も末だ。


28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 17:10:57.96 ID:AyCo8+JZ0
このむささび状物体、
居着いているのか通いなのかいまいちよくわからない。


「夕暮れにしか見かけないってことは、通いなのかな」
『座敷わらしは気ままに生きてる自由人、詮索は野暮かつ無駄さ』
「自由業だったの、座敷わらしって」
『じゃあちょっくら渡辺さんちの座敷わらしと決着つけてくる』
「ほんとに自由ね」
『座敷わらしは本来武闘派だぜ?』
「キミが座敷わらしに含めている河童はたしかに武闘派だろうけど」


また負けたらしく血みどろになって戻ってきた。
どんだけ強いんだ渡辺さんちの座敷わらし。


29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 17:20:04.07 ID:AyCo8+JZ0
布団の上でぼうっとしていたらむささび状物体が枕を引っ張り出そうとしてきた。


『ねえねえ。中は小豆?』
「蕎麦殻」
『ふうん。じゃあさあ、中は小豆?』


どうしよう、ほんとにこいつ、話がまるで通じない。


30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 17:30:11.77 ID:AyCo8+JZ0
上半身だけの女とむささび状物体が人の家で縦横無尽に仲よく這いずっていた。


『ある意味てけてけさんもまた一個ののたばりこであり座敷わらし』
「北海道に帰ってもらいなさい。送るついでにキミも東北に帰って」
『二対二なら渡辺さんちの座敷わらしにもようやく勝てそうです』
「勝ったら心置きなく帰りなさいよ」


二人して血みどろになって戻ってきた。
勝負開始62秒、ユニゾンキックに敗れ去ったらしい。


31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 17:40:08.79 ID:AyCo8+JZ0
このむささび状物体、夕方になるとよく現れる気がする。


『座敷わらし十二大特徴のひとつ、『出現するのは多く夕方である』』
「むささびは夜行性だもんね」
『いつまでも人をむささびの経立扱いしないでいただきたい』
「よく噛む犬でも呼ぼうか?」
『徳の高い坊主は別に呼んでもいいけど、よく噛む犬だけはやめてよね』


経立だ。こいつ間違いなく齧歯類系の経立だ。


32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 17:45:10.92 ID:AyCo8+JZ0
なんでうちに来るのかこのむささび状物体に訊いてみたことがある。


『漫画じゃないんだから一般人のうちになんか出ませんよ、座敷わらしは』
「こっちもいちおう一般人なんですがね」
『でも家の建物は古くて大きいじゃないですか』
「昔は庄屋だったって」
『建物が古くて、暗いところがいっぱいあって、土があって木があって、徘徊できる広さがあれば』
「どうしよう。座敷わらしが好む条件って、人里に出てきた野生動物が好む条件と一緒じゃない」


こいつときたらもう、しゃべればしゃべるほどボロが出るわ出るわ。


33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 17:58:05.16 ID:AyCo8+JZ0
ようかんを切っていたらむささび状物体が這いずりながら寄ってきた。


「チッ、嗅ぎつけやがった」
『座敷わらしは小豆の匂いに敏感!』
「キミの分はないよ。渡辺さんちの座敷わらしから奪ってきな」
『そのわりにお皿が二枚でてるじゃないですか』
「さすがに今ぜんぶは食べないからね」
『無意識下に座敷わらしのぶんまで用意してしまう、よくあることです』
「人の話を聞きなさい経立」


仕方なく一切れくれてやった。
隣の部屋に引っ込み戸の隙間からじっと見つめてくるのがうっとうしかったので。


34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 18:09:10.36 ID:AyCo8+JZ0
今宵のむささび状物体は人の布団の中に潜り込もうとしてきた。


『座敷わらしが悪戯してなにが悪い』
「まだなにも言ってないわ」
『どうせ悪戯されるならショタっ子座敷わらしのほうがよかったかい?』
「ほんとに犬飼うよ経立」


引っ張り出そうと体を掴んだら遠慮なく爪を立ててきやがった。


35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 18:13:51.70 ID:AyCo8+JZ0
蔵の中からどんちゃん騒ぎ、どうせあのむささび状物体の仕業に決まっている。


「こらあ!」
『はい?』
「あれ、キミだけ? なんか大勢で騒いでたみたいな」
『座敷わらしのいるうちではよくあること』
「噂では座敷わらしは来るときと出て行くときにどんちゃん騒ぎするっていうけど」
『野生動物が居着くときにもありそうな話ですな』
「出て行けって遠回しに言ってることに気付いてよ経立」


もちろんこいつが出て行くわけもなくどんちゃん騒ぎは今もたまに起きている。


36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 18:15:16.41 ID:AyCo8+JZ0
蔵の鍵穴からむささび状物体のどんちゃん騒ぎを覗いてみたら。


「なんか赤い物が見える」
『都市伝説ではよくあるこt
「おそい!」
『いきなり火箸はよせ! まずこっちがドライバーを出すのが先だろ! 順番守れよ!』
「ちっ。手応えなしか」


穴にぴったりくっついた物の色なんか普通わからないだろうに、
それが見えるというのはやはり経立の妖力なのか。


38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 18:27:07.01 ID:AyCo8+JZ0
毎度毎度、血みどろになるまでよそ宅の座敷わらしと死合うこともないだろう、
このむささび状物体も。


『へへっ。ぬかったぜ』
「経立じゃなきゃ死んでてもおかしくない傷だよ」
『座敷わらしは同種間抗争で結構死んでるよ。あんまし知られてないけど』
「マジ?」
『抗争のあった家では恥だと思って隠したがるんで表には出ない』
「縄張り争いって本来は獣の行動よね」
『いいえ。座敷わらしです』


女の子だという渡辺さんちの座敷わらしも
そんななりしてあるいは獣性たっぷりなんだろうか。
いやだなあ。


39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 18:37:26.10 ID:AyCo8+JZ0
使っていない十畳間に転がした大きな椎茸をむささび状物体がアンニュイな面持ちで見つめていた。


「夕暮れに侘びしいことしてんじゃないの」
『このへたを尻尾の位置にずらしたら、飛行中の座敷わらしに似てないかな』
「ああ。大きさが一緒なら下から見上げた色合いはなんとなく似てるよね」
『強力の者に万が一捕まったときの身代わりもぬかりなく用意しておく、それが一流の座敷わらし』
「自分がむささびだかモモンガだかの経立だって半ば公式に認めたね」
『おまえの座敷わらしイメージのほうが間違ってるのさ』
「漫画のイメージに引きずられてるってのは認めるけど、キミはやっぱりただの経立でしょ」


で、椎茸の身代わりはどうするのかと尋ねると、今度は椎茸がアンニュイな吐息を漏らした。


40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 18:47:41.91 ID:AyCo8+JZ0
近所の駐屯地の自衛隊員がむささび状物体と一緒に這いずっていた。


「なにをしているの」
『仮にも日本の妖精である以上、日本の国防に協力するにやぶさかじゃありません』
「妖精? え? 妖精?」
『這いずり、捕まえにきた相手を投げ飛ばし、すっと消える。この技を伝授しています』
「駐屯地でやってくんないかなあ、うちじゃなくてさあ」
『さあみなさん、渡辺さんちまで匍匐前進して今日は解散としましょう』
「それが目的かっ!」


自衛隊員でも負けたのはどうでもいいとして、
なぜうちを接収して野戦病院にするんだこいつらは。


41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 18:57:56.13 ID:AyCo8+JZ0
嵐の音がひどいので窓から外の様子を見たら、風はそよとも吹いておらず、
ただむささび状物体が庭を這いずっているだけだった。


「さあ、今度はいったいどんな経立マジックを使ったのかな?」
『おっと、こんな夜にうっかり外に出ちゃったら、いにしえの風の神にさらわれちゃうぞ』
「這いずるだけの経立に天狗の神隠しなんてできるの? ああ、キミはむささびだっけ」
『うすつきこは臼を搗くような怪音を立てているのに、のたばりこが這うだけでいいのか!』
「いいよ、別に。這いもしなけりゃもっといいね」
『というか座敷わらしが意味もなく空音のどんちゃん騒ぎをするものなのは周知の事実じゃないですか』
「囃し声というよりスサノオさんの泣き声にしか聞こえなかったんだけど」
『以上、組曲座敷わらしより、第三楽章ハレの祭をお送りいたしました』
「え? ほんとにただの嵐じゃなくて祭り囃子のつもりだったの? キミ、音楽の才能ないよ」
『そうですか。じゃあいっそ開き直って最初から雨の音でも表現してみます』
「なるほど、そこで小豆を使うからよこせと、話がつながるわけね」
『はい』


なにこのめんどくさい三文芝居。乗ってしまったこっちもこっちだけど。


42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 19:09:13.59 ID:AyCo8+JZ0
ろくろ首は伸びる伸びる。
むささび状物体は逃げる逃げる。


『つかまるー! つかまるー!』
「何でこのろくろ首、キミに合わせて這いずってんの」
『ここまで首を伸ばしたらもう重くて持ち上げられないだろ』
「なんで手で捕まえようとしないのこの人は」
『たすけてー。ちょうぴらこもうらやむほわほわ腹毛に顔を埋められるー』
「ああ、そういう遊びなの」


見渡す限り首だらけで、そろそろ足の踏み場もないんだが。


43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 19:21:11.75 ID:AyCo8+JZ0
むささび状物体に引き続き薄暗がりを這う各種属性の萌えキャラ達。


「何のまねかな」
『這いずるだけじゃ萌えないとお大師さまに言われたから、アドバイス通り萌えキャラを這わせてみたよ』
「さすがは日本国最古最大にして集客集金力広大無辺の元祖萌えキャラ……いやキミ解釈間違ってる」
『これで同じ土俵に這えるというものです』
「土俵は這ったら負けよ」


萌え属性というのもいつの間にこんな増えたのか、もう床が完全に見えやしない。
だがこのすべてを集めてもおそらくお大師さま一人のアイドル性には遠く及ばないだろう。
足元に絡みつく邪魔な魔法少女や無口っ子を蹴りのけながら、南無大師金剛遍照。


44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 19:31:39.62 ID:AyCo8+JZ0
野生動物の世界では負けた方が勝った方に服従するはずなのだが、
うちのむささび状物体と渡辺さんちの座敷わらしとの関係はいったいどうなっているのだろう。


「せめてここまでぼろくそにやられる前に逃げ出すほどの知恵はないの?」
『死体は小豆畑に埋めてください。やがてこの身は千万の小豆となってたわわに実るでしょう』
「猫の眼から生えたかぼちゃを食べた方がまだましだわ」
『見渡す限りの小豆が食べ放題!』
「言っとくけどその時キミはもうその小豆を食べられないんだよ」
『なんでー? いじわるー』
「いや意地悪とかそういうんじゃなくて……どう言えばわかるのかなあ」
『ちょうだいよぉー。独り占めなんかしないでちょうだいよぉー!』


ひょっとして渡辺さんちの座敷わらしがこいつにとどめを刺さないのは、
猫が獲物をいたぶるように遊んでいるだけなのではと、ふと気が付いた。


45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 19:42:59.49 ID:AyCo8+JZ0
むささび状物体風情に熱く夢を語られた日にはうっとうしいことこの上なし。


『座敷わらしにもランクがあってな。最上級は『ちょうぴらこ』。色白美人』
「だからキミは経立だろうと何度言えばわかるかな」
『河童は割とランクが高い』
「河童は河童でしょ」
『『のたばりこ』や『うすつきこ』は残念ながら下位種になる』
「こんなのが上位種であってたまりますかっての」
『家憑きの式神や、家で不慮の死を遂げた霊は中くらい?』
「キミの話を聞いてると座敷わらしってのはなにかの総称みたいに聞こえるんだけど」
『いつまでものたばりこやってねえで、いつかちょうぴらこになりてえなあ』
「そうだ。そろそろ寄生虫の予防接種受けに行く?」


汽水域に密生する植物をひっくるめてマングローブというが、
座敷わらしというのもどうやらそういう概念であるらしい。


46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 19:52:02.42 ID:AyCo8+JZ0
今日のむささび状物体は白い腹を見せて背中で廊下を這いずっていた。


「子供みたいなことしないの」
『座敷わらしは子供の心を失わない家精だからこれでいいんだ』
「子供はさすがに踏まないけどキミのことは踏んじゃうよ」
『そんなことよりちょうぴらこもうらやむこの白く美しいつやつや腹毛をなでてみろって』
「色白で有名なちょうぴらこもそこの白さは別にうらやまんでしょ」


でも思ったよりふわふわしていて気持ちよかったのがなんだかちょっぴり悔しかった。


47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 20:02:20.92 ID:AyCo8+JZ0
うちのむささび状物体を毎度血祭りに上げる渡辺さんちの座敷わらし、一度は見てみたいもの。


『へへっ、ぬかったぜ』
「怪我するのは勝手だけど、死ぬときは外で死んでよね」
『UMAの死体がきちんと保存されていない言い訳って、何種類あるんだろうな』
「あの手の話って、うまいこと確認とれないような構成になってるよねえ」
『外で死んだらその轍を踏むことになっちまうんだぜ、いいのかい?』
「キミは死んだら普通に獣の正体を現わすだろうから、死体に価値はなさそうだよ」
『だから人をむささびの経立扱いするなというに。お見舞いは小豆でいいよ』


ためしに動物病院に連れて行ったらむささびと同じように治療されていた。


48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 20:04:44.06 ID:AyCo8+JZ0
人間ほども殻丈のあるたにしがその軟体でむささび状物体にのしかかっていた。
うちの裏手を流れる川からやってきたのだろうか。


「キミのお知り合い、あとでぜんぶリストにして提出しなさい!」
『たすけてー! たすけてー!』
「……え? ひょっとしてマジで捕食されてるの?」
『この稲荷め! 座敷わらしはたまに田植えを手伝う、稲荷の友と知っての狼藉か!』
「……え? 稲荷ってこんなんだっけ? しいて言うなら地元の田の神じゃないのこれ?」
『本家からの勧請じゃなく地元フランチャイズタイプの稲荷には色々あってややこしいんだよ!』
「座敷わらし同様、お稲荷さんにも色々あるってことね。それとキミがいつどこで何を手伝った?」
『屋敷神は座敷わらしだけで十分! 稲荷も大黒も荒神もいらーん!』
「ぶっちゃけキミも要らないんだけど」
『おまえがちゃんと座敷わらしを祀らないから、無神宅と思った野良稲荷が押しかけてくるんだー!』
「お稲荷さんって、野良がいるんだ……」


眷属だというあたふたと駆けつけた女の子は修行が足りないのか狐の耳も尻尾も隠し切れていなかった。
そしてたにしを止めるどころか、経立もろとも襲われるというていたらく。
仕方ないので近所の人を呼んでたにしごと裏の川に投げ捨てる。死んでいなければ生きているだろう。


49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 20:17:13.78 ID:AyCo8+JZ0
縁側を這いずりながら光の届かない庭を眺めているむささび状物体。


『庭に何も植えないの?』
「植えてるじゃん」
『けっこう空いてるよ』
「無駄に広いからね。雑草とるだけで手一杯」
『じゃあ小豆を植えよう』
「キミがちゃんと世話するんなら別にいいけど」
『座敷わらしはお手伝いしかしないよ!』
「お手伝いすらしない経立が何を」
『人間が、自分が主体となって努力することを忘れちゃだめ!』
「ようするに何もする気はないのね」


というわけで庭の空きスペースは今も空きスペースのままである。


50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 20:27:22.58 ID:AyCo8+JZ0
それにしてもむささび状物体の徘徊癖はなんとかならないものか。


「座敷わらし伝説の中には軟禁された徘徊老人や池沼児の目撃譚も混じってるよね、きっと」
『座敷わらしは旧家に出る。旧家にはそんな奴を間引かず軟禁できるだけの財的余裕がある』
「座敷わらしが旧家に出るんじゃなく、旧家だからこそ逆に、ってわけか」
『座敷わらしに会いたきゃなんとか旅館に泊まるんじゃなく老人ホームで働けって話だ』
「座敷わらしに見せかけてさすがは経立、不謹慎なことをさらりと言ってのけやがる」
『座敷わらしは子供、そして子供に大人のタブーは関係ないのさ』


そういや燃えたね、そのなんとか旅館。


53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 20:37:34.63 ID:AyCo8+JZ0
廊下に寝そべったままむささび状物体はぴくりとも動かない。


「死んだ?」
『しっ! 静かに』
「何やってんの」
『いま、この廊下がベルトコンベアみたいに動いてる気分なの!』
「のたばりこを名乗るなら自力で這いなさい。できればよそのお宅で」
『ずるい! 人間だけが機械文明の恩恵にあずかろうなんて、卑怯だぞ!』
「何でキミの頭の中ではいつもいつもキミが主人公なのかなあ」


邪魔なのでどけたいのだが
こいつは無理に掴もうとするとすぐ人を投げ飛ばしてくるし。


54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 20:38:56.42 ID:AyCo8+JZ0
薄暗がりの中をむささび状物体と一緒に這いずっている
何やら名状し難い物体がいた。


「今度はどこのお友達を連れてきたわけ?」
『這い寄る混沌!』
「それは……俗にいう……その……」
『正式な名前は誰にも発音できないらしいよ』
「名前はどうでもいいから、この人はエジプトに、キミは森に帰りなさい!」
『這い寄る幸運!』
「何度言ってもわからないようだけど何度でも言うわ。キミがいつうちに幸運なんか運んできたの」
『一緒に這いずろうよー。三人そろえば三位一体だよー』
「それ以上冒涜的な言辞を玩ぶなら、狒々も恐れたというあのよく噛む犬を連れてくるよ」


そのまま渡辺さんちに出掛けていった二人は数日後、血みどろで土間に転がっていた。
無敵にもほどがあるだろ渡辺さんちの座敷わらし……。


55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 20:49:42.53 ID:AyCo8+JZ0
この間の超超弩級巨大たにしがまた我が家を気ままに這いずっていた。
むささび状物体はその殻にうまいことへばりついている。


『ハハッ手も足も出まい。座敷わらしの叡智を舐めんなよ』
「出てるじゃない。手とか足とか言っていいのかどうかは知らないけど」
『家憑きの守り神としてどっちが格上なのか、こうしてちゃんと殻に刻み込んでやらんとな』
「のたばりこなら自力で這いなさい。それと粘液はあとでちゃんとキミが掃除すること」
『特権階級が相応の乗り物に乗り自分では歩かないのは人も座敷わらしも同じです』
「そんなふざけた座敷わらしがいたら佐々木さんもちゃんと記録していたと思うけど」
『おもかじいっぱーい』
「尻尾で舵とって遊ばない」


たにしお付きの狐っ子はといえば最近お供えがないとかで腹をすかせて玄関先に倒れていたし、
どうも誰一人として掃除などしそうにない。
そういえば貧乏神も家々を渡り歩く性質を持っていたなと、ふと思い出した。


56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 20:59:59.12 ID:AyCo8+JZ0
我が家の大黒柱はすっかりこのむささび状物体のお気に入りになってしまった。


『みーんみーんみーん』
「なにがやりたいのこの経立は」
『座敷わらし上位種は床の間を、下位種は柱を好む。覚えておいて得はない』
「テストには出ないだろうね」


座敷わらし伝承の大半はどう贔屓目にみても
迷い込んできた夜行性動物かなにかの見間違いだ。


57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 21:09:28.75 ID:AyCo8+JZ0
やたらと床を這いずるのがこのむささび状物体のウザいところ。


「しかも薄暗いところばかり」
『用もないのにうろうろするのが座敷わらしの趣味なんだ、ほっといてくれ』
「そんな人面犬みたいなこと言われても」
『飛んだら飛んだで文句言うくせに』
「いや、踏みそうになるのよ」
『座敷わらしは勝手に来て勝手に去るもの。人の手で捕らえることはでk


踏みつけてしまったときの鳴き声こそはまさに経立の名に恥じぬすさまじいものであった。


58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 21:23:13.90 ID:AyCo8+JZ0
それでも懲りずに床を這いずるむささび状物体。


『自分、のたばりこですから』
「健さんがおまえみたいに這いずってるの見ちゃったら泣く自信がある」
『渡辺さんちの座敷わらしも用もなく部屋中うろうろしてるんだからいいじゃないの』
「冷静に考えたら座敷わらしの行動パターンって気持ち悪いよね」
『ヒキコモリや箱入り娘を誤認した例がかなり取り込まれてるんだから仕方がない』
「かなり混じってるの?」
『まあそんなこと関係なく座敷わらしは上位も下位もこぞって用もなくうろうろするんですがn


また踏んだ。


59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 21:34:01.87 ID:AyCo8+JZ0
いつも這いずっているだけのむささび状物体が今日はまるで走るような音で這うと思ったら、
家中のふすまを外してダッシュ婆が走り回っていた。


『待ってよー。待ってよー』
「家の中を走るなって、むしろ言う側のお年頃でしょうあの人は」
『あのスピードを身につけた時、渡辺さんちの座敷わらしとも互角に渡り合えるのです』
「ぜんぜん追いつけてないじゃない」
『だからといって何もせずにいたらずっとこのスピードのままじゃないですか』
「修行するのは勝手だけど、お外でやって」
『屋内で戦うんだから室内戦を想定して修行しn


ダッシュ婆も騒々しいし、それにうっかり踏みつけられた経立もやかましいし。


61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 21:44:21.59 ID:AyCo8+JZ0
むささび状物体が神社のパンフレットを引っ張り出して眺めていた。


『祀れよ』
「は?」
『座敷わらしのいいところは集落じゃなく家に憑く神だから、祀るのもコンパクトですむってとこかな』
「キミはキミで好きにするからこっちもこっちで勝手に幸せにでも何にでもなれって言ってたよね」
『この柱のあのあたりに穴など開けて祭祀空間を演出すると素敵じゃないかな』
「座敷わらしを称するならもう少しむささび臭さは抑えたほうがいいよ」
『㌧』


もちろん穴どころか巣箱だって用意する気はないんだが。


62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 21:55:53.57 ID:AyCo8+JZ0
裏手の川どころか台所の方から何かをとぐような音がする。
あのむささび状物体め、とうとう生では飽きたらず生意気にも小豆を茹でる気か!


『などとなんでもかんでも人のせいにしないでいただきたい』
「なんだ。たにしのとこの子じゃないの……こら逃げるな」
『 "狐に小豆飯" とはよく言ったもの。このいやしんぼめ! 三粒だってくれてやるものか!』
「その言葉はキミにも贈るわ」
『稲荷・伊勢屋に犬の糞といわれた時代はもう終わったのだ。時代はまさに座敷わらしよ!』
「たしかに個人主義の現代にぴったりではあるわね。キミはただの経立だけど」
『こいつだって狐の経立じゃないかー』
「役に立たないお稲荷さんの、使えない眷属は、たしかに経立で十分よね……泣かないの。事実でしょ」
『この廃都はすでにゴミ収集所なみの勢いでご町内にお地蔵さまが居座る地蔵空間。諦めて去ね!』
「護王神社から猪けしかけられそうなこと言わないで。どうせ来るのはこのうちになんだから」


狐っ子はすすり泣く声よりも腹の虫の音の方がやかましくて説教になりゃしなかったので、
裏の川で藻をかじっていた巨大たにしの前に捨てておいた。食われていなければ生きているだろう。


63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 22:05:36.41 ID:AyCo8+JZ0
薄暗い廊下を明らかにむささび状物体ではないものが這っていた。


「ごきぶり……」
『そんな眼で見られても座敷わらしは昆虫なんか食べないよ』
「むささびは樹の上にあるものしか食べないんだっけ……あれ、じゃあ何で小豆を」
『まあそのへんは自由ですから』
「ふざけた奴」
『しかしこいつは大した奴ですよ』
「食べなくていいから、つまみ出してくれないかな」
『ここまで人に馴染みかつ嫌われながら、神格化も妖怪化もされず原型のまま生き抜いてきたんだから』
「そうね。ふつうどっちかにはなってるわね」
『おそらくこの地上でもっとも霊的に完成された存在なんでしょうね』
「それはないわ」


やがてごきぶりは、不意に、飛んだ。
月の明るい夜だった。


64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 22:16:16.78 ID:AyCo8+JZ0
座敷わらしは誰にでも見えたり特定の人しか見えなかったりするらしいが、このむささび状物体は。


「人が来たり写真撮ろうとしたりしたらすばやく逃げるってことは」
『きっとシャイなんだよ』
「踏むよ。キミは誰にでも見えるタイプってことか」
『座敷わらしはかわいい女の子。そういうキモオタの夢を壊さないための優しさですよ』
「こちとらもう夢も希望もないと申すか」
『保健所に立ち入られるのが怖いわけではない』
「経立系のおばけってさ、自分から弱点口走る馬鹿が多いのは何でなの」
『座敷わらしはそれなりに自活してるが、犬は意外と手間がかかるからむやみに飼うのはやめときな』
「それってさあ、『押すなよ?』と同じ種類のネタ振りと受け取っていいわけ?」


あと一線を越えたら何が何でも退治してやろうと思うのに、こやつなかなか狡猾で。


65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 22:29:14.32 ID:AyCo8+JZ0
自称のたばりこなこのむささび状物体だが、本物のむささびは生涯のほとんどが樹上生活。


『だからむささびじゃなくのたばりこだっていってるじゃないですか』
「経立化したから生態が変化したのかな?」
『その発想が差別を生み自由を奪う。自由を旨とする座敷わらしのもっとも嫌うところです』
「畳の上、爪立てながら這いずったら踏むよ。踏みにじるよ」
『体長ほどもあるもふもふでふさふさの尻尾を揺らしながら這いずるのがチャームポイント』
「やっぱむささびだよねえ?」


ああ、こいつが尻尾だけの存在だったなら、まだいくらかましだったのに。


66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 22:41:33.74 ID:AyCo8+JZ0
薄暗い廊下を椎茸連隊がむささび状物体と一緒に這いずっていた。


「ほんとに椎茸を身代わり用として仕込むつもりか」
『一緒に這いずる?』
「いやよ。それと食べ物で遊ばない。そして食べ物、遊ばれない」
『待て。椎茸を叱るというのなら身代わりになるぞ!』
「なにその無意味な相互意識は」


しかし身代わりは説教の最中に這いずって闇の中へと溶けていき、
結局椎茸を叱ることに。


67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 22:51:38.20 ID:AyCo8+JZ0
木の皮をくわえたむささび状物体が家の中を這いずっていた。


「その皮をどうしたいわけ?」
『あ。間違えた』
「巣に敷くの? やっぱどっかの森に巣があるのね? キミ、むささびでしょ?」
『いやいや。巣はここですよ』
「さっき、間違えたって言ったよね」
『座敷わらしは巣なんか作りませんよー』
「いま、巣って言ったよね」
『そんな人の揚げ足ばっかとってると幸運が逃げますよ』


首根っこの皮を引っつかんでやろうとしたらまた派手に投げ飛ばされて
その隙にまんまと逃げられてしまった。


68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 23:03:01.56 ID:AyCo8+JZ0
キーボードに毛が溜まるから
むささび状物体にはあまりパソコンを触ってほしくないのだが。


『スレタイは【座敷わらしが経立を語るとスゴイ】でいいか』
「貴重なお話が聞けそうね。っつかキミ経立じゃん」
『経立系座敷わらしと言っていただきたい』
「ラテン系アメリカ人、とかみたい」
『あれ? スレ立たねえ』
「スレ立て規制中」
『ええーい、ケータイをよこせ!』
「あ、ケータイ持ってない」
『つまんない奴!』
「居候の分際で言いたい放題だねえ経立。小豆に毒盛るよ」


なんだかんだで渡辺さんちのパソコンを奪いに行った一時間後、
ふとVIPを覗くと【経立を捕まえたんだけど安価で虐待する】というスレが立っていた。
久々にゲッターになってみるか。


70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 23:13:43.57 ID:AyCo8+JZ0
以前はどこにいたんだろうか、このむささび状物体。


『ここが初めてと言いたいところですが教会です』
「世界観ぶちこわし!」
『薄暗いし広いし、いいとこでしたよ』
「むささび的に?」
『ここと違って木が少ないのが難点でしたね』
「むささび的に?」
『しつこいなー。獣状だろうとぬめって這いずる乳幼児状の固体だろうと女の子だろうと座敷わらしじゃー』
「乳幼児状の固体ってなによ」
『冒涜的で何とも名状し難いものです。現行文明の有する概念ではとても説明できません』
「そんな座敷わらしは宇宙の果てにでも深海の底にでも帰ってもらいなさい!」


乳幼児状の固体って、マジでなんだ? しかもこいつ同様這いずるのか?


71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 23:25:38.43 ID:AyCo8+JZ0
むささび状物体がまたおかしなことをおっぱじめた。


『小豆がほしいモマ』
「けったいな口癖や語尾でしかキャラ付けできないのは作家として最低だって知り合いが言ってた」
『くれなきゃこのうちを貧乏にしてやるモマよ』
「ひょっとしてキミ、むささびだから"もま"って言ってんの?」
『何のことモマ? 昔からこうだモマ』


いや昨日は普通にしゃべってたじゃん。


72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 23:31:14.32 ID:9GQYn6dN0
ムササビだから「もま」?
解せぬ…とググったらムササビの俗名か


76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 00:00:38.46 ID:AC9OQpMk0
>>72
むささび・もま事件とたぬき・むじな事件でググると世の理不尽っぷりに頭が混乱する


73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 23:38:43.43 ID:AyCo8+JZ0
久々にむささび状物体に投げ飛ばされて数時間後。
気が付けば我が家は日本女子柔道強化合宿所と化していた。


『柔道のルーツは座敷わらし武術にあるらしいと、菅江真澄遊覧記の研究から……』
「遊覧記でも東遊雑記でもいいから、しょうもないことはやめなさい」
『武門の神として後進を指導する義務があるのです』
「キミは来訪神じゃなかったの?」
『さあ、今日は渡辺さんちまで軽くジョギングして終わりにしましょう』
「やっぱり目的はそれなのね」


数時間後、弟子をすべてとられたと泣きながら経立が帰ってきた。
よりよい指導者の下で日本女子柔道がさらなる飛躍を遂げんことを心より願う。


74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 23:50:49.39 ID:AyCo8+JZ0
むささび状物体の分際で小豆中毒ごっことは、まったく鬱陶しいことこの上ない。


『ハァ、ハァ、あ、小豆……小豆を!』
「ちょうど切らしてるわ。明日買ってきとくから……ってなんで買ってあげてるのよこっちも」
『たしかそこのアパート裏の畑に小豆が実っていたはずです』
「自分でかじりに行って自分が保健所に捕まってきなさい」
『足跡は雪で覆い隠してもらえるよう、お大師さまに頼んでおきますから』
「あの人って跡隠しの雪とか、坊主のくせにたまにふざけたことするよね」
『井戸水湧かしてるひまがあったら、小豆でも生やせって感じですよまったく』
「それといま十月ね」


次は和菓子屋にでも棲み着けよ、もう。


75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/24(木) 23:59:26.48 ID:AyCo8+JZ0
このむささび状物体、人に化けたりすることはできないんだろうか。


『そういう時はまず自分から座敷わらしに化ける!』
「ちょっと待ってその理屈はおかしい」
『もうちょっと若いうちに間引かれていたら、この家憑きの座敷わらしになれていたかも知れないのにね』
「なんでそんな悲惨な目に遭ってまでこっちが座敷わらしに化けてやらにゃならないの」
『じゃあお互いの中間をとって、一緒にヒヨケザルごっこしよーぜ!』
「中間に皮膜生物がくるってことは、キミ、やっぱり……」


もっともこいつが擬人化したところで、萌える方向に行くとは到底思えもしないんだけど。


78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 00:15:56.21 ID:n+JsXL1n0
珍しくむささび状物体が這いずらない晩だと思っていたら、
こいつ、こたつの上の蜜柑籠の中でちゃっかり丸くなっていた。


『囲炉裏もいいけどこたつもいいよね!』
「蜜柑の皮ですら漢方薬になるってのに、キミはこの籠の中で何のお役に立てるっての」
『小豆もいいけど蜜柑もいいよね!』
「ないと思ったら食べやがったのかこの経立!」
『座敷わらしは地域によっては逆に疫病神だから、まあ、仕方ないよね!』


籠をさっとひっくり返しその上に腰を下ろす。
しばらく中でぎゃあぎゃあわめいていたものの、籠の目から人の尻にぷすっと爪を刺し、
驚いて跳ねのいた隙に闇の中へと這いずって逃げていってしまった。


79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 00:30:06.93 ID:n+JsXL1n0
恐れていたことがついに起こった。
むささび状物体の奴、ついに、我が家に糞を落としていったのだ。


「知能はあるっぽいからこういうことはしちゃいけないってわかってる子だと思ってたのに!」
『この家もまた地球という大自然の一部だと思えば、ふしぎはないよ!』
「認めたね? 自分が一野生生物にすぎないと、認めたね?」
『宇宙船地球号!』
「自分が正しいと思ってるし力もそっちが強いのに、何で柱の上から降りてこないの」


なんとか高いところから引きずり下ろし、さあお説教と思いきや、
そこにいたのは申し訳なさげに傘を垂れる身代わりの椎茸だった。
まさかこのネタ、ほんとに使うとは。


81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 00:43:06.90 ID:n+JsXL1n0
今宵も今宵とて
人が寝ようとしたら布団の上に乗ってはしゃいでくるよこのむささび状物体は。


「前々から思ってたけどなんで寝ようとしたら邪魔するの」
『座敷わらしは夜行性だよ』
「ほかにやることはないのかって訊いてるの」
『人間にもいるでしょ。お泊まりしておふとんが並ぶと、むやみにテンションあがる人』
「目を覚ましなさい! 修学旅行はもう終わったのよ!」


女の子二人だという渡辺さんちの座敷わらしもこういうタイプなのだろうか。
人によってはあるいはうらやましいのかも知れないが……。


82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 00:57:24.61 ID:n+JsXL1n0
おはぎを作ってやるから鬼退治にでも何にでも出ていけと
むささび状物体に持ちかけてみたことがある。


『座敷わらし十二大特徴の一つ。歩く時には必ず連があって、ただ一人で歩くようなことは稀だという』
「じゃあキミは誰と一緒に以前のすみかからここまで来たの」
『前のお宅に托鉢に来たお大師さまとそのまましばらくご一緒させていただきました』
「前のお宅は教会だとか何とかきいてるけど」


確かに訪問先に禍福をもたらすという点で座敷わらしと似てはいるけど、
こいつだけじゃなくお大師さままでもがフリーダムなのかこのいかれた国は。


84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 01:15:24.66 ID:n+JsXL1n0
泡立つアメーバのようなタールのような物体がむささび状物体と共に人の家を我が物顔に這いずり回る。
とろけた人間のように見えないこともないが、垂れた粘液や気泡がそう思わせているだけだろう。


「キミは! ほんとに! ろくな知り合いがいない!」
『のたばりこ仲間を侮辱するなー』
「これだから低級妖怪出身の座敷わらしっていやなのよ」
『だがこのような禍々しいものを崇めることで邪悪な富を得て栄えるというのはよくある話』
「そういう目的なら普通に観音詣でしたあと、わらしべでも持って旅に出るわ」
『福運を得るために召喚し家の中で飼っていたこの手のものもまた、座敷わらしの一種なのです』
「クダとか式とかそういう類の外法ね」
『これこそ、家から出すわけにもいきませんしね』
「なんか気持ち悪い声で啼いてるし」
『ああお気遣いなく。すぐ出掛けますから』
「懲りないわねキミも」
『こいつはその気になったら町一つ溶かして呑み込むたのもしい奴! 今度こそ勝つる!』
「えっと……万が一の時はお大師さまの力でなんとかできるかなあ……」


次の日、アメーバはすっかり気泡も抜け失せただの汚水となってうちの前で水たまりになり
経立はその中でのびていた。
どうやってこいつを倒したんだ渡辺さんちの座敷わらし。


85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 01:28:14.78 ID:n+JsXL1n0
うっかり床に落としたミートボールスパゲッティが三秒を待たずして
むささび状物体のうしろについて這いずりだした。


『おおスパモン』
「なぜ産まれた」
『落っこちて最初に眼についたものが這いずっている座敷わらしだったからじゃねえの?』
「そんな雛鳥みたいにほいほいスパモンが産まれてたまりますか!」
『イイイィィィィヤッホオオォォォォォォイイイイイイ!』
「あ、こら、柱に登らない! 飛んじゃ駄目!」
『ついてこい、スパモーン!』
「ああ、スパモンがつられて飛んでしまった。もうミートボールスパゲッティには戻らない……」
『やっぱスパモンは飛ばなきゃ!』
「どうするのよこれ。それと晩ごはん」
『いつも通り小豆でいいよ』
「キミのごはんはどうでもいいの」


こうして産まれてしまったスパモンの一顕現体は、現在、上醍醐の薬師堂に住んでいる。
本尊の薬師如来が下醍醐の霊宝館に引っ越したあと、大師像が留守を護っていた所だ。
やはりお大師さまがうどんを日本へ持ち込んだのはスパモンのヌードル意志によるものだったのか……。


86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 01:45:23.56 ID:n+JsXL1n0
這いずりながら小豆をかじるなと何度言えばむささび状物体に通じるのだろう。


「そんなことお行儀悪いことばっかりしていたらお大師さまに言いつけるわよ」
『お大師さまは関係ねぇだろお大師さまは。おー?』
「なるほど。お大師さまに言いつけるのは効果あり、か」
『またばれたし』
「キミの脳みそは小豆よりもちっちゃいの?」
『ちくしょうはかせめー! やられるまえにやってやるー!』
「こ、こら! かじりかけの小豆を人にぶつけない!」
『擲弾兵ごっこー』
「食べ物で遊んじゃ駄目でしょ!」
『民俗学的にいうと小豆には魔除けの効果もあります』
「魔除け。へえ。魔除け」
『小豆はかじり捨てるもの!』
「どうしてむささびってのは食べ物をちゃんとぜんぶ食べないの」
『むささびに言ってください』
「言ってるじゃない」


お大師さまのスクーターがやってきた音を耳にするや経立は埃まみれの廊下を這いずり姿を消した。
這った後を追おうとしたらお大師さまがすかさずあと隠しの埃を降らし、
いつものくせでついやっちゃったと坊主頭をぺちんと叩く。
駄目だこいつら。はやく何とかしないと……。


89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 02:00:14.02 ID:n+JsXL1n0
またしても人の家の縁側で腹をすかせて倒れていた狐っ子を乗り越えて、
むささび状物体はよく這うよく這う。そのうち図に乗って投げ飛ばしだす。


「寝てる人の上にのしかかること自体が好きなのねキミは」
『猪木と座敷わらしに手を出された人には幸運が舞い込むと言われています』
「キミに投げ飛ばされても痛いだけなんだけど」
『こいつも人んちで小豆を争わず狐に戻ってその辺の小動物を生でかじってりゃいいのに』
「それいいね。真っ先にキミを食べてくれそう……あ、どう見てもこの子の方が弱そうだわ」


狐の中には他の稲荷神の使いとなるだけでなく、自らが田の神や稲荷として祀られるものもあると聞く。
どちらにもなりきれそうにないこの子はいい加減諦めて野生に戻った方がいいと思うのだが。


90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 02:15:04.21 ID:n+JsXL1n0
たにしのところの狐っ子を寝かしつけているとむささび状物体がのしかかってきた。


「のきなさい。やっと泣きやんで寝付いたのに」
『いつもなら問答無用で裏の川に捨ててるくせに』
「おなかすかせて泣いてたんならそうしてるわよ」
『寝てる人の懐に潜り込んで遊んでいいのは座敷わらしだけ!』
「遊んでるわけじゃないの。この子、今日は親恋しくて泣いてたから」
『ははぁん。親離れしたてか。道理でまだ生きるのがへたくそなわけだ』
「狐は子育て好きな反面で子追いがかなりひどいからね。まあそのショックは理解できるわ」
『一人前になったらけっこうしれっと戻ってたりもするよ』
「うまいこと独り立ちできたら、ね」
『オッこのガキ、生意気にも寝ぼけておっぱい探してやがる』
「出ないってのに……よしよし」
『ははぁん。ビーチクが小豆にでも見えたか!』
「キミ……」
『まあいい、人体にある三つの小豆はくれてやる。こっちは普通の小豆を独り占めするとしよう。ククク』


今宵ばかりは何度経立に投げ飛ばされようとも立ち上がり挑み続けなくてはならぬ。
この瑞々しい乳首を小豆色呼ばわりされた日には、もうどちらかが斃れるまで死合うしかないのだから。


91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 02:31:24.54 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体とお大師さまとたにしのところの狐っ子がうちでおはぎを食べながら年を越している。
材料はお大師さまの持ち込みなので、今日ばかりはこいつらを叩き出すいわれもない。


「どういう脈絡の面子なのこれは」
『禍福をもたらす来訪神という点で座敷わらしとお大師さまはつながります』
「それは知ってる」
『小豆好きという点で座敷わらしと狐もつながります』
「油揚げだけじゃなかったのね」
『そして伏見稲荷は東寺の守護神です』
「そういやお大師さまと本家稲荷神はダチらしいわね」
『これほど強固に結びついた萌えの三角形も、そうなかなかあるもんじゃないですよ』
「萌えなくていいからキミたちみんな夜が明けたらおふとんの中で小判にでもなっててちょうだい」
『それは別の大歳の客に頼んでください』


やがてお大師さまは宿のお礼にと年越しうどんを打ち始めた。
そばじゃなくうどんか。すき焼きに標準オプションで大根をぶち込む民族はやはり何かが違う。


92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 02:48:16.96 ID:n+JsXL1n0
人がすすっているお雑煮を見つめてむささび状物体が絶句した。


「え? あ、小豆は?」
『それはおぜんざい。それとキミの分ははなから無い』
「お雑煮にはあんころ餅が常識じゃないか! なんでこんないじわるばっかり思いつくの?」
『新年早々そんな哀しいお雑煮食べさせられるいわれはありません』
「お大師さまー。来訪神をもてなさない強欲婆がいるー。こいつ没落させようよー」
『座敷わらしの言うことじゃないっ!』


香川ではお雑煮に標準オプションであんころ餅をぶち込むものだと後に知った。
うどん、そうめん、オリーブを産する香川はやはりスパモンに魅入られし呪われた国。
一刻もはやくお大師さまもろとも瀬戸の海深く封じた方がいい。


93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 03:04:54.99 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体が狐っ子を威嚇していた。


『ぎゃはははは! このガキ、今時、寒施行がまだあると思ってやがんの。ばぁかじゃないですかぁー?』
「冬場の狐とかに餌をあげるあれのこと?」
『お狐さまが餓えぬようにという、稲荷、というか狐信仰の風習……でした?』
「うわ過去形にして疑問形」
『そんなことより森も冬場は食べ物が少なくてみんな困ってるんですけどねぇー!?』
「寒施行はもう無いんじゃなかったの?」


それに森の食料が少なくて困るのは猿とかむささびとかの話であって、座敷わらしには関係ないよね。


94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 03:17:06.34 ID:n+JsXL1n0
部屋の物がポルターガイスト現象を起こしていると思ったら、むささび状物体が飛び回っていた。
座敷わらしの日常が徘徊するか騒々しくしているかの二つでほぼ占められているという事実は
なぜかあまり世に流布していない。みんな座敷わらしにロマンをいだきすぎだ。


「やめなさい! 散らかさないの!」
『さあ小豆をぶつけて迎撃だ! よぉ~く狙うんだぞ!』
「ほらっ」


正露丸を投げてやったら鼻に入ったらしく、マジ泣きされた。
獣の鼻にあの匂いはきつかったか。


96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 03:33:22.91 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体に家計簿をチェックされた。


『ちょっと無駄が多すぎやしませんか』
「家運傾きそうな家から素早く出ていくのって、まさかこうやってチェックしているの?」
『帳簿をチェックする座敷わらしの存在はすでに佐々木喜善が報告しています』
「だったら株でもやってうちを裕福にしてよ」
『そのうちそんな座敷わらしも出てくるかもしれませんね』


こいつに指摘された箇所を直してみたら次の月、二万円ほど浮いた。
この悔しさ、いったい何にぶつけてやれば……。


97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 03:45:55.86 ID:n+JsXL1n0
しかしこのむささび状物体も幸せそうに小豆を頬張る。


『小豆。座敷わらしのハートをがっちり掴んで放さぬ憎いアン畜生……』
「いつも食わせてやってんだから、そろそろ金の卵ぐらい産んでよ」
『このとなりの欲深ババァめ! また直接的な福運を求めてきおったな!』
「自分が傷つくことを恐れさえしなきゃ、キミを殺す手段はいくらでもあるってことを忘れないでね経立」
『でも欲張っていつも以上にむりやり小豆を食わせても、座敷わらしだから死んだりしないよ!』
「今の量でも糞しか出さないくせに、何を期待してもっと食わせなきゃいけないの」


渡辺さんちの座敷わらしもやっぱり小豆が好きなのかなあ。
まさかこいつみたいに生でかじっていたりはしないと思うけど。


98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 03:56:01.53 ID:n+JsXL1n0
座敷わらしには夫婦者もいるというが、
むささび状物体はそのへんどうしているんだろう。


「キミってさ、独り身?」
『したい時に自由に恋する主義です』
「経立が恋なんて言葉使わないで。許せないから」
『初夏の葉陰で愛を語らうもよし』
「経立が愛なんて言葉使わないで。腹が立つから」
『冬の寒さを想いの熱さで乗り切るもよし』
「経立が想いなんて言葉使わないで。虫酸が走るから」


まったくどこまで語るに落ちる経立なのだろう。
思う存分むささびの発情期じゃないか。


99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 04:02:32.99 ID:n+JsXL1n0
天井裏を忍者が這い、障子の向こうをむささび状物体が這い、床下を狐っ子が這う、そんな夜。


「忍者! 秘密を探さない! 経立! 小豆を探さない! 狐! 獲物を探さない!」
『屋敷に忍び込んだ忍者や獲物を求めて床下に潜り込んだ狐も、座敷わらし誤認の一因かも』
「狐はともかく忍者はないわ」
『一見したところ武士に見える座敷わらしの目撃例はいくつか報告されています』
「そりゃあ忍者も武士のはしっこではある以上、武士の格好ぐらいするだろうけど……」
『ここはあなたも人生のパートナーあたり捜してみてはいかがです?』
「今日はよく噛む犬と一緒によく刺す悪代官も連れてきたほうがよさそうね」


結局忍者はこういう時の用心にと用意しておいた偽の黒歴史ノートを手に帰っていき、
獲物を捕らえられなかった狐っ子は腹をすかせたまま沓脱石を枕に力尽きていた。


100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 04:13:55.21 ID:n+JsXL1n0
本を読んでいたらむささび状物体が人の身体の上を這いずってきた。


「いま本読んでるの。奥座敷の方に行って一人で遊んでなさい」
『んん~。この腹毛か? それとも尻尾の方がええのんか~?』
「毛を擦り付けてこないで。あっち行ってて」
『すねこすりが足元を這いずるのはいいくせに、座敷わらしは駄目と申すか!』
「すねこすりでも駄目だから」
『ああそうかいわかったよ! 狐だろ? 狐のもふもふの方がいいんだろ!』
「いやキミたちどっちもうざいから」
『そうだ。狐にはないこの皮膜に磨きをかければ、きっと誰もが振り返るアジアンビューティーに……』
「あとでちゃんとアジアに謝罪しときなさいよ。社民党に紹介状書いてあげるから」
『小林幸子の存命中には何とかしてみます』
「せめてジュディ・オング程度に」


皮膜萌えか。その発想はなかったわ。


102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 04:27:20.31 ID:BRXJUnRl0
猫の足と腹の間の皮をなぞったりもんだりこくったりするのが超楽しい

皮膜ってあんな感じなのかねぇ


103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 04:31:46.41 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体がなぜか柄杓を貸してくれと言ってきた。


「こういう場合は底を抜いて渡すのが筋なんだろうけど、そもそも柄杓自体うちにはないのよ」
『貧しいんですね』
「使わないからよ」
『別に小豆をすくうわけじゃありませんよ?』
「夜な夜な柄杓で小豆をすくって遊ぶ座敷わらしなんて見たくない」
『廊下に水を撒いて凍らせて這い滑って遊んでみようかと』
「この家に住む人間はどこを歩けばいいのかしら」
『一緒に人間カーリングごっこしようぜ!』
「這いずることがキミの存在意義でしょう? 滑ってないで這いなさい」
『それがのたばりこの存在意義だというのならば、存在などいらぬ!』
「るー、らーるー、るーるーるー、るー、らー、るーるー」
『即興で葬送曲を口ずさむなあああ!』


翌日、こいつはどうやったのか自力で水を撒いてしまった。
そして自慢の尻尾が氷に張り付き身動きがとれなくなって泣いていた。


104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 04:43:14.47 ID:n+JsXL1n0
寝苦しい夜。むささび状物体が布団の上に乗っかってじっと見下している。そんな夜。


「のきなさい」
『重力千倍!』
「馬鹿なこと言ってないでのきなさい」
『だがこの重みに耐えて最後までだっこしきった時、あなたは最強の力を授かるのです』
「姑獲鳥っていうのはね、子じゃなくて親の方がなるものなのよ」
『親子の座敷わらしもいるから問題ないね。重力万倍!』
「のきなさい!」


寝不足で仕事をミスしたいいわけに「急に座敷わらしが乗ってきたから」というのは
はたして通用するものなのだろうか。


105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 04:55:07.64 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体にバレンタインデーは関係ないだろうバレンタインデーは。


『さあ、ぐずぐずしているひまはありません! カカオ豆を小豆に、チョコを餡子に変えて!』
「変えて、どうしろと」
『年に一度ぐらいはあなたが来訪神となって座敷わらしに福をもたらしたっていいじゃありませんか』
「これからは年に一度だけで満足してくれるってこと?」
『ぎゃははははははー! するわけないじゃあぁーん? あなたバカですかあぁ~????』
「やばい……もう出費と手間を無視してでもよく吠えよく噛む大型犬飼いたい……」


小豆小豆と喚きながら家中を這いずり回る経立の鬱陶しいこと鬱陶しいこと。
バレンタインさん、チョコはいりませんからどうかこの経立をどこかへ連れて行って下さいお願いします。


106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 05:07:51.26 ID:n+JsXL1n0
ここが池、ここが拝殿などと庭先で狐っ子とお大師さまが遊んでいるのを
むささび状物体が忌々しげに見つめていた。


『ふん。すでに座敷わらしが支配する空間で無駄な夢を見おって』
「ここはキミのうちじゃないから」
『またまたご冗談を』
「あの子ったらたにし用の池をお大師さまに掘らせる気?」
『狂気の山脈・東山三十六峰が一つ、伏見の稲荷山にはお大師さまが掘った池があるよ』
「お稲荷さんを嫌うのは勝手だけど、三十六峰のほかの寺社まで敵に回しても知らないわよ」
『下っ端狐の分際で総本家と同じ施工主を求めるとはなんとも不遜!』
「夢ぐらい見させてあげなさいよ。ほかにいいことなんて何も起きっこない子なんだから」
『のたばりこが這った跡に沿って家を建てると必ずやうまくいくという言い伝えを知らんとは!』
「その家がなきゃ湧かない物体が何を言ってるの」
『座敷わらしは時間の前後からも自由だから何も問題ありません』


歩いた跡に沿ってどうのというのは、たしか蛇とか馬とかの話じゃなかったっけ?


107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 05:15:26.79 ID:n+JsXL1n0
何がウザいってこのむささび状物体、
なにかと屁理屈ばかりこねるところがウザったらしい。


『這わせてよー。這わせてよおー』
「おとなしく柱にしがみついててよ。もうあの柱キミ専用でいいから」
『座敷わらしって人間タイプだとたいてい二・三歳から四・五歳のガキだぜ?』
「だからなに」
『薄暗い床をひたすら這うなら見知らぬ二歳児よりどうぶつさんのほうがマシだと思うがな」
「なんでキミが座敷わらしを語ると毎度毎度キモい方向に曲がるのよ」
『真実とはいつだってあまり美しくはないものだからです』
「それと、どうぶつさん、てのはさすがに図に乗りすぎだと思うんだ」


渡辺さんは座敷わらしと一緒に用もなく部屋をうろうろしてるんだろうか、してそうな気もする。


108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 05:21:20.70 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体は今宵も土間で痙攣していた。


『二対一。だが自由という名の誇りにかけて、ひるむわけにはいかんのさ』
「渡辺さんちの方でも迷惑だろうから、もう、諦めなさい」
『へっ。市民革命の経験を持たない民族は自由の重みを知らねえから困る』
「そういえばむささびの縄張りってだいたい百数十メートル四方ってきいたことがあるわ」


渡辺さんちはうちの四軒となり。
向こうの座敷わらしがうちに来ないのは、たぶん、畜生ではなく座敷わらしだからだろう。


109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 05:34:21.39 ID:n+JsXL1n0
出かけようとしたらむささび状物体が背中に潜り込もうとしてきた。


『入れてよー。入れてよおー』
「やめなさい」
『座敷わらしは明るいとこいやなんだよー』
「座敷わらし関係なくキミが夜行性なだけでしょ」
『尻尾はちゃんと出しとくから背中入れてよー』
「ねえキミ、ひょっとしてなにか恨みでもあるのかなあ?」
『外は零下だよ? あったかくなるから入れてよー』


尻尾を掴んで引きずり出そうとしたら爪を立てて抵抗してきた。ああどうしよう。


110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 05:39:03.24 ID:n+JsXL1n0
外出を取りやめようとしたらむささび状物体、今度は頭の上に乗ってきた。


『じゃあここでロシアの帽子のまねでもしてるから』
「今さっき明るいとこいやとか言ってなかったっけ」
『自分の意見からさえも自由! それが座敷わらしの自由なのです』
「寒いし出かけるのやっぱやめるわ」
『えー。尻尾はちゃんとたらしとくよー?』
「だからそれはなんの施しのつもりなの」


結局家の中でも頭の上に乗ったままだった。
人の体で遊びたかっただけらしい。


112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 05:50:41.51 ID:n+JsXL1n0
深夜に奇妙な音で目が覚める。
何かと思えば、むささび状物体が自転車を倒し手で前輪を回していた。


「後輪は鍵かかってるからねえ。って、何してんの経立」
『回させてよー。回させてよー』
「うるさいからやめなさい」
『座敷わらしは糸車をからから回すのが大好き!』
「ないよ、そんなもの」
『だから妥協してやったんじゃないかー』
「回すなって言ってるでしょ」


出費は痛いが、前輪にも鍵をつけておいた。
翌日、こいつが扇風機の羽根を手動でからから回していたのはいうまでもない。


114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 06:04:58.35 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体が妖怪図鑑を眺めながら何やら考え込んでいる。


『座敷わらしは小豆とぎみたいに小豆をとぐような音も立てたり……』
「とぎもせずに生でばりばりかじる経立が何を」
『枕返しみたいに枕をひっくり返したりもする……』
「枕なしで寝てたらどうする気」
『逆さ柱の部屋に出没したり……』
「リフォームする時はちゃんとぜんぶ鉄筋で、ってことね」
『水子の霊だったり……』
「賽の河原でおとなしく鬼に虐められてなさい」
『空音だけ立てていたり……』
「山の中でやれば天狗倒しとか天狗囃子とか呼ばれて、うちの中だと座敷わらしってのも、どうかと」
『猫や猿や鼠や河童だったり……』
「ややこしいからもう猫や猿や河童そのものでいいじゃない」
『そのすべての図像を合成すれば、真なる座敷わらしが誕生する……?』
「鵺を越えたわね」
『でも家主に馬鹿にされない、真なる大魔王にまた一歩近付けるじゃないですか』
「とうとう座敷わらしであることからすらも自由になっちゃったこの経立!」


無理だよぅと図鑑を見ながら泣くたにしのところの狐っ子を経立の尻尾が容赦なく打擲する。
自分で化けろよ。それといつの間にそんな仲良くなった?


116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 06:27:40.52 ID:n+JsXL1n0
空になった小豆の袋を頭にかぶったままむささび状物体が這い寄ってくる。


『アズゥキ』
「なに。首のところでくくってほしいの?」
『座敷わらしに小豆をよこさないとどうなるかわかってるんだろうな』
「駄々をこねる馬鹿を黙らせるためによく噛む犬を借りてくる手間が増える」
『ちげぇよバーカ。お前が食う小豆製品はことごとく渋みたっぷりで食えたもんじゃなくなってんだよ』
「それっておねだりを断られたお大師さまがよく腹いせにやる呪いよね」
『そうとも。座敷わらしの背後には我ら来訪神界の大立者・お大師さまがついていることを忘れるな』
「お大師さまと経立が何で仲良しなのかと思ってたけど、似た者同士にすぎなかったってことか」


経立はよく噛む犬で黙らせられる。ではお大師さまを黙らせるには?


117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 06:35:27.52 ID:n+JsXL1n0
渡辺さんちの座敷わらしに喧嘩を売りに行ったむささび状物体は二十分後、
庭木の枝にぐってりと引っかかっていた。


「投げ飛ばされたの? 渡辺さんちから?」
『だって、闘うことって、座敷わらしることでしょう?』
「もうキミが何を言いたいのかわからない」
『力尽きました。降ろしてください』
「むささびでしょう。そのまま樹上にいなさいな」
『のたばりこは這いずることで大地のエネルギーを吸収するからこそ不死身なのです』
「ふと思ったんだけど、水子や間引き出身の座敷わらしって、幽霊じゃなけりゃゾンビの類よね」
『正確にいうと、死霊出身ののたばりこは大地を通じ黄泉のパワーを得て……』
「それはもう座敷わらしの一種から外して、新しい怪異に数えるべきだと思うの」
『それと失われた赤い血は赤い小豆によってしか補われないので、よろしくお願いします』


たったいま大地がどうのこうのと言っていた設定はどこ行った?


118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 06:48:25.92 ID:n+JsXL1n0
考えてみればその辺を這いずっているだけのむささび状物体に小豆を食わせてやっているのだから、
家事を手伝うというのならたにしのところの狐っ子にも少しは餌をやってもよいかも知れない。


『ハハハエキノコーックスめ。働いて食う小豆がそんなに美味いか』
「キミってつくづく経立のクズね」
『たまねぎでも食わせとけー』
「キミも食べる?」
『小豆とかくるみとかで十分でございます』
「そこでどんぐりと答える慎み深さがないのが残念だわ」
『座敷わらしは主も下僕もなく完全に自由ですからー』
「えーと、狐の餌はとりあえずドッグフードに鶏肉と野菜を煮て混ぜときゃいいのね」
『おまえもけっこう黒塚だな』
「次に人を鬼婆呼ばわりしたら、ドーベルマン飼うよ」
『野生の狐も餡子や豆を好むが、それはあくまでおやつとしてだから、優先順位を間違えるな』
「それはキミも一緒だと思うわけ」


なるほど、油揚げは食わせれば喜んで食うがそれだけでは栄養にならないのか。 
ドッグフードはマヨネーズかければ喜んで食う人間だっているんだし、一番安いのでも探してみるか。


119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 07:00:07.18 ID:n+JsXL1n0
縁側を這うかたつむりをじっと見つめるむささび状物体。


『かたつむりかたつむり。家よりけして出ることなく這い続けるお前もきっと、のたばりこ』
「キミはたまに面白いことを言うね」
『住人はどこですか。おや留守ですか』
「いたら怖いわよ」
『家人無き間に遊べ遊べかたつむり。今ならこのお屋敷はすべてお前だけのもの』
「そういやキミはうちに誰もいない夜とか、何してんの」


それには答えず経立は闇に向かってもそもそと這いだした。
歩みを止めたかたつむりがじっと見ている。


120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 07:10:51.13 ID:n+JsXL1n0
制止する狐っ子を情け容赦なく轢き潰し、またしても我が家を這いずる巨大たにし。
むささび状物体は天井から長い尻尾をたらしての細手長手ごっこで対抗した。


「細手長手は水難の前兆でしょう。やめなさい」
『田の神たにしは当然のように稲荷の一種でもあり水神でもある。対抗するにはこれしかなかったのだ』
「しなくていいから」
『五行で土に当たる狐が土剋水の理にも関わらず敗れ去った以上、世界を救えるのは座敷わらしだけ』
「ほんと使えない狐さんねあの子は」
『あ、お大師さま来た! これで勝つる!』
「お大師さまも友達は選びなさいよ……ん、だれ、一緒にいる女の人」
『ゲエー、清瀧さん! あ、あの女はやばい!』
「清瀧さんって……善女龍王?」


清瀧さんは経立もたにしも、ついでに狐っ子もあっさりと叩き出し、
杖でつつけばすぐに水を湧かすお大師さまこそ最強の水神だと、うっとり宣言。いやお大師さまは水神じゃないだろう。
お大師さまも血のつながらない妹に甘えられた主人公みたいな顔しないで。


121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 07:20:10.19 ID:n+JsXL1n0
次から次へとおかしな知り合いを連れ込むむささび状物体。
ひょっとして試されているのか、三次の某少年のように。


「身体中に眼のあるこの名状し難いお方は、だれ?」
『朋あり遠方より来る。また楽しからずや』
「だ・れ?」
『いいじゃない。座敷わらしは屋敷を遠く離れて動けないから、これだけが楽しみなんだよ』
「じゃあ今後一切小豆抜きね。楽しいのはこれだけなんでしょ」
『翼がなかった頃、地元の一怪異だった頃の天使です。今の形の天使になり損ねた奴ですよ』
「こんな蛙の卵みたいなのが天使って」
『翼がないので、こんなふうに這うのが今の天使における飛ぶという行為に相当します』
「まるでありがたくない」
『時代に取り残され居場所を失った旧神に座敷わらし技術を伝承するのも我が役目』
「座敷わらしって徒弟制だったんだ」


後継者を育てるのならせめてちゃんとした人型の……はッ!?
まさかこいつを育てて渡辺さんちの座敷わらしに挑ませようとしているのでは?


123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 07:32:07.82 ID:n+JsXL1n0
這いずっているむささび状物体を見ていると不意に立ち上がって二足歩行しだしそうな気になってくる。


「まさかキミ、そのうち尻尾でバランスとって二足歩行し始めたりなんかしないわよね?」
『座敷わらしがコケると家の運もコケると俗に言われております』
「なんとなくわかるわ」
『つまり絶対コケないようにひたすら這いずるのたばりここそ、真に家を愛する座敷わらし!』
「そもそもキミは福運をもたらさないんだから、コケるような家運もないわよ」


経立の尻尾チョップを足元に喰らった狐っ子があっさりとコケて縁側から転がり落ちる。
庭の雑草をかじっていた巨大たにしの殻のてっぺんに頭からダイブ。
ぴくりとも動かなくなったところをたにしにのしかかられていた。消化されていなければ生きているだろう。


124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 07:44:55.44 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体がキレた。


『あなたにわかりますか? 自分が自分でない異形と化していく感覚やその恐怖が!』
「むささびそのまんまな人がなにを言っているの」
『死霊や経立や河童として生きてきた人生や価値観が、座敷わらしのそれに次第に浸食されていく……』
「そういう言い方はやめてちょうだい」
『もとの世界の中で次第に感じだす、自分の居場所はここではない、だがここにいたいという焦燥感!』
「なんのホラーに影響されたのよ」
『でもそこにいられないことは誰よりも自分がよくわかっている! 変貌の時は刻一刻と迫り来る!』
「座敷わらしってのはそういう内部侵食的な変化だったっけ?」
『あなたも人間世界の中に居場所が無くなる変化が起きて初めてわかりますよ』
「夜中にそういう話はやめて」
『何かから座敷わらしに転じたものはみな、そんな根源的恐怖と闘ってきたんです。おお、おおおおお!』
「ねえ。冗談、だよね?」
『……冗談かもねー。ほんとかもねー』


ふとたにしのところの狐っ子のことを思う。
野生のままに生きていた狐が神性を具えてしまうというのは、本人の望んだ変貌なのだろうか。
明らかに狐のものではない "心" が自分の中をじわじわと占めていくというのは、あるいは、
人間には想像もつかないほどの名状し難い恐怖や孤独との闘いなのではなかろうかと。


125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 07:55:41.91 ID:n+JsXL1n0
いつも人の布団にじゃれついてくるむささび状物体が、
今夜は柱から柱へと布団上空をひたすらに滑空していた。


「なにこれうざい」
『そのうちぽてっと落ちるよ!』
「また変な遊びを始めたわねこの経立」
『ほーら天使の羽根だよー』
「毛を舞い散らかさないで!」
『座敷わらし? 天使? いいえ、その真の名は "自由" !』
「近所によく噛みかつよく跳ぶ犬がいるんだけど、今度紹介しようか?」
『ハハッ犬ごときのジャンプ力でこの自由空域まで届……この部屋天井低いな』


失礼極まりない捨て台詞を残し、経立は闇の中へと這いずり去っていった。


126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 08:06:07.47 ID:n+JsXL1n0
車庫で車にエンジンをかけたままにしていたらむささび状物体が這い寄ってきた。


「なんでこんなところにいるの」
『見つかったー』
「今度はどんな悪戯するつもりだったわけ?」
『ひみつー』
「そういえば座敷わらしは家畜を勝手に解き放つのも好きって聞くけど」
『鉄の馬は犬畜生みたいに噛みついてこないから大好き!』
「ああやっぱり。白状ごくろうさま。ちょっとそこに座りなさい」
『なぜばれた? おまえ、ひょっとしてはかせかー!』
「……頭痛くなってきた」
『それはいけない。車庫内でふかし続けてると、排ガスが溜まって危険ですよ』
「ありがとうお気遣いの経立」


経立め、車の下を小器用に這いずって逃げ回り捕まらないこと捕まらないこと。
このままなんとか轢き殺してやろうか。


127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 08:17:42.65 ID:n+JsXL1n0
山でどんぐりでも食ってりゃいいものを、むささび状物体はなぜいちいち人のうちで小豆をねだるのか。


『本日も小豆徴収のお時間がやって参りました』
「お供え物を出さずに無視してたらそのうち現れなくなるってのが、神さまのお約束だよね」
『小豆くれなきゃ悪戯するぞー』
「それはハロウィン」
『あの人達も来訪神の一種ですよね。座敷わらしの一種です』
「なんでもかんでもそうやって自分の仲間にしないの」


小豆をやっても悪戯がやまない点について追及すると、
這いずりながら闇の中へ消えていった。
どうせ明日になればすぱっと忘れてまた来るんだろうけど。


128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 08:26:16.41 ID:n+JsXL1n0
探し物をして家の中をうろうろしていたらむささび状物体が這い寄ってきた。


『オッ座敷わらしごっこ?』
「探し物」
『またまたぁ。用もなくうろうろするのは座敷わらしの習性じゃーん』 「さ・が・し・も・の!」
『たいていの座敷わらしは徘徊ルートが決まってるから、そこんとこ考慮するとリアルになるよ』
「まさかキミが隠したんじゃないでしょうね?」
『人を烏か何かみたいに』


後日、こいつがよく潜んでいる隙間から見つかったのはいうまでもない。


129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 08:34:39.44 ID:n+JsXL1n0
人が寝ているとのしかかったり潜り込んでこようとしたりするのが
このむささび状物体の困ったところ。


『もし本当の経立なら婦女子にちょっかいを出すだけじゃなくさらってるよ』
「あくまで座敷わらしを称しますかこの経立さんは」
『だから森の方のすみかを突き止めようとして、糸をつけた針なんか刺したらだめだよ』
「それは昔話でいうところの蛇婿入りのパターンそのまんまじゃない」


刺そうとしたら服を着ているわけでもないのであっさり気付かれてしまった。残念。


130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 08:47:13.73 ID:n+JsXL1n0
よく吠えよく噛む犬を常時飼っておくとなれば、
その手間たるやむささび状物体のもたらす迷惑を軽く上回るのは想像に難くない。


「かといってあのたにしは同じぐらい迷惑だしあの子はまるで使えないし」
『もっと格の高い座敷わらしでも造ればー?』
「それをキミが言うかな。水子でもつくって土間に埋めておけと?」
『あれ? ひょっとして人造座敷わらしの造り方知らないの?』
「そんな禍々しい座敷わらしは知らない!」
『代々伝わり家と共に歴史を刻んできた金の玉の精が凝り固まって座敷わらしになるとか』
「お金がお金を呼ぶっていう発想ね」
『ただし、キンタマから産まれた精の童子、略して精子が敷居の外にでたらハイそれまでよと』
「自分以外の座敷わらしがそんなに嫌い?」
『家を建てる際に人形と鏡・串・魔道書を匣に入れて棟木に貼り付けておいてもよし』
「なにそれ呪いっぽい」
『まあもとは座敷わらしの悪戯で家人を悩ませようという大工の嫌がらせなんですがね』
「というかどっちにしても今からじゃどうしようもないじゃない」
『でなきゃ教えませんよ。あなたの脳は小豆より小さくできてるんですか?』


久々に我を忘れ経立に掴みかかった結果は、全身に貼られたこの湿布に訊いて下さい。


131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 08:58:01.21 ID:n+JsXL1n0
オーケイ。ポジティブにいこうじゃないの。
むささび状物体が這いずる現象をなんとかプラスに転用できないか考えるんだ。


「せっかく意味もなく這いずってるんだから、おなかにワックスつけてもいいかしら」
『座敷わらしはモップじゃねえよ』
「好きなだけ這わせてあげるって言ってるのよ?」
『自由ってのは意味のないことを優先して行うことさ! 自由じゃなきゃできねえことさ!』
「キミはよく知らないだろうけど、自由ってのはある程度の責務と引き換えに得られるものなの」
『渡辺さんちの座敷わらしは毎日渡辺さんと一緒にキャッキャウフフしてるだけだぞー!』
「そう。なんだかキミに、どこともつながってない巨大ハンドルを延々と回させてやりたい気分になったわ」


ねえ出てきてよご先祖さま。教えてよ。
うちと渡辺さんちとの、この座敷わらしの差はいったいなんなの? どうなってんの?


132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 09:09:49.16 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体が正月飾りをくわえ廊下を這いずっていた。


「藁? 藁でできてるのがキミの営巣心を刺激しちゃったの?」
『この家そのものが座敷わらしのすみかなのに、巣なんて作りませんよ』
「じゃあなんで藁をほぐしてるの」
『歳の神を迎える座がいるでしょうがー』
「お正月さまは巣になんか棲まないから」
『この家に福運をもたらしに来る神は座敷わらし一人で十分だッ!』
「気を付けて。いきなり本音出ちゃってる」
『㌧』


同じ来訪神のお大師さまとは仲いいくせに、まったく気分屋なんだから。


133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 09:21:28.65 ID:n+JsXL1n0
またしても渡辺さんちの座敷わらしに完敗したむささび状物体が
例によってわけのわからないことをほざいている。


『あの二人を殺しさえすれば小豆食べ放題だったのに』
「どういう理屈でそうなるの」
『二人の死体の頭からは小豆が、眼からは小豆が、耳からは小豆が、鼻からは小豆が、ほ……』
「それは別の神さま! それと小豆になるのは鼻からだけ!」
『またみんなでそうやっていじわるする!』
「いじわるとかじゃなくって、それはそういうものなの!」
『いじわるー! いじわるー!』


こいつは知能が高いのか低いのか、いったいどっちなんだ。


134以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 09:32:30.95 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体がぬるぬると柱を伝って這い降りてきた。


『ラッコごっこするから小豆缶ちょうだい』
「キミが鼠ならまだ多少は納得いったのに」
『鼠の徘徊する音や気配もまた座敷わらしの一例だから、気分はわかるよ』
「明らかに幸せじゃなく疫病をもたらしそうな座敷わらしね」
『出現が家運衰亡の予兆になるパターンの座敷わらしの中には、そういうのがいたんでしょ』
「キミは定期的に血を調べさせてくれるから、そのへん確認しやすくて助かるわ」
『同種間抗争に敗れ傷心の座敷わらしにお見舞いの小豆もよこさず、そんなことを!』
「保険も利かないのにたまに動物病院に連れて行ってあげてるだけでもありがたいと思いなさい」


放っておいてもいいんだけれど、自分の健康がかかっている以上はそうもいかなくて。


135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 09:43:03.24 ID:n+JsXL1n0
節分にむささび状物体がはしゃぐのは眼に見えていた。


『小豆どころか豆すらないなんてありえませんね』
「そういうのには興味ないの」
『小豆は邪を祓う聖なるお豆。この佳き日に座敷わらしめがけてぶつけなくてどうします』
「キミがたちの悪い経立なのは知ってるけど、座敷わらしは追い出しちゃ駄目でしょう」
『座敷わらしはルーツや処遇によって吉兆にも凶兆にもなる光と闇の申し子』
「光とか闇とかいうより、ただ単純に迷惑だから」
『小豆をぶつけることで座敷わらしの中にひそむ闇の方を追い出し、より確実に福運を願うのです』
「どっからそういうホラをぽんぽん思いつくのかしらね」


とりあえず節分のルーツである追儺に倣い、方相氏がわりのよく吠える犬でも借りてくるか。


137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 09:52:19.88 ID:n+JsXL1n0
這えばみな仲間なのか、このむささび状物体め。


「団子虫と一緒に何やってんの」
『あるいはこれもまた一個ののたばりこであり座敷わらし』
「ケダモノと虫ケラはお外で遊んでくれないかなあ」
『虫ケラじゃないよ。大地の循環者であり、大地のごとき徳を持つお地蔵さまの化身だよ』
「つい今しがた座敷わらしって言ってたのをもう忘れたのキミは」
『一緒に丸くなるからー。丸くなりますからー。許してあげてー』
「キミはのたばりこじゃなかったの?」


結局この遊びは団子虫が経立に食われるという悲劇をもって幕を閉じた。
丸まった団子虫が小豆に見えてきたんだそうな。
小豆を十分に食わせないおまえが悪い、と経立がふざけたことを抜かしたのは言うまでもない。


138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 10:04:22.64 ID:n+JsXL1n0
たにしのところの狐っ子が葉っぱを散らかし何やら練習に励んでいる。
むささび状物体はその周囲をしきりに這いずり葉っぱを散らかして邪魔をする邪魔をする。


「神さまの眷属ともあろう子が、偽金作りの練習とは感心しないわね」
『正義の座敷わらしとしては日課の徘徊活動のついでにこうして邪魔せざるを得ますまい』
「それはほんとに日課と呼べるほどたいそうな習慣なの?」
『うわあ、たにし来た!』
「ああこらこら葉っぱ食べて邪魔しない、この子泣いてる。それ以前にそのねとついた足で上がらないで」
『おいおい、言うことバラバラじゃねーか。結局どうしろと』
「みんなまとめて野性に還りなさい」


きちんとした屋敷神を勧請し、こいつらを牽制すべきか。
少なくとも仏壇のご先祖さまはなんの役にも立っていない。


139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 10:15:31.35 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体がその唯一の美徳である大きな尻尾をのたくたと揺らして遊んでいた。


『なめくじー』
「馬鹿な遊びはやめなさい」
『あんなに大きななめくじを見ちゃったら、もうまねして遊ぶしかないじゃない』
「どこで見たの。まさかうちの中じゃないでしょうね」
『真に自由な存在はその友を売ったりなどしない』
「怒らないから言いなさい」
『言うもんかー、言うもんかー』


北の廊下を這っていたなめくじは小豆七粒でいとも簡単に売り払われた。
ほんとにでかかった。


140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 10:26:36.54 ID:n+JsXL1n0
せめて食い散らかした小豆かすぐらいはむささび状物体本人に掃除していってほしいものだ。


「世間にはちゃんとおうちのお掃除してくれる座敷わらしもいるっていうのに」
『そういうのは二足歩行するタイプの座敷わらしに言ってもらわんと』
「立ちなさい。経立でしょう。経って立ってたちまくりなさい」
『立たなくたって、ほいやっさぁ!』
「尻尾で小豆かすを巻き散らかさないの!」
『二足歩行のちょうぴらこなんてごめんだよ。のたばりこのままいつまでも自由自在に這い寄る混沌!』
「もう指摘するのもむなしいけど、いつかちょうぴらこになりたいって言ってたよね」
『自由の民は自分の夢なんかに縛られたりはしないもんだぜ!』


もしこいつが箒を持ったとしても、
チャンバラごっこに興じるだけなのは想像に難くないけれど。


141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 10:29:36.75 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体にはどうせこういう座敷わらしになりたいなどといった明確な目的もないのだろうが、
あのたにしと狐っ子はどういうタイプのお稲荷さんを目指しているのだろう。


「近所の田んぼ脇の塚でこの間お昼寝してたから、たぶん本来は地元の田の神系だとは思うんだけど」
『だがあのガキは屋敷神系も兼ねようと狙ってるぞ』
「信仰が集落単位から家族・個人単位へとシフトしてきた現代じゃその方がはやるのかもね」
『だがそういう風潮・需要に応える屋敷神は座敷わらしだ。稲荷ではなーい!』
「そもそもあのたにし、ちゃんと神さましてるの? どう見ても言うこと聞いてくれそうにないよ」
『自然神ってのは本来、人の手には負えないもんさ。それをうまくなだめすかす技術を "祀り" という』
「そしてそれは禍福を司る神にも当てはまる、というわけか」
『ええ。すなわち、小豆です』


だが忘れるな経立よ。
人類はその長い歴史の中で、祀るだけではなくよく噛む犬を使うという方法も覚えたのだから。


142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 10:39:36.20 ID:n+JsXL1n0
この間の清瀧さんがお大師さまを間に挟んでもう一人の女性をにらみつけている。
女性はけろりとしているが、お大師さまは苦笑いを浮かべていた。
のこのこ現れたむささび状物体が思わずむささび本来の悲鳴をあげて石化してしまう。


「人の留守中にまた勝手にお上がりになられる来訪神さまたちね」
『か、荷田の姐さん!』
「かだのねーさん?」
『本家伏見稲荷の稲荷神だよ! お大師さまのダチの!』
「え? 自称全国三万社の頂点に君臨する、あの!?」
『ややややばい! この二人が顔を合わせてろくなことになったためしがない!』
「水神さまと農耕神なら相性はいいはずじゃない」
『ヒント:二人は女。お大師さま大好き。表向きはどっちも密教の守護者』
「ああ。裏に回ると何とやら……」
『ええい、この家の屋敷神は何をしている!?』
「それがキミだとかいう話があるのよ。信じられないだろうけど」
『たとえ相手がさんずいをつけた青龍だろうと、稲荷の長だろうと、ひるまず仲裁せんかあ!』
「ところでお大師さまはいつも通りだべりに来ただけとして、荷田さんは何をしに来たの?」
『お忍びで各地の下っ端稲荷を見て回ってるんだとさ。じゃあな、世話になった』
「今日逃げたら明日はもっと大きな勇気が必要になるわよ?」
『……なんのことモマ? むささびに必要なのはいち早く危険から逃げる野生の本能だモマ』
「うん。もう二度と座敷わらしを名乗らないでね」


その後繰り広げられた二女神の壮絶な痴話喧嘩で
我が家の造りと周囲の地形が少し変わったような気もしたが、
とりあえず一眠りして目覚めてみたら気のせいだった。
なぜか法力を使い果たしたらしいお大師さまが、うわごとで讃岐銘菓・名物かまどを求めている。


143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 10:52:03.88 ID:n+JsXL1n0
いつまでいつまでと喚きながら床を這いずるむささび状物体が鬱陶しくて仕方がない。


『いつまで小豆おあずけなのー?』
「どこかの怪鳥の真似なんかしなくていいから。座敷わらしらしくもっとおめでたいものを真似なさい」
『無駄だ。座敷わらしの姿を見た者は、じき、死ぬ。いかな吉祥もこれを覆し得ぬ』
「どっちなのよ座敷わらしってのは!」
『100%ではありませんが、居着いた時から姿が見えているタイプにはそういうことが少ないようです』
「たしかキミはそっちのタイプだったよね」
『実はあなたが子供の頃からこの家にいたりしました』
「……」
『冗談です。人を道連れにしそうな眼で見ないでください。思わず孕んじゃいそうじゃないですか』


その家で不慮の死を遂げた子がなるタイプの座敷わらしだとすれば、あるいはそうなのかも知れない。
冥界に片脚を突っ込んだ状態になったために、今まで見えなかった死霊が見えたりもするのだろう。


145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 11:00:45.14 ID:n+JsXL1n0
座敷わらしという先入観を抜きにして冷静に考えてみると、
このむささび状物体は何かの祟りのような気がしないでもない。


「だから嫌がらせばっかするんでしょキミ」
『そんな時は小豆をお供えして丁寧に祀ると、逆に、いい神さまになってくれるよ!』
「ご先祖がうちに泊まった小金持ちあたりを殺して金品でも奪ったのかなあ」
『このまま天神さまの怒りに怯える大宮人みたいに生きる一生でほんとにいいの?』
「それで結局のところキミはいったい何者なのさ」
『A・ZU・KI! A・ZU・KI!』
「ああもうこの経立は」


この手の連中にありがちな
夢の中に現れて要求してくるような真似をしないだけまだましと思うべきなのか。


146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 11:09:21.93 ID:n+JsXL1n0
お赤飯をお供えしているわけでもないのに、
むささび状物体がじっと仏壇を見上げていた。


『実はこのボディ、たまたま迷い込んだ野生生物にこの家累代の水子霊が融合したものなのです』
「あんまり民俗学者の先生方を惑わすようなホラ吹くんじゃないの」
『だから野生生物の誤認というのも家憑きの水子霊でもあるというのも、どっちも正しい』
「じゃあ座敷わらしがよそ宅にお引っ越しする現象について一言お願い」
『家族意識と産んでもらえなかった恨み、この相反する二つの心性こそが座敷わらしの行動原理!』
「ああ、だから座敷わらしは福運をもたらす一方で迷惑をかけることもあるわけね」
『ゆえによくよく供養さえしてやれば、善なる座敷わらしへと傾きやすくなるわけですよ』
「それはつまり……」
『ええ。小豆です』
「……教会の前はどこにいたの」
『観光用古民家で心ない観光客のふりをして悪戯三昧に暮らしていました』


間違いない。この経立は野生生物邪進化系オンリーの座敷わらしでまず間違いない。


147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 11:21:23.74 ID:n+JsXL1n0
天井から下がってくる巨大な足からむささび状物体が逃げ惑っていた。


『踏まれるもんかー、踏まれるもんかー』
「やかましいもぐら叩きはやめなさい」
『座敷わらしを脅かそうなんて生意気な。座敷わらしが人間を脅かすんだー!』
「キミは人にやられていやなことを人にしてるわけ?」
『お大師さまに言いつけるぞー!』


お大師さまを呼ぶまでもなく、足は押しピン一つで断末摩の叫びと共に姿を消した。
足に押しピン。これほど必殺な組み合わせがほかにあるだろうか!


148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 11:32:45.03 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体の増長慢心はそろそろ上位存在によってへし折られるべきだと思うのだ。


『ナスカの地上絵の上を一筆書きに這いずらなくて何がのたばりこだ世界の王だ!』
「いだくのは座敷わらしの身の丈にあった、もうちょっとちっちゃな野望にしときなさい」
『のたばりこ達が大同集結しのたばりこ図像の上を一斉に這いずれば、地球という家に福運が!』
「それはひょっとして、乳幼児状の固形とかいうやつや、この間の気泡生物とか……」


この星の福運を願うというよりも、どこぞの星から邪神でも召喚する儀式にしか思えない。


149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 11:39:41.84 ID:n+JsXL1n0
寝ようと思って布団をめくったら、中でむささび状物体が眼を光らせていた。


「何のまね?」
『座敷バッコごっこ』
「ああ。座敷わらしババアバージョンね』
『キモオタどもから夢も希望も残さず吸い尽くす魔性の座敷わらしにございます』
「ちゃんと奥座敷で徘徊してなさいよ。邪魔」
『婆ッコなので寝たきりだよ』
「そんな哀しい座敷わらしなんかいない!」
『寝たきりだからちゃんと小豆を食べさせてもらわなきゃ! これでとっぴんぱらりのぷうってなもんさ』
「それがキミの辿り着いた究極の座敷わらしなの?」


座敷わらしを称するのならもうちょっとまじめに座敷わらしの話をするように。


150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 11:50:09.58 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体が居着いてからも我が家の蔵の中身に変化はない。


『もともと空っぽだったじゃないですか』
「土間と空き部屋だけで収納には十分だしね、この無駄に広い家」
『おかげで一人ライブに便利ですよ』
「あまり変な遊びばっかりしていたらよく噛む犬を飼う犬小屋にするよ」
『座敷わらしのもたらす福運は乗算なので、もとがゼロの蔵をそれ以上満たすことはできないんです』
「落ち着いて。話をそらそうとすることで、経立の弱点を自分から勝手に保証しちゃってる」
『㌧』


たまにたにしのところの狐っ子がこの蔵をぼんやりと見上げている。
いつかはこんなサイズのお社を構えたいのだろうか。


152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 12:00:29.88 ID:n+JsXL1n0
笛や太鼓の囃す音が鳴り響く我が家の蔵の天窓から淡い光が揺らめき洩れていた。
またむささび状物体が中で歌って踊って遊んでいる。


「なんか蔵がみしみし言ってるんだけど、変な人連れ込んだんじゃないでしょうね」
『蔵わらしが蔵の中で騒ぐのはむしろ蔵わらしの定義そのもの!』
「居場所によって生意気に名前を変えなくてよろしい」
『前祝い前祝い♪ 渡辺さんちの座敷わらしごとこの世界を這い尽くす前祝い♪♪』
「ちょっと待ちなさいほんとに何を連れてきたのッ!?」
『開けちゃだめ! 人間ごときが真の姿と真の名を知ったりしたら狂い死ぬ!』
「どこの邪神ッ!? お大師さま呼んでくるから言いなさい!」


返事がないまま不意に音と光が消え数分後、渡辺さんちの方から経立が血みどろですっ飛んできた。
こいつが瞬殺されたのはいつものこととして、
おそらくテレポートで移動したのであろう連れもまた、結局は敗れ去ったようだ。
これ以降この件について経立が何も語りたがらないところを見ると。


153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 12:07:14.63 ID:BRXJUnRl0
このムササビ顔が広いってレベルじゃねーぞ


154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 12:11:46.62 ID:n+JsXL1n0
なぜかうちでくつろいでいるお大師さまの杖を
むささび状物体が勝手に持ち出し庭に突き立てて遊んでいる。


「この杖 "同行二人" って書いてるけど」
『お大師さまがいつも見守ってくれていますよという意味だってことも知らんのか』
「知ってるわ。問題はこれがお大師さま本人の杖だってことなのよ」
『スパモンと一緒、ってことさ』
「密教を伝えた恵果さんと、密教の守護神として中国からついてきた清瀧さんの立場はどこに?」
『それすらもスパモンのヌードル意志だったってとこかな』
「だいたいお大師さまはスパモンに愛されし民・海賊じゃなくて、坊主でしょ」
『危険も多かった遣唐使船に乗って荒海を越えたお大師さまに、海賊の気概を見たんだよ』
「まあいいわ。その杖、かじったりしちゃ駄目よ」
『誰がそんなもったいないことするか。お大師さまの杖の力を知らんなおぬし』
「杖でつついたところから井戸が湧き出るのとか?」
『嘆かわしい! 最近のもんは挿した杖が根付いて小豆の大樹となった伝説を知らんのか!』
「知らないわ。菩提樹とか椿とかなら知ってるけど。あと、小豆の "き" は樹じゃないから」
『お大師さまー! こいつまたいじわる言うー!』
「じゃあキミは小豆が樹になってるところを一度でも見たことがあるっていうの?」


こちらを見つめるお大師さまは、何も言わず優しく微笑んでいる。


155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 12:17:48.33 ID:n+JsXL1n0
むささび状物体を見かけなくなってそろそろ一ヶ月。


最後に見たのはいつのことだったか……。

ああ
そうだ。

イブの夜だ。

ああ
そうか。

あの経立はほかの来訪神にくっついて移動する習性を持っていたっけ。


座敷わらしは来る時去る時にどんちゃん騒ぎをするだの何だの言っていたくせに、
あいつはなんの前触れもなくうちの中を這いずり始め、なんの挨拶もなく出ていってしまったのだ。


156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 12:19:02.87 ID:n+JsXL1n0
座敷わらしと称していたあのむささび状物体の正体は結局よくわからないままである。


本当に経立系座敷わらしだったのかも知れないし、たんなる経立にすぎなかったのかも知れない。

ただ一つ言えるのは、あいつがサンタクロースにくっついてどこかへ行ってしまったあと、
我が家にこれといった変化は現れなかったということだ。


世界を舞台に、どうか日本の恥をさらすようなことだけはしてくれるなと、
とりあえず北欧の方へ念を飛ばしておいた。


159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 12:31:35.83 ID:n+JsXL1n0
巨大たにしがまたしても家に上がり込み、畳の上を粘液たっぷりに這いずっている。
上陸を阻止しようとしたお付きの狐っ子をその軟体に巻き込んだまま、まるで頓着なく。


「なんのためにお大師さまが庭に池を掘ってくれたと思っているのかしら、キミたちは」
『すいません。いま止めます。いま止めますからぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃあーーーーー』
「巻き込まれるのは勝手だけど、今月の家賃、はやく払ってよね」
『あの座敷わらしはあんなに甘やかしてたのにもにょもにゅ……』
「甘やかしてあげてるじゃないキミたちも。うちに住むのを正式に許可してあげたんだから」
『その方が管理するのに名分が立つからなだけなような気が……』
「ほっといてもうろちょろされるんならその方が得策でしょ。それとお家賃。また野良に戻りたいの?」
『お、追い出さないでー! がんばりますからー! がんばって初穂料集めますからー!』
「それと近所の農家から雨乞いの依頼がきてるんだけど、たにしに取り次いでくれるかしら」
『あ、はい……いやあああ殻の中に引き込まないでえええーーー話を聞いて下さああい!』
「駄目だこいつら……はやく何とかしないと」


経立が去ったあとも我が家にこれといった変化は現れなかった。
しいていうなら出入りするのがのたばりこ仲間から稲荷仲間の怪力乱神どもに替わったぐらいで。
あいつが座敷わらしでなかったためか、それとも、
こいつらが曲がりなりにも稲荷神として機能しているからなのかはわからない。
どちらにせよ、騒々しい日々は引き続きそのままであるらしかった。


160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 12:32:47.42 ID:n+JsXL1n0












                                          ――――――――ラーメン


161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 12:33:38.41 ID:n+JsXL1n0
      r ‐、
      | ○ |         r‐‐、
     _,;ト - イ、      ∧l☆│∧  良い子の諸君!
    (⌒`    ⌒ヽ   /,、,,ト.-イ/,、 l  
    |ヽ   ~~⌒γ ⌒ ) r'⌒ `!´ `⌒) よく頭のおかしいライターやクリエイター気取りのバカが
   │ ヽー―'^ー-'  ( ⌒γ ⌒~~ / 「誰もやらなかった事に挑戦する」とほざくが
   │  〉    |│  |`ー^ー― r' |  大抵それは「先人が思いついたけどあえてやらなかった」ことだ。
   │ /───| |  |/ |  l  ト、 |  王道が何故面白いか理解できない人間に面白い話は作れないぞ!
   |  irー-、 ー ,} |    /     i
   | /   `X´ ヽ    /   入  |





いやあwwwwやっぱり座敷わらしは二足歩行に限りますよねえwwwwwwwwwww


163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 12:42:06.12 ID:7352BeFzO
>>161
てめえwwww


面白かった、乙


164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 12:46:39.19 ID:DESrufbQ0
>>161
ムササビもどき否定すなwwwwwww乙wwwwwwwww


166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 13:41:39.92 ID:BRXJUnRl0
>>161
22時間半もの間よく頑張った。ムササビ面白かったよ、乙。


165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 13:19:43.85 ID:7cN8qFJX0
>>1
ムササビも悪くなかったよ


168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 14:46:34.30 ID:oHJiX226O
面白かった、乙

今度渡辺さんとこの座敷わらし事情も書いてもらいたいなぁ


170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 14:58:55.01 ID:Ay7kPjwO0
お疲れ様。
たのしかったよ


171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 15:58:33.30 ID:IMuXNcDWO
久々に物凄く面白かった乙


173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 16:16:31.63 ID:CiNbJ7SyO
こんな面白いスレは久しぶりだったw
渡辺さんちの座敷わらし、ウチにもこないかなw





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19:00│Comments(1)TrackBack(0)新ジャンル「〇〇」 

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この記事へのコメント

1. Posted by 名無し   2011年04月13日 22:37
なんで今更魔物のSSを・・・・

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