2010年07月18日

ビールのラベルは隠すのが常識?

先日、ちょくちょく寄らせていただいているバーのカウンターで、いつものようにマスターと酒談義を楽しんでいたところ、たまたま隣で飲んでおられた女性の方からおもしろい質問を受けました。

その質問というのは『ビールのラベルはお客様に見えるように扱うべきか、隠すように扱うべきか』というもの。

なんでも、その方はお勤めのラウンジで、ママから「ビールはラベルがお客様に見えないように手のひらで隠してお注ぎするのが常識!」と教わったそうで『ビールのラベルは正式には隠すもの』と認識していたようです。

しかし、バーでビールを注文してみると、注ぐ時にラベルの向きを気にしていない様子で、残ったボトルはわざわざラベルを正面に向けてお客様の目の前に置いている…。
う〜ん、一般的には『ラベルを隠す』のが常識なのか、『ラベルを見せる』のが常識なのか?

なるほど…、それなりの年齢になると冠婚葬祭などでビールを注いでまわらなければいけない場も増えてきますから、確かに気になり出すと気になることではありますよね。


ま、世界標準的に考えれば「ラベルが見えるように扱う」もしくは「ラベルの向きなんて気にしない」という方が多数派だと思うんですが、業態やお店、また、人によって考え方は異なりますので「ラベルを隠して注ぐ」のも間違いとは言えません。

ただ、「ビールのラベルを隠す」という文化は、私の知る限り、日本ならではのスタイルなんですよね。

もちろん、一般的なバーのスタイルは欧米が発祥で、お酒を楽しむことに重点をおいた飲食店ですから、日本のバーでも「ラベルが見えるように扱う」のが常識と言っても差し支えないはずなんですが、高級クラブやラウンジなど、いわゆる接待で使われることの多い業態のお店は、料亭における「お酌」という文化を継承した日本独特の接客スタイルが確立されており、瓶ビールに限っては「ラベルを隠して注ぐ(お酌する)」のが常識(=作法)となっていることが多いようです。


実は、以前、料亭の女将さんから聞いた話なんですが、昔、一部の高級料亭では接待に使っていただく際に、接待相手の会社の関連企業を調べてビール会社があった場合、そのビール会社の主力銘柄を用意してお出しするというひと手間をかけていたんだとか。

瓶ビールは、日本酒と違って”徳利(とっくり)”に移し替えるわけにはいきませんから、ひょっとすると、接待相手が関連企業のライバル会社のビールが出されていることに気を悪くして商談がまとまらなかった‥、なんてことがあったのかも知れませんね。

ちなみに、日本酒の種類が豊富な酒場で日本酒(冷や)をオーダーすると、お客様にラベル(銘柄名)が見えるように一升瓶を持って、目の前で益やグラスに注いでくださることが多いのですが、これはやはり欧米のバーと同様にお酒を楽しんでいただくためにラベルをお見せしているわけであって、料亭の個室における「接待」とは別モノでしょう。

しかし、予約の電話は接待する側の企業から入るものですし、毎回接待される側の情報までわかるものではありません。

また、インターネットの普及していない時代のことですから、関連企業を調べるにしてもかなりの手間がかかったはずです。

そこで、お客様が来店されてからでも手が打てるように大手ビール会社の主力銘柄くらいは全て準備しておこうということになったらしいのですが、口では簡単に言えても実際にこれを管理するのは難しく、いつ、どの銘柄がどれだけ出るかは時の運、今でいうところのカクヤスのように24時間いつでも送料無料ですぐに配達してくれる酒屋もなかったでしょうから、全ての銘柄を品切れさせないように揃えておくにはかなり大きな冷蔵庫が必要だったでしょうし、古くなって味の落ちたビールを出すわけにはいきません。

結局、小さな料亭ではこのようなサービスを真似することはできず、代わりにビールの銘柄を絞り込んで、ラベルを隠して注ぐという技(?)をあみ出したんだそうです。

そして、この技は、同じく接待に使われることの多い高級クラブにも広まり、そこからラウンジ、スナック、キャバクラへと受け継がれ、いつの間にやら業界の常識になってしまったのだとか。

いずれにせよ、ほとんどがボトルキープで成り立っている業態ゆえ「水割り」がスタンダード、ビールはメインとなるウイスキーやブランデーに比べればサイドメニュー的な扱いであることが多いため、ラベルを隠して注ぐことで少しでもロスを減らすことの出来るこの技は料亭以外の小さなお店にも都合が良かったんでしょう。


余談ですが、ラウンジなどでよく耳にする「おビール」という呼び方は、銘柄名を伏せることを考えると非常に都合が良いので、案外、こういった背景から生まれたのかも知れませんね。

今では、お客様の中にも「ビールは場所を問わずラベルを隠して注ぐのが作法」と思い込んでいる方までおられ、バーのカウンターでも、まれに「ビールのラベルは隠して注ぐのが常識や。お前は長いことやっててそんなことも知らんのか。」などと注意されることも…(笑)。

いやはや、業種によっていろいろ常識は違うもので、バーで言うところの「チェイサー」は居酒屋では「おひや」、クラブ、ラウンジ、スナック、キャバクラでは「ミネ(ミネラルウォーターの略語)」、また、スナックで「水割り!」と注文すれば銘柄も聞かずにメジャーな国産ウイスキーの薄い水割りを作ってくれますが、バーで同じように注文すると「銘柄は何にいたしましょう?」と尋ねられます。

つまり、同じ日本の「酒場」でも、業種、業態によってそれぞれ常識は違いますから、「郷に入っては郷に従う」的な考え方をするのがベターなんでしょうね。

ちなみに、ビールを「おビール」と呼ぶ業種、業態のお店はビールのラベルを隠して注ぐことが常識であることが多いようですので、そこで見分けるのも一つの手です。

ま、接待でなければラベルを隠す必要はないような気もするんですが、隠して注ぐことが一部のお客様にまで常識(=作法)として広まっている現状を考えれば、この常識を無視して接客するわけにもいかないですからね。


とはいえ、冠婚葬祭などの席では銘柄名を隠す必然性はないわけですからビールのラベルの向きは気にしなくても良いと思いますよ。

逆に、水商売やってたんとちゃうか…なんて勘繰られて嫌な思いをしたという話も聞いたことがありますから…(笑)。

そして、もし、冠婚葬祭の席で「ビールのラベルは隠すもんや!」なんて言ってくるオヤジがいたら、その人はかなりクラブやラウンジでお金を使っているはずです(笑)。


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davidbatt at 01:47│Comments(3)TrackBack(0) お酒のウンチク | ビールのお話

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この記事へのコメント

1. Posted by いちおう理系   2010年07月24日 00:16
 ラベルを手で隠すのは化学実験のときの作法の流用ではないですか?

 化学実験のときは液だれでラベルや手が汚れないように、ラベルを上にしてその上を掴むことになっています。

 中学の実験あたりでも指導されるのでそのためではないでしょうか?
2. Posted by show-zono   2010年08月05日 13:58
5 はじめまして。

この8月に会社を退職し、年内にソウルバーの開店を予定しています。

たまたまこのブログを見つけ、読み進めるとともに勉強になることも多く、気がつけば数時間かけて遡り拝読しました。

今後も教えていただきたいことも多くまた立ち寄らせていただきます。

今後ともよろしくお願いいたします。
3. Posted by リア友   2011年07月09日 12:53
リア友に知られると不味い事ってこのご時世みんなあるよね?特にさネットでしか本当の自分を晒けだせない人とかだとさ

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