「川原由樹には才能がある・・・・」
彼女のために才能の扉を開いた??・・・・いやいや、最初から自分のためでしょ。
こうして、全ての連載を引き受けるようになった由樹(水川あさみ)は、
編集者たちの目にも明らかなほどに、リサ(中谷美紀)の評判は上がるのが嬉しくて仕方ない。
とにかく、リサは飼い犬に手を噛まれないように、広い部屋を与えて、
何不自由のない状況に彼女を置いて、次々に連載の骨組みを任せて行くのです。
その頃、神崎(田中哲司)は『二番目のわたしへ』という由樹の作品を読み、
プロットだけではなく、そのまま小説として完成させたらどうだとまで言い出すのです。
それもリサに相談することなく、水面下でやってみろと言うのでした。
一方のリサは取材に追われている中、かつてのライバルだった向井(山本未来)とすれ違い、
10年ぶりに彼女が復帰するという話を聞き、ますます焦り始めるのであった。
こうして、ある意味、神崎が二人の女の感情をうまく煽って、ゴーストライターを生み出していくのです。
向井の復帰作のエッセイはなかなかの売れ行きのようで、評判となっていた。
これがますます書けなくなってしまった自分への焦燥感となって行き、とうとう一線を越える。
既に書けなくなっているリサを見越して、神崎は由樹が書いた原稿を渡す。
そして、由樹にゴーストをやらせると言い出すのであった。
ある意味、作家にとっては、末期癌だと宣告されたようなものであった。
逆に由樹に対しては、名前は出ないものの、君の作品が本になるなんて、
とっても凄いことだし、君のことは君のことでちゃんと考えていると甘く囁く。
いやあ、双方にステキな顔を見せて、実に嫌な男であります。
ライターさんが別に編集して書き上げるということはあっても、
小説に関しては代筆するというのはあり得ない・・・・だが、そこに踏み出してしまうのです。
最初は、自分の作品がまるまる掲載されることに喜びを感じていた由樹だが、
あまりにも多額の給料に、何だか違うという違和感を感じ、少しずつ怖くなってくるのです。
これまでの神崎やリサの言葉を思い出し、その金額の意味を考えてみる由樹。
そこに再び浩康(小柳 友)からリサは普通じゃないからやめた方が良いと忠告される。
確かにそうかもしれない・・・・そんな予感がしていた由樹は、神崎に疑問をぶつけてみる。
そんな彼女に対して、今度はあの作品を川原由樹の名前で小説を出してやると、
甘い汁を飲ませて、リサのゴーストライターを承諾させ、実に手法がやらしい。
そして、いちいち嫌味な秘書・田浦(キムラ緑子)がまだ動き出さないだけに、不気味。
また痴呆症の母親・元子(江波杏子)をどう絡ませるのか、そこも見えはしない。
やがて、向井との対談において、リサが由樹の話したことを自分のことのように語り、
まるで恐ろしい女優がそこにいるようで、ますます由樹は怖くなっていく。
リサはただ原稿を催促する編集者みたいな役回りとなり、
今すぐに話を聞きに行こうかとドアを開けると、眼の前に由樹が立っている。
いやあ、笑えるわけがない。怖過ぎる。
そして、とうとう心の中に蠢き始めた疑問をリサにぶつけるのだった。
そう、育てるのではなく、書けなくなった自分の代わりに利用しているだけなのではないか。
しかし、ここでリサは開き直って見せるのです。
「遠野リサの代わりは誰もいない。でも、川原由樹の代わりはいくらでもいる」
自分こそ利用して出版させているんじゃない。
でも、初版3000部なんて、本屋の脇に置かれるだけで、ほとんど目にも触れない。
遠野リサの名前ならば、平積みされて多くの人の目に留まる。
正直ギリギリという印象を受けた。もうすぐに押し負けられそうであった。
そして、その立場は次回で逆転することになるのです。