思わぬことに感動してしまった。
かみさんは6週間にわたる研修第一段階をようやく終え、職員としての宣誓式に臨んだ。
すでに研修や任地の発表会に参加して家族としても慣れ親しんだ感のある世界ではあるが、せっかくのセレモニーなので今回ものこのこ出かけていった。
役所のエライひとの祝辞が終わると、さっそく宣誓の儀式があった。
約40人の新人職員が、星条旗に向かって立ち、右手を挙げ、司会者のリードに従って誓いの言葉を述べる。
ひとことで言えば任務に忠実に励みますという内容で、とりたてて話題にするほどのものではなかったが、俺はめちゃくちゃ深い意味を感じてしまった。
そうなった理由は、直前におこなわれたエライひとの祝辞にあった。
「皆さんがこれから行う宣誓は、何に対してのものだと思いますか?もちろん大統領ではありません。また国民でもありません。皆さんが誓いを立てる相手は、合衆国憲法なのです」
おおっ、そう来たか…
アメリカの最上位にあるのは法律だ。
すべてのものごとの判断を王様や大統領や宗教指導者といった人間が行う国家は、一度乱れ始めるとキリなく混乱することがある。
一方で、法律という揺るぎない存在に照らしてものごとを判断する国家は、はるかに理性的で安定した存在でいることができる。
これを法治国家と呼ぶ。
だから法治国家において公僕が「忠実に仕事をします」と誓う相手は、法律というリクツになる。
ところが今アメリカは、法治国家としての足元が揺らいでいるようにも見える。
法律軽視の姿勢を隠そうともしない大統領が登場したからだ。
こんなリーダーの足元で働く公務員には、いったいどっちを向いて仕事をすればいいのかと迷う者もいるだろう。
祝辞を述べたエライひとは、「こんなときだからこそ、君たちが仕えるのが法律(合衆国憲法)であることをしっかり胸に刻みなさい」と言っていたのではなかろうか。
もちろんトランプの「ト」の字も口にすることはなかったが。
新人職員の宣誓が続いている。
俺の目の前、つい3メートルほどのところにかみさんの背中がある。
正義感の強い彼女は、現政権のもとで働くことに強い違和感を覚えることもあるだろう。
これまでアメリカが世界に広めようとしてきた「善きもの」、すなわち民主主義的な手続きによる政治や人権保護といった価値観とは相いれない政策を押しつけられて苦しむこともあるだろう。
そういうとき、どんなふうに頑張れるのか…
と俺ですら心配している今日このごろだったが、儀式の直前に聞かされた「誓いを立てる相手は合衆国憲法」という言葉は、彼女ら新人職員たちにとってまたとない応援歌になったんじゃないか。
よかったな。ツラいこともあるだろうが、これで頑張れるよな?
そうかみさんの背中に呼びかけたとき、アララこっちのまぶたが熱くなってしまったよ~

星条旗を仰ぎ見ながらの宣誓が終わり、司会者から「皆さん、おめでとう」という言葉が出た瞬間、会場は割れんばかりの歓声と拍手につつまれた。
俺は慌てて目のまわりをぬぐい、周囲の人たちと握手を交わした。
職員の家族にとっても心の糧になる宣誓式だったんじゃないかな。
こうして研修第一段階は終わったわけだが、すぐに第二段階が始まる。
ここまでは職務の概要や心構え的な内容だったが、今後は専門知識や機密事項に多く触れる内容になり、数度の試験もあるという。
第一、第二段階をあわせた数か月間、まったく有給休暇がとれず病欠も許されず、なかなかの緊張が続くのは気の毒だが、まあこれも仕事だ。
ときどき旨いものでも食いながらがんばろうぜ。
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