デリバティブ

2007年03月28日

国家破産と債券 <Time Is Money....日本政府の現状>

 日本の債券取引量が1京円(1兆円の1万倍)の大台を超えた。
    /日本経済新聞社
 
 日経新聞社は、「2006年の日本の債券取引高が、現物と、東証に上場する先物だけで1京358兆円となった」、と報道した。
 
 数年前、アクセス数で1万位にも入っていなかった我々は、今や月に25億PV(ページビュー。アクセス数の事)、世界30位にランクするサイトとなり、人類史上最大の百科事典となりました。
  /ジミー・ウェールズ他(ウィキペディア・スタッフ一同)
 
 たった数年で世界最大の百科事典となったスーパーサイト「ウィキペディア」。その「定義」こそは世界的な「一般認識」だろうから、今後たびたび使う予定であるが、その定義の中でも、「債券は、発行体、償還期間、残存償還期間、償還順位などの組み合わせで、商品数が株式よりかなり多いため(流動性を有す国債を除くと)、市場取引が向かず、基本的に相対取引である」、とあり、そう考えると、1京円というのも氷山の一角 であることが明白である。
 先月、世界で初めて、「もどき」ではない本格的なヘッジファンドが株式公開した(フォートレス)。一般プレスは、「未公開企業への投資で急成長。06年9月末で運用残高約3兆1600億円(MSN毎日)」「今後も成長が見込める」などと報道しているが、今後の展開が明るいのなら、上場するはずがない。単独で約10兆円規模のクラビスやカーライル、ブラックストーンといったファンドも、「すでにポジションやディーラーの陣容がリークしている」 ことを主因に上場を模索中のようだ。
 そのようなファンドにとって、日本の債券市場は格好の主戦場と成り得る。
 だから日本の債券がいいというわけではない。むしろあまりに悪いから取引が増えているのだ。
 
 債券の代表はもちろん国債である。
 
 国債は国の借金である。23日に財務省が発表した数字では、現在の日本政府の国債発行残高は676兆円。ちなみに政府の借金は、その他にも政府短期証券が約100兆円、直接的政府借入れが約60兆円、さらに、総務省発表の地方自治体の債務残高は201兆円、それに政府保証債務などのようにまだ確定していない債務や、数字が公表されないものを含めると、「政府の金融資産と差し引きして正確な純債務を計算してみよう」 などという気はなくなってしまう。
 財政融資資金・社会保障基金・郵貯・簡保、日銀などの公的部門がある程度保有しているといっても、それらの機関の他部門が運用成績を満足に出していない以上、1. 増税、2. 債務不履行、3. 国家破綻 が、秒読み段階に思える。
 50兆円の予算で支出が80兆円、1000兆円を軽く超える借金の金利だけで年間10兆円以上払っている状態(http://www.kh-web.org/fin/ ←クリックでリアルタイム化)とは、数字を小さくすれば、月収50万円の人が子供がたくさん居て月に80万円の生活費がかかり、1億円借金していて、金利だけで月に10万円以上払っている状態 である。
 しかもこれは、現在の過去最低金利が続いたら、という条件での話。
 金利が10年以上前の高水準に戻れば、月に60万円ぐらいの金利になる(日本国だと年間60兆円)。こうなると即、破産である。
 藤原紀香ちゃんや小雪ちゃん といった完全無欠型イメージのタレントで宣伝し、国会議員を中心に厳しく言論を統制しているが、数字が改善するわけではない。
 また国債、政府保証債、地方債などの場合、財務上の特約などがあるケースは少ない。したがって発行体が倒れれば普通に紙切れとなる。国家破綻すればまず円が紙切れになるが、同時に円建て債券も紙切れとなるのだ。
 
 いずれにせよ債券取引とはすなわち「時間」の売買であり、時間が経っても改善し得ないような国家や会社の債券には投資できない。崩れる時は劇的だろう。
 あまり言いたくはないが、上記に紹介したような債券市場は、世界で最も巨大な 「金利=時間市場」 の中において、プロの市場ではない。実際には ユーロ市場(ここでいうユーロは欧州通貨のユーロと関係ない)で取引される.罅璽蹈疋襦↓▲罅璽蹈罅璽蹇↓ユーロ円 という三通貨が金利取引の中心である。ここを簡略にスルーしなければ「ユーロ市場」の説明で今号が終わってしまうので、ユーロ市場については別の機会に説明するが、バランス感覚が狂わないよう、念頭には置いて欲しい。
 例えば 同じ円でも、「日銀の円」より「ユーロ円」 の金利取引が、金利取引の大半だ。そしてそれらのマーケットでは、クラッシュの直前にプロがやるような、典型的な買いオペ(金利ベースでは売りオペ)が少なからず確認されている。
 
 国債の誕生は、近代から現代への脱皮だった。
 王が発行する公債は、王の私的債務か国家の公的債務かの区別が曖昧 で、償還の原資が必ずしも保証されておらず、資金繰りに困った王により恣意的に債権放棄させられる危険性ばかりでなく、次代の王が先代の債務を引き継がないなどの原因で、しばしば債務不履行(デフォルト)に陥った。そのために公債は償還期限が短期でリスクを反映して利率が高く、王が返済に困ってデフォルトを繰り返す悪循環が繰り返された。絶対王政の時代、欧州の王はしばしば戦争を行い、それらの戦費はこうした公債で賄われた。
 ネーデルラントを「オランダ」と発音するのは日本だけだが、これは日本人がホラント州出身のネーデルラント人に「どこ出身?」と聞いたためだ。そのホラント州の議会が、償還期限が長期で利率の低い(すなわちリスクが低い)国債を安定して発行するため、恒久的議会が国家の歳出・歳入・課税に関する権利を国王から奪取、君主の私的財政と国家の財政(国庫)を分離する先鞭を付けた。
 オランダ国王はその後、ホラント州議会の保証を裏付けとして公債を発行するようになった。
 イギリスはオレンジ公ウィリアムの時代に、このホラント州の制度を導入、国債の発行時に返済の裏付けとなる恒久的な税を創設するようになった。
 名誉革命と権利章典により、議会が国庫と課税を管理し、王は議会の同意なしに課税も国庫からの支出も行えなくなった。イギリス議会はコンソル債とよばれる単一の国債に既に発行済みの複数の公債を一元化し、金利の安定化と流動性の確保に務めた。それにより、コンソル債は欧州で最も低リスクな債券として信用され、各国の国債ベンチマークとなった。
 この過程で、イングランド銀行は国家の歳出・歳入口座をもつ唯一の銀行、すなわち中央銀行としての地位を確立 するのである。
 
 もちろん、国債をどのように王と切り離しても、国家 (政府) とは切り離せない。
 破産したことがない政府として知られるアメリカも、1800年代はモルガンの援助がなければ破産していたし、二次大戦時も、硫黄島のヒーローを仕立てたプロモーション (映画 『硫黄島からの手紙−父親たちの星条旗』 でも描かれた) が失敗し、国債がさばけなかったとすれば、日本政府よりも先に破産していた可能性がある。
 
 日本国債の場合、政府からシンジケート団が引き受けるか(この方式は平成17年度末に廃止)、入札方式により銀行・証券会社・生損保等の金融機関が購入し、これがその他の機関投資家や個人に販売されたり、財投債という形で郵貯・簡保・年金資金運用基金に引き受けてもらう、というシステムである。流通においては、通常の売買、レポ・現先といった貸借取引の他、日銀によるオペレーションも大きな役割を担っている。
 最近では、短期市場の支配者としても君臨し始めた欧州系大手ヘッジファンドなどが、大手プレイヤーとなりつつある。
 
 これ以降の内容は口頭で。だって怒られちゃうもん。


dd_freak at 16:54|Permalinkclip!