メディアの明日

2006年04月04日

メディアの明日 - 3 <テレビと新聞のニュースが死ぬ日>

60159a8b.jpg 「ブログは新聞を殺すのか」……ニューズウィーク誌 3月15日号の カバー・ストーリー である。そして翌週の 同誌 (3月22日号) カバーは、「ネットはテレビを殺すか」 というものだった。最近多くのメディアが、「メディアの再編成」 を みずから特集している。
 
 結論から言えば、
 1. ブログは、テレビや新聞のニュースを確実に 殺す。
 2. インターネットはテレビを殺さない。
 
 まず先に 2.
 
 これを読む読者や我々は、ネオ・リベラリズム(世界の自由化・規制撤廃を求める 純粋右翼主義) の旗手であり、同志たちによる ここ数年の、めざましい成果に満足すると同時に、「ここで 敵対者の心の根まで へし折っておきたい」 と考えているハズだ。
 
 ネオ・リベラリズムの妖怪が、世界を徘徊している。
  /『ル・モンド・ディプロマティク』誌のカバー・ストーリー
 
 資本の完全なる 自由化 と 規制撤廃 を求め、世界を 自由市場 にすることを目的とした 「ネオ・リベラリズム」 は、新しい 「世界資本市場」 の形成を目指す 革命的思想 だ。
 ある国民国家は解体され、そこの国民は脱国民化するかもしれない。つまり その国の国民ではない 「地球民」 となる。
  /柴山哲也 (元朝日新聞記者、元米国立シンクタンク研究員)
 
 我々ネオ・リベラリスト側についたのは フォックス系の弱小ニュース局ぐらいであり、メディアの大半は驚くほど露骨に、世界中で、我々の敵対者となった。
 にも関わらず、我々ネオ・リベラリストは 1990年代のように相手を力でねじ伏せるだけでなく、しっかりと議席を獲得し、先進国の ほぼ すべての内閣 を支配している。世界最大の政府 であるブッシュ政権 にしても、個別の場面では保守派の価値観を守りながらも、経済政策では 完全にネオ・リベラリストの言いなり である。
 既存メディアを敵に回してなお、我々の側が あらゆる地域の選挙に勝つ状況 が示唆するように、人々がいかに 新聞やテレビを信用しなくなっているのか、という事実を、浮き彫りにしている。
  日本でも、郵政選挙での執行部圧勝には 様々な政治学的側面があったものの、「新聞やテレビは色々言うけど、現実論では……」 という感じで、今回は(珍しく)、国民与論も確実に マスコミのバイアスの逆に動いていた。与論が我々を支持する、という 「異様な」 感覚の中で、我々は戦局を見守った。
 
 メディア界は今、まるで総合格闘技ルールで 戦っているかのようだ。
 総合格闘技では、よほど苦手な分野がない限り、相手が 打撃で仕掛けてくれば、タックルで崩してサブミッションで 関節の破壊を狙うか、頚動脈を絞めて 失神を狙いにいく。相手がタックルにくれば、それを切って打撃で 脳震盪を狙いにいく。
 これは 戦争の掟でもある。どんなに強力な 大和型の戦艦も、航空機の編隊に襲われれば ひとたまりもない。しかし 航空機を載せる空母は、戦艦どころか、小さな駆逐艦と遭遇しただけで 撃沈される。空母も戦艦も 潜水艦に狙われるが、潜水艦は浮上したら 機関銃を2〜3丁装備した漁船に白旗をあげる。陸上のすべての兵器は、海から、戦艦の艦砲射撃を46冕い膿らえば無力。ただし戦艦は 莫大な燃料と数千人分の食料を必要とし、歩兵に持久戦を挑まれれば 黙って後方へ帰るしかない。
 メディア界では、新聞は雑誌化・ブログ化し、ネットはテレビ化し、テレビはブログ化している。
 2003年度のワールド・プレス・トレンドの調査では、アメリカで発行される新聞は1456紙 にものぼり、それらの新聞を大手メディア・グループが効果的に配布する。ニーズごとに細かく発行される新聞は表紙のない雑誌だ。
 雑誌的な新聞が志向され、アメリカ最大の新聞社であるガネット・グループの総合発行部数のうち、最大の新聞である 『USAトゥデイ』 が占める割合は35%に過ぎない。2位のトリュビューン・グループの最大新聞 『シカゴ・トリュビューン』 も、世界の20位にすら入らない。3位のナイト・リッダーの主力紙 『(フィラデルフィア)デイリー・ニュース』 は、アナリストに廃刊を勧められている。雑誌化を遅らせた新聞は衰退をたどる一方である。
 その雑誌界にしても、イギリス、フランス、日本、ドイツ、イタリア、ロシア、スイス、カナダで最大の発行部数を誇る 雑誌 は、今やなんと、テレビガイドである。世界のほとんどの主要国で、最も売れている雑誌はテレビに関するコメント・紹介雑誌なのである。
 各メディア界の境界や規制はかつての金融界と同様に、消えつつあるのだ。
 
 いずれにせよ 最強兵器はブログだが、ブログが ネット界のみの武器であった時代は終わった。放送形式や発行形式に関わりなく、あらゆるコンテンツが、あらゆるメディアで報道されるようになったからこそ、インターネットはテレビを殺せないのである。いずれ多くのテレビ番組や新聞紙面が、「ブログの公開部門」となるだろう。
 ブログは 総合格闘技で言う パンチだ。グラウンドになれば、キックの威力は軽い嫌がらせ程度でしかないが、三角筋、広背筋、大円筋を使えるパンチは、座った状態からでも、それほど破壊力が落ちない。相手はフットワークを使えないから、かえって立っている状態より、脳震盪のリスクは高まるというワケだ。ブログはあらゆるメディアに対応能力を持ち、あらゆる方向性を、自動的に模索する。
 リアルタイムでニュースを報じるブログだけでなく、映画のように リピート需要を形成(テレビは通常15%程度しか同じコンテンツを再利用できていないが、映画界は300パーセント前後再利用できている)するようなブログも、出現している。
 
 こうした傾向を、ブン屋やテレビマンたちが捉えていれば、テレビはネットに殺されないで済む。往年の大女優のように、自分たちの役割が変化していることに気付き、主役を降りる覚悟さえあれば、だ。
 もちろん、ブン屋やテレビマンたちが、そうしたことを完全に把握し、完璧に対策を練っていても、報道ニュースなどの特定分野は急速にネットへ傾倒していく。
 2005年5月31日。この日 発売された『バニティ・フェア』は、ニクソン大統領の ウォーターゲート事件で使われた匿名情報源 「ディープスロート」 の正体を明かす記事を掲載しており、それが事実であるのかどうか という返答を、ワシントン・ポスト は迫られていた。33年間 封印されていた秘密 が明かされるのかどうか、ポストの返答に世界が釘付けとなった。
 
  とにかく興奮したよ。
     /ジム・ブレーディー (ワシントン・ポスト・インタラクティブ副社長)
 
 『ポスト』はなんと、紙面よりも早く、ネット上で、記事が事実であることを認めたのである。「ボブ・ウッドワード記者(当時、ディープスロートから情報提供を受けた本人)が、それを認めた」、とポストはネット上で報じた。
 
 ニュースペーパー・アソシエイションによると、アメリカの新聞(日刊紙)の統計発行部数は 1985年の6277万部をピークに 歯止めなく減少を続けている。しかも、読者の高齢化が進み、いまや新聞しか読まないヘビーユーザーの大半が、デジタル機器に弱い老人だ。
 ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルのような新聞が さえない中、ウォールストリート・ジャーナルは 部数を飛躍的に伸ばしている。結局、「株式欄以外のニュースは紙じゃなくていい」 という我々の潜在意識が、統計に表れているわけだ。しかも、プリンタの低価格化が進めば、ネットの記事はいつでも紙にできる。最後の砦と思われている株式欄さえ、いつの間にか征服されているかもしれない。
 ヨーロッパで発行部数を急拡大する、『メトロ』や『20ミニュット』といった無料新聞(フリーペーパー)も、それらの動きに拍車をかけている。
 気付いたら、すべての新聞が無料新聞となっている可能性もある。
 
 もっと厳しいのはテレビである。一定の購読料収入などでコストをまかなえる 新聞や雑誌と違い、収入のすべてを広告に依存するテレビは、コンテンツ制作を 番組製作会社やCM製作会社、局本体などに分けていながら、それらをセットで視聴者に提供し、広告収入は別の企業体などから受け取っている (しかも広告会社を仲介して)。このようなビジネス・モデルが、今後通用し続けるはずはない。
 情報操作が、国際政治・国際ビジネスにおいて重要なことは解っている。国連でフランス代表に送られた熱烈な拍手は、確かにCNNによってカットされた。だからといって、根に持って国際ニュースを国費で作り始めたフランスは、本当に政治的な成果を出せるだろうか?
 米CNNや英BBCですら、国際ニュース部門は年間数十億円の赤字なのに? BBC国際ニュース部門の年間赤字だけで、日本のNHK国際ニュース部門の年間総経費に匹敵する。CNNは数字を公開していないが、赤字額はBBC以上と言われている。世界最強のTV局である彼らですら、この有様だ。いずれ、国際ニュースはブログのみで見て、テレビは バラエティとスポーツだけを、バック・ミュージック的に流す役割に なるかもしれない。
 第一、フランスには、英米のように、赤字を押してでも国際情報を操作しようとするスポンサーがいるのか?
 むしろ、高額の契約料を払わなければ読めない、同じフランス系の高級雑誌に倣って、「有料放送」をこそ、彼らは目指すべきではないだろうか。思えば、武器ロビーの完全支配下にあったフランス・メディアから独立した情報ソースを求めて、ル・モンドと読者・編集部が出資して『ル・モンド・ディプロマティック』が作られ、それにすら飽き足らない市場はメディア・コンプレックスの怪物たち(シンクタンクや討論会・有識者会議を兼ねた存在)を生み出していったのだった。今ではフランスはかつての逆、つまり 「真実が最も入手しやすい国」 となっている。
 
 高度な情報入手ルートを持たず、もし入手できても、報道することは許されていないテレビ局や新聞社が、国家や大企業の利権が絡む、重要な国際ニュースを報道しようなんて、始めから 考え方がおかしい。
      /某高級誌編集者
 
 ニールセン・メディア・リサーチによると、平日夕方のテレビ・ニュース視聴率は、80年代には、3大ニュース局(NBS、CBS、ABC)で 「最低」でも10%を切る局がなかったのに、今では「最高」でも7%台を下回る。
 悪あがき的に、テレビ局は、自分の持てる人材と技術資産を駆使してネット・メディアに生き残りを賭けている。
 ABCは2004年にネットを利用した「ABCニュース・ナウ」を開始、2005年にはCNNがネット向けライブ・ニュース・チャンネルを開始したが、これらの試みはいずれも、まったく成功するとは思えない。彼らには、テレビ以外のメディア媒体に関する技術的蓄積がないのだ。
 日本の大手民放はそれ以上に、馬鹿げた挑戦を準備中であり、テレビ画面でインターネットを利用できるようにするのだと言う。逆なら分かるが、あんな大きな画面で、ノートパソコンと競争するのだろうか?
 それ以前に、技術的な部分で、特にテレビ局が得意とするキラー・コンテンツの映像流通にインターネットが弱いことは周知であり、広告・ソフト面も弱い。
 TBS、フジ、テレ朝が共同設立したトレソーラ(動画配信会社)が人気ドラマなどをイベント配信した時も、事業化を早期断念するしかない極端な不振であった。ちなみにトレソーラ(今も存在するかは知らない)の社長だった原田氏(TBS執行役員メディア推進局長)自身、インターネットが映像コンテンツの流通に弱いことを認めていた。
 テレビ局のこのような不甲斐なさは、広告主が直接メディア界に参入するという事態を招いている。これまで広告主であったP&Gが 自社直営で「ホームメイド・シンプル」というオンライン雑誌を運営、コカ・コーラも自社で「マイコークミュージック(www.mycokemusic.com)」という音楽ダウンロード・サイトを運営し始めた。
 
 クライアントとメディアと広告会社を隔てるバリュー・チェーンの境界線は消えつつある。
       /ランドール・ローゼンバーグ(広告アナリスト)
 
 そんな連中よりもずっと重要なのは、世界最大 (というより 「すべて」 と言ってもいい) の検索サイトである グーグル の存在である。いまのところグーグルは独占禁止法の作動を恐れて多くを語らないが、その立場はかつてのマイクロソフト(コンピュータ・ソフト)、ロックフェラー(石油)、AT&T(電話回線)、グラマン(航空管制システム)以上に、「無敵の状態」である。ネット会の弱者集団であるマイクロソフトやYahooが定石通りに手を組んだとしても、まったくライバルにはならない。
 グーグルは他人に 「選んでもらうコツ」 に通じた彼らならではの理論で、最強の男たちと水面下で 「白騎士」 「黒騎士」 契約を取り付け、アマゾンと同様、株主やホワイトナイトを大手ヘッジファンドの系列で固めている。
 技術買収やM&Aにおける騎士たちの支援は絶大だった。資本規模からは想像できない工作を続ける背景には、強力なナイトたちの顔ぶれがあった。例えばAOLはワーナーの完全子会社と思われているが、グーグルは昨年末AOLの大株主となっている。これによってAOLのコンテンツをGoogleのWebクローラーがよりアクセスしやすいようにできるほか、動画検索においても協力を迫られるのは必至。AOLのプレミアム動画サービスをGoogleVideo内で展示することも可能だ。さらに水面下でアメリカの衛星テレビ放送大手のエコスター・コミュニケーションなどと急接近、テレビ広告の仲介事業に参入すべく着々と効果的な提携を準備中だ。こうして、インターネット、新聞、ラジオ、テレビ、つまり主要媒体すべてに広告を配信する体制が整う。彼らは満を持して2006年1月。ラジオ広告会社を買収した。みずからの手で広告し、自らの手でニュースを報道できる体制を、着々と進めている可能性がある。
 最も侵食がj簡単なのはテレビだろう。彼らはインターネット広告で培ったノウハウを活用し、競売方式で広告枠を販売するかもしれない。
 だとすればテレビ広告のシステムそのものが完全に崩壊する。広告主は放送地域や番組名などを特定して競売に参加し、最も高い広告単価を提示した企業が広告枠を取得するシステムが、未来の広告システムとなる。視聴回数の計測には、衛星放送の加入者宅に設置された受信装置が使用されるだろう。広告主に視聴回数など広告効果を報告し、広告料を、広告仲介会社や番組供給会社と分け合う未来が、はっきりと見えるではないか。
 
 私たちのサイトを訪れた人々を、いかに素早く、的確に、目的の場所へ辿り着かせるか。それ以外のことに関心はないよ。
     /ネイサン・ストール(グーグルニュースのプロダクト・マネージャー)
 
 Googleが、みずからの手でニュースを報じようとしても、どうして驚くことかね?
        /メリル・ブラウン(メディア・コンサルタント)
 
 Googleの利権者たちの顔ぶれを見れば、Googleが30文字以上の社名のアンシュタルトでないことに驚きを感じるわ。逆に、いつGoogleがクレディ・スイスやUBSのような事態になっても、わたしは、いえ世間だって、少しも驚かないんじゃない?
        /某高級誌編集者
 
 結局のところ、通信業者(携帯電話会社、テレビ局、プロバイダー業者)にとっても、「コンテンツ(メディア媒体を通じて伝えられる作品。映画、音楽、小説、スポーツの試合、バラエティ、ニュース)」 提供業者にとっても、最も重要なのは「アルゴリズム(言語選択習性)」だ。特に、国際ニュースや検索サービスといった世界的なビッグ・ビジネスに、この傾向が顕著である。
 グーグルはニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)の学生が開発したテキスト検索技術Orionを買収し、その開発者を登用してOrion開発プロジェクトを進めている。昨年9月のプレスリリースでは「Orionは検索サービスを補完するために設計されている」というだけだったが、このエンジンは重要な武器となる。通常の検索エンジンは検索キーワードを含むWebページを抽出するが、Orionは検索キーワードと関連性の高いトピックを持つコンテンツを特定、ページのセクション単位で検索結果を返す。また、検索キーワードに関連するトピックもリスト表示する。この技術により、ユーザーは検索エンジンから個々のWebページにアクセスしなくても情報が取得できるようになるという。
 恐らく2011年頃には、特殊なアルゴリズムを用い、サイトやブログ、ブログのコメントなどを抽出してそれを新たな記事にするというロボットを、現在の検索ロボットと同様に、完成させてしまうのではないか。
 そして、もう一人の独占者であるアマゾンのベゾフ会長の思考回路はどうだろう。ヘッジファンド・グループに勤務した経験を持ち、ヘッジファンドやインベストメントバンクのM&Aスタッフに強力なコネクションを持つベゾフ会長は、自分たちが持つ独占的分野と、グーグルが持つ 「検索」 などの独占的な分野を提携すれば、夢の (あるいは恐怖の)「進化型パーソナライズ情報構築網」の形成を、2016年頃には期待できるとのグランド・ストラテジーがないだろうか?
 
 私の悪いクセが出てしまった。 「過去からの狙撃手」 は、気軽に未来を撃ってはならないのだ。
 
新型ブログの蹂躙! そして 1.
 
 驚異的に勢力拡大するブログが、マスコミのルールを根底から変えつつある。
       /ニューズウィーク誌
 
 ブログが、ニューヨークタイムズのような大手メディアと対抗できるようになったのは重大な変化だ。
   /ジェフ・ジャービス(メディア企業オーナー)
 
 ブログはその破壊力を、既存メディアに赤っ恥をかかせる形で示し続けている。
   /ニューズウィーク誌
 
 法律的には 日記 であるために 報道規制 をほとんど受けない ブログ が、テレビ・ニュース や 新聞 を殺すのは、まさに 時間の問題 である。 
 
 2004年9月。CBSがブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑を報じた際、その証拠となったメモが 「ガセ」 であることを ある強力ブログが ブログ上で立証・責任追及し、看板キャスターのダン・ラザーをプライムタイムのニュース番組から降板させる。
 2005年2月。CNNのニュース部門最高責任者のイーソン・ジョーダンは、世界経済フォーラムでの失言を、ある強力ブログによって執拗に追求・非難され、辞任に追いやられた。この発言は非公開の場でのもので、しかも軽口的な内容だっただけに、強力ブログの破壊力をまざまざと見せ付けられる結果となった。同じように、攻撃的な強力ブログの「スモーキング・ガン(www.thesmokinggun.com)」も、些細なウソを追求して人気トークショー司会者のオプラ・ウィンフリーを謝罪させたりしている。
 2005年3月。ホワイトハウスの定例記者会見 に、ついに、強力ブログ「フィッシュボウルDC(www.mediabistro.com/fishbowldc/)」の運営者、ギャレット・グラフが出席した。記者証申請の段階からホワイトハウスはおびえまくり、大手メディアの担当記者が数多く所属するホワイトハウス特派員協会に相談、記者証を発行した。グラフは5回ほどホワイトハウスを訪れたが、「退屈だな。記者発表はラジオで充分」 と一蹴、もうホワイトハウスには行かないと言う。
 
 30年前にブログが存在していたら、ディープスロートの正体はとっくに彼らの手で明らかにされていただろう。
    /ニューズウィーク誌
 
 アメリカはおそらく、世界で最も自由な国だ。言論統制など どこにもない。
  だが、大衆心理は簡単に動かせる。彼らを テレビの前に座らせ、スポーツや コメディや 暴力映画を見せておいて、時々、ただし繰り返し、誘導したい方向にニュースやメッセージを 流せばいいだけだ。
 反面で、そうした事を知ってしまっている人間には、なんの効力もない。
    /エイブラム・ノーム・チョムスキー(マサチューセッツ工科大学教授)
 
 1961年、ニューヨークタイムズが、ケネディ大統領の要請でキューバ侵攻作戦に関するスクープ記事の掲載を見送ったことは、広く知られている。2004年にピュー・リサーチ(シンクタンク)が行なった調査では、アメリカで 「新聞やテレビのニュースが信用できる」 と答えたのは たった9%だった。
 アメリカですらそうなのだから、日本やイタリアといった情報後進国 (闇社会の人間が正体を隠さずに生活できている理由でもある) では もっと、テレビや新聞の信頼がない。
 TBSでキャスターだった田英夫は例の 「ハノイ・レポート(反米論調)」 で自民党にクレームをつけられて降板させられたワケだし、日テレが制作した 「南ベトナム海兵大隊戦記」 は、第一部が放映された後に自民党からクレームがつけられ、以降が放映停止となった。
 イタリアのメディアは イラク戦争をめぐり、テレビ局8局(公共3社、民営5社)のうち7局までが 完全なアメリカ寄りに 「宣伝」 活動を繰り返す一方、大手新聞の 『イル・コリエル・デラ・サラ』、『ラ・スタンパ』、『レ・パブリカ』は、いずれも反戦一色で、互いのオーナーの利権と意向を宣伝しあった。
 オセアニア (オーストラリアのニューズ・コーポ) のルパート・マードックと、アメリカ (CNN) のテッド・ターナーが 「TVメディアの覇権」 を争う様子は 世界中に報道されたが、戦う相手に有利な報道をする会社など、有り得ない。
 
 人々の、リアルディール(正真正銘の本物を示す諜報世界の隠語。反対語で一般世界をワンダーランドと呼ぶ)の情報を渇望するスタンスは、いまや爆発寸前にエスカレートしている。
 高級雑誌、高級メルマガはもはや、マーケットの世界だけの ものではない。
 2003年3月に 『ル・ヌーブル・オプセンドール』 が、「ブッシュとシラク、離婚確実」 と報じたことは その後のヨーロッパの政局や米仏関係を決定づけ、『ル・ヌーブル・オプセンドール』 はイラク戦争当時、各国政府をマトリックス的に採点していて、その中で日本について、「唯一アメリカを支持した国。ただし国民は戦争に反対した」 と的確で明快な説明をしているのが印象的だ。
 そして これらの高級誌が 「日記」 である ブログ にリークしている場合、面白くないハズが ないではないか。
 
 ブログが真に怪物化する時とは、我々がそれを手掛けた時さ。
    /某高級誌コラムニスト
 
 NBCニュースの副社長マーク・ルカシェビクスは、「わが社の経営陣の一人は、自分たちの仕事はTVニュースを作ることだと考えるのは、もうやめようと言っている」  と語る。
 実際、NBCを代表するニュース番組 「ナイトリー・ニュース」 の看板キャスターであるブライアン・ウィリアムズみずからが、ブログを執筆しているのだ(http://dailynightly.msnbc.com/)。
 ニューヨーク・タイムズのニーセンホルツは、「ブログにはイラク戦争を取材したり、役人の腐敗を追及したりする組織力や資金力がない? なるほど。じゃあ、そうしたものを持つブログが現れたら?」 と 既存メディアに警告する。
 いまや、マンハッタンに通勤するモントクレアやブルームフィールド、グレンリッジの人たちが最も信頼するニュースは、元ニューヨークタイムズのコラムニスト、デビー・ギャラントが2004年の5月に開設したブログ 「バリスタネット(www.baristanet.com)」 のニュースであり、テネシー州ナッシュビルのテレビ局WKRNの総支配人マイク・セクリストは、地元の強力ブログ運営者であるブリトニー・ギルバートに、テレビ局直系サイトの運営を一任、他局を おびやかしている。
 全米最大手クラスの新聞、(フィラデルフィア)デイリー・ニュース紙は、「瀕死の状態」とアナリストにレッテルを貼られているが、先月(2006年2月)の12日、同紙オンライン版エディターのバンス・ラムキュールが 日曜の数時間のヒマに、「ディック・チェイニーとウズラ狩り」というゲーム的サイトを作ると、木曜日までにアクセスが20万件を越えた。
 同紙シニア・ライターのウィリアム・バンチは、「80年の歴史を持つこのタブロイド紙は、生きるか死ぬかの瀬戸際だ。人員削減で空いた机が目立つ編集部は、まるで中性子爆弾でも落ちた後みたいだよ」 と語るが、1年前にスタートした自分のブログ(www.pnionline.com/dnblog/attytood/) が早くも 1日に約1万件のアクセスとなっており、親会社のナイト・リダーを、臆することなく 過激に攻撃する。
 
 情報レベルだけの問題ではない。
 新聞やテレビに出る程度の情報であれば、少しぐらい情報が伝わるのが遅くても、構わないはずだ。同じニュースソース (情報源) でも、よりシュールな視点で、卓越した角度と独自のアルゴリズムで切り込み、そして血沸き踊る文体と技巧的文法テクニックで語りかけてくる、「新型の爆弾ブログ」 がある場合、そうでもない新聞やテレビが、勝てる道理はない。
 
 書き手が匿名のまま一大ムーブメントとなった「TVニューザー(www.mediabistro.com/tvnewser/)」にしてもそうだが、今、最も人気のあるサイトの多くは 「ニュース・アグリゲーター」 と呼ばれるサイトだ。独自の視点でブログや新聞、雑誌からニュース記事を集め、トピック整理したサイトである。
 こうした流れに いつまでも逆らうのは、既存メディアにとっても得策ではない。特に アメリカにおいては、得策でない手法を経営者が続行すれば、株主たちによって経営者はクビにされる。
 ニューヨークタイムズは、新聞そのものにブログ機能を取り入れ、「セレクト」という有料会員がコラムの意見を書き込めるようにした。
 ワシントン・ポストも新聞にブログ機能を取り入れ、一部のコラムニストのコラムを連載ブログ形式にし、読者からのコメントなどにも返答する。そして2005年1月には最初のブログを開設、いまや自社のサイトに30本のブログを運営する。
 いまやシカゴ・トリビューンやLAタイムズも、コラム欄とは別に公式ブログを運営しているのである。
 
 私の このブログと同様、ブログの読者が、株主のように強力なシンパとなって運営者と共同体を形成する部分も、ブログが他のメディアと違う部分だ。IT関連ニュースを扱う「ディグ(www.digg.com/)」などは、どの記事を先に掲載するかを、読者の投票で決める。
 
 先月(2006年3月)NBCは、登録者が1500万人を越える有力サイト、「i ビrッジ」を6億ドル (約700億円) で買収した。
 昨年10月には、AOLがウェブログズ(複数のブログを運営)を買っており、7月には世界最大のメディア・グループである オセアニア (オーストラリア) のニューズ・コーポが、5億8000万ドルで 「マイ・スペース(登録者2000万人以上)」 を買収した。
 NBCはその 「マイ・スペース(ティーンに強い)」 を、ニュース番組の中で  「テクノロジーに弱い両親が知らない、サイバー上のティーンの秘密空間となっている」 と紹介し、多くの学校が、ファイアー・ウォールでアクセス遮断措置を進める。だが 「テクノロジーに強い」 ティーンにとって 「空き地のロープ」 程度の存在でしかないのではないか。
 冒頭文で言葉を拝借させてもらったジェフ・ジャービスは、自らのブログ 「バズ・マシーン(www.buzzmachine.com)」 で、「メディア論」そのものを 高らかに発信し、メディア企業の戦略を指南する(このページのように)。
 もはや 新型の爆弾ブログと、それを取り巻くムーブメントは、かつて 我々が起こしてきた数々のムーブメント同様に、すべてを吹き飛ばすように設計されている。
 
 我々は、既存メディアのニュースを殺し、その功罪を、子供のように一切省みることなく、「現在」 と、「明日」 を、模索する!
 破壊の影に出現する 弊害と、数々の憎悪、そして反論を、力づくでねじ伏せ、我々の哲学とフォースを、提示しよう!


dd_freak at 23:50|Permalinkclip!