2006年04月02日

アルスラーン戦記11巻 魔軍襲来

 古参の読者にとっては不死鳥のごとくよみがえったかのように思えたのではないかと想像する11巻。
 世界各地に広がった登場人物たちが章ごとに主人公として活躍する。並みの技量の持ち主がやったら、すべてが尻切れトンボでつまらなくなる危険があるのだが、そこは田中芳樹先生。まるで良質の短編集であるかのように物語に緩い関連性を持たせながらも、それぞれを興味深くしあげている。
 うがった見方をすれば主人公であるアルスラーンに物語を突き動かすだけの個性も意欲もないために、彼に状況を次々と与えなければならず、されどザッハーク視点で書くのも苦しいので、外伝を見るような形式になっているのだろう。

 ヒルメスの話が書いていて一番楽しいのだろうと紙面から感じる。人間の器うんぬんの話はもう聞きたくない気分なのだが器が大きすぎも小さすぎもしない設定でキャラクターを立てているヒルメスは悪くない。でも、蛇足の感は否めず、後3巻で核心に影響を及ぼせるまで話が収束するのか不安が残る。

 タイトルにある妖魔の軍勢が(指輪物語にインスパイアされてそうだけど)おどろおどろしさとしっかりした質感をもって描写されているのは好印象。この手の相手と集団対集団で戦う話は難易度が相当高いと思うのだが巧くやってくれるのだろうか?そして、それ以上に次巻がでるのかが心配。

魔軍襲来 ―アルスラーン戦記(11)

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 「アルスラーン戦記」1??11/田中芳樹(カッパノベルズ)  [ 乱読家ノススメ ]   2006年04月15日 22:43
 以前は角川文庫だったのですが…どんな事情でこちらに替わったんでしょう?
2. アルスラーン戦記11『魔軍襲来』  [ お千代の本棚 ]   2006年04月15日 23:15
田中 芳樹 魔軍襲来 ―アルスラーン戦記(11) 前巻の発行から約6年。『やっと』でました。 その間に出版社が変わり、判型が変わり、イラストレーターも変わりました。 前巻までの話をすっかり忘れていたので、新刊を読む前に復習しました。多分、そういう人は...

この記事へのコメント

1. Posted by    2012年05月05日 09:22

 新展開の最大象徴と言えるのは、やはりフィトナでしょうね。

 今までのヒルメスに最も欠けていた「女」と「頭脳」の二役を兼ねるというだけでなく、あるいは「アンドラゴラスとタハミーネの娘」かもしれないという部分も強烈で。

 ファンの一部には、独身のままのアルスラーンの死後、彼らの子孫がパルスを継承するだろうというのが有力ですが果たしてどうなるか。
2. Posted by こいん   2012年05月05日 12:32
「ファンの一部には、独身のままのアルスラーンの死後、彼らの子孫がパルスを継承するだろうというのが有力ですが」
 こうなったらアルスラーンとは誰だったのかと思ってしまいそうです。
 父の本拠地を失いながら紆余曲折の末に子孫がマケドニアに王朝を開いたデメトリオスを思い出しました。
3. Posted by 陣   2012年05月05日 17:18

>こうなったらアルスラーンとは誰だったのかと思ってしまいそうです。

 だからこそ伝説になったという感じかもですね。

 ヒルメスがたまたま使った「クシャーフル」という名前も「彼自身はなっていないが子孫から何人も名君が出ている」人物の名から取っているわけで。

 ただしフィトナが本当に「アンドラゴラスとタハミーネの娘」だとしたら、ヒルメスとは「叔父と姪」の関係になってしまうので、その辺りも注目ですが。
4. Posted by こいん   2012年05月05日 17:38
 確かに、一代限りで多大な覇業と後世への影響を遺して、世を去っていく王と考えると伝説に彩られざるをえない感じがします。
 なんという綺麗な劉禅……。
5. Posted by 陣   2012年05月05日 18:41

 あるいはアルスラーンはザッハークとの戦いで死ぬかもですが、その最後はやはりタハミーネとの対面かもですね。

 「母」と「子」の最後の和解が成るか否かも絡めて。
6. Posted by    2012年05月06日 23:22

 それにしてもアルスラーンが子孫を残さず死んで困るのは部下や国民ですからね。

 ルシタニアとギスカールの関係もですが、あるいはナルサスが自分から三顧の礼を尽くしても、ヒルメスを呼び返さなければならない羽目になったりして。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
今月のイチ押し
Recent Comments
スポンサードリンク

おもちゃ/ ぬいぐるみ/VOCALOID3 MAYU団子 コスプレ道具小物 アニメ/コスプレ/アニコス


profile
永遠に覚醒しない楚の荘王

漫画を愛する心に卒業なんてないんだ…

趣味
 読書、作文、漫画、写真、天体観測、石集め、歴史(古代欧州、三国志、日本戦国時代)、ネットサーフ、その他たしなむ程度にいろいろ。
そして、このブログ

このブログへのトラックバック、リンクはご自由に。
トラックバックは可能な限りお返しします。どんなに古い記事でもトラックバック・コメントをいただければ喜びます。

更新の目安…かも
月:ジャンプ感想
火:月刊漫画誌感想
水:サンデー感想
木:チャンピオン個別感想
金:チャンピオン感想
土:漫画単行本・マガジン感想
日:漫画考察・Web漫画紹介