2006年11月12日

VINLAND SAGA(ヴィンランド・サガ)1巻 幸村誠

 週刊少年マガジンに載っていたころのヴィンサガだが、一話などは連載というより読切に対するような姿勢で描かれているため全てのシーンに見応えがある。兵士ひとりひとりの動き、地形の端々にいたるまで作者の精神が行き渡っており、鑑賞に耐える。存在感から彼らがそれぞれの人生においては主人公である、それを信じられるのだ。
 反面、主人公の押し出しは弱くなってしまっている。前半においてはアシェラッドが、後半においてはトールズが事実上の主人公なのだが、彼らの人生を貫く哲学にまでこの時点では踏み込んでいないから、トルフィンの冷たい目を通して展開される淡々とした世界の観が強い――それはそれで歴史の本質かもしれないが。
 まぁ、戦乱と社会制度に苦吟する世界は伝わってくるので、失敗ではないのだろう。やはり問題は週刊少年誌に載ってたことだな。

 一話のフランク族の砦攻めは圧巻のシーンが多くて映画のようだった。時代が下って戦いが洗練され、また文化的に近い相手としか戦わなくなると、ああいう殲滅戦ではなく捕虜をとって賠償金をえる「名誉ある戦い」になっていく。まぁ、馬上槍試合などは規定の多い殺し合いの面があるので、こちらを野蛮のひとことで一概に済ませるものでもない。作品のテーマ的に惜しいことに何故か描かれていないが、奴隷の獲得も戦争においては重要だ。
 砦を奪わなかったことをありがたく思えとアシェラッドは豪語する。はじめは略奪に専念していたヴァイキングだが、このころは居座って領土をえるようになっている。ノルマンディーなどは言葉どおりノルマン人の土地だったわけで。

 後半からは歴史漫画に当然のようについてくるダックスフントように長い回想シーン。レイフ・エイリクソンは人類で二番目の新大陸発見者。コロンブスの先駆者だ。もっとも偉大なのはベーリング海峡を歩いて渡った人だと思うけど。
 ハーフダンのトールズへの態度が気に入らない。しょせんはゴロツキなのに偉そうに。ちなみにアイスランドでは豪族同士の戦争が起こったことがあるはず。動員兵力は100人単位でしょうもないレベルだけど――生きていくのに必死で、殺し合うだけの余裕もないのだ。良くも悪くも。
 豊かな土地に移り住んでも余剰人口が生まれれば、けっきょく争いが巻き起こる。その重い鎖まで視野にいれながらトルフィンは楽園を求めるのだろうか。

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ヴィンランド・サガ 1 (1) (アフタヌーンKC)
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