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 伊良子清玄の人生はひとつのデコピンになるために存在した。
 あの構えが完成形ならば、それがひとつの真実であろう。意図するところは要するに力を釣り合わせて瞬時に解放することなのだから。そういえば、るろ剣に手で刀身を挟んで力を溜めて斬る技があったな、詳しい解説はされていなかったけど。
 盲目剣士、伊良子の問題は測距方法だが、聴力だけでもなんとかなるか。素足は地面の振動を感じるための工作でもあるかもしれぬ。左右に回り込まれる危険は無視。武士道以前に奇怪な構えの上に回り込み対策があるようなら、仕掛ける側はなすすべなく切り倒される。読めない裏の裏を受けるよりは、やることは理解できる正面攻撃で勝負した方がましだ。
 まぁ、石でも拾って投げればいいんじゃね〜の?
 藤木源之助が隻腕で骨が斬れないと言われているのは、対象に対して「刃が立つ」ようにできないってことだけど、斬れないなら撲殺すればいい。そもそも人を斬るなんて贅沢は敵をぶち殺した後に脇差で楽しむべきではないか、突くならまだしも。


 この冒頭の破足・盲目と隻腕の剣士の戦いがクライマックスであることがはっきりと分かり、ハンディを背負ってもなおかつ超絶テンションの邪魔にならない。これほどの技量をみせられると嬉しくなるね。決闘の続きが気になる問題は、回想に引き込むことで補われている。
 つまり一歩間違えばどうしようもなくグダグダになるプロットを、剃刀の上を走るようにこなしてしまうんだから、尊敬を通り越しておしっこ漏れちゃう。

 斬り合いシーンに挿入される白昼夢のようなシーンは映画でも見かける手法だが、一瞬本当に起こったことのように引き込まれ、現実に引き戻される感覚が強烈。気圧の違う空間に叩き込まれるようだ。
 ストーリーは典型的なお家乗っ取り復讐劇を踏襲しながら江戸時代社会を反映したスパイスがあまりにも舌を痺れさせるがため、まったく別の味がする。ミラクルフルーツが混入されているのかもしれない――たぶん男の尻らへん。
 正ヒロイン岩本三重の男尊女卑社会に生きながら、全てを睥睨しようと思い詰めているような態度も魅力的だ。自分が道具であることを理解しながら人としての誇りを決して捨てない。

 武士道とは死ぬことと見つけたり、と葉隠に言うけれど実は続いて「生死を見極めろ」とか「毎日、死ぬ気で生きろ」とか書いてあるわけで単純に死ねと言っているわけではない。今の私は「死んでからが人生」と要約する。
 しかし、シグルイの追求するところはもっと深くて、全てを失い「死してなお死を求めよ」とさえ言っているような……難しい狙いがあるようだ。

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