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寄る辺の海
 陰に橙馬のいる部屋で、へとへとになった可奈が寝転がっていたシーンは積極的に誤解したくなるものがあった。いや、あの元気超人が5km程度の遠泳で疲れるわけがないから、疲労の原因は複合的と考えるべきか。いつも握られている主導権を取り返すために事件にかこつけて相手の体力を奪っておく橙馬、おそろしすぎ……。
 などと妄想を逞しくした。夏はいいね〜。
 比べて小さな方の事件は地形の変化と複合している事が興味深い。あまりに侵食が進行すると砂浜を諦めてテトラポッドを置かざるをえなくなるだろう。一時の海水浴客が望めても、このままでは先行きは暗いな。
 馬岩近くの水深はどれくらいあるのかな。あのトリックは水深が足りないと証拠が見付かってしまうので余程深いのだろう。それでも丹念に調べれば油が浮かぶのを発見できた可能性がある。
 捜査能力を初動の駐在さんにとどめたり、被害の連鎖をさりげなく回避している手回しの良さがあったり、ミステリ漫画の駄目セオリーを上手く外している。若気の至りと後悔の密接な間柄を思い出させる夏らしい話だった。

冬の動物園
 怨讐に満ちた殺人であるのに、その象徴ともいえる幽霊の存在によってどこまでもコミカルになってしまっている裏返った事件。そもそも非科学的な幽霊がまともに使われるはずもなかった。
 あれは可奈のプレイバシーを侵害しまくっていたが、羨ましい殺人よりもその罪の方が重く感じられる。つまらないものでも自分のネタが盗られてしまう悲しみは何となく分かるなぁ。大御所が書いてしまえば、つまらないものでも売れちゃう現実も……。
 一流のミステリ作家といえども――いや一流のミステリ作家ほどつまらなくて「こりゃ駄目だ」と思えるトリックを無数に死蔵しているはずで、冷蔵庫の残り物で三品おかずをしあげてしまうベテラン主婦的技量を感じさせる、見事な有効活用の可能性をみせた話だった。
 まぁ、たまにはよかろ。


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