2008年05月04日

将国のアルタイル1巻 カトウコトノ

 戦雲に血沸き肉踊り食いされる架空政治力学ファンタジー漫画。うら若きトルキエ将国のパシャ、犬鷲のマフムートが隣接するバルトライン帝国との間に巻き起こった政治的緊張を緩和するために苦闘する。
 彼の口先だけではなく本気で平和を求めている姿勢がすこぶるいい!将軍とは前線でバッタバッタと敵の雑兵を切り倒すだけの職業ではなく、極めて重い政治的責任を負っているのだと真剣に感じさせてくれた。
 気楽に殺し合いなんかしちゃいられない。だから「気重」に殺し合いをする必要に迫られるわけで、全身全霊を振り絞ったマフムートら諸将の軍略が私のような不謹慎な戦争狂をますます悦ばせてくれるわけだ。
 悪いとは思うんだけど……やっぱり愉しい、戦争は愉しい。


 主人公が属するトルキエ将国は将軍にパシャと読み仮名がつくように西アジア風の国家だ。だから登場人物の衣装もきらびやか。カトウコトノ先生の絵柄が繊細でいて強烈な風格を漂わせるものだから、まとうものが鎧ではなく布であっても映える映える。将軍たちにつく二つ名もいちいち決まっていて威厳を増していた。
 ちなみにマフムート飼う犬鷲の名前であるイスカンダルとはペルシア地域でアレクサンドロス大王を指す単語だ。犬鷲の将軍の強みはこのイスカンダルの分だけ常に一つ多くの手を持っていることだろう。

 敵であるバルトライン帝国はわりと「まとも」な西洋風の腐敗した巨大国家(東ローマ帝国あたりがモデル?)なのだが、通商を主要産業とするトルキエは将国の名の通り一風変わった十三人の将軍による統治体制をもっていて興味深い。軍での昇進が権力に直結するならば、功績をあげるため無闇に好戦的になった少壮軍人たちに国家を牛耳られてしまいかねない気がする。
 その弊害を食い止めている方法が描かれるなら期待したい。まぁ、12年前にも帝国との衝突があったことが匂わされているので反動から平和主義が一時的に力を増しているだけかもしれないな。古代ローマ帝国の軍人と似て官僚的な側面が強い影響や、まともな軍人は下手な政治家や民衆より余程戦争に慎重なこともあろう。
 開戦派のザガノス将軍も自分なりの見識から戦争やむなしの姿勢になっている様子が窺えるから素敵だ。

 たしかに帝国と将国の国力差は10対1以上とされているうえに、国境の砦ヒサールを抜かれると首都アルトゥンまでに防衛線が構築できないトルキエの状況は危険すぎる。交易で食っているのに二本の大街道が交差する首都を攻められてしまったら国が立ち行かない(主要な交易相手国であろう帝国を敵に回してしまう時点であまり好ましくないけど)。
 だから負けないように戦うならヒサール正面を主戦場にして帝国主力を引きつけ、帝国領側にある山岳地帯でゲリラ戦を仕掛けたいところだ――マフムートらと一幕あったアラバ族がその周辺に多く住んでいるのが伏線に思えてきた。もしかしたら「将国のアルタイル」が為すべき仕事は明石大佐やアラビアのロレンスに近しいのではないか。


 などなどイロイロ愉しく考えさせてくれる創り込みに優れた作品でもある。新人離れした完成度と新人らしい入念さが両立している点がどこまでも魅力的だった。
 そして、退廃的で妖艶な女公爵レレデリクたまや、セクシーでスパイシーな踊り子シャラたんなど辛抱たまらんものがある。本当に本当に辛抱たまらんものがある。
 無論、内に秘めたる強固な意志と時折垣間みせる幼さを併せもつ犬鷲のマフムートきゅんにもメロメロずっきゅんさ!!

将国のアルタイル2巻感想
将国のアルタイル3巻感想
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将国のアルタイル 1 (1) (シリウスコミックス)
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それにしてもシリウス連載のアルタイルとは捻りが効いている…

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非戦だったマフくんが屍の上に立つようになってしまったか……


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