タイトルがダジャレになっているとおり、ひたすらカレーを題材にした料理漫画。折り返しで作者自身が語っているようにカレーの範疇は異常にひろく、世界各地で住民の味覚にあわせて変異を遂げたりしているから、そう簡単にネタ切れする雰囲気はない。
 それでもひたすらひとつの料理にこだわるのは凄い。食べる側の反応も幅が限定されてくるだろうに、良くやるものだ。反面、身近で親しみのある料理だからどのカレーも美味しそうにみえ、お腹が空くだけではなく、時には作ってみたくすらなるのだった――レシピも載ってるし。

 主人公の高円寺マキトの料理に対する姿勢がなかなか興味深い。彼はともかくカレーを作るのが楽しい男で、客によって求める味覚が違うことも腕をふるわせてくれるハードルとして喜々として歓迎している感じだ。
 万人向けの究極の味なんてものを持ち出さず、ともかく柔軟にお客さんの判断に委ねている――一徹な本格派カレーの味を追求して店を傾けた彼の友人曽根崎とは対照的だ。その姿勢がカレーという狭いジャンルの中で多様性を求めていかなければならない、作品の状況にかなっているのが面白い。

 だのに、1巻の後半ではエクストリーム料理対決になってきているのは料理漫画の業か……?
 敵側の妨害工作をうけたマキトは腕を切られて重傷を負ったにもかかわらず、出血を推して料理を続ける。それだけならまだしも、「スゲェ敵ながら大したヤツだ…絶妙のタイミングで腕を振り(血を)カレーには一切飛ばさない…後ろだけが…血の海だ!!」という変な評価を受けてしまうのだから静かに狂っている。
 あれだけの血を撒き散らしたら刺激的なカレーといえども血臭漂う中で食べなければいけないはずで、タンク篠崎はともかく他の審査員は辛かったのではないか。とくに盲目の対決相手の妹は、血の臭いとカレーの匂いがむせかえる場所によくやってきたもんだよ。
 などなど楽しく突っ込ませてもらった。


 漫画のスパイスとしてお色気シーンも豊富だ。実に柔らかそうな女体を描いている、タンク篠崎を含めて……。

華麗なる食卓 (1) (ヤングジャンプ・コミックス)
華麗なる食卓 (1) (ヤングジャンプ・コミックス)