2008年08月26日

将国のアルタイル 14fasil 黒鉄の鎖

 ホント、マフムートきゅんは何を着せても着せなくても様になるわ……しかし、あれじゃあまだまだ不十分。完璧を期すならこのゴスロリ服を……ハァハァ!コレならもし捕まっても命より先に貞操に危険が迫るだけで済みますよ。
 包囲網突破のために同志キュロスが揃えた人員は彼の悪友たちだった。そのピクニック気分がマフムートやキュロスが生きる世界が同年代と全く異なったものになってしまっている現実を突き付ける。まぁ、彼らも否応なく開眼させられることになりそうだけど。
 注目株の黒髪娘がキュロスにゾッコン惚れ込んでいることが判明……あまりいちゃいちゃしていると城壁からの矢に貫かれるぞ?しかし、彼女さえ連れ出せればポイニキアに名残惜しいものは何も残るまい。私があんな睦言をささやかれた日には即効押し倒して×▽○――。

 そ、そういえば開戦時にポイニキアに滞在中だった帝国人の扱いはどうなっているのかな?
 寛容にうるさい副市長が極端な行動を許すわけはないから、彼らもまた一つの不安要因になってくる。湾内に船を浮かべてその中に隔離するのが一番だと思うけど、兵士たちの油断が「ボーイスカウト」並みならポイニキアは内部三箇所からの攻撃を受ける破目になるかもしれない。
 それとも、もっぱら東側諸国の商人がバルトラインに出向くばかりで、商用でくる帝国人なんて滅多にいないのか。


 今回、戦いの焦点となるのはひたすら登攀の続いているレレデリク側ではなく、グララットの指揮する海側、そこにある鉄の鎖。あからさまに金角湾の鉄鎖からインスパイアを受けた代物である、対岸にジェノバ人が住んでいるわけではないけれど。
 史実における海峡封鎖の攻略法があまりにも破天荒であるがために――メフメット鏡い賄契の大馬鹿だぜ!音の響きが典雅の極致に達した都エディルネから征服したコンスタンティノープルに遷都したことだけはバカヤロウ――どんな策略を使っても驚きにくいのだが、帝国軍がみせてくれた策略はなかなかに素晴らしかった。
 あっさりと二隻の船を犠牲にし、強制徴用した連中の脱走したがる心理さえ利用しているのだから実に思い切りがいい。バルトラインは貧乏だから収奪戦争に打って出ると同時に富裕な大国だからあんな派手な真似が出来る。現実は奇妙で、常に中間的なところにある。

 国民を養うならあの船団に積むものを兵士から各地の名産品に変える手もあるように見える。しかし、腕と鉄がまだまだモノをいう黎明の世界において経済競争の行きつく先はやっぱり戦争にならざるをえない。だいたい経済性に大きく響く操船術じゃ歴史を誇る央海諸国がうわてなのだから、接舷斬り込み戦に持ち込めば何とでもなる軍船のほうがまだしも未熟者には向いていたりするのだ――第一次ポエニ戦争の教訓から考えて。
 2巻で地図の逸話に触れてからルイ大臣の評価がうなぎのぼりを止めない(わたし地図好きだし)。もしかしたら彼はベヘモスの民でありながらリヴァイアサンの真髄「制海権」の概念さえも理解しているかもしれない。海図もまた地図であるのだ。

 少なくとも情けなさが可愛さにまで転じてきた副市長とは圧倒的に格が違う。
 今回の策略を発作衝動的な提言しかしたことのないグララットが考えたわけがなく、ルイが授けたものに疑いない。つまり彼は帝都にいながらにして、顔をみたこともないコンスタンティノス副市長が自ら礼讃する虚栄に縛られてカミーノの逃亡兵を招き入れることを読み切っていたのだ!
 これはもはや魔法に近い、超一流の策士だけが為せる業だ。そもそも彼にとってポイニキア攻防戦は大陸全土の地図に描いたグランドデザインの一点にすぎない。もっと遠くに確固とした目標を定めているから、船や兵を計算づくで犠牲にする策略を立てられるのだろう。

 対する副市長ときたら親しいはずのヴェネディックの動きすら読みあやまり、はじめた戦争への展望もここで一発勝って景気づけすればみんなやる気を出して「なんとかなるだろう」という、ていたらく。はっきり言ってムッソリーニにも劣る――あのファシズムの先駆者には「同盟国をなし崩し的に戦争に巻き込む政治力」程度はあるのだから。
 だいたい寛容でならしたカエサルさえ包囲中のアレシアから食糧不足で追い出された非戦闘要員を無慈悲に見捨てた(ローマ軍にも食糧が少なかった)ように、「現役」のローマ人なら戦争中は「それはそれ、これはこれ」であることを理解したはず。大部分の産業をそれぞれ得意な他民族にまかせても戦争だけは、なかなか譲らなかった戦闘民族の先祖が泣くぞ。
 まぁ今にして思えば(おそらく)ポイニキア帝国を成り立たせていた奴隷制を完璧に無視していた時点でガングロ副市長の底は知れていた。カエサルの頭部と奴隷制の良い側面だけを強調しまくる某塩野御大よりなお胡散臭い。
 現実をみつめろ。コンスタンティノス…。
 かつては属州から皇帝を輩出した多民族国家も、ついには副市長ですら狭い視野でしかものを考えられないレベルに堕してしまったと身につまされる。本当に旅人皇帝ハドリアヌスらを尊敬するならマフムートやザガノス将軍のように大陸全土に足跡を残し、力の差を実感してくるべきだったのだ。
 大燈台の鎖はポイニキアを外敵の侵入から守る代わりに、ポイニキア人の精神を世界に広げることをも妨げてしまったのかもしれない……。

 でも、二人の元老院議員、ゼノンの目測能力とニケフォロスの計算能力はいかにも海洋民族らしくっていい。臆病でも自分の非力を知っているアポロドロス市長もいるし、まったく人材がいないわけでもない……彼らだけでも助けられないかと思ったけれど、助かって帝国側につくパターンもありえるな。
 なぜなら、人と都の運命は数奇な道をたどるもの、すべての道は死に通じているとはいえ。


 ルイの知謀が光ると言っても目的をきちんと理解してカミーノ兵の心理を脱走にもっていったのはグララットの功績だ。バラスト代わりに即席で海水をいれさせる命令も、実行者に死を賭した行動を強要するものだから、それを許容させる統率の力も推して知るべし。
 まぁ、レレデリクたまの為なら死ねるに決まっているか……グララット・ベルルリック央海艦隊陸戦隊隊長付副官も「美人」ではあるのだけど、深意をくみ取らせないキャラだから兵からの信望はどうなんだろう?
 背景も結構謎で、様付で呼ばれていることもあり、レレデリクとは腹違いの兄弟(庶子)なのではないかと勘繰ったりしている。ここでマフムートと激突してくれれば、いろいろ見えてくるものもあるはずなので非常に楽しみだ。
 皇位を狙える立場にあり厄介な実力者でもあるエルルバルデス公爵たちも、彼女らが城壁への突撃で使い捨てた兵士たちと同じように、勝利と共に敗北を期待されているに相違ない。

 誰もが解決できない想いを抱えて戦っている。

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