人を襲うワモンゴキブリの恐怖!
 見た目だけでもおぞましいのに、あれが大挙して人間に向かってくるかと思うと……ゾッとした。どうせなら服だけを攻撃する習性を身につければいいのに!!
 おかげであずさの服を破くのにいちいち技巧をこらさねばならないではないか。プンプン(破かないという選択肢は存在しない)!

 ラストで出てきた「リオック」といい、病原菌を媒介したり、毒を使ったりするのではなく、下手をすれば肉を狙って哺乳類を襲ってくる虫の怖さを味わった。
 直接的なぶん、刺激が強い。

 恒例のムシちくではそんなワモンゴキブリなどに遭遇した原作者の経験談が語られていて、ちょっとした武勇伝の様相をていしていた。
 これを女子高生の経験にさせるのだからパンチ力が上がるわけだ。稲穂の場合は本人が自覚せずに、貞操の危険にさらされていたタイプの武勇伝にも事欠かないはずだから、ドキドキは倍の倍で4倍である。

 またリオックの話では「忘れないように」とでも言いたげにグリーンプラネットのニーナさんがひょっこり顔を出した。ついでにおっぱいも出した。自分がえろひどいことをするつもりでいるのに、表現上えろひどい目にあっているのは彼女の方という事実の逆転がえろい。
 グリーンプラネットが目立てなかったのは「現実は小説より奇だから」と勘ぐってしまうのは合っているのかな?コミュニケーションが成立する分、ニーナさんの方が――余計に悪質になりうるか。

 この話は少年に稲穂が生態系のバランスを保つことの大切さをなんとか説こうとするのも見所で「可哀想」で虫を逃がすことに繋がる――結果自体は讃えたい――情操教育を受けている子供に、環境の複雑さを理解させることの難しさを感じた。
 けっきょく最後は稲穂がしたように行動する背中で示すしかないのかもしれない……。

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秋田書店コミックス感想記事一覧

ベクター・ケースファイル 9―稲穂の昆虫記 (チャンピオンREDコミックス)
ベクター・ケースファイル 9―稲穂の昆虫記 (チャンピオンREDコミックス)
表紙が内容に関係ないにも程がある…。