2010年03月07日

タイタニア1巻 田中芳樹・ガンテツ

 銀河における人類領域の半分を制覇するヴァルダナ帝国――その帝国を内部から掌握して権勢をほしいままにするタイタニアの一族が描かれるスペースオペラのコミカライズ。
 でも、主人公はファン・ヒューリックだと思う。ヒューリックのはず……作品タイトルがタイタニアで、一巻表紙がジュスラン・タイタニア卿だとしても。まぁ、冒頭二話での扱いは羽根布団のように軽い。ちょっとは覚悟しておこう。

 見所はやはり、帝国と対立する星間都市連盟から帝国に乗り換えたにもかかわらず、いつのまにか領土をもつことなく帝国の実権を握るに至ってしまった政治的動物「種」としてのタイタニア一族の「生態」描写だ。
 一代限りのやり手の人間が宰相になって皇帝を傀儡にしている形でもなく「タイタニアの五家族」によって恒久的にさえ錯覚されてしまう支配体制を築いているところが凄い。家名の概念を超え、システムの名前として銀河に轟くのが「タイタニア」なのであった。
 だからこそ、彼らの間に亀裂が入っていって、領土をもたない最大権力者がその地位を失っていく過程が愉しみでもある。
 タイタニアの苗床となってしまった帝国の弱点や、彼らと対立する星間都市連盟がさていかほどのものか?という疑問点をあわせて興味深い。そもそもタイタニアだって純然たる悪からは遠い存在なわけで。

 そして、見せ場となる宇宙での艦隊戦描写でも、非金属的な印象を与える独特の戦闘艦の姿を豊富に拝むことができる。直線よりも曲線が優越する陶器のような外観は硬質ながら優美だ。衛星のたぐいになると、愛嬌すら感じさせるデザインになっている。
 会戦そのものも、ワイゲルト砲なるキワモノ兵器をもちだしての寡で衆を破ろうとする駆け引きがなかなか熱い――1巻では結末まで行かない点は残念だが。

 ただ、人物画になるとクセが強くて苦手な人には受け付けにくい面があるかもしれない。女性は普通に可愛いんだけどなぁ――おかげで美形でも男は男と分かる点は長所といえる。
 とりあえずイイ年した男が鼻元に斜線でテレるのは止めてほしいような、止めてほしくないような不思議な気持ちであるよ。……うん、いつかアジュマーン無地藩王殿下のそんな表情がみれる日が来るならばイゼルローン要塞のように耐えてみせましょうとも!!

タイタニア2巻感想
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タイタニア(1) (シリウスKC)
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Edit こいん │Comments(3)TrackBack(0)漫画 

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1. Posted by    2010年06月27日 11:06

 タイタニア一族については、「武力を持つロスチャイルド」というイメージがありますね。

 「五家族」というのも同じであり、ヴァルダナ帝国は「本拠所在地」に過ぎない。

 そして歴代の藩王は「領土を持たない」自らの地盤が実は脆弱だというのを誰よりも理解しているわけで、むしろそれこそが藩王の条件とも言えると。
2. Posted by こいん   2010年06月30日 23:39
 武力をもつことで警戒されて滅亡を早めるリスクもあるのでしょうけど、時代が非武装を許さないってところでしょうか。
 領土をもたない脆弱さを理解した指導が必要という文で、ヴェネツィアもイメージしました。
3. Posted by 陣   2012年05月05日 17:29

 思った以上の長期の連載も一段落したわけですが、この時期から比べて相当に絵柄も変化した感じですね。

 原作で云うなら、まさに「破局」の一歩手前でドラマを切った感じですが、よろしければ原作をどうか。

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