2011年03月05日

漫画版 帝国大海戦1〜「プリンス・オブ・ウェールズ咆哮す」 伊吹秀明・細馬信一

 ヒトラーが絵描きとして成功したおかげでナチスドイツが成立せず、ソ連はソ連で内乱状態に陥った世界で、日本・イギリス同盟とアメリカ・フランス+αによる大海戦が繰り広げられる戦記シミュレーション作品のコミカライズ。
 架空の戦艦や氷山空母のようなキワモノは出てこないので、絵になっている意味はやや小さい。だがそれゆえに魚雷発射装置の構造など細部を気にして楽しむことができた。

 蘭印を巡る戦いはまず日本海軍が不覚を取るところから始まる。アメリカの勇敢な小艦艇部隊が意気をみせたら、その次は史実と違い味方に回ったイギリス東洋艦隊のお披露目と、初めて読んだときの効果を良く考えた構成になっていると感じた。
 もちろん、最終的に大日本帝国海軍がいいところなしで終わるわけもなく、親指トムに借りを返して返して――押しつけて債務超過に陥らせてしまいそうな勢いを見せてくれる。
 小沢長官とフィリップス長官が互いにアメリカ海軍との戦いだけではなく、同盟相手への示威を考えて行動しているところが、国家間の醒めた関係を表現していて良い。
 大帆船時代の昔から海軍軍人は出先で国家外交にかかわる判断をしなければならない仕事だったわけで、あれも一つのあるべき海軍軍人の姿なのかもしれない。帝国海軍の場合は近海で迎え撃つ意識が強かったから、小沢長官の人材を得なければあそこまでスマートに話が進んだか、どうか……。

 大日本帝国海軍が誇る酸素魚雷はお約束の早発をやっちまったのに、アメリカの潜水艦が不良魚雷をきっちり炸裂させていた点は不条理だと思った――代わりなのか航空魚雷の方に不良がでたけど。
 アメリカの潜水艦乗りの会話を代表に、敵味方ともにユーモアに富んだ会話をすることで、戦場を鉄と火の無機物による支配から解き放ってくれている。ほどよい浪漫がそこにはあった。

 最後に、日米英三大海軍の激突の端で壊滅したオランダ東洋艦隊に敬礼!ドールマン少将ほどトホホな役回りも少なかろう……。

漫画版 帝国大海戦2〜「大和」突撃す!マーシャル沖追撃戦 感想
原作 帝国大海戦1〜プリンス・オブ・ウェールズ太平洋へ 感想

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帝国大海戦 1 (ノーラコミックス 歴史群像コミックス)
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