2011年03月26日

将国のアルタイル 45fasil 北国の岐路

 ウラドの連中に早朝奇襲を受けるマフくん。ポイニキアで目をショボショボさせていた頃にくらべて確実に成長した対応を見せる。それでも反応はキュロスとアビリガの方が早いのだった。そうでなければ二人は仕事しているとは言えないか……やはり船乗りは時間に対して柔軟だ。
 ニキたんは流石に別室で寝ているらしい――荷物が乱雑に積まれたベッドに埋もれていなければ。
 キュロスは故郷に“嫁”がいて、アビリガは性別アビリガ、マフくんは軍☆神というこのメンツなら滅多に間違いは起きないと思うし、暗殺対策を考えれば同室にしちゃった方がいい気もする。一室に一人アビリガがいれば安心して熟睡できるよっ!
 この状況では彼女が人質にとられて交渉の材料にされる展開が怖い。まぁ、彼女はトルキエ人でもないし“原則的には死んでもらう”のだろうが……僕と契約して耳役になってよ!!
 それにニキにも老師直伝の武術があるから、不心得者程度なら寝技で全身の骨を砕くくらいはやれるのかもしれない。やられたい……。


 呼び出しを受けたマフムート一行はウラド王の御前に。寝起きの機嫌悪いタイミングで外交交渉を行おうとは大胆なヒゲだ。相手が銀河一麗しい蒼髪だったら、確実に輪切りにされている。
 あえて忍耐を試すことをして、度量を測られている気がしないでもない。帝国の使節も同じ扱いを受けたのかな。それとも、心が傾いている方にはやや甘い扱いをしてわざと差をつけいるのか。

 そして、朝日の射し込む北の広間で“ウラド王国”は二つの隣国の使節にバルトライン帝国の保護下に入ることを告げる。なかなか素敵な両面外交ぶりだ。
 だが、マフムートが語る通り帝国の傘下に入ることには多大な問題がある。ウラド王国が帝国の尖兵となった場合、最初にぶつかるのは四将国の内乱で奮迅の働きをしたクルチュ軍と、精鋭イエニチェリを誇るムズラク軍だ――バヤジットのことだから外見度外視でイエニチェリの再建を進めているはず。
 そんな両軍の背後をイスマイルのブチャク将国が支えれば被害ばかり大きく、先に進めない悪戦になるのは必至だ。そして、経済力なきウラドの唯一のよりどころである槍騎兵が壊滅してしまえば、帝国はやりたい放題である。
 なんとか生きていくことはできるかもしれないが――帝国領が無人地帯にはなっていない意味で――明るい未来がほとんど見えてこない。まぁ、酷い扱いを受けているのは併合に抵抗した国だけで、旧ロゥ王国艦隊をみると、さっさと諸手を挙げれば王家をちゃんと貴族化してそこそこの待遇を与えてくれる印象がないでもない。
 外事局長のマフくんはそんなことは知らないし、知ってもわざわざ言わないけれど……。

 あとは鳥肥の存在。際どいタイミングで見つかった鳥肥カードがない状況での交渉が個人的には見たかったなぁ。より厳しい条件の方が燃えるのだ。
 しかし、この段階ではマフムートやアビリガが生き残るために口から出まかせを言っている可能性も排除できない。できないのに、ウラド王は帝国国使を処刑して引き返し可能点を超えてしまった。事実上の宣戦布告である。まぁ、口に土詰めて井戸に放り込まないだけ紳士的だ。
 そう考えてみると最初に感じたほどにはジグモンド三世の判断に鳥肥は影響を与えていない気がする。ウラド王国が鎖国しながらも熱心に収集をしていた国際情報――帝国のヤバさ――を、マフムート将軍が裏付けたことが、一番の決め手になったと考える。
 あと、操り人形ジグモンドさんが可愛かった!輸出しよう、あの人形つくってウラドの一大産業にしよう!!

 ちなみに鳥肥が商品作物に使われるのは、農民でも購買力のある相手じゃないとそもそも商売が成り立たないからだろう。穀物農家相手に鳥肥を売るのは国家が上手く介在してくれなければ難しい――そして、スッド島のように鳥肥が尽きたときのリスクは莫大だ。
 ただ、帝国とトルキエの国使を両方殺して、王国内で鳥肥をチマチマ使う選択肢も一応ないではなかった、バレた場合のリスクは最悪だけど。帝国の保護下に入ると言いだす前に鳥肥のことを知っていれば、両方適当に追い返すだけで、それが出来たのだが……隣国の使節を二階に上げて梯子を降ろしたつもりが自分がやられていれば世話はない。
 ウラド王は帝国相手にどうとぼけるつもりなのやら……「使節殿は鳥追海岸で足を踏み外しました」かな?「使節殿の背中には帝国で伝統的に使われる風切り羽の矢が……」は遊び過ぎ。
 使節には、帝国の新しい人材として期待していたので、彼の死は残念だったりする。

 とりあえずこれで、トルキエ将国が重要な後背地である四将国を直接侵攻に晒される危険はなくなった。北国に物資させ送っておけば、遊牧民の血を流さずに帝国軍に被害を与えることができる。
 ジグモンド王には冒険的な行動に出ず、敵を領内に引き込んでの粘り強い戦いをしてもらいたい(バルトライン帝国北岸に嫌がらせ的な海賊行為を働くのはあり)。余裕があれば南の戦線に槍騎兵を送ってほしいくらいだけど、祖国が直接侵攻を受けている最中に、それができる視野と判断力を持った国は少なかろう。
 ヒサール周辺もそんなに地形は変わらないしなぁ。もし、会戦で活躍するとしたらトルキエ南方に帝国軍が上陸した場合かな。あえて上陸を誘ったあとにヴェネディック海軍が退路を断ち、空腹で帝国軍が弱ったところをトルキエとウラドの騎兵が蹂躙する展開は理想的だ。
 だからそうそう起きないとは思うが、次なるマフムート外交の焦点は、ヴェネディックの旗幟を鮮明にするためにも、トルキエ南方地域が有力と見た。

 さもなければこのまま帝国領内に乗り込んで、アラバ族やバルト・ライン両地方の叛乱を扇動する策だが、耳役が壊滅した現状ではとてつもない難事業だ。

将国のアルタイル 44fasil 王の渇望 感想
将国のアルタイル 46fasil謀議と門出(帝国SIDE)感想
将国のアルタイル 46fasil謀議と門出(将国SIDE)感想
将国のアルタイルの目次

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この記事へのコメント

1. Posted by 7743   2011年03月27日 13:17
今回はマフくんの国家戦略が明確に打ち出された話でしたね
要はバランス オブ パワーと

だが 帝国国使をヤッちゃう事は ある意味「帝国に敵対しますよ」というのと同じですから、トルキエにウラドの防衛義務を押し付ける形になったような
2. Posted by こいん   2011年04月04日 00:47
 コメントありがとうございます。

 平和のために同盟しようとマフくんが呼びかけたのに、いきなり宣戦布告になりかねない使者殺しをやってくれるウラド国王は怖いです。
 彼は自分たちを最も高値で売って見せましたね。いったん同盟してしまえば、だんだん力関係はトルキエ優位になっていくと思いますが。
3. Posted by 7743   2011年04月04日 18:19
レス ありがとうございます

でも 帝国国史の言い分にも一理あるんですよね
正直「トルキエが利益を独占するのでは?」という疑問にマフ君は答えていないような気はしますが

後、気になるのは、ウラドVS帝国 戦になった時、トルキエがどうするか という点ですね
ウラド国内にトルキエ軍を駐留させるのも 難しそうですし、他の将軍も「マフ君に軍事同盟締結権なんて認めてねー」なんてなりそう
4. Posted by 7743   2011年04月05日 01:24
帝国側を見れば おそらく国情は、自国より弱い国や民族を飴やムチで縛っているのが現状だと思われます
そこで貧乏国に露骨な挑発まがいを受けた以上 無視すれば帝国の威信的にマズいと思われます
この辺の事情は 四方世界の王でエシュヌンナに負けたアシュールと同じかと

じゃあ 損得を越えた戦争ってなった時、トルキエはどう動くか
多分 軍中枢や衛星国の連中は聞いてねーよ! となるのでは思います
というより、マフ君には「いざとなればトルキエ軍を派遣します」なんて断言できないと思われます、一応は外事局(でしたか)ですから
サルジャが生きていたら「勝手に同盟なんて越権行為」とかいいそう

だから無能な連中をパージしたのが聞いてくるのか!おそるべしカトウコトノ

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