2012年01月01日

ファンタジーの戦術 タイタニア:シラクサ星域会戦〜タイタニアVSテュランジア公国〜

 原作を読まずに漫画版だけで戦況図を描く無茶記事その2。解釈の間違いなどがあったら、すべて私の責任である。

戦略状況
 星暦400年(西暦2930年)、ヴァルダナ帝室と姻戚関係にあるテュランジア公国はかねてよりタイタニアと航路の権益に関する軋轢を抱えていた。タイタニアのザーリッシュ提督が流星旗軍掃討のために天の城(ウラニボルグ)を離れた機会を、ヴァルダナ帝国より出向していたアムゼカール提督にそそのかされ、テュランジア艦隊はウラニボルグへ進撃を開始する。これに対しもう一人の軍事担当タイタニアであるアリアバートが、ケルベロス星域会戦における敗北の汚名返上を期し、テュランジア艦隊を迎撃する。


兵力と布陣

・タイタニア
 総兵力:3600隻(内、ワイゲルト砲艦1000隻を搭載した揚陸艦1000隻。この砲艦の数は総兵力にカウントしていない)
 総司令官:アリアバート・タイタニア公爵
 助言者:ジュスラン・タイタニア公爵

・テュランジア公国
 総兵力:3300隻
 総司令官:コンノート少将
 助言者:サラーム・アムゼカール提督

シラクサ星域会戦布陣
図1.両軍の布陣図(4巻5P2コマ目より推定)

 テュランジア軍はタイタニアの宇宙管制下であるシラクサ星域を航行中。10時方向に接近中のタイタニア艦隊を発見した。距離は1万。4巻5P2コマ目は艦隊の端しか写っていないが、周辺情報からテュランジア軍を魚鱗風の陣形、タイタニア軍を鶴翼風の陣形と推測した。


作戦意図

・タイタニア
 ジュスランの助言を受け容れたアリアバートは、ケルベロス星域会戦で自らが苦杯をなめたワイゲルト砲をあえて使用する戦術を採用する。揚陸艦にワイゲルト砲艦を搭載し、隠し玉とした。

・テュランジア公国
 若年のアリアバート提督がケルベロス星域会戦での敗北から立ち直っていないことを期待し、積極的に攻撃をたたみかけて主導権を握る作戦である。


戦闘経過

シラクサ星域会戦展開
図2.シラクサ星域会戦の展開

 コンノート提督はタイタニア艦隊の陣形が整う前に砲撃を開始させる(図2−1)。結果、タイタニア艦隊の前衛13部隊が消滅する。攻撃を受けたタイタニア艦隊は四方へ回避運動を行う(図2−2)。調子に乗ったテュランジア艦隊は砲撃をおこないながら距離3000まで接近(図2−3)。アムゼカール提督が敵の異常さに気付いた頃には時すでに遅く、タイタニア軍の異常に比率の高い揚陸艦から飛び出したワイゲルト砲艦が接近しすぎたテュランジア軍に一斉射撃(図2−4)。テュランジア艦隊は壊滅した。


結果

 テュランジア艦隊は7割が消失。旗艦マリウスの左舷が被弾したコンノート少将は尻尾を巻いて逃げ出した。都合のいい未来像を描いていたアムゼカール提督も亡命先を探す破目になった。
 この勝利によりタイタニアはテュランジア公国に対して一方的に有利な不平等条約を締結することになった(はずである)。また、ケルベロス星域会戦で低下していたタイタニアとアリアバートの威信が一定の回復を示した。


考察

・これは中央突破ですか?いえ、両翼包囲されています。
 ワイゲルト砲は威力は馬鹿デカいが、射程が短く照準もままならない超兵器である。コンノート少将がまんまと、ワイゲルト砲の射程内に引き込まれたのは、自らが主導権を握っているという幻想に囚われたからだ。静止図において、中央突破しかかっている状況と両翼包囲されかかっている状況は同じに見える。戦いの流れが読めない指揮官が状況把握しそこなった結果が、アリアバート艦隊を中央突破するいきおいの猪突猛進であった。
 ケルベロス星域会戦においてヒューリックがコロニーを囮にした代わりに、アリアバートは自艦隊を囮に使ったのだった。

・ワイゲルト砲運用の普遍化
 アリアバートが関わった二つの会戦において、ワイゲルト砲はその威力を存分に示した。だからといって超兵器信仰に陥らないのが良将の良将たるゆえんであるが、今後艦隊戦を行う提督は常にワイゲルト砲のことを念頭におく必要が出てきている。
 今後はワイゲルト砲の破滅的な威力を減じるため、可能なかぎり艦隊を散開させるフォーメーションがトレンドになるのではないか?ワイゲルト砲を隠せる構造物や艦への警戒も厚くなるはずだ。
 決戦が数少ない時代にあっては、特殊例が軍事史の方向性を容易に捻じ曲げうる。歴史に正道を歩ませるためにもファン・ヒューリックにはやる気を出してもらいたいものだ――余計に変態的な戦例を増やす予感しかしない!

・アジュマーン藩王は文官出身?
 コンノート提督はアリアバート艦隊さえ撃破すれば、残るは政治担当のジュスランとイドリスだけだとぶちあげていた。アジュマーン藩王その人を思いっきり忘れている……。兄が軍事尚書であるだけに藩王本人は政治畑出身なのかもしれないが(原作には説明があるかな?)、だとしても彼はタイタニア軍1000万の総帥なのであり、立場が人間を創ることを無視してはならない。まぁ、コンノート提督が提督にふさわしい人間に成り切れていないから、そういう想像ができないのだろう。
 アリアバートが肥満体に負けてほしいわけではないけれど、アジュマーン藩王の采配は見たかった。藩王ならテュランジア艦隊とリュテッヒからの艦隊が合流しても、何とかしてみせた予感がする。


比較対象になる史実の会戦:スラッシュ後は参考文献例

長篠の合戦/グラフィック図解 長篠の戦い
 武田勝頼はコンノート少将ほど馬鹿ではないけれど、あえて挙げるならこの戦いかと。ワイゲルト砲1000門のインパクトと火縄銃1000丁のインパクトを重ねてみてしまう。
アジャンクールの戦い/戦闘技術の歴史2〜中世編 AD500-AD1500
 こちらは長弓兵による騎馬突撃の粉砕。ただし鉄砲も長弓も射程に優れている兵器である。さらに鉄砲は命中精度、長弓は速射性が素晴らしく、汎用性を考えればワイゲルト砲とは似ても似つかない。


参考文献

漫画版タイタニア1巻
漫画版タイタニア3巻
漫画版タイタニア4巻


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この記事へのコメント

1. Posted by 五遷   2012年01月01日 13:34
謹賀新年。今年もよろしくお願いします。野戦において敵が猪突気味で鈍足なら包囲殲滅が、逆の正攻法で対峙するなら分断、各個撃破が用兵で有効ですね。用兵家の曹操にならって現ブログから新ブログを立ち上げました。参照はURLにどうぞ。いずれ旧ブログは吸い取るつもりです。

今年はキングダムがNHKでアニメになるので楽しみであります。
2. Posted by ミヨキチ   2012年01月01日 19:45
自分の生み出した戦法の寿命を自分で断ち、のち深化させるというのはキン肉マンやHUNTERXHUNTERのコムギもやっていました。燃える展開なのでヒューリック提督にもぜひ続いて欲しいところですね。歴史的には、創出者は改良者にしばしば追い落とされていますが…。

アジュマーンの軍事能力は原作でも特に描写はされていなかったと思います。記事に書かれているように地位が人を作る、また繊弱な人間が全タイタニアを束ねる藩王にはそもそも就けないと考えれば高水準の能力・実績があるような気はしますが。というか藩王殿下ご自身が、四公爵全員を相手にしても勝っちゃいそうな雰囲気を出してますからね(笑)

まあ本領が政略・謀略にあるのも事実でしょう。何となく「40歳に至るまで成功し相応に権力を積み上げたチェーザレ」といった印象で読んでいました。
3. Posted by こいん   2012年01月05日 12:38
>五遷さん
 ちょっと気が早い気もしましたがリンク先を変更しておきました。今年もよろしくお願いします。
 フィクションだと猪突気味で鈍足の敵は完全に負けフラグですよね。運が良くて、味方の中にいる主人公級のキャラの引き立て役でしょうか。

>ミヨキチさん
 ハンニバルに対する大スキピオの例ですね、改良者に追い落とされる創出者。桶狭間の連発を狙わなかった信長は偉いという話を聞きます。
 飄々とした顔をして逃げて、謀略でテュランジアを混乱させつつ、ザーリッシュを連れて帰ってくるアジュマーン藩王もそれはそれで魅力的かもしれませんが、やはり相応の実力を持っていて欲しいところですね。
4. Posted by    2012年01月07日 13:00

 アニメ版では、そもそもケルベロス会戦のタイタニアの敗北がテュランジアの抗戦意欲を高めたとされてますね。

 原作版では、本来はザーリッシュが行くはずだったのをアリアバートが自ら志願したとなっており、アニメ版ではアジュマーンからアリアバートを指名しているなど、タイタニア内部の描写もまさに三者三様というか。
5. Posted by こいん   2012年01月08日 11:58
 それぞれかなり状況が違うんですね。漫画でも、ケルベロス星域会戦の結果はテュランジアの判断に影響していますが、ザーリッシュも残った状況で挑みかかるとは、勇ましいことですね。
 アリアバートの株価下落が、他のタイタニアにまで強く波及している感じでしょうか。

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