2012年02月21日

もしも全てがルイ大臣の計画通りに進んでいたら

 将国のアルタイル年表にまとめたように、ポイニキア攻めの兵士たちはフランツ大臣怪死事件が起こる前の年には動員が開始されていた。ルメリアナ大陸の中央に山脈越えの街道が建設され始めたのは更に前で、四将王への調略もフランツ大臣が死んだ時点ではかなり進展していたはずだ。
 このような動きをルイ大臣による一連の計画として再評価すると、トルキエ将国を封殺する恐るべき陰謀の全貌が明らかとなる。

 もしも、マフムートやザガノスがルイ大臣の策をひっくり返さなければどうなっていたか、以下に並べてみよう。


1.75年4月3日 :フランツ大臣怪死事件
 釈明のため前の戦争での実戦経験をもつ有能なカリル将軍が犠牲になる(ならなかった場合、3に進む)。トルキエ将国の政治環境は大きく揺れる。

2.75年4月25日 :トルキエ将国で砦の町の叛乱が起こる
 エルルバルデス山岳兵がヒサールを制圧し、トルキエ将国侵攻の足場を易々と得る――ただし、カリル将軍がバルトライン帝国の犠牲になっていれば、護民兵たちもアラバ族の招待に浮かれることはないかもしれない。まぁ、フランツ大臣怪死でキナ臭くなった時点で、警戒を厳にしているべきだが、ザガノス将軍があえて敵の策にのるつもりだったこともあり……。

3.75年4月〜5月上旬:帝国の脅威に対抗するため大将国会議が開催される
 史実の大将国会議は6月11日であるが、1で宣戦布告が行われた場合でも、2でヒサールが陥落した場合でも、すぐに大将国会議が開かれたはずである。
 だが、この時点ですでに四将王にルイ大臣の手が伸びているため、大トルキエ体制への移行は否決される。

4.75年5月:トルキエ軍が四将国に侵攻
 ルイ大臣は四将国の叛心と建設中の街道が存在することをトルキエ将国にリークする。街道が完成すれば完全に包囲されることになるので、トルキエ将国は短期決戦で四将国の制圧を狙う方向に誘導される。
 だが、ヒサール方面にある帝国軍の脅威にトルキエ軍の半分が縛られるため、圧倒的な兵力比を確保することができない。ゆえに、同族同士による血みどろの長期戦になる。

5.75年5月29日 :都市国家ポイニキアがバルトライン帝国に降伏
 他方、ルイ大臣は央海方面に駒を進め、史実通りにポイニキアを陥落させる。その結果、小麦を安全にヒサール方面に輸送することが可能となる。

6.75年6月〜9月:トルキエ将国が消耗・孤立化
 ルイ大臣にとっての理想的には四将国はまだ抵抗を続けている――牽制となる出兵を行うことで四将国を延命させても良い。
 ウラド王国は帝国側の勢力に周囲を押さえられた事とポイニキア陥落などの情勢から判断して早めにバルトライン帝国に降る(史実では決断は11月に行われた)。
 また、ヴェネディック共和国をはじめとする央海十一都市は日和見を続けている。

7.75年10月15日:サロスからの小麦がバルトライン帝国に到着
 バルトライン軍出師の準備が整う。

8.75年10月下旬:複数のルートからバルトライン軍が進撃を開始
 帝国の侵攻軍は以下からなる。山脈越え街道とウラド王国経由で四将国軍と合流する支隊(ウラド王国軍も含む)。ヒサールからオアシスの街に突き進む本隊(カリル将軍が犠牲になってヒサールが落ちていない場合は支隊)。健在な艦隊の支援を受けて史実より大規模にルメリアナの心臓地方に乱入する支隊(ヒサールが落ちていない場合は本隊)。島の都と西風の都が艦隊を出し、ヴェネディック共和国が手をこまねいていれば、更に一隊をトルキエ将国の南に上陸させて北上することが可能かもしれない。
 かくしてバルトライン帝国の圧倒的大兵力を活かした外線作戦がトルキエ将国軍の対応能力を超え、エキゾティックな遊牧民の国は滅亡する。
 なお、トルキエ人が全軍を一方面に集中した場合、その方面の軍だけが防御で時間を稼ぎ、他の方面軍が前進してアルトゥンを落とす。帝国が対将国戦争のみに集中し、しかるべき同盟軍を得られれば全ての方面でトルキエ軍と同数以上の兵力を確保できるのだ。


 おわかりいただけただろうか?

 マフくんの活躍がなければ漫画が始まった年のうちにトルキエ将国が消滅していた可能性すらある。その未来をひっくり返したのだから、劇で美化されている以上に評価されてもいいくらいかもしれない。
 ルイ大臣は、以上のような策が躓いた場合でも、一定の成果はえられる形にして、軌道修正を行いながら最終的な目標に接近しているから恐ろしい。それどころか、まだまだ予備の策が残っているのかもしれない。
 無責任な傍観者としては非常に楽しみである。


関連記事
砦の町ヒサールを要としたトルキエ将国の防衛システム
バルトライン帝国が領土を広げるための6つのルート
トルキエ将国の動員体制について:この記事は、ここで出た疑問への答えになっている
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この記事へのコメント

1. Posted by トリノ   2012年02月22日 22:47
こんにちは。はじめまして。いつも感想を拝見しております、トリノと申します。
管理人さんのアルタイル感想がいつも楽しみで、本誌と一緒に読んでおります。
もしもルイ大臣の計画通りに進んでいたら…の記事、とても興味深かったです。ルイ大臣は相当手を打っているのですね。
ポイニキア戦に関してなのですが、ポイニキアにヴェネディックの援軍が到着していた場合、ポイニキアは陥落しなかったのでしょうか。それともルイ大臣には、ヴェネディックが到着しないという確信またはヴェネディック側にも手を打っていたことがあったのでしょうか。
疑問に思い、コメントいたしました。

今月号の感想も楽しみにしています。更新、頑張ってください
失礼しました。
2. Posted by こいん   2012年02月24日 01:32
 はじめまして。
 励みになるコメントありがとうございます。来週にはシリウスが発売ですね。楽しみです。

 ヴェネディックへの対処については、「将国のアルタイル:ポイニキア攻防戦からルメリアナ大戦の展開までを考えてみる http://blog.livedoor.jp/death6coin/archives/51076481.html」で、戦いが描かれている最中に考察をしています。
 この記事ではご質問への直接的な答えにはなっていませんが、ルチオ元首の態度から考えても、情勢を冷静に判断すれば助けに行かないほうが正しい雰囲気は感じます。

 対トルキエ工作で失敗しても飄々と次の手を打っているように、ルイ大臣は失敗する可能性は低いと判断しながらヴェネディック艦隊が来た場合も織り込んでいたと考えます。
3. Posted by トリノ   2012年02月24日 02:07
返信ありがとうございます。
そして過去の記事に回答があったにも関わらず質問を重ねてしまいすみませんでした。
外交や国際情勢をはかりきれていなかったポイニキアは帝国に屈服するしかなかったのですね。納得いたしました。

次回更新もたのしみにしています。
失礼します。

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