ブラック・ジャック一話が掲載されたチャンピオンの表紙をドカベンが飾っていることに慄く。その後も1975年48号をのぞいて存在感を示し続けるドカベン……今も掲載しているなんて、わけがわからないよ。現生のシーラカンスを発見した古生物学者の気持ちが少しだけ分かってきた。
 ブラック・ジャック創作秘話2巻では、そんなドカベンがなかなか言及されないブラック・ジャックと同等の存在感を誇っている。
 各話でめだつ作品は鉄腕アトムだったり、火の鳥だったり……手塚先生の存命中にブラック・ジャックがアニメ化していないから、ボリュームの面でしかたがないのか。まぁ、生きている間にアニメ化されていても、ジャングル大帝の例から考えて手塚先生は現場から排除されている予感。
 アニメ制作会社がこけた時に一念発起して描いた作品に対して変なことを考えているな……。

 連載時になかったおまけ要素に、手塚先生ゆかりの品物が写真で収録されていて、話の中にあったメガネを見たときはボロボロになった手塚先生本人を見た気分になった。こちらは入手経緯が描かれているが、石井氏の映写機はどういう経緯で持ち続けていたのだろう。
 困窮の極みに達して、売りたい時期がいくらでもあった気がするので、手放さなかった気持ちを想像してしまう。

 後半の九州まで高跳びした手塚先生と編集者のバトルが激しく楽しく、現代に同じことが起こったら……と想像してしまった。まず、こんなに連載を抱えている漫画家がほとんどいないか。原作者ならありえるかな。
 手塚先生は「編集者の方から野放しにされたら半分の作品も生まれなかったですよ」と振り返っているわけだが、半分でもすさまじい量だという自覚はなかったのかな……なかったどころか、もっともっと漫画もアニメも世に送り出したかった気がする。まったく、とてつもない人だ。

ブラック・ジャック創作秘話〜手塚治虫の仕事場から〜1巻感想

ブラック・ジャック創作(秘)話~手塚治虫の仕事場から~ 2 (少年チャンピオン・コミックスエクストラ)
ブラック・ジャック創作(秘)話~手塚治虫の仕事場から~ 2 (少年チャンピオン・コミックスエクストラ)