2014年04月12日

将国のアルタイル14巻 チエロ解囲

 待ち伏せ返しの勝利から追撃殲滅戦へ。マフムートの容赦のない軍事行動はルメリアナ大戦に新局面をもたらす。
 能面のような顔で冷徹に殺しまくるマフ君だが、やっぱりかなり無理していた模様。エスパーダで勝利したときは気が抜けてふらついてしまっている。
 それ以上に、チエロの内部で起こっていた悲劇を知ったときは、どっと疲れが出たことであろう。大丈夫、ユダヤ戦記のエルサレム内乱描写に比べれば、至って平和だよ!!
 包囲された都市という劣悪な環境下では何が起こるか分かったものではない(ただし、前述のエルサレムは直接包囲を受ける前から酷かった)。だからこそ、特別な指導力をもったリーダーが台頭したりもするのだが、カルバハル院長は失敗してしまった。
 案外、頼りになる外国人が何人もいたせいで、彼らを侍らせたことが逆効果になったのかも。足下に逃げ込んできた連中を守ってやるならともかく、主権をないがしろにする指導は、地元民にはおもしろくなかったはず。
 ルチオ元首が心配していた事態が、すでに天上の都内部で進行していたと考えることもできる。
 まぁ、余所者を受け入れた直後に城を守って戦うのが、どだい無茶なのだ。いままで強敵がいなかったとはいえ、曲がりなりにも無茶を実現してきたことを讃えるべきか。

 帯の言う「エキゾティック戦術要覧」に言及すると、囁き盆地での戦いは鮮やかだった。夜戦であることが信じられない。イスカンダルというマフムートの最大戦力を鳥目で封じ込めたのに――まぁ、闇夜でも普通に飛んでますけど〜――こうもこてんぱんにやられてしまうとは残念なおっぱいだ。
 包囲軍を追撃した帝国軍の押さえ部隊を挟撃する作戦は特によい。エスパーダとウーモの相手を任された連中は防御に徹して、仲間との距離を守るべきだったのだが、なまじ包囲してきた敵の脅威度を高く評価してしまったせいで積極的に追撃を掛けてしまった印象がある。
 けっきょく逆に包囲をうけたことの衝撃から立ち直れていない。マフムートの作戦勝ちだ。

 追撃戦ではエスパーダにたどり着くまでの一本道に野戦陣地を築いたらもうちょっと時間稼ぎが出来たのではないか。残った三軍団をすべて広場に出してしまったせいで、トルキエ軍に展開を許してしまった。
 もっとも、道を一歩踏み出せば敵意の渦中におちいる状況では、道だけを押さえても迂回され放題。むしろ戦力の分散になって足止め部隊が潰された恐れもある。
 最初に仕掛けた三軍団の待ち伏せくらい規模があればともかく、その後の状況では裏目に出た可能性も高い。
 いろいろ考えると、帝国軍がひとりでも多く生き残るためには統制を失って壊走した方がよかった。ずいぶん逆説的な結論だが、軍団長たちのプロ意識がかえって再起の可能性を妨げた。
 バルトライン帝国そのものも、ピノー軍団のように高度な統制を保つことで、まとめて滅んでしまうのかもしれないな。適当なところで内乱を起こして、ぐだぐだの戦いを演じた方が反帝同盟は泥沼に巻き込まれることを恐れて帝国領内まで踏み込みにくいだろう。
 歴史はまさに皮肉のかたまりだ。マフムートを間接的に救ったハト派のピノーが、成長したそのハト派の少年に殺されてしまったことは、歴史をつむぐ大いなる皮肉の一ピースにすぎない。
 亡者の集合意志である帝国像とはまた別の嫌らしさがある。

 それにしても山猫団のブリジッタ・グリマルディちゃんが可愛かった!!壁の上でスカートがヒラヒラするだけでも大興奮!まくり上げて敵を挑発しそうだよね、げへげへ。
 お金に転びやすいのは――傭兵として自然ではあるものの――どうかと思います。でも、敵対した帝国兵も降伏して傭兵仲間になれば受け入れる姿勢を示している辺り、すばらしく度量が大きいとも言える。
 いろいろな意味で1万人を率いるだけのことはある人物だ。

 彼女が並べた心臓地方の都市国家の中で「愚者の都共和国」と「石炭の都共和国」が気になった。むしろ「天上の都」が愚者の都だったね……「石炭の都」も囁き盆地の戦いで炭坑を自慢していた「煙の都」と思いっきり被っている予感。
 あと「小川の都共和国」はちょっと立ち寄っただけなりに、名前が出てきて親しみを覚えた。ちゃんと参戦してくれたんだぁ!ありがたやありがたや。

 最後の会議に出てきた反帝同盟の国が55カ国。心臓地方が34カ国で、大トルキエが5カ国に、ウラドとヴェネディック、南ルメリアナのタウロ、エスパーダ、ウーモ、地味ラントをカウントすると判明しているのは45カ国かな。残り10カ国はトルキエ周辺の海岸を押さえている国家だろうか?でも、央海十二都市(チエロとポイニキアが滅亡済み)からリゾラーニを抜けば、ほとんど枠が埋まる。いや、ドーリア元首が見事に寝返ったリゾラーニも入っているか?12巻で帝国排除の姿勢を明確にしているし。ヴェネディックの影響が強い東セントロの海洋通商国家はだいたい反帝同盟に入っていそう。
 でも、ヴェネディックに友達枠で同盟入りを強要されても、ポイニキアを見捨てた前科があるから私だったらあまり気乗りはしないっ!!

将国のアルタイル1巻感想
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収録各話感想
将国のアルタイル 71fasil 二重包囲の陣
将国のアルタイル 72fasil 同盟の逆襲
将国のアルタイル 73fasil 犬鷲の追撃
将国のアルタイル 74fasil 剣の都攻防戦
将国のアルタイル 75fasil 天上の鍵
将国のアルタイル 76fasil 楽園の終焉

将国のアルタイル記事の目次

将国のアルタイル(14) (シリウスコミックス)
将国のアルタイル(14) (シリウスコミックス)
若々しく勇ましいマフ君にしたがっているトルキエ兵たちに彼の女装姿を教えたらどうなるだろう……信長が通った道か。

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この記事へのコメント

1. Posted by 7743   2014年04月13日 23:23
しかし 数万はある軍勢に「各人自活せよ」なんて命令すると南ルメリアナ全域が盗賊だらけになりそうな
百年戦争休戦期のフランスのように
それはそれでアレなような

にしてもルメリアナの高級士官には甲冑を身につけない、という伝統があるのかと思いましたね
バルトライン、トルキエ問わず

チエロの話で考えさせられたのは今日の中東某国の内戦で周辺国に10万単位で難民が流失していますが ある程度の規模がある国はともかく小国ではやっぱりこういう事はあるんかな と思いました
雇用とか住居とか
弱者や弱者を守る事が常に善ではないという皮肉でしょうか
2. Posted by こいん   2014年04月18日 00:04
 南ルメリアナが荒廃して、反帝同盟の進撃路として使えなくなれば、最低の目的は果たせるのかもしれません。

ルチオ「だが、海から攻める!」

 高級士官が甲冑をつけないのはパフォーマンスということで。
 兜をかぶっていたせいで、指揮官戦死と勘違いされて戦いを失った戦例がたくさんあったりすれば、ああなる可能性もなくはないかと。
 個性のある鎧を着れば済むだけというツッコミはなしの方向で。
3. Posted by 名無しの隣人さん   2014年04月24日 18:59
個人的には帝国の高級将官の軍服がかなり好きです。
近代の将校って感じで。

対して、トルキエはたぶん下に革鎧とかつけてるんだろうけども、もうちょっと強固な鎧つけててもいいんじゃないかと思わなくもないです。トルキエの人たち指揮官もつっこむんだもの。

この漫画を読むと、特にトルキエ軍の姿で、マウント&ブレイドをやりたくなります。カーギットで再現プレイしたくなる(笑)
4. Posted by こいん   2014年04月24日 20:08
 確かに帝国は先進的な雰囲気がありますね。文化的には東方に劣っている一方で、軍事的には。
 やはり銃が普及すればもっとも早く適応しそうです。

 下に鎧を着るのは十字軍の騎士がやったように、日射で鎧が熱くなるのを考えての事とすれば、なるほど説得力がありますね。

 マウント&ブレイドを知らず、ちょっと検索を掛けました。

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