私の大好きな映画である激突!を久々に観ました。
小学校1年のときに観て度肝を抜かれ、それ以来何百回と繰り返し観てきましたが、飽きることのない素晴らしい映画です。
監督は誰もが知るスピルバーグ氏。主演はデニスウィーバー氏。
一時間半くらいの尺で、主要な登場人物は二人。ウィーバー氏の演じるビジネスマン「デイビッド・マン」と、錆びたトラックの名無しドライバー。
「激おこぷんぷん丸と化したトラックがデイビッドの車を執拗に追ってくる」という、B級映画の題材にもってこいなストーリーなのですが、これが全くB級ではなく、洒落にならないくらい怖い話になっています。
追われる車。追う側のトラックと、最後まで顔の分からないドライバー。途中随所に登場する神経逆撫で系の素敵な脇役たち。「映画だから」というお約束事のようで実は自然で無駄のない設定がされています。
秀逸なのは、窮鼠猫を噛むの窮鼠役デイビッドを演じるデニスウィーバー氏。
最初は、ドライビングポジションがウルトラ窮屈な普通のビジネスマンでした。(家庭不和あり、あまり楽しくない用事でドライブ中)
それが、何気なく追い越したトラックに追いかけられて、「やつは何がしたいのか」と悩み
ちょっと余裕を取り戻したり、
車を降りて直談判しようにも相手にされず(相手はあくまで車同士の追いかけっこ希望)
やってやんよ、と再びグラサンをONし、
突然のトラブルにテンパりながら(めっちゃ伏線あり)
こやつから逃げ回ります。
改めて観ると、このトラック、かなり迫力があります。60年型ピータービルト281。
エンジンはカミンズ製の350ci(5.7L)直6、350馬力、だそうです。
家庭がカカア天下ぽいデイビッドの愛車は、奥さんの意向でかどうかはいざ知らず、赤色のセダンです。
71年型プリマスヴァリアント。日本で言うところのカローラみたいな雰囲気の車。
重量1.5t、エンジンは225ci(3.7L)直6で、WIKIによると71年生産モデルの馬力は122馬力となっています。
車同士の勝負事には厳しいスペックです。1.5tの重量があるなら、少なくとも200馬力は欲しいところ。
しかも、どこにいても居場所がばれる目立つ赤色。カミさんの反対を押し切って、公称275馬力の340 V8を選んでいれば…
この辺が、車オタクであった中学生時代の私がカタログをぱらぱらやりながら考えた限界でした。
免許を取って、自分が公道を走るようになった今、見方は変わってきます。
車のガシャーンドガーではなく、何故デイビッドはキチガイトラックに出くわしても頑なに引き返さないのか。そして、自分の足で全力疾走するときに何故あんなに姿勢がいいのか。
カタギのサラリーマンには見えない姿勢の良さ
この男、若い頃はどんな感じだったのか。文武両道の、結構「手ごわい男」だったのではないか。スティーブンセガールの「いきなり首の骨ボキー」に比べると、この人の手ごわさは普通ですが、その分リアルです。
結婚して子供ができ、なんか優柔不断な感じのサラリーマンになってしまったような、そんな人生を背負って膝に水が溜まりかけている、そういうやり切れなさがあります。
そして、トラックのほうも、最初に「激おこぷんぷん丸」と書きましたが、このドライバーは逆に「何の感情も持っていない」ように見えます。
「お先にどうぞ、死ぬまで追ってやる」のジェスチャー
ミラーが異様に綺麗で、しかもミラー本体に貼り付けるタイプの補助ミラーまで付けて、巻き込み防止用に下のほうが見えるように(あるいは自分の狙った通りに相手を叩き潰す為?)計らっています。
ボディが錆びだらけで汚らしいのに対して、運転に関わる部分については神経質な性格らしく、この辺の偏り具合が異常さを際立たせているように感じます。
引き返したらトラックと出くわさずに済んだであろう場面が何度か出てきますが(トラックが追い越して待っている状態)、デイビッドはグラサンをかけたり外したりしながら、ひたすら順方向に走り続けます。
引き返さないのは、「用事」を済ませて「夕方までに家に帰る」というカミさんに約束したタスクを曲げようとしないから。 腹を括るまでは社会の一部であろうと結構頑固に粘ります。
しかし、社会の一部に、このトラックのような「暗部」は必ずいます。電車で隣り合わせになった変な人であったり、携帯電話をいじりながら走っているドライバー。普段なら気をつけて距離を取りますが、何故かそれができずに正面からぶつかってしまうこともあります。
冒頭のラジオで、妻の尻に敷かれている悲哀100パーセント配合の男が出てきます。デイビッドにとってなかなか耳の痛いような話を、萌えボイスのお姉さんが受け流しているのですが、この会話の途中にトラックが出てきます。
なんてなしに追い越しをするデイビッド。これが全ての始まりなのですが、もし対向車線に少しはみ出て「追い抜きとうございますのサイン」を見せたら、トラックのドライバーはどう反応したのか。
「礼儀正しいこやつは殺さないでおいてやるか」となり、もしかしたら何の問題もなくお先にどうぞとやったかもしれない。
デイビッドにそのワンクッションを忘れさせたのは、「カカア天下」と「ヤな仕事」で余裕のない状態に、最後の一押しを加えた「何となくつけていたラジオ」ではないのか。
観た後何年も形を変えて頭に残り続ける映画というのはそうありません。殆どの映画は思い出となり、再び観ることは単なる「追体験」となります。しかし、何年も前に観た映画が突然日常生活に再び姿を現すとき、改めて自分は「名作」に出会っていたんだなあと、再度実感するのであります。
小学校1年のときに観て度肝を抜かれ、それ以来何百回と繰り返し観てきましたが、飽きることのない素晴らしい映画です。
監督は誰もが知るスピルバーグ氏。主演はデニスウィーバー氏。
一時間半くらいの尺で、主要な登場人物は二人。ウィーバー氏の演じるビジネスマン「デイビッド・マン」と、錆びたトラックの名無しドライバー。
「激おこぷんぷん丸と化したトラックがデイビッドの車を執拗に追ってくる」という、B級映画の題材にもってこいなストーリーなのですが、これが全くB級ではなく、洒落にならないくらい怖い話になっています。
追われる車。追う側のトラックと、最後まで顔の分からないドライバー。途中随所に登場する神経逆撫で系の素敵な脇役たち。「映画だから」というお約束事のようで実は自然で無駄のない設定がされています。
秀逸なのは、窮鼠猫を噛むの窮鼠役デイビッドを演じるデニスウィーバー氏。
最初は、ドライビングポジションがウルトラ窮屈な普通のビジネスマンでした。(家庭不和あり、あまり楽しくない用事でドライブ中)
それが、何気なく追い越したトラックに追いかけられて、「やつは何がしたいのか」と悩み
ちょっと余裕を取り戻したり、
車を降りて直談判しようにも相手にされず(相手はあくまで車同士の追いかけっこ希望)
やってやんよ、と再びグラサンをONし、
突然のトラブルにテンパりながら(めっちゃ伏線あり)
こやつから逃げ回ります。
改めて観ると、このトラック、かなり迫力があります。60年型ピータービルト281。
エンジンはカミンズ製の350ci(5.7L)直6、350馬力、だそうです。
家庭がカカア天下ぽいデイビッドの愛車は、奥さんの意向でかどうかはいざ知らず、赤色のセダンです。
71年型プリマスヴァリアント。日本で言うところのカローラみたいな雰囲気の車。
重量1.5t、エンジンは225ci(3.7L)直6で、WIKIによると71年生産モデルの馬力は122馬力となっています。
車同士の勝負事には厳しいスペックです。1.5tの重量があるなら、少なくとも200馬力は欲しいところ。
しかも、どこにいても居場所がばれる目立つ赤色。カミさんの反対を押し切って、公称275馬力の340 V8を選んでいれば…
この辺が、車オタクであった中学生時代の私がカタログをぱらぱらやりながら考えた限界でした。
免許を取って、自分が公道を走るようになった今、見方は変わってきます。
車のガシャーンドガーではなく、何故デイビッドはキチガイトラックに出くわしても頑なに引き返さないのか。そして、自分の足で全力疾走するときに何故あんなに姿勢がいいのか。
カタギのサラリーマンには見えない姿勢の良さ
この男、若い頃はどんな感じだったのか。文武両道の、結構「手ごわい男」だったのではないか。スティーブンセガールの「いきなり首の骨ボキー」に比べると、この人の手ごわさは普通ですが、その分リアルです。
結婚して子供ができ、なんか優柔不断な感じのサラリーマンになってしまったような、そんな人生を背負って膝に水が溜まりかけている、そういうやり切れなさがあります。
そして、トラックのほうも、最初に「激おこぷんぷん丸」と書きましたが、このドライバーは逆に「何の感情も持っていない」ように見えます。
「お先にどうぞ、死ぬまで追ってやる」のジェスチャー
ミラーが異様に綺麗で、しかもミラー本体に貼り付けるタイプの補助ミラーまで付けて、巻き込み防止用に下のほうが見えるように(あるいは自分の狙った通りに相手を叩き潰す為?)計らっています。
ボディが錆びだらけで汚らしいのに対して、運転に関わる部分については神経質な性格らしく、この辺の偏り具合が異常さを際立たせているように感じます。
引き返したらトラックと出くわさずに済んだであろう場面が何度か出てきますが(トラックが追い越して待っている状態)、デイビッドはグラサンをかけたり外したりしながら、ひたすら順方向に走り続けます。
引き返さないのは、「用事」を済ませて「夕方までに家に帰る」というカミさんに約束したタスクを曲げようとしないから。 腹を括るまでは社会の一部であろうと結構頑固に粘ります。
しかし、社会の一部に、このトラックのような「暗部」は必ずいます。電車で隣り合わせになった変な人であったり、携帯電話をいじりながら走っているドライバー。普段なら気をつけて距離を取りますが、何故かそれができずに正面からぶつかってしまうこともあります。
冒頭のラジオで、妻の尻に敷かれている悲哀100パーセント配合の男が出てきます。デイビッドにとってなかなか耳の痛いような話を、萌えボイスのお姉さんが受け流しているのですが、この会話の途中にトラックが出てきます。
なんてなしに追い越しをするデイビッド。これが全ての始まりなのですが、もし対向車線に少しはみ出て「追い抜きとうございますのサイン」を見せたら、トラックのドライバーはどう反応したのか。
「礼儀正しいこやつは殺さないでおいてやるか」となり、もしかしたら何の問題もなくお先にどうぞとやったかもしれない。
デイビッドにそのワンクッションを忘れさせたのは、「カカア天下」と「ヤな仕事」で余裕のない状態に、最後の一押しを加えた「何となくつけていたラジオ」ではないのか。
観た後何年も形を変えて頭に残り続ける映画というのはそうありません。殆どの映画は思い出となり、再び観ることは単なる「追体験」となります。しかし、何年も前に観た映画が突然日常生活に再び姿を現すとき、改めて自分は「名作」に出会っていたんだなあと、再度実感するのであります。