子供の声

タクシードライバーをしていると 本当にいろいろな人と出会う。

お客様の側にいて
黙って前を見つめ運転するだけの僕ですが。


そこでお客様は まるで僕がいないかのような本当 ざっくばらんなプライベートをさらけ出してくる。


もちろん そんな時は とにかく 自分の存在を消し目的地に着くことだけを考える
んだけど。


ちょっと前の夜、
街で 母親と小さな女の子二人の家族連れを乗せた。
一見、幸せそうに見えた親子だったが。


自宅が近づく頃になって、しっかりしてそうな長女が 突然 母親に こんなこと言った。


それは、影法師の僕にまで突き刺さる
重い言葉だった…



ママ、パパが謝ったら、離婚しなくていいでしょ?だったら私が帰って、パパに謝ってもらうから、お願い!絶対、離婚しないで!


(おっおい!まっまじかよ…)


もっもう、決めちゃったんだ。
だから、その話はやめて… ね?


えっ…うん。


母親も 言葉を失っただろう。僕という他人がいる前で、突然そんなこと言うんだから。


僕も まるでそれが 自分の娘の声のように聞こえていた。家族構成も年齢的にも同じような感じだったから、余計に 心に突き刺さって思わず、自宅を 数十メートル通り過ぎてしまった。


(メーターは 辛うじて上がらなかったから
よかった…)



部が悪そうに母親は お金をさっさと払って そそくさと 子供達を連れ、自宅へと
消えていった。


静かになった車内
僕は 大きくため息をついた。


子供の声か…

僕の長女の声…
今になって聞こえてくるのか。
さっきのは
あの時の 長女の心の声。

僕は振り切った。振り切るしかなかった
どうしようもない大人だ。


ああ…


つかの間の時間の一期一会。
僕は 毎日 朝から晩まで
この都市の隅から隅まで走りまわって
たくさんの人たちを乗せて下ろしている


本当に ここでは書けないくらいの様々な体験を早くもいろいろと経験した。


警察沙汰も数回、外人トラブル、料金を踏み倒そうとする男との格闘等等。新人ドライバーで そんな奴は 今までいないと驚かれる始末でして。


幸せな家族もいたな。そうでなさそうな家族もいた。
子供を車内でぶち回す母親もいた。
深夜遅くまで働いて 子供を託児所に迎えにいく母親もたくさんいた。
一人暮らしの寂しそうな高齢者も たくさん乗せたな。


僕は、そんな様々な人達に 乗ってよかったと思ってもらうようなドライバーをいつも精一杯 演じているけど、


自分は 金も無い 家族もない、催促まみれ
幸せには縁がない
日本の最底辺で生きている男なんです。





つかの間の夏は 
あっと言う間に終わりそうだ。






一月ぶりです。近況を

猛烈に働いた。運転した。7月。
代償は いいこと少々。 悪いこと多々だが。一筋の光がようやく ようやくだ。


飢えは この上ない体験をした。
タクシーのお釣りの自銭を 限界まで切り崩した先の地獄は 今も 続いてはいますが、たまにお客様からいただくチップで 
なんとか持ち堪えている現状です。


水道の水をガブ飲みしたり、食料も完全に尽き、米びつにへ張り付いた米粒をスプーンで掻いて食べたりもしました。
食べなかった日も数日あります。


しびれました。本当しびれました。
少年時代に テレビで見たことがある難民生活をこの日本で一丁前のオッサンが体験を することになるとは…


昭和の時代、
御飯を残した時のお母さんの常套句だった
"アフリカの難民の子たちは…"
そんな生活....送ったわ。




もちろん
更にだいぶ 痩せた。 近所の人や入社して数ヶ月だが 上司 先輩からも 口々に言われる。


それでも 僕は 別れても
いつも心の中で笑っている娘達の姿だけが生きる糧だった。
虚しいけど希望にしていた。


もうあとは本当に死ぬしか選択肢がないまでおいつめられて、


死ぬなら死んでしまっても仕方がないという諦めの気持ちと 
犬死なんて情け無さすぎる。なにくそ!踏ん張ってやる!という気持ちが
相芽生えた。


この世界に もう頼るもの何一人いない、ちょめ個人の体に刷り込まれていく 心と体、両方の苦しみはそう簡単に 忘れていくものではないだろう。



そして もう一つ報告。
断言しよう。


僕は もう ギャンブルは しない。


ようやく 区切りの答えを見つけることができた。



今、僕のギャンブル依存症は 
ギャンブル恐怖症というものに変わっている。

今晩の飯がないなんて時に 小銭を見つめながら、増やせるのか?増やそうか?なんて よく考えました。

ただ、それを持って実践することを想像するだけで恐怖を感じてきて、

これなくなったら、飯どうする?もう仕事もできんよ? 頼る人誰ももうおらんよ。と頭の中で声が錯綜してきて 恐怖に襲われるのです。



気がつけば かなりの
ブランクがたっています。


このお金を失ったら 飯が食えねぇ。本当どうなってしまうんだ?という恐怖。

地獄が何かって 経験してみたから。

だから、恐怖を感じない仕事の方へ
身を預けるほうが 心の平穏を得られるのです。

でも これも 大金を持てば また あっさりとギャンブルの誘惑に乗ってしまうことでしょう。


だから、しばらくはそんな大金を持つことがないうちに 仕事を死んだ気で頑張ってギャンブルという体感を忘れ去ってしまおうとの魂胆です。



そして今はもう 仕事の方が 遥かに面白く
全くしようなんて思いたちません。ただ
その落とし穴となる寂しさは消えないから、1日休みをなるべく取らずに僕は 時間を調整して タクシーに関わり続けて行こうと考えています。


結果を出せば 給料は青天井のタクシー。
なかなかの好成績でやってます。


どの時代を生きても、仕事にだけは
僕には 幸運の女神がついている。


このカテゴリーにだけ住み着いている
この女神とだけ 付き合って行けば、



なんか こんな俺にも もう一回、

"幸せ"なんて言葉

いつか言える日が来るのかもしれない。


食えば払えず、払えば食えず

どっちを取ろうか?

辛うじて、1日一食のパンをかじり
命をつなぐ毎日だ。


仕事が終わると空腹を思い出す前に眠るようにしている。そのために疲れているのだから。


タクシー乗ってて空腹を感じると、街の公園の水をすする。最近の蛇口はプッシュして数秒でおしまいのヤツや光電センサーで制御しているヤツばかりだから、飲むのに苦労する。数日前、これが原因かわからないが 腹を壊して下痢に喘ぎ、 2日仕事をふいにした。


今月は とりあえず 新人ゆえ給料が保証されている。だからもう無理はしないつもりだ。


といっても 支払いは 相変わらず。
今月の延滞は1件。携帯をマナーモードにしてると着信が入ってた。


逃げたくなる前に電話するつもりだ。
来月の給料までは払えそうもない。


もう何か月同じこと繰り返しているんだろう。


一向に慣れないな。心が重いや…


そんな中。
ギャンブルで一撃必殺を!という発想は
ずっと封印することができている。

仕事中に公営ギャンブルに手を出そうと思えばいくらでも出せる。
実際 仕事ほっぽらかしてギャンブルやってる先輩は 実に多いのだが、僕は事情が違うし、他人の命を預かる仕事で集中が切れると、とにかく危険だからと自制が効くようになった。


下痢で稼げなかったので、休日を振り替える形で 目下連続出勤中。



とにかく近くバイトして給料日まで持たせようと思うが、体力が続くかどうか。


情けない人生だ。


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