評価:☆☆☆

この面白さも、観測しなければ不確定
404867904X紫色のクオリア (電撃文庫)
うえお 久光 綱島 志朗
アスキーメディアワークス 2009-07-10

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 電撃文庫。うえお久光の書いたSF小説。

 この小説は二編+エピローグという構成になってるが、最初の編はただのキャラクター紹介に多くページを割いていてかなり退屈。途中から事件が起こって面白くなるが、そこまで77ページもかかっているため、とにかく面白いと感じるまでが長い。最初のなんかほのぼのとした感じも楽しめる者なら問題ないだろうが、SF目的で本書を読み始めた者がそれに該当はしないと思う。きっと最初は何が面白いんだか全然分からないだろう。
 ……が、あえて言う。本書はそれを乗り越えてでも読むべき価値のある本だ。
 退屈だった展開は二編目で激変、やたらと壮大な展開に。読者にとって非常に大きな刺激が、一つでなく次々とテンポ良く提供され、途中からは本の前から離れることを許されずに一気に最後まで読まされてしまうだろう。
 「光の性質論争」「シュレディンガーの猫」といった科学の世界では有名なネタを最大限拡大解釈し、一つの話としてドラマティックにまとめ上げた本書は科学ファンにとっては垂涎の作品。ちなみに科学ファンでなくとも元ネタについては作中で解説があるので知らずに読んでも問題ない。


*納得のいかないラスト*
 本書は中盤からラストシーンにかけては文句の付けようが無い出来であるが、終わり方に関しては少々不満の残る形に。端的に言えば主人公のストレスがほっとんど解消されないままで物語が終わってしまう。
 もう少し具体的に言えば、本書の主人公はある時点から起こった障害を乗り越えるために何度も何度も試行錯誤をして失敗を繰り返し、そしてやっと「もしかしたら解決できるかもしれない方策」に辿り着くが……物語はそこで終わってしまい、実際に障害を乗り越えた場面までは描写されない。別に直接描写されなくても将来的に障害を乗り越えることをほのめかして終わるのならばそれで問題なかったが、そういったフォローもなし。「あれ……? これって最初からほとんど状況好転してなくね?」ということに気付いてしまうと、ハッピーエンドっぽくまとめられたラストも素直に喜べない。
 読者である私の心情からして、あんだけ主人公は努力したんだからそれがちゃんと報われる所まで確認したいという気持ちなのだが、意地悪な作者はその前に物語を終えてしまった。
 今の終わり方でもそんなに悪いわけではないのだが……。


*総評*
 非常にレベルが高いSF小説。SF小説というとなんだか難解で内容を理解しがたいイメージがあるが、本書はあくまでライトノベルとして書かれてるため全く科学知識が無い状態で読んだとしても問題なく楽しめる。
 エンターテイメント性も抜群で、中盤の超展開のほか、クライマックスでヒロインの特異性に関する伏線が回収されるシーンは感涙モノ。終わり方にはケチを付けたが本当にここまでは完璧だった。
 SFファンのみならず、とにかくぶっ飛んだ壮大な話が読みたいという人間全てにお勧めする。


B000AM6R00バタフライ・エフェクト プレミアム・エディション [DVD]
ジェネオン エンタテインメント 2005-10-21

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